異能使いの魔王は学園を好き放題に蹂躙する (旧題 : 金色の魔王(魔法の王)は微笑む)   作:2F29くん

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悪夢から醒める時

 少し目が慣れてきたので、ようやく目を開ける事が出来た。

 その暗闇から顔を出したのは、先程こんな姿を見せたくないと言った相手だった。

 こっちの気持ちなど気にもとめず、いつもの自信に満ち溢れた様子で立っている。

 

「…っ…なんでこんな所に居るの…?」

 

 ここは校舎から離れているし、寮からも正反対の位置にあるので、偶然通りかかることなんて無いはずである。

 なのに実際にこの場に居る。

 

 目を擦っても現実は変わらない。

 変わってくれない。

 

「メアに提案をするためにわざわざ来たんだよ」

 

「…提案?こんな私に…?」

 

 ヘルトは今の私のことは触れずに、提案を持ちかけてきた。

 私になにかを求めようとしても、私からヘルトに提供出来るものは無い。

 異能においても同様で、格があまりにも違いすぎて正直意味が分からないぐらいである。

 だから、私になにか提案をしたとしても、ヘルトにメリットは無さそうに思える…。

 

「どうやらメアは友人の事で困っているようじゃないか」

 

「……っ……」

 

 いきなり図星を突かれた。

 なぜヘルトはその事を知っているの?

 私はこの学園に来てからナタリーに関する話は一度たりともしていない。

 そのはずなのに、ヘルトには知られているようだ。

 

「しかも、すごく気を病んでいるようだからね。メアが潰れるのは俺も本意じゃないからね」

 

 驚いた。まさかヘルトからそんな言葉を聞けるとは。

 ヘルトは周りに興味は無いと思っていた。

 なぜなら彼は少し変人だが、とても人気がある。

 なのに周りと距離を置いていて、休み時間には基本的に1人で寝ているか、渡と話しているかの2択で他の人と関わろうとしない。

 だから、私もただの同居人と認識されていると思っていた。

 しかし、気を遣ってくれているようだ。

 

「…それで提案ってなんなの?」

 

「それはメアの友人…確かナタリーだっけ。その子を俺の家であるアリーネス家で保護させてもらうよ。責任をもって必ず完治させることを約束するよ。

まぁその対価として、メアには俺のお世話係でもしてもらおうかな」

 

「…えっ…」

 

 初めの方はとてもありがたい内容で、涙が出そうになっていた。

 なのに突如、爆弾が投下された。

 自分の耳が壊れていただけの可能性があるので、もう一度聞き返した。

 

「私の聞き間違いだと思うけど、今お世話係になってと言った?」

 

「もちろん、そう言ったよ。最近は本当に雑事をするのがだるくてね。実家の方から人を寄越そうと思っていたから丁度良いと思ったんだよ」

 

「本当なのね…」

 

 ヘルトのお世話係…。

 普通の女の子なら泣いて喜ぶだろうが、日頃のヘルトの生活を見ていると気が引ける。

 洗濯物を畳まずに放っておいたり、ご飯はいつもコンビニで済ませたりしていて、生活能力は皆無に近い。

 なので、かなり大変な仕事になるだろう。

 もしかしたら……その……夜に命令されたり…するかもしれないし。

 

 思考の海に浸っていると、なぜだか体が熱い気がする。

 ついさっきまで体は氷点下まで下がっていたのに、温もりが返ってきたようだ。

 不思議な感覚だ…。

 

「それでこの提案を呑むのかい?」

 

「私は…」

 

 ナタリーをヘルトが保護してくれるというのなら、断るという選択肢は無い。

 だから、もう決心はついた。

 

「もちろんその提案受けさせてもらうわ!」

 

 私から手を差し出すと、ヘルトも私の手を握ってくれた。

 これで契約は完了した。

 

「俺のお世話係になってくれたことだし、ついでに異能の特訓にも付き合ってあげるよ」

 

「…本当に?ちゃんと言質取ったからね」

 

 この学園の序列3位が特訓に付き合ってくれることなど、滅多に無い。

 

 しかも、ヘルトにナタリーのことを任せられるなら、異能省の表情を窺うこともなくなる。

 これで私にがんじがらめに絡まっていた呪縛から解放された気分だ。

 

「金色の王に二言は無いからね。それにしても、弟子の2人目が出来た気分だね」

 

「2人目…既にヘルトに弟子がいたの?けっこう意外」

 

 ヘルトは弟子などは取らず、自由奔放に生きているのだと思っていた…。

 なぜだか晴れたはずの胸に、もやもやがまた取り巻き始めた。

 自分でも理由はよく分からない。

 けど、今はナタリーが助かる見込みができたことへの喜びを享受することにしよう。

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