あの時、次元が破裂し、壮絶な苦痛が到来し、「死」を理解し──────
終わるはずだった。
しかし、今。
生きている。それも、赤ん坊となって。
初めは戸惑い呆然とするしかなかったのだが、少し時間を置き落ち着くと、冷静に物事を考えることができた。というか考える時間だけは有り余っている。
これが最近噂の転生というやつ......だろうか。
私はそういったものとは無縁だったのでよく知らないのだが、クラスの一部で流行していたのを憶えている。
一度死んだ主人公が生まれ変わり、異世界で活躍し仲間と共に世界を救う物語。
そんな非現実的なお伽話が──────今、嘘ではないと我が身をもって示している。
最初は夢かと疑った。
こんな馬鹿げた幻想が、ありえるはずがないと。
でも、数日も続けば認めるしかない。
醒めない夢ではなく現実なのだと。
そこからは意識を切り替えた。
まずは周囲の状況の把握をしなければならない。
かすかに聞こえる話し声や物音などの情報の断片を手繰り寄せ、推測したその結果。
ここは異世界だと判明した。というより、他に選択肢がなかった。
文明の利器がないことに加え、道ゆく皆が鮮やかな髪色で、そしてなにより、地球人ならきっと誰もが驚くべきものを見せつけられたのならば。
魔法。
この世界には魔法がある。
最初にそれに気付いたのは、目の前に法衣を着た人がやってきた時だった。
「新たな命に、どうか女神様のご加護がありますように。」
そう唱えた瞬間、眩しい輝きが私を包み込んだ。
すると、身体に活力が漲ってきたのだ。
これが、魔法。
何故かはわからないが、どこか懐かしさのようなものを感じて、気がつくと涙を流していた。
いや、あくまで心の中で……だが。
それから数日が過ぎた。
私は開き直っていた。諦めたとも言える。
転生した不安だとか、未知への恐怖だとか、そんな言い訳を並べてこのまま怠惰に過ごすよりも、いい加減前を向いて活動すべきではないか。
自分に言い聞かせ、半ば無理矢理だが活動を始めることにした。
私の目標。それは、この世界の知識をつけることだ。
いつまでも右も左もわからない状態ではいられない。
スキルについて、ステータスについて。
この国や他国の在り方について、女神教と神言教について。
魔法、魔力、歴史、文化について。
様々な話を聞き、本を読み、世界への理解を深めた。
そうして私は徐々に成長していった。
近い未来、恐ろしい事件が襲い来るなど思いもせず。