異能使いの魔王は学園を好き放題に蹂躙する (旧題 : 金色の魔王(魔法の王)は微笑む)   作:2F29くん

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夏休みは目と鼻の先

「みなさん席に着いてくださいね」

 

 静香先生がクラスの面々に声をかける。

 チャイムは既に鳴っていて、ショートホームルームは始まっていた。

 

 慌てて自分の席に戻る生徒たち。

 

 

 そんな生徒達を眺めながら、空席となってしまった席に視線だけを移す。

 その席の持ち主は陽気でお調子者だった。

 反応も良く返してくれて、教師としては非常にありがたい存在だった。

 

 しかし、そんな存在がいなくなってもこのクラスは変わらない。

 なぜなら、クラスメイトがいなくなるなど、この学園ではそう珍しいことではないからだ。

 

 なぜ退学したかの理由は伏せられている為、もう気にしてる生徒は少ない。

 

 このような出来事を乗り越えないといけないのも、教師の辛いとこでもある。

 まぁ、新しい転校生が来る予定らしいから、学園側からするとちょうど良かったかもしれないけどね…。

 

 

「はい、じゃあショートホームルームを始めます」

 

 私は無理やり気持ちを切り替える。

 これから授業などがあるのだ。

 このまま引きずってはいられない。

 

 私は頬を叩いて自分を鼓舞した。

 

 

「期末テストが終わったので、もうすぐ夏休みとなりますね」

 

 この先生の一言でクラスは沸き立った。

 

 テストのせいで張り詰めていた空気が破られた。

 長期休暇が来るとなるとテンションが上がるのもやむを得ない。

 

「帰省したりする子もいるかもしれないけど、きちんと許可をもらってくださいね。事務局の方に申請書を出すだけで良いですから」

 

 夏休みになると生徒達の帰省ラッシュが始まる。

 

 この学園の生徒は皆寮に住んでいる。

 別に規則でも何でも無いのだが、ここは島故に遠くから通うのは難しい。

 そこで長期休暇になると帰省する生徒が大量に出てくる。

 体感だと9割ぐらいだろうか。

 

 

「ヘルトは帰省したりするの?」

 

 思わず聞いてしまった。

 ヘルトが部屋からいなくなってしまうと、私の仕事もなくなってしまう。

 本来なら嬉しいはずだが、全然嬉しくない。

 

「多分するかな。家に帰らないと、父と母が悲しんでしまうからね。奏は学園があまり好きではないから、一緒に帰ることになるかな」

 

「そ、そうなのね…私はこのまま寮に残るわ。だって、もっと強くなって帰りたいもの」

 

 

 メアは寮に残るのか。

 なら夏休みの間は暇ってことかな?

 

「じゃあメアも一緒に来る?ナタリーの顔も見たいでしょ。家の妹はどうにか納得させるけど、どう?」

 

 ナタリーはヘルトの家で治療されている。

 帰省するともなれば、絶好の機会だろう。

 なんだか彼女と会いたくなってきてしまった。

 

「私も同行させて。ナタリーに会いたいのもそうだけど、何よりヘルトのお世話係は私よ!だから、着いていくことにしたわ」

 

「そ、そうか。分かった」

 

 なんでメアはこんなにもお世話係へのプライドを持っているんだ?

 一切分からない。

 

 それよりも奏の方をどうにかしないといけない。

 万が一に暴れられた時のために、対抗策も練っておかないと。

 

 

「あと数日で夏休みですから、それまでは学業に励んでくださいね」

 

 そう言って先生がショートホームルームを終わらせて、教室から出た。

 クラスの面々は夏休みに何するか?という、議題で盛り上がっていた。

 

 その興奮が冷めやまない雰囲気の中、何となく気になってスマホを見た。

 すると、ルナからメッセージが届いていた。

 前は教室に突撃してきていたので、ちゃんと俺が言った事を聞いてくれるようになったようだ。

 

 内容は学園の庭で一緒にお昼ごはんを食べませんか?

 というものだった。

 断ると今度は教室に突っ込んでくる可能性があるので、庭へと出向くことにした。

 

 

 すると、学園の庭の一角にあるベンチにルナがいた。

 膝の上にお弁当を乗せている。

 

「良いロケーションの場所を見つけたね」

 

 本当にキレイな場所だ。

 自然の色が素晴らしい調和を見せている。

 学園の庭にこんなコントラスト映えする所があるとは。

 

「この景色をヘルト様と見たかったんです。それよりも、ヘルト様はご実家の方に帰省されるんですね」

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