机に突っ伏していた花は目を覚ました。
体が固まってバキバキだ。
「うーん」
体を伸ばす。変な夢を見た。あまりに長い夢で、起きたばかりなのに疲れてしまっている。モニターには真っ白な原稿。
締め切りまで、あと三日。時刻は6時。8時には仕事だ。絶望である。
「現実逃避したい」
そう呟いた瞬間だった。
『惑星ファンタジーアース製作実験にご協力いただき、ありがとうございました』
「は?」
『初回報酬支払いにつき、ステータスを解放します』
『ステータスオープンと唱えてください』
頭の中へ聞き覚えのある声が響く。
慌てて周囲を見回す。
誰もいない。
「ステータスオープン」
青い画面が現れた。
「うわ、本当にある……」
夢じゃなかった。
あの十年は、本当に存在していた。
◇
「クリエイター……」
画面を開く。
アイテムボックス。
マイエリア。
ショップ。
ノート。
全部そのままだ。
「さて」
花は腕を組む。
「問題です」
もし今、この能力を使ったら、人生はどう変わるだろう。
宝くじ以上に人生狂わされそう……。
◇
まず思い浮かんだのは、お金だった。
「IP。実質的なバイト代で商品券」
11,100ポイント。
「多いなぁ」
ゲームの頃なら普通だった。
でも現実だ。
宝石。
貴金属。
ポーション。
これならプレオープンの今でも買えるし、お金になる。
「売れば生活できる」
でも。
「どこで手に入れたの?」
で終わる。
「詰んだ」
◇
次。
「SP。スキルを覚えられる」
45ポイント。
ラインナップは、と。
「ファイア」
「フライ」
「ヒール」
「ゲームかな? ゲームだったわ」
そもそも日常生活で攻撃魔法は要らない。
医師以外が治療したら違法。
人間が空を飛んだら通報。
これも詰み。
◇
「JP。職業を得られる」
16ポイント。
ジョブ。
スキルを取れるようにしたり、必要ポイントを大幅に軽減してくれる。
ラインナップは、と。
「炎術師」
「風術師」
「治癒術師」
「紋章術師」
「モルモット希望かな?」
研究所からのラブコール凄そう。
◇
花はノートを取り出した。
『やりたいこと』
と書く。
一つ目。
『漫画を描きたい』
二つ目。
『生活したい』
三つ目。
『サウザンドに会いたい』
四つ目。
『家族には心配かけたくない』
そこまで書いて、止まった。
「全部ささやかな願いなのに、ポーション一つで爆破されそう」
◇
マイエリアを開く。
扉が現れる。
「マイハウス」
指定してノブを回す。
中は誰もいない家だった。
「懐かしい」
ゲームで何度も家具を配置した家。
今は初期状態だから空っぽだが、夢の中ではそれなりに物持ちだった。
ウィンドウを操作する。
クリエイターが使えるエリアはマイルーム、マイハウス、そして。
「マイファーム」
畑。
果樹園。
牧場。
全部初期状態。
「これだけで生活できそう」
でも。
「固定資産税とかどうなるんだろ」
夢のないことを考えてしまう。
◇
机へ戻る。
ノートへ新しく書く。
『絶対にやらないこと』
一、勢いで創造魔法を使わない。
二、勢いでジョブを買わない。
三、勢いで人を創らない。
書き終えて頷く。
「よし」
ゲームじゃない。
現実だ。
だからこそ。
「まずは仕事。そして原稿をしよう」
花は身支度を整えて仕事へと向かった。
十年遊んだゲームは終わった。
ここから始まるのは。
日常なのだから。
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
返信不要の場合は返信不要と書いておいてください。
https://odaibako.net/u/karin2022v
リクエスト、返信不要の匿名感想はこちらにお願いします。