地球は、ジリジリしながらその時を待っていた。
ファンタジーアースとは既に通信ができており、連絡は取れていた。
ハッキング防御魔法によって、地球のネットワークは無事で、あくまで地球からファンタジーアースに衛星経由で送った情報しか届いていない。
地球は必死に創造主周りの事を隠し、出来うる限り話し合いを遅らせていた。
大体状況がわかってきたが、犠牲は大きかった。
精霊階級は中国の白白が転生、ドイツのテオが雲隠れしており、ロシアのエーリャが厳重に保護。神階級のレオンも保護されたものの、事件に何度か巻き込まれたり人類との信頼関係は低いと言わざるを得ない。
そして、ついにその時が訪れた。
待ちに待った守秘義務解禁、チート配布の時間である。
チートが無事配られて大喜びするサウザンド。配られなくて崩れ落ちるサウザンド。
そして始まる暴露合戦。
さりげに増える惑星。地球はパニックに陥った。
小さな部屋にテッドを控えさせ、自主的にほぼ監禁状態だったレオナルドは、時が来るとまずチートを確認した。
驚きはない。二回目の報酬は、持っていたものの返還だからだ。
強いて言えば、無事配布されてホッとした。
レオナルドは早速、時が来たと伝える。
サラが部屋へと入ってきた。
「レオ……」
「大丈夫だよ、サラ。これでようやく話せる。テッドもありがとう」
「おめでとうございます。創造主様」
「レオ、惑星増えたって」
「は?」
そうして、レオは走って会議室へと向かった。
会議室のモニターには、惑星が三つ。ファンタジーアースと、見知らぬ惑星が二つ。レオはすぐに、サーバーの事を思い出した。
「嘘だよね?」
「残念ながら事実だ。さて、レオナルドくん。作戦会議を始めよう。君の友人のエーリャもテレビ電話で繋がっているし、今、こちらに向かっている所だ」
大統領が、青ざめながらも厳かに告げた。
外交使節団はもう来ちゃうのである。
そして、ハッキング魔法防御膜の中に入ってしまったら、もうメカリアの独壇場だ。地球のありとあらゆるデータは解析されて、全てが詳らかになってしまうだろう。対策の時間はない。
レオナルドは、一つ息を吐いて告げた。
「あの惑星は、おそらく僕が作ったのと、アッシュが作ったものです。アッシュがあれからどうしたかはわからないですが、あの惑星……そうですね。緑と青に輝いているから、オパール星とでも呼びましょうか。オパール星は人間は配置してません。ひとまず、考慮しなくていいでしょう」
「なるほど。ならば、建造物っぽいものがある彼方がアッシュ星という事だね」
「そうです」
レオナルドは重々しく頷いた。
「ファンタジーアースとはどう交渉すべきだと思う?」
「メカリアは機械と親和性があります。ハッキング防御魔法を抜けて仕舞えば、何も隠せないでしょう」
「は?」
「ネット回線は全て掌握されるでしょう。全てばれるのですから、正直に応対するしかありません」
「何か方法はないのか。支配されてしまうのか?」
「それはさせません。僕のテッドは優秀ですしね」
「創造主様のご意志のままに」
「エーリャ、君はどう思う?」
大統領に問われて、政府に保護されてずっと口を噤んでいた冷たい美貌の男、エーリャは重々しく口を開いた。
『酒だけが楽しみのおっさんにそんな難しい事がわかると思っているのか!? ロシア政府の命令通りに禁酒して1年間黙ってたし、チート内容の報告と物資の献上はするがそれ以上の事はしないしできんぞ!』
見た目は冷たい美貌の男だったが、エーリャはウィスキーと妖精とペットの犬をこよなく愛する平和な木こりのおっさんである。ただし腕っぷしは強い。
「まあ一般人だしね、僕ら。そうも言ってられないようだし、上司の人と一緒に頑張ろう?」
『酒は、酒は出るのか!? もう限界だ! なんで私は誘拐された被害者なのにどいつもこいつも私を責めるんだ……』
「ウィスキーはいくらでもプレゼントしよう。地球の為にどうか力を貸してくれ」
『ロシアとしても全面的に協力する。ひとまず、配布された物資の聞き取り調査を行う』
エーリャの上司さんが横から告げた。
「僕はエーリャほど全てを預けるつもりはないかな。僕には命を生み出した責務がある。この出会いをできるだけソフトランディングさせたい」
缶詰は今後も続く予定である。可哀想なエーリャ。
こうしている間にも、反論できない状態でフルボッコにされ、今解き放たれたサウザンドの訴えはネット上に溢れていった。
そう、メカリアの読み取れるネット上に、全ての事情がぶちまけられていったのだ。