私は自分が嫌いだった。
挙げ出したらキリがないが、特に死ぬほど嫌いだったのが見た目。
青白い肌にガリガリに痩せた体。
醜く不揃いに歯が立ち並ぶ中、長い犬歯だけが激しく自己主張をする。
そんなだから、吸血鬼だなんて渾名が付いた。
小学校では男子にからかわれ、中学校では本気で煙たがられた。
些細な嫌がらせから、発展した先はいじめ。
囁かれる陰口の数々。数えられないほどの不快が堆積し、激怒と嫉妬に身を震わす。
溜まっていく真っ黒な感情。
限界を超えた私はついに問題を起こした。それも、出血沙汰の大問題。
だというのに、誰もそのことを騒がなかった。
学校としてはいじめの末に被害者が加害者に逆襲しただなんて醜聞が広まってほしくなかったんだと思う。
相手にしても、詳しく話していじめが発覚するのが嫌だったんでしょう。
私はそれ以降学校には行かなかった。そのまま卒業式にも参加せず中学校を卒業した。
高校に入ったら、またゼロから始めようと決意した。
でも、現実はそんなに甘くない。
それまでの経験で育まれた私の性格は、環境が変わっただけではなかなか変わらない。
相変わらず自分が嫌いな卑屈な性格。
言わずもがな外見も。
努力やなんかでブサイクな人間が美しくなれる?そんなわけがない。
どれだけ頑張ってもダメだった。
周りの女子たちが成長し垢抜けていくのに対して、私は変わらず吸血鬼のような外見。
陰でリアルホラー子、略してリホ子と呼ばれているのも知っていた。
前よりは随分と控えめだったし気にしないようにしていたけど、それでも嫌なものは嫌だ。
そしてなにより、高校で最も嫌だったこと。それは、若葉姫色のことだ。
全く他人とコミュニケーションを取ろうとしないクセに、美しいと言うだけで真逆の評価。
それが気に入らず、嫉妬に任せて酷い暴言を吐いていた女子もいた。
それを見るたびに、鏡を見せられているようで嫌だった。
私も、連中のように、醜いのだろうか。
答えはわかっている。私は見た目も中身も醜悪。
でも、どうしようもないでしょ?
どうすればよかったの?どこかに正解の方法が記述でもしてあるの???
そんなものはない。
どんなに苦しんでも、助けは来ない。
それに気づいた瞬間、とてつもない衝撃を受けた。
生まれた瞬間から私の人生が間違いだったと言われた気がして。
そんなの耐えられない。だから、私はこう結論を出した。
見た目が醜いから中身も醜いんじゃない、見た目が醜いから、中身を醜くする環境がある。
見た目は気にしないなんて吐かす奴はただの偽善者、と。
だから。
できるなら生まれ変わりたい、そう思っていた。
でも、今は少しだけ違う。
実は、クラス全員から煙たがられていた私にも、普通に話してくれる人が1人いた。
それは平紫月。
彼は根っからの真面目で、とても賢く、そして皆に平等に優しかった。
クラスの皆からも普通に受け入れられていた。
ただ優しいだけじゃないから、議論に参加すれば的確に穴をつくし、授業は完璧(少なくとも私からはそう見えた)だし、課題の代行を頼まれたりしたらちゃんと断っていた。
.....でも、誰とも親密ではなかったようにも見える。生徒に対してもずっと敬語で、全員と一定の距離があったからか。
とにかく、彼だけは誰に対しても対応を変えなかった。
クラスを牛耳る君主の夏目......少し控えめな山田......1軍女子の漆原......崇拝の域に達している若葉......皆に嫌悪されている私......カーストのトップから最下層まで、余すことなく、その慈愛に満ちた眼差しで優しさと智慧を与えてきた。
それに甘えて、私はずっとぶっきらぼうな態度を取っていた。
だから......。
寝て起きたら知らない天井で。
体が自在に動かせず、力が全く入らなくて。
すごく混乱して。
赤ん坊のような小さい手の、節や皺が無くぷよぷよとした指が目に映り。
転生したと気づいた時。
喜びより先に、少し。そう、少しだけ後悔した。