パパとママが帰ってきた。そして慌ただしく聞いてきた。
「レオ。レオはサウザンドなの? レオンってレオのこと?」
「何それ」
ママはテレビを付けた。
そこでは、少女が赤裸々に暴露していた。
あろう事か、友達の……アッシュの名を名乗って。
アッシュを知る者には、いくらなんでも無理がありすぎた。
それに、アッシュは残ると言っていた。卑劣な乗っ取りだった。
彼女は何を考えてこんな事を?
「ママに全部話して」
「ママ。僕は何も言えない」
僕はそういうしかなかった。
「同時期に半年も眠って目覚めた人なんて、そうはいないのよ、レオ。サウザンドのレオンなんでしょ!? あの惑星について話して。話して!」
「ミリア。レオンがそうだと言うなら、1年間黙ってないと成果給がまるまる吹っ飛ぶ事になる。それが惜しいんじゃないかな。1年間待ってみたら?」
「わかったわ。何も聞かない。でも、一回目の報酬は頂戴」
「ミリア」
「レオンの半年間の入院費がいるのよ! アッシュは世界の為に喋ったのに、レオンはできないの?」
僕は困ってしまった。
そうだ。守秘義務があるから、僕達は反論が出来ない。
反論ができないうちに、世論を作るつもりなのかも知れない。
ただ、そんな簡単に上手くいくのか?
なんにせよ、僕は何も喋るわけにはいかない。こうしてプレイヤーに裏切り者がいるとわかった以上、他のプレイヤーも何をしてくるかわからない。
パパとママを守る為にも、口を噤むしかなかった。
「僕は何も話せないよ、ママ」
「あなたは悪い子よ、レオ!」
「ミリア!」
「学校の時間だ。行かなくちゃ」
僕は誤魔化すように逃げ出した。
そこからはさらなる地獄だった。
「レオン、サウザンドなんだろ」
「レオン、にいちゃんが怪我してさ。サウザンドなら癒せるんだろ」
「レオン、回復薬よこせよ」
アッシュを騙る馬鹿は、一年が過ぎたら罵ってやる。
身の危険すら感じる。不登校になるしかないか。
どうやって両親に相談しようと悶々としていたら、妹のサラが誘拐されかける事件が起きた。驚異の告白から、まだ1日も経っていない。
テッドが守って報告をしてくれたのだが、僕がレオンである事が確定となってしまった。
レオンは急いで帰宅した。
「レオ! やっぱりレオンだったのね。どうしてママに言ってくれなかったの。テッドについて聞かせて」
「レオ! テッドが助けてくれたの。とっても怖かった」
「サラ、無事で良かった。ママ、話せない。話せないんだよ」
「なんでなの!? 成果給が支払われないから? そんなもの!」
そんなものなんかじゃない。この地球を、そしてファンタジーアースを守る為なんだ。
ママはなんでわかってくれないんだろう。
それがとても悲しかった。
マスコミや政府の要人が来ていて、大変な事になった。
「テッドについて話してほしい」
「僕は何も言えない」
「主人が話さない事を話す事はできない」
「そうか……。一年君を保護しよう。代わりに、この契約書にサインをして欲しい」
その契約書は、全ての報酬をアメリカ合衆国に譲るというものだった。僕は失望した。
「そんな契約書にサインは出来ないよ」
「パパとママを救う為だ」
「例え僕達家族の命が掛かっていても」
僕は悲しく答えた。
「その契約書にサインは出来ない」
「それはお金の為?」
「言えない」
僕は悲しく答えた。家族と惑星2個。どちらが大事かは、僕だってわかる。
「また来よう」
そうして、パパが食料を買い込み、テッドが護衛をする。
パパは言った。
「1年間。1年間我慢すればいいんだな」
「あなた!」
「レオを信じよう。一年の守秘義務は、絶対に守らなければいけないんだろう?」
「僕は言えないんだ」
「ママ、レオはお金の為に家族を切り捨てるような子じゃない。きっと重大な秘密があるんだ。アッシュの言うことを全て信じるわけにはいかない」
「でも!」
「アッシュが本当にリーダーなら、何故1000人もいる仲間達が呼応しない? それに、アッシュの出す情