Irregular   作:ノキシタ

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 起動する度拡張頭環からWind◯wsの起動音がするニンフ概念(唐突発作猟奇的発送)

 あっちなみに私事で恐縮ですが小官は12/31から1/1は普通に仕事なんで年内の更新は最後になります。よいお年をお迎えくださいませ。


1-6 膠着状態

「これがお前達の答えか、アルバ指揮官?」

 

 ほぼ焼け野原と化したガーディナの集結地で、そう尋ねるニンフがいた。ギプロベルデ第1戦域軍司令官のフレグというニンフである。

 最新鋭のBravadMund5を身に纏う緑髪のニンフにとってこの状況はどうも面白くないらしい。

 それもそのはず。この大戦果を収めた作戦の立案から全般指揮まで、外人部隊の指揮官、すなわちギプロベルデの者でないニンフが行ったのだから。

 

「正規部隊よりも武功をあげ、女王陛下に取り入ろうとでも?」

「私はただ使命を果たしたまでですよ、軍司令閣下」

 

 いかにも気に入らないといった様子のフレグとは対照的に、外人部隊指揮官のアルバはどこ吹く風といった様子で答える。

 

「我々外人部隊はギプロベルデの生まれではないにしろ、女王陛下に忠誠をお誓い申し上げた身でありますので」

(CELL)が支払われる限りな」

「おっ、わかってんじゃないすか」

 

 嫌味を言うフレグに笑い飛ばしたのはミーシャ、外人部隊副長である。アルカンドを構成する辺境の小コロニーに生まれた。

 

「開き直りおって、あさましいにも程がある」

「法外な低賃金でこき使っといてよく言う。普通、日当10セルで最前線に行く馬鹿なんかいやしませんよ?」

 

 舐め腐ったミーシャの態度に青筋を立てるフレグだが、そこに言い返すことはできない。

 そもそも予算の都合で傭兵を雇って使い捨てることが出来なかったから、ギプロベルデは外人部隊という制度を設けたのだ。これは破格の低賃金の代わりに、実績を積めばギプロベルデでの永久居住権と上級戦士階級が与えられるというもので、安定を求めるタイプの傭兵達をターゲットにしていた。

 実際に来たのは戦闘狂ばかりだったが、それはそれ、戦力になれば問題はない。

 ――とはいえ現場での軋轢は絶えなかったが。

 

我々(外人部隊)のおかげで東地区は持ちこたえられてるわけだし、今回の戦果も姐さん(指揮官)が指揮を執ったから得られたんだ。ギプロベルデは今、外人部隊によって延命できているといっても過言じゃあない」

「思い上がるな小娘。貴様らの作戦(おままごと)をやっている間にも、正規軍は各地で果敢に戦っている」

「防戦一方ですがね。最近のガーディナの戦い方を見りゃわかるでしょう、もう昔みたいに真正面からパワーですりつぶす様な戦い方は通じない。

 機動と火力を連携した組織的戦闘力に対抗するには、こっちにも相応の組織化が必要になる。『やあやあ我こそは』だなんて言って武功立てる時代は終わったんだ」

「なんだと貴様、知ったようなことをべらべらと!」

「2人ともそこまで!」

 

 あくまで嘲笑う姿勢を崩さないミーシャと、今にも掴みかからんばかりのフレグ。両者はアルバの制止でようやく応酬を止めた。

 

「味方同士で争っている場合では無いでしょう。敵はあくまでガーディナ、そこは正規部隊であれ外人部隊であれ一致しているはずです」

 

 アルバがきっぱりと言い切る。その正論にはフレグもミーシャも押し黙るしかなく、結局先に折れたのはフレグの方だった。

 

「……まあいい。精々我々の足を引っ張らんよう励むんだな」

 

 それだけ捨て台詞のように言い残して、フレグはさっさと帰っていった。

 外人部隊指揮官に正論を吐かれ、返す言葉もなくばつが悪かったのだ。

 

