「綺麗だね!」
「そうだね、綺麗だ……。火矢でもミサイルでもない。一体あの光はなんなんだろうね」
「怖いわ。窓を閉めましょう」
そうして、パパとママは俺を隠すようにして震えていた。
俺が起きると、部屋が綺麗になっていた。両親はずっと起きていたらしい。
何かせずにはいられなかったようで、部屋はピカピカだ。
保育園はしばらくお休みらしい。
パパとママと、お買い物をした。
何気に初めてのお買い物である。そして皆が買い物に押し寄せていた。
有事みたいだな。有事か。
ある日いきなり、日本のすぐ隣にアメリカがあったら、いくら友好国でも普通に怖いもんな。ましてや地球は見知らぬ星である。怖くないはずがない。
国際会議が開かれ、星の防衛をするらしい。
あと、宇宙船を復活させるプロジェクトも始動した。
でもまあ、いつまでも震えてられないので、ゆっくりと日常へ戻っていった。
保育園も復活である。
両親の監視が緩んだので、俺は動いてみる事にした。
守秘義務さえ守ればええやろ。何より、魔法を使ってみたい。
忍術、魔族式魔術、紋章術、錬金術、基礎魔術、創造魔法。
以上が俺の使える可能性のある魔法である。紋章術についてだが、覚えるのに儀式と神具、使うのに特殊な紙と筆、インク、そして知識と技術が必要となる。そりゃ失伝するわ。
忍術は血筋ごとの専門知識が、魔族式魔術はダンジョンコアを必要とする。
これを代々引き継いでいけというのは、無理ゲーだったかもしんない……。
レオンの異能やスーパーパワー、ハッキング魔法は失伝せずにしっかり残っているので、やはりシンプルイズベストという事なのだろう。しょ、少年に負けてる……。
錬金術は道具や素材が必要だし、基礎魔術も習得にはアイテムがいる。
創造魔法は言わずもがな。
そんなわけで、神具は当然、それを補うものとなる。
とりあえず俺は、俺の種族にテコ入れしたい。
忍術大全とか、紋章術を授ける神具とか。ダンジョンコアの実る神樹は危ないので今回は割愛。カオス国の二の舞にする気かって話だし、この国を荒らしたらレオンに殺される。
忍術大全、かなぁ。紋章術はちょっと必要な道具が多すぎる。
チャクラを喰らって、知識を授ける知恵ある本とかどうだろう。
そんな魔物というかアイテムというかは量産していたので勝手はわかっているし。
俺はキラキラした金平糖のような高級触媒を使い、命ある本を作ることにした。
中央に大きなラブラドライトもどきを埋め込んだ本だ。ラブラドライトは潜在能力の解放を意味する、落ち着いた灰色の中にオーロラのような青白い光を閉じ込めた石である。目立たない忍者の、光輝く才能。とってもあっている。
金平糖が混ざり合って光の塊となり、本を形作る。オーロラが本の上でキラキラと輝く。
「お前を才蔵と名付ける」
【承知】
俺は忍術大全に触れる。
忍術の才が本によって解放され、グッと力が吸われる。
バララララララ、とページが捲られていく。いや、ページが生成されていく。
俺はそれで、自分にどんな忍術が使えるか確かめ、ノートに記した。
パパン、結構いい血筋だったんだな。忍術は血が命だからな。
後は、才蔵のことをどう誤魔化すかだが……。
才蔵と相談して、俺はちょっとした演出をする事にした。
保父であるカイは、パワードである。
アメリカンフロンティアの保父さんは、歴戦の勇士尚且つ物腰穏やかなものから選ばれる。子供の力の暴走に対抗し、尚且つ子供達を怯えさせぬ為である。
移民向けとはいえ(これは移民差別という意味ではなく、単純にアメリカンフロンティアの国民は能力の発現率・暴走率が高いので国内の保育園の方が歴戦の勇士が配属される)、カイはかつてそれなりに優秀なヒーローだった。すぐに保父に抜擢されたが。
その研ぎ澄まされた勘が、力の強大さを察知していた。
転入生の子供を迎えにいった一瞬の事だった。
「君は待っていて」
「呼んでる……」
「ああ、呼んでる」
親子はぼんやりと進み出した。
カイと親御さんと子供が駆けつけると、浮かぶ本が光り輝きながら、悠人の手元に降りて来る所だった。
同じクラスの少女、鈴麗、エリーゼ、ルルがなんだなんだと駆け寄る。
「待ちなさい! その本から離れなさい!」
【我が名は才蔵。忍者の秘められし才を詳らかにする、忍者の創造主アッシュの創りし神具。生きた書物。全ての忍者の血を引く者よ、我を手に取り自らを知るがいい。順番にな】
「おおー。なんか吸ってるー」
「キィィィヤァァァアシャベッタァァ!! ま、魔物!? 魔物!!」
大騒ぎの先生を尻目に、本についた宝石が青白く輝き、パラパラパラとページが捲れる。
「なんて書いてあるんですの? カオス語なんて読めませんわ」
「ルルは何が使えるの?」
鈴麗が本を覗き込んで言う。才蔵はテレパシーを使って話すから何国人でも通じるが、文字は日本語なのがネックだったようだ。
「ルルは忍者じゃないでしょー。才蔵、読み上げてー」
【承知。目次。身体強化。身代わりの術、分身の……】
悠人がお願いすると、本はあっさりと承諾した。
そこで、新たに来ていた親御さんが進み出る。
「私が読める。本を貸してくれないだろうか」
「はい」
悠人は素直に忍者な親子に本を渡した。
「こっこれは……! まさしく失伝した祖父殿の忍術! 本物だ!」
「俺もみたい!」
【我に忍者が手を触れる度にチャクラを吸って書き換わるから、その場での回し読みは気をつけた方が良いぞ】
親切に忠告までする生きた本。
このオーラ、この能力、生きている道具であること。
まさしく神具。カイは驚愕した。神具がこんな生徒数の少ない保育園に現れるなど!
「馬鹿な、神具が何故こんなところに!?」
【アッシュ様のテコ入れは雑なのだ。忍術の才ある子の元にとりあえず投げたのであろう】
「「雑!??」」
【私の役目はとにかく忍者に忍術を教えてテコ入れしていく事だ。適切な所へ運ぶのは忍者の血を引く者がするがいい。せっかくだから、この子とそこの子に触りだけ忍術を教えてからの方が良いが……】
「忍術となると、伝統保存センターかな。忍者団体はいくつかありますし」
「それがいいでしょうな」
それから、カイは忙しく手続きをする事になる。
それから、伝統保存センターは満員御礼となったのち、ダンジョン天国となったダンジョン特別地区(元カオス国)の原住民からの要請で才蔵は移送されていった。
さらば、才蔵。とりあえず忍術を習う土壌は整ったからヨシ!
俺がこんな風にまったりと一年をどぶに捨てている時、地球の方は大変な事になっていた。