異能使いの魔王は学園を好き放題に蹂躙する (旧題 : 金色の魔王(魔法の王)は微笑む) 作:2F29くん
先程聞こえていた足音は段々と大きくなった。
しかも、その大きくなる時間はとても短く、足音の原因がとてつもない速度で移動していることが分かった。
そしてようやくその原因が姿を現した。
「あのド派手な花火みたいなのに赤髪の女の魔力を感じて来てみれば、今度はあんなデカブツが居るとはな」
烈は遠目からガブリエルを見ながら走っていた。
その状態からでもかなりの大きさはあったが、近くで見ると更に圧巻だった。
しかし、烈には負けるイメージがまったく湧かなかった。
しかもあのデカブツが出現しているのに、学園からのメッセージが何もないことを踏まえると、学園側で何かしらのトラブルが発生していると考え、対処しようと行動することにした。
「で、何でセブンキングス様はそんな所でボーッとしてるんだ?テメェ も戦えや」
特別イベントでの戦いで、その力を実際に体験した烈からすればヘルトが参戦すれば、今なお必至に戦い続けているメアと渡の負担を少なく出来るどころか、一人でも勝てそうだと考えていたからだ。
しかし、どれだけ烈に言われてもヘルトは行動を変える気は無かった。
「いいから早く手助けしてあげて」
「お〜い渡、援軍が来たからお前は帰ってこい!」
その声はしっかりと渡に届いた。
なので、牽制は続けながらもゆっくりと後退していった。
これに烈はアドリブでメアに命令形で話した。
「少し時間を稼いでやるから赤髪女は本気を出す準備をしてろ!」
そう叫んだ後、烈は全身に魔力を循環させてガブリエルをはっきり視界に捉えた。
そのまま足を大きく開けて力強く踏み込んだ。
そのせいで砂埃が周りに高速で空に飛んでいった。
「(危ないなぁ〜)」
この時踏み込みが強すぎたせいで、砂埃だけではなく地面の破片までもヘルトに飛んできていた。
そんなことなど烈はまったく気にしていなかった。
「オラッ!」
絶賛戦い中の2人の間に入って、ガブリエルを殴り飛ばした。
これのお陰で渡だけで無く、メアも下がれて一旦落ち着ける時間が作れた。
「《おやおや、よもやこんなに元気の良い子と相対するとは》」
烈に殴られて左肩の一部が欠けてしまっているのに、ガブリエルは痛がる素振りなどはまったくせず、逆に喜んでいた。
それに加え、本人的には元気の良い子が居ると嬉しく感じていた。
「(なんでアイツ、肩が欠けた状態で喜んでやがるんだ?)」
これに、殴った張本人はもちろんドン引きしていた。
そうした心境のまま、ガブリエルのロングソードを己の拳で受け止めて、跳ね返していた。
それから烈がパンチを繰り返すとダメージは与えられるが、上手く急所を避けられてしまっていたので少し危機感を感じていた。
しかし、後ろから莫大な魔力の流れを感じた。
横目に見ただけでも、赤い閃光が煌めいているのが視界に入ってきていた。
なので、呼吸の間隔を緩めた。
メアは異能解放を終えた状態で、ゆっくりとヘルトの隣を通る。
すると、ヘルトはこちらを見ずに話しかけてきた。
「メアの特訓の成果を見せて欲しいな」
「もちろん良いわよ。でも、しっかりとその目に焼き付けるのよ!」
そう宣言しながらメアは通り過ぎていった。
そしてヒーローのような風格で一歩一歩進んでいき、そのまま魔力を足に込めた。
後ろで一呼吸ついた渡はその後ろ姿に感化されていた。
「(スゴイな…俺には真似できないや。でも、俺に出来ることは一つだけ。ならそれで、アイツのために出来る最大限の事をやるしか無いよな)」
自分の魔力を最大限に引き出し、メアへの支援に全集中した。
それをメアも体感出来た。
なので更に、力が湧き上がってきた。
「すぐに決着をつけてやるわ!」
飛び立った場所には、あいも変わらず安定した足場があった。
上を見上げると烈の優勢は少し傾いてきていた。
異能解放を使えば勝てることは分かっているが、それを相手は許してくれなかった。
しかも、ガブリエルの体力は無限なのに対して、烈の体力は有限なので消耗戦は明らか不利だった。
ここにメアが堂々とやって来た。
これにガブリエルは視線を向ける。
そこには自分の身には有り余る力を持って返ってきたメアの姿だった。
それに慌てて咄嗟に光剣の魔法を放った。
「《遘√↓蜉帙r謗医¢邨ヲ縺》」
しかし、それをメアは許さなかった。
「もうそれは使わせないわよ!【
剣から信じられない程の、莫大な熱量をもった音符が五線譜に乗って飛び出した。
それは4分音符や8分音符など、いろいろな形をしていた。
その音符がガブリエルに当たると、突如大爆発した。
それを予期して烈は避けたが、爆発の余波が自分まで届いていた。
「(あっつ…!どんな火力してやがるんだよ)」
ガブリエルは余りの熱量で体のほとんどが蒸発してしまっていた。
しかし、まだ息はあるようで最期に小声で不穏なことを言っているのをヘルトだけが聴き取れた。
「《…なんとしてでも使命を果たさなければ…。この命と引き換えになるとしても…》」