「貴方もすぐに突っかかるのではありませんよ、副長」

「先に舐めたこと抜かしたのはあっちでしょう」

「外人部隊が信頼に足る存在だと認識されていないのも事実です。今は実績を積み上げなければなりません」

「あたしゃ姐さんと一緒に戦うために来たんだ。ギプロベルデの永久居住権だとかはどうでもいいが、姐さんが舐められちゃ気に入らないっすよ」

 

 フレグと話しているときとはうってかわり、真剣な表情で抗議するミーシャ。アルカンドの内戦で彼女を救って以来、どんな死地にも必ず付いてきては共に生き延びてきた副長にとっては、アルバこそが全てなのだろう。

 

「なら尚更、喧嘩を売るような真似はお辞めなさい。それが私の評判にも繋がりますからね」

「……わかりましたよ」

 

 アルバに諭されミーシャも渋々といった様子で頷いた。

 フレグに対してもこれぐらい聞き分けが良ければなと思いながら、ミーシャを伴ってアルバは臨時の捕虜収容所へと向かった。

 

 

 

 収容所には殆ど捕虜はおらず、数体の捕虜()()()()()が転がるのみである。ギプロベルデ正規兵のガーディナに対する憎悪は凄まじい。

 そしてその収容所の一角、一際厳重に監禁された部屋に、そのニンフはいた。

 

「調子は如何ですか、ディノート混成団長殿?」

 

 部屋に入り、アルバは左腕のないニンフに尋ねた。

 ガーディナ第10混成団長、名をディノートという。

 彼女は結局自決する間もなくギプロベルデ兵――厳密にはそれに紛れた外人部隊隊員に捕縛され、身体の制御系を切断されたうえで頭脳にアクセス用のケーブルを数本接続された状態で監禁されていた。

 当たり前の話であるが、ニンフに人権などという概念は存在しない。

 

「口が寂しいったらないな、煙草くれ」

「あいにく持ち合わせがないもので」

「シケてんなぁ。ギプロベルデが負けるのも時間の問題だな、こりゃ」

 

 軽口をたたくディノート。この期に及んでもその余裕そうな表情を崩さないあたり、運だけで出世したタイプでないのは明白だった。

 

「本題に入りましょう。ガーディナの攻撃計画について教えてください」

「自白剤使った方が早いんじゃないか?」

「使いましたよ、2回もね。何もお話にならなかったそうですが」

「体質かねぇ、効かないんじゃしょうがないな」

 

 へらへらと笑いながらディノートは言う。

 この態度に激怒して、正規部隊の尋問担当がうっかりディノートを殺しそうになってはアルバ配下の隊員が止めるという事態が過去に4回。他人には任せられないと判断して、アルバが出てきたわけだ。

 

「立場をお分かりになられていますか?我々はいつでも貴方を殺害できる」

「おおいいな、さっさとやってくれや」

 

 目先に立場をちらつかせて脅してみるも、やはりディノートは動じなかった。それどころか催促までしだす始末である。

 やはり強引な、いつもの尋問は通用しない。

 

「混成団長。貴方が協力していただければ、ここに囚われている貴方の部下達は全て解放しますよ」

「一緒にぶち込まれた8人分キッチリ断末魔聞いてんだ、残ってるとは思えんが?」

「他の収容所にも話を通します」

「ここらのギプロベルデ兵が捕虜なんかとらないのはお互い承知のはずだぜ?もっとマシな噓つけや」

 

 仲間の命を盾に懐柔する方法も通じない。へらへらと笑うこの指揮官が相手では、普通の尋問官ならお手上げだろう。

 だがアルバはまだ手を残していた。そもそも何がディノートにここまで余裕を与えているのか、それは「このままだとディノートは殺される」という予定調和であることを、アルバは見抜いている。

 ディノートにとって最悪なのは情報を抜き取られることであり、それを避けるためには脱走するか自殺するしかない。短気なギプロベルデ兵達が相手ならすぐに処刑してくれることだろうし、外人部隊にしたって用済みな捕虜はさっさと始末している。

 つまり今のディノートに有効なのは、有無を言わさず情報を抜き取ること。

 

