異能使いの魔王は学園を好き放題に蹂躙する (旧題 : 金色の魔王(魔法の王)は微笑む) 作:2F29くん
1人の生徒が脱落し、このステージに残っている生徒の人数は、開始から約30分でヘルトを含め6名になった。
今までの激戦を見ていたオーディエンス達は、ヘルトのあまりの強さに慄いていたが、ヘルトが権能解放の限定解除を完全に切ったお陰で平静さを持ち直した。
「やっぱりヘルトさんと戦うなんて無謀…」
そんな妹の発言にメアは味方の士気が下がっているのを感じて、すかさずフォローに回ることになった。
「確かに勝つのは厳しいかもしれないけど、ギャフンと言わせてやりましょうよ!」
そんな会話が繰り広げられている中、ヘルトはメア達が誤解していることに気付き訂正をいれた。
「君達が戦うのは俺じゃなくてあの子だよ」
その時この場に居た3人はヘルトの発言の意味がまったく分からなかった。
しかし、ヘルトが指を差した方向にはこの場にあまりそぐわない大きい岩が佇んでいた。
そして、その岩の後ろから先程ヘルトと一緒に居た地味目な少女が出てきた。
「え…わ、私ですか…?」
少女はヘルトに何も告げられていなかったので、突然の出来事で困惑していた。
実はヘルトは最初からあの3人と戦わせると決めていたが、困惑する姿を見たかったので敢えて教えていなかった。
「いきなりで悪いんだけど、君のポテンシャルを見せて欲しいんだ」
「…ポテンシャル?」
少女はコクッと首を傾げてヘルトの方を向いた。
すると、ヘルトは烈と戦う前に行っていた話しの途中を再開することにした。
「いずれ君には1人でその力を十全に扱えるようになって欲しいけど、今は俺が君に魔力を貸してあげよう」
「…ほ、本当ですか…?」
少女は困惑の渦に巻き込まれながらも期待が心の中で膨らんでいた。
そのせい…お陰で普段は戦うことを嫌っている少女だったが、好奇心に負けて正面に居る3人と戦うことを了承してしまった。
「君に魔力を渡す前に名前を教えてくれるかな?」
優奈は俯きながら頬を赤らめて答えた。
「…私のな、名前は…橋本優奈はしもとゆうなと言います…」
ヘルトはこの名前に聞き覚えが無かった。
それを不思議に感じていたがそのまま名前を頭に記憶させ、魔力を相手に移す準備を始めるため集中力を高めた。
緊張した雰囲気が一瞬だけ流れた。
しかし、すぐにヘルトが言葉を発したことによって霧散した。
「じゃあ始めようか」
金色の瞳が輝き周囲がヘルトの魔力で包まれた。
その光景は眩しすぎてこの場の全員が目を瞑ってしまうほどだった。
そして、ヘルトの魔力が優奈の身体に収束していったことで光が消えた。
「(すごい…身体が暖かい…これなら私も…)」
ヘルトから貰った魔力の量はそこまで多い訳では無かったが、純度が余りにも高かっため優奈では使い切れるイメージがまったく思い浮かばなかった。
優奈が魔力を受け取っている間、メア達3人は大人しく待っていた。
しかし、魔力の譲渡が終わったことを確認したので話しに入ることにした。
「橋本さんと私達が戦わないといけないの?」
「ああ、優奈に勝ったら俺に勝てたのと同じ扱いになるから頑張ってね」
メアはもう1度戦いたいと思っていたので残念に感じたが、姉妹の方は少しでも勝率が上がると感じたので快く承諾した。
それにヘルトは満足して後方に下がり観戦モードに入った。
ヘルトがこの場から離れたことで4人は真正面から対峙することになった。
「あ、あの…あなた方のお名前は…な、なんて仰るのですか…?」
優奈はヘルトの名前はもちろん知っていたが、残りの3人の名前までは知らなかった。
「私達姉妹の知名度はこんなもんか」
姉の方は自分達の知名度がかなり上がっていると思っていたので、少し落ち込んでいた。
しかし、妹は優奈のことが気に食わなかったのか不機嫌さをまったく隠さず、不機嫌オーラを周りにまき散らしていた。
それに危機感をおぼえたメアは急いで自己紹介を始めた。
「私はメアリー・アウローラよ、メアで良いわ」
急いで答えたため定型文のような返しになってしまったが、残りの2人に「(自己紹介をしてよ)」と、アイコンタクトを送った。
それを受け、姉の方は普通に自己紹介を始めた。
「レイラよ、ちゃんと覚えてよね」
「…は、はい分かりました…」
次は妹の番なのだが、まだ不機嫌オーラを出しており、これには姉のレイラも呆れ返っていた。
そこでヘルトは妹に向けて魔法の言葉を放った。
「自己紹介も出来ない子は嫌いになりそうだな〜」
「…私はイザベル、あなたには負けない」
その言葉はイザベルにきちんと刺さったようで答えてくれた。
自己紹介はあまりにもぶっきらぼうだったが、ヘルトはイザベルの成長を肌でしみじみ感じていた。