異能使いの魔王は学園を好き放題に蹂躙する (旧題 : 金色の魔王(魔法の王)は微笑む) 作:2F29くん
1人の青年が脱落し、正真正銘この特別イベントの最終盤に突入していた。
優奈は最終盤になってようやく自分の異能の正しい使い方を理解してきていた。
その証拠に複数の特大バリアを展開して、まるで壁が敵に迫ってきているような奇妙な光景を作り出すことに成功していた。
「(…凄い、本当にこれは私?まるで生まれ変わったような心地…」
自分のあまりの強さに酔っているような姿が見受けられていた。
これが借り物の力だと分かっていながらも、気持ちの高揚を抑えきれていなかった。
それも仕方のないことだった。
彼女は普段の戦闘だといつも足を引っ張るばかりだったのに、今では1対3でも十分すぎるほど戦えているからだ。
「(このままだとこちらの体力が先に尽きそう…)」
メアとレイラは幾度となく斬撃や投擲を繰り返していたが、バリアに阻まれ攻撃が有効打にならない状況が続いているのに、優奈はパリアをそのままメア達に向かって飛ばしているため、現状まさかの優奈側が優勢だった。
この絶望的とまではいかないまでも、劣勢な状態には変わりないので必至に攻略の糸口を探していると1つの道筋が光輝いていた。
「(この作戦なら、あの硬いバリアを無視して勝てるかも…」
大至急で考えついた作戦だったが、十分に勝算があると計算出来たので即実行に移すことにした。
まずはメアに対して指示を出した。
「私が合図をしたらあなたは最大火力の技を、あの根暗女に叩き込んで!」
珍しいイザベルの大声を聴いたメアは攻撃の手を緩めずに大きく頷いた。
「姉さんは土の魔法の準備を!」
「何か思いついたようだね」
姉のレイラは妹のイザベルが決心したような表情に変わっていたため「(ここで決めるつもりだな)」と勘付いたので、自分の妹が立てた作戦に全力を尽くすことを心に決めた。
優奈は相手が何かしらの行動をするということは聴こえていたが、ヘルトに魔力をもらった今の状態なら、何をされても自分なら負けないという傲慢に似たマインド状態だった。
「"吹き飛べ"」
イザベルの異能が発動されたことが分かったので、優奈は受け身を取ろうとしたが自分が吹き飛ばされることは無かった。
しかし、下を見ると足元が無くなっており、かなりの深さの穴が広がっていた。
「…うわぁぁ!…」
優奈はそのまま穴に落ちていってしまった。
メアとレイラはイザベルの異能発動が合図だと理解し、作戦を決行した。
「燃え尽きろ!【
「そういうことね【土石流】」
メアの剣から炎を纏った龍が飛び出し、大地を轟かせた。
そして、優奈を消し炭にせんと大きな口を開けて飛来していき、すぐさま優奈のもとに到達し、炎が穴の中で燃え上がった。
しかし、優奈のバリアに割れ目はできたものの、貫通することは出来ず、防がれてしまった。
ーーだが、それだけで十分だった。
続いてレイラが既に土魔法をエンチャントしている斧を取り出し、振るった。
「おりゃあ!」
その結果、優奈は土に溺れて生き埋めになってしまった。
しかも、メアの炎で酸素が燃焼してしまったせいで、呼吸もままならない状態になり、酸欠に襲われていた。
酸欠で意識が朦朧となっていた優奈は、最後には感謝の気持ちでいっぱいだった。
「(…ヘルト君には、返しきれない程の恩が出来ちゃったね…)」
そのまま優奈の意識は遥か彼方に飛んで行ってしまった。
「(決着はついたね)」
"ピー"と音が鳴り、特別イベントの終幕を告げる合図が出された事で、優奈が負けたことが明らかとなった。
するとメア達の緊張の糸が切れ、疲れがどっと押し寄せてきた。
「…ふぅ〜、疲れたぁ〜、あの子も強くなりすぎじゃない!」
「たしかにヘルトの魔力をもらったからって、普通ならあそこまで強くならないはず…」
(それだけ彼女に才能があったって事だろうね、それを見つけるヘルトも相変わらずって感じだな)
勝ったことが分かった瞬間に、イザベルはヘルトの元へ駆け寄り「褒めて褒めて」と、いわんばかりの様子だった。
それにヘルトは応えて、褒めるだけではなくついでに頭も撫でてあげた。
「正直勝てるかは怪しいかと思っていたけど、よく勝てたね、えらい、えらい」
「……んっ……」
イザベルは優奈に勝てると信頼されていなかったことに少しムスッとしていたが、撫でられることが嬉しくて上手く丸め込まれていた。