「よくわかりました。ではアプローチを変えることにしましょう」

 

 そう言ってアルバが取り出したのは情報閲覧用の拡張頭環。取り付けられたケーブルを辿ると、ディノートに刺さっているケーブルに繋がる。

 

「今からこれで貴方の頭の中を拝見させて頂くことにします」

「……勝手にしな」

 

 始めて、ディノートの余裕そうな表情が崩れる。そうだ、やはりこれがディノートにとっての弱点なのだろう。

 拡張頭環を接続して、アルバはディノートの頭脳の中へ侵入(ダイブ)する。プログラムではなく感覚で電子機器を操るニンフにとっては、電子機器への接続は現実で体を動かすのと大した差はない。かつての炭素生物社会で大流行したというフルダイブ型ゲーム*1のような形をイメージするとわかりやすいだろう。

 さて、ディノートの頭脳の中は大変整理されていて、さながら管理の行き届いた倉庫のようであった。指揮官としては当たり前かもしれないが、ここまで思考と記憶を整理しておけるニンフは多くない。

 

「このどこかに、敵の情報があるのですね」

 

 アルバは棚に振られたナンバーや記号から目当てのものを探す。整理されている分、探し物がしやすくて助かった。

 コンテナの形をした記憶たちをタイトルで仕分けながら、敵の配置や計画を探ろうとするアルバ。

 そう時間もかからないうちに、1つのフォルダに辿り着く。

 

『東地区作戦計画.102.3四』

 

 これだとアルバは確信する。だが早速フォルダを開いて中身を検め始めると、アルバは眉間にしわを寄せることになった。

 

『攻勢作戦計画(仰指済)(方面承認).exe』

『業務予定表.xlsx』

『全般計画配置(旧).pdf』

『全般計画別紙.pptx』

『全般日程.xlsx』

『東地区攻勢作戦(改善版).docx』

『東地区攻勢作戦(最新版).docx』

『東地区攻勢作戦計画(最終版仰指済).docx』

『東地区攻勢作戦計画(最終版仰指済).pptx』

 

 アルバは絶句した。これではどれが最終的に採用された計画かわからないし、配置図も旧とつけるなら新しいものも作っておけといいたくなる。古いのか古くないのかどっちだ。

 しかも更新日時まで統一されている。これではどれが最後に作られたものかもわからない。こんなところを整える前に整えるべき所などいくらでもあるだろうに。

 しかしここで立ち止まっていても始まらない。アルバは一先ず一番上のファイルから開くことにした。方面承認とか書いてあるし多分これが最新版だろう。

 だがファイルにアクセスした瞬間、全てが止まった。およそ視界に映る全て、そしてアルバの接続する全てが、応答しない。

 視界が突然ノイズに遮られ、体の感覚が消失する。

 

「(な……なニがおkていruノですか……)」

 

 もはや思考領域すら欠落していくアルバ。このままではいけないと思いつつ、何がいけないのか、どうすればよいのかさえわからない。

 緊急停止プログラムの存在すら思い出すこともないまま、アルバは意識を手放した。

 

 

 

「……さん、姐さん!」

 

 次に目が覚めた時には、アルバは先程までいた捕虜収容所の地面に倒れ伏していた。

 

「副長……?」

 

 視界に映るのは、自身の顔を覗き込むミーシャ。普段の彼女が見せることのない焦った表情に、アルバの頭脳はようやく状況を理解し始めていた。

 

「そ、そうだ、私はディノート混成団長の頭脳にアクセスして……混成団長は!?」

 

 起き上がって見ると、ディノートは頭脳ユニットから煙を吐いて絶命していた。その表情は接続前とは違う、計画通りと言わんがばかりの不敵な笑みだった。

 

「あいつが顔色変えたんで、嫌な予感がして、勝手にですけど緊急停止させました」

「結果的にはそれが正解でしたね。ありがとうございます。

 私も、よもや敵の策略にまんまと嵌まろうとは――」

 

