火継ぎから始める青いヤーナム生活 作:不甲斐ない本の虫
反省はしているのでちょっと免罪行ってくる
振りかざされる大剣を盾で受けた不死人は、次の斬撃を見極めて
「シぃッ!!」
気力を振り絞り、不死人は吠える。その勢いのまま、がら空きになった敵の胴体に剣をねじ込んだ。
硬い。そう不死人は感じた。だが、引くわけには行かないと全身全霊を込めて無理矢理剣を押し込んだ。
苦し紛れにか、薪の王が不死人の頭を兜ごと握り潰さんと掴む。
「――――!!」
「がっ?!負けて、たま、るかァ!!」
そこからは意地の比べ合いだった。不死人の剣が命に届くのが先か、薪の王が兜を握り潰すのが先かの。勝敗を分けるものは、不死人が此処に至るまでに積み重ねて来たものが神たる薪の王に届くかどうか。
『――――ワッハッハ!!』
暫くして、不死人の手から力が抜け、剣を手放して地面に膝を付く。同時に薪の王も不死人の頭を離し、始まりの火の炉に静寂が満ちた。
――ドサリ、と灰の上にものが落ちた音が響いた。薪の王の身体がソウルになって解けていく過程で、刺さっていた直剣が地面に落ちたのだ。そうして、最後に残っていたのは不死人だった。
「勝った・・・・・のか」
直剣を拾い、不死人は呆然と呟く。達成感は感じず、妙な寂しさが残った。だが、彼は遂に成し遂げたのだ。
始まりの火の炉。王のソウルを器に捧げることで辿り着く此処は、不死の使命の終着点にして、最後の試練。
薪の王は朽ちてなお力強かった。人と比べて大柄の体躯は巌の様に硬く、その手に持つ炎を纏った大剣の猛攻はエスト瓶を呷る事を許さない。
何か釦を掛け間違えたならば
「あぁ――友よ。私は・・・・・成し遂げたぞ」
友とは、一体誰だったか。人間性をとうに失くした不死人には思い出せなかった。だが、何故か口に付いた様に言葉を紡いだ。
「・・・・・火を、継がなければ」
そして不死人は始まりの火の炉の中心に向かう。
火継ぎ、不死の使命。薪の王に代わり、己を薪として消え掛けた火を再び燃え上がらせること。
薪の王を倒した時に流れ込んで来たソウルで、不死人は火継ぎのやり方を理解していた。
彼は一歩一歩、踏み締める様に始まりの火の炉の中心に向かう。頭の中には次々とロー▓▓ンで出会った者達の顔が薄ぼんやりと浮かんでは、思い出せず消えていく。
不死人は死に過ぎたのだろう。もう、自身の名前や、出自すらも思い出す事は叶わない。
「――火よ」
中心に辿り着いた不死人は、片膝を付き、片手を掲げ、火を望んだ。まるで不死人達が篝火に人間性を捧げる様に。
すると、不死人の掲げた手から火の粉が散り始め、次第に全身から強い火を放ち始めた。
「ぐぅ・・・・・が、あああああああああああああああああ!!!!」
燃える、燃える、燃える。
不死人はこれまで感じたことの無い様な、魂を燃やされるかの様な激痛に膝を付く。
いや、とうに足など燃え尽きていた。燃えているのは不死人の魂そのもの。そして、
永遠に等しい時間が過ぎ、不死人はもはや不死人では無く、唯の燃料と化していた。人間性も、記憶も、何もかもを火に焚べてしまった。
だが。
――・・・・・く、はは・・・・・ワッハッハッハ!!
不死人は笑った。
燃やされることで、友の言葉を思い出したが故に。
――ソラール!!
それが、焚べられた薪が人で在れた、最後の言葉だった。
―――――?
何かが、灰と成った魂を呼ぶ。
焚べられてから無限に等しい時間を経た燃え殻に意思などは残っておらず、己が何者だったかもわからない。故に、その呼び声に何も応えなかった。
―――。――!!
呼び声は灰の沈黙を肯定と捉えた。はたしてそれは灰にとって良い事だったのか、それとも悪い事だったのか。
上機嫌になった呼び声は彼方から手を伸ばし、始まりの火の炉にあった灰を掬い取った。
そして呼び声は灰に命を
呼び声は退屈を紛らわせそうだと歓喜した。
そうして、捻れた悪夢が始まる。