サウザンド   作:かりん2022

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神:レオン1

 レオナルドはうたた寝から目を覚ました。

 

「……僕の家?」

 

 ガタっと立ち上がる。

 幼い体。目の前にはおやつの皿。

 時計を見る。日付はあの日のまま。

 長い、永い夢だった。やけにはっきりとしていた。

 

「夢……?」

『惑星ファンタジーアース製作実験にご協力いただき、ありがとうございました』

「ひゃっ」

 

 レオナルドは飛び上がった。

 

『初回報酬支払いにつき、ステータスを解放します』

『ステータスオープンと唱えてください』

「ステータスオープン……?」

 

 青い画面が広がり、レオナルドは慌ててそれを引っ込めた。

 やり方は夢の中で学んでいた。

 

「レオ、どうしたの」

「寝ぼけちゃった」

 

 10年ぶりに聴く、ママの優しい声。

 感情が抑えきれなくなって、レオナルドは泣いてしまった。

 

「どうしたの?」

「怖い夢見た」

 

 ママは台所にやってきて、優しく抱きしめてくれた。

 

 10年以上。10年以上だ。

 

 仲間達とゲームを作り続けた日々。

 

 アッシュ。

 

 白白。

 

 テオ。

 

 エーリャ。

 

 999人の仲間。

 

 全部、夢とは思えなかった。

 

「どんな夢を見たの」

「忘れちゃった」

 

 レオナルドはぎゅっとママに抱きつくと、部屋に行くと告げた。

 部屋に鍵を掛けて、レオナルドは懐かしい部屋で、深く息を吐く。

 

「……。ステータスオープン」

 

 ぽん、と出る青い画面。

 

 やっぱり。

 

 全部、本当だった。

 

 ◇

 

 翌日。

 学校へ向かう。友達が駆け寄ってくる。

 

「レオ!」

「宿題やった?」

「もちろん」

 

 全力で10年前を思い出しながら部屋や鞄を漁り、宿題をした。

 なぜか攫われる前を鮮明に思い出せたけど、それでもドキドキしながら友達の顔を必死で思い出していた。

 幸い、目の前のこの名前も顔もわかる。よかった。

 

 普通だ。

 

 世界は何も変わっていない。

 

 なのに。

 

 自分だけが違う。

 

 ポケットには誰にも見えないアイテムボックス。

 

 頭の中には創造魔法。

 

 そして。

 

 神という階級。

 

「……」

 

 こんなの、誰にも相談できない。

 

 ◇

 

 放課後。

 

 レオンは部屋へ閉じこもった。

 

「さて」

 

 改めて画面を開く。

 

「アイテムボックス」

 

 報酬を確認する。

 

 ポイント。

 

 高級触媒。

 

 ポーション。

 

 全部ある。

 

「本当に貰えた」

 

 ゲームの戦利品。

 

 いや。

 

 もうゲームじゃない。

 

 現実で使える。

 

 その重さが急に怖くなった。

 

 ◇

 

「ショップ」

 

 試しに開く。

 

 プレオープン。

 

 まだ殆ど何も買えない。

 

「一年後」

 

 運営はそう言っていた。

 契約書にも本番環境と書かれていた。あれは何だろう。

 

 ゲーム会社を名乗ってはいたけど、あれは違った。

 千人の意識を攫い、10年労働させ、一瞬で元の時間に戻し、現実でステータスオープンを可能とする。そんなの人間にできるわけがない。

 逆らうのは愚策だと、子供のレオナルドでもわかる。

 あの10年の夢について黙っているのは確定事項だ。

 

「あれはいったい何だったんだろう」

 

 考えても答えは出なかった。

 

 ◇

 

 窓の外を見る。

 

 夕日が綺麗だった。

 

 アッシュも今頃、この夕日を見ているのだろうか。

 

 いや。

 

 まだゲームをしているのかもしれない。

 レオンが帰還を選んだ時、アッシュは残れる限り残ると言っていた。

 

 帰りたくないと言っていたけど、ちゃんと帰れただろうか。

 

 それだけが心配だった。

 

 アッシュだけではない。テオ、白白、エーリャ……。他にも多くの友人ができた。

 

「……会いたいな」

 

 言葉が自然に漏れた。

 

 ゲームの中では毎日のように話していた。

 

 十年以上。

 

 家族より長く一緒にいた。

 

 なのに。

 

 もう連絡する方法はない。

 

 ◇

 

 レオナルドは高級触媒を手に取った。

 

 金色に光る結晶。

 

「創造魔法……」

 

 今なら何でも作れる。

 

 強いヒーロー。

 

 巨大ロボット。

 

 宇宙船。

 

 ゲームの頃なら迷わず作っていた。

 

 でも。

 

「まだだ」

 

 静かにアイテムボックスへ戻す。

 

「今はまだ使わない」

 

 世界がどうなるか分からない。

 

 運営が言っていた本番環境も始まっていない。

 

 焦って動いて失敗したら取り返しがつかない。

 

 そもそも、今のレオナルドに力なんて必要ない。

 

 ずっと力が必要になる場面が来なければいい。

 

「待とう」

 

 レオンはそう決めた。

 

 その判断が正しかったのか。

 

 間違っていたのか。

 

 それを知るのは、一年後。

 

 世界が本番環境へ移行した、その日だった。




マシュマロ
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