 言いかけて、アルバは体の異状に気付く。いつもより動きが遅い。頭脳が信号を発してから動作までのラグが酷い。

 

「どうしたんすか?」

「体の動作系ですかね、以前に比して54%増しのディレイがかかっています。やはり無傷とは行きませんか」

 

 アルバは忌々しげにディノートの亡骸を睨んだ。わざと挑発しておいて、痺れを切らして自身の頭脳に接続してくるのを狙っていたのだろう。

 そして接続してきたアルバを自分諸共電子破壊することで、機密保全と指揮官排除の両方を達成しようとしたのだ。

 結局アルバを道連れにはできなかったわけだが、それでも手傷を負わせたあたり、ディノートの意地が伺えた。やはり、ただ運だけで出世したニンフではなかったのだろう。

 

「で、どうします?」

「手掛かりが潰えた以上、あとは手探りしかないでしょう。大部隊が機動できる地形は限られているはずですから、敵の展開可能地域を虱潰しに当たりますよ」

「いえっさ」

 

 ミーシャの手を取って立ち上がったアルバは、必要な指示を配下に出して捕虜収容所を後にした。

 

「ああ、ディノート混成団長のご遺体は丁寧に処理しておいてください。決して不必要な損壊などないように」

 

 そう、名ばかりの看守に申し付けて。

 

 

 

 層間連絡路の一角、かつて炭素生物が資材搬入用に使っていたであろうゲートは、ひしゃげたまま長らく放置されていた。

 そんな静寂を吹き飛ばしたのが、RamdVolcの榴弾である。分厚い隔壁をこじ開け、数機の鎧化兵が相互に援護(カバー)しながら突入する。

 

「クリア。よーし、カルラド、ヨス、入ってこい」

 

 安全を確保したリグが無線で呼びつけ、四脚型鎧化兵と二足歩行型重機が進入する。

 結局ヨスは鎧殻を使いこなすことができず、自作の重機で随伴することになった。

 

「カルラド、GOGLの調子はどうだ?」

「絶好調です。今まで使ってたWALVには申し訳ないですが、機動性も操作性も格段にいいですね」

「そりゃ何より。ヨス、何か出てきそうか?」

 

 リグは次いでヨスにも尋ねた。レッドアックスが層間連絡路にやってきたのは、内部の構造調査と、例のニンフ、ギリー・ベルの捜索を兼ねてのことであった。

 とはいえカルラドとヨスにはベルのことをまだ伝えていない。無いとは思うが万が一憲兵本部の手先だった時を考え、当面は隠しておくことに決めていた。

 

「いくつか履帯痕が残ってますね、辿ってみます」

「よしいいぞ、各機続け」

 

 慎重に履帯痕を辿るヨスと、その重機の後ろに続く鎧化兵達。

 電源が落ちているのであろう、真っ暗な連絡路の中でいくつか分岐を過ぎていくこと1時間弱。トンネルの先に光が見えだした。

 見るとそこはトンネルを区切る区間ゲート。閉鎖されており、仮設された蛍光灯の下にギプロベルデの鎧化兵が2機見える。歩哨だろうか。

 

『全員見えるか?前方200、蛍光灯の下』

 

 気付かれないよう、リグが無線で聞く。地下であるにも関わらず、相互に離れていなかったのが幸いして感度は良好だった。

 

『見えました。どうします?』

『あれが歩哨だとすれば中にまだいるはずだな。カルラド、中は見れるか?』

『やってみます』

 

 カルラドが前に出ながら、特技背嚢の複合センサを起動させる。このセンサにしてもそうだが、GOGLの動作静粛性には感服させられる。

 センサでゲートを見ると、やはり最近開けたのであろう、埃の積もっていない操作盤を見つけた。

 

『やっぱり操作盤は確実に触ってますね。ゲートにも埃はないし、この奥に何かありそうです』

 

 言いつつカルラドはセンサをX線走査モードにして見る。これなら分厚いゲートの向こうもある程度は見通せる。

 向こうは小部屋となっており、3機の鎧化兵がくつろいでいる。待機場所なのだろう。奥にさらにゲートがあるが、流石にその先までは見通せなかった。

 

