異能使いの魔王は学園を好き放題に蹂躙する (旧題 : 金色の魔王(魔法の王)は微笑む)   作:2F29くん

82 / 112
ボスのエゴ

「佐藤渡…いったい誰のことを言っているんだ?私の名はドミナスだ」

 

 薄々…いや、ほとんどこちらの素性が割れていると思っていたが、やはりバレていたようだ。

 無駄だと分かっていても、一縷の望みに賭けて白を切る。

 

「今までよく隠していたと思うけど、細かい箇所が杜撰だったな。例えば魔力量だ。お前の魔力量で考えると、異能がサポート特化にしては弱すぎな所だったりな。高位の魔法をある程度使えてもおかしくないのにな。最初は違和感程度だったが、直近で動きすぎたな」

 

「そうか、そうか…」

 

 いつかはバレると思っていたが、いやはやこんなに早いとは。

 やっぱいコイツには敵わないんだな。

 

 最後の手段として自爆特攻があるが、相打ちを狙おうにも良い作戦が思い浮かばない。

 完全に詰みの状態だ。

 

「そろそろ、その仮面をはずしてみたらどうだ?息苦しいだろ?」

 

 もちろんこの仮面のことも気付れていたようだ。

 

 この仮面は1人で暴れていた頃に、偶然見つけたものだ。

 

 この仮面の効果は凄まじく、相手視線からすると、至って普通のありふれた顔に見せることができるというものだ。

 

 だから、どんな国に行っても、不自然に見られないという利点がある。

  これは各国の要職や実力者は騙せたが、ヘルトには無駄だったようだ。

 

「あぁ、もう降参だ」

 そう言ってドミナスは仮面を掴み、取った。

  普通の人からすると、本物の顔が取れているように見えるだろう。

 

「やあヘルト。さっきは随分と派手にやってくれたな〜。まぁ、そんなことはどうでもいい。ここにいない他の幹部はどこへやった?」

 

 ずっと気になっていた事だった。

 ここには幹部総勢9人中の4人しかいない。

 超越転移で呼び出した時は、切迫した状態だった。

 その時は彼、彼女らのことについて話し合っている時間はなかった。

 それは他の面々も分かっていたようで、誰も触れなかった。

 

 しかし、負けが確定した今は、それを気にしないといけなくなってきた。

 

「別に何もしてないさ。ただ、俺の前に立つ資格がなかった、それだけのこと」

 

 淡々と吐き捨てるように言うヘルト。

 心の底から思っていることが窺える。

 

 同胞への扱いに不満があるが、敗者には何の権利もない。

 ただ受け入れるのみ…

 なんて素直な性格だったらどれほど良かったことか。

 

 密かに待機させていた超越転移を発動する。

 

 未だに拘束されているハゲや、倒れているアスパーも範囲に指定する。

 

 これで目の前のコイツらだけでも……。

 

「それが最後の足掻きかい?なら、存分に付き合ってあげようか」

 

 

 当然介入してくるヘルトだが、最後に力を振り絞る。

 異能でのバフがかかっている分、自分の方が有利なはずだ。

 

「はぁぁぁ!」

 

 魔力同士が激しく干渉しあう。

 空間を転移させようとする力と、それを押さえつける力が

 

 脳が焼けるように痛い。

 さらに全身が鉛のように重く、呼吸をするたび胸の奥が悲鳴をあげる。

 

 自身の全力と、大きなアドバンテージがあってもなお、勝てるピジョンが浮かばない。

 

 満身創痍で限界な自分と、余力を十分残しているヘルトとは、とても対照的だ。

 

「ボス、あなただけなら逃げられるかも知れません!どうか我々など置いてお一人だけでもお逃げください!」

 

「そうですわ。私たちなど気にしないでくださいまし」

 

 ブルーノの叫びにリリアンも同調する。

 しかも、カル坊まで首を大きく縦に振っている。

 

「(お前ら……)」

 

 同胞たちのおかげで、荒れていた全身がマシになった気がした。

 しかし、ボスが部下を置いて逃げるなど、あまりにもダサいだろう。

 厚意を無下にするようで悪いが、ここはエゴを押し通させてもらう。

 

 さらに魔力を込める。

 自分の魔力だけでは全く足りないから、持ち物の中で魔力が含まれている物を分解し、魔力に変換する。

 

 これで、正真正銘全てを賭していることになる。

 

「最後にもう一勝負と行こうぜ!」

 

 この時の渡の顔は、彼の人生至上一番輝いていた。

 それは黒き福音の面々から見ると、ヘルトの瞳の色と遜色ないほどの輝きであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。