『奥に3機います。いずれもHamzMund2を装備。さらに奥にまたゲートがありますがその先は見えません』

『他に何か見えるか?設備とか、コンテナとか』

『えーっと……あっありますね、コンテナが2つ。奥のゲートの側です。中身はよく見えません』

『よしよし上出来だ。一旦下がれ』

 

 カルラドを下がらせ、リグは考える。どう攻め込んだものか。あるいはそもそも攻め込むべきか。

 

『正面から攻撃して誘い出すか、抜け道を探すか、ですね』

『地形的に抜け道はないか探しきれん。正面だろうな』

『とすれば都合5機のギプロベルデ兵を閉所で真正面から相手する羽目になるわけですが』

『そこだな、ネックは』

 

 リグが唸る。戦術という概念を得たガーディナにとってギプロベルデ鎧化兵は無条件の恐怖の対象ではなくなったわけだが、彼我の強点弱点が明確になったところで敵の強みは変わらない。

 こんなトンネルで正面から真面目に撃ち合って勝てる相手ではないことは全員が理解していた。

 

『あの、意見具申よろしいですか?』

『言ってみろ』

 

 おずおずと手を挙げるカルラドに、リグは発言を許す。そして述べられた提案に対する反応はそれぞれ別れた。

 妙案だと賛成した者もいれば、本当にできるのか懐疑的な者もいる。リグは前者だ。

 

『どうでしょう?』

『採用だが一捻り加えよう』

 

 リグは頭の中でイメージを構築して、弱点を洗い出しては対策を案出してイメージを修正していく。

 2秒後には、リグは隊員達に指示を出し始めていた。

 

『カイ、グスタ、フカールは私に続け。クスイは後方警戒。

 ロペは蛍光灯を狙撃しろ、ペーネはロペをカバー。

 ヨス、探照灯準備。合図したら敵を照らせ

 カルラドはさっきの作戦通りに。いけるな?』

『いけます』

『よし。あと全員暗視切っとけ』

 

 必要な指示を出し終えて、リグは配置につく。

 敵がこちらに気付いた様子はない。善は急げ、リグは直ちに作戦を決行した。

 

『よし。アックス、スタート』

『スタート了解』

 

 作戦開始の符丁を流し、部隊が動き始める。暗闇の中からペーネのフォローを受けたロペが狙撃して蛍光灯を破壊、完全な暗闇を作り出す。

 

「うわっなんだ!?」

「狙撃だ!敵襲!」

 

 敵兵は当然狙撃に気付いて戦闘態勢を取る。こんな暗闇に配置されているのだから、敵とて当然暗視装備は備えているだろう。

 実際、敵はHamzMund2のNVG(暗視眼鏡)モードを作動させた。同時に、奥にいた3機もゲートを開いて出てくる。

 

『ヨス、今だ!』

『アイアイサー』

 

 ヨスの重機が探照灯を点灯、敵に浴びせる。出力を上げれば至近距離の肉眼なら失明する代物を、暗視眼鏡を着けた敵に浴びせれば、永久的な視界喪失はまず免れない。

 

「目、目があああっ!?」

「うあああ白い、何も見えない!?」

 

 目を失った敵鎧化兵は5機とも動きを止めた。そしてここからが、カルラドの提案である。

 

『今だカルラド、やっちまえ!』

『はい!』

 

 射撃態勢をとったカルラドのRamdVolcから、()()()()()が射出される。片側2連射、都合4発が敵に向かって飛んだと思えば、眼前で破裂、大量の針をまき散らした。

 ギプロベルデでさえなかなかお目にかかれない大口径弾の火力で飛散した針は敵の鎧殻に深く刺さり、そして互いに共振して装甲を崩壊させる。

 こんな砲弾は他には存在しない。カルラドがこのために今、即席で生成した砲弾だ。

 戦闘型ニンフの大半が生成される弾薬の種類や規格を鎧殻任せにしているが、一部のニンフはこれを意図的に操って、自在に弾種や信管を変えることができる。今の砲弾も、輜重兵であり、弾薬中隊にいたカルラドだからこそなせる芸当だ。

 あとは簡単。リグ達が突入して、薄皮同然の装甲しかないギプロベルデ兵を八つ裂きにすればよい。

 フカールのLMGが火を吹き、グスタのショットガンが敵の顔面を吹っ飛ばす。カイの投擲メスが的確に敵兵を解体し、そしてリグがDRKの一振りで2機の上半身と下半身を分離させた。

 爆発などによって設備を傷付けることなく、速やかに敵を葬る作戦は、至ってスムーズに成功したのである。

 

「残敵なし。進むぞ」

 

 小部屋まで突入して安全を確認し、リグは奥のゲートに張り付く。

 他の隊員もそれに従った。グスタとフカールがポイントマンになって左右に付き、残りは建制順にそれぞれの後ろに控える。

 その時、カイがふとコンテナの中を見た。次いでリグに伝える。

 

「隊長、見てください。白珠です」

「何?」

 

 リグもコンテナを覗く。中身は大量の白珠だった。

 女王がニンフを出産する時に必要とする高密度セル結合体がこの白珠であるわけだが、無論通常のニンフには過ぎた代物である。

 価値は高いので通貨代わりに使われることもある。セルを白珠の形にして資産を備蓄しているのだろうか。

 

「いずれにせよ奥に行けばわかる。カルラド、何か見えるか?」

 

 先程と同じようにカルラドに透視させるリグ。カルラドもセンサを起動して中を覗く。だが今度のカルラドは首を傾げた。

 

「あれ?」

「どうした?」

「いや、敵はいないんですが、その、女王がいっぱいいて……」

「はあ?」

 

 カルラドの報告にリグも思わず間抜けな声を出す。

 女王がいっぱいいる?そんなことがあるはずはない。女王というのは一部の戦闘型ニンフが種子と呼ばれる特殊な存在とまぐわうことで成るものである。そんな数の種子を揃えること自体不可能に近い。

 

「敵はいないんだな?」

「はい、いません」

「よし、真相は入ってみればわかることだ。突入!」

 

 リグの号令一下、グスタが仕掛けたブリーチング用爆薬が爆ぜて部隊の突入が始まる。

 グスタとフカールが先頭に突入して部屋の手前二隅をクリアリングし、続いたリグとカイがその後ろで部屋の中央を見張る。クスイ、ペーネ、ロペ、ヨス、カルラドも続いた。

 

「なんだ……これは……!?」

 

 クリアリング自体は2秒もかからなかったが、リグ達は部屋の中にある物体、というか物体()から目を離すことができなかった。

 ニンフは女王になると、木という植物のような状態になる。そしてニンフの実を実らせ、実からニンフを出産するのだ。

 

 部屋の中には、まさにその(女王)が大量に並んでいた。

*1
ソードアートオンラインのアレみたいなやつ。




・アルバ
 ギプロベルデ外人部隊指揮官。
 黎明期のナガラにおいて家臣団の一翼を担い、対アーヴド戦で多くの精鋭戦闘型ニンフを槍の錆にしてきたが、戦後の三層会談中に無許可でアルカンド鎧化兵と交戦した容疑をかけられやむなく脱走、以降は傭兵として層を問わず各地を転戦した後、ギプロベルデ外人部隊指揮官として招聘され現在に至る。

機動外肢   :BdomBalgas2
拡張頭環   :HamzMund2
砲架副腕   :SCF05v2 Kuramitsuha
加速翅    :Type13 CF Takama
特技背嚢   :Type13 CF Takama
主腕部武器 壱:YolGanz2
主腕部武器 弐:-----
副腕部武器 右:ML32v5 Cetus
副腕部武器 左:BulgBolg2

顔部:F0012_FOX_FP
後髪:F3158_NYC_BH
前髪:F3158_NYC_FH
素体:ギプロベルデ強化戦闘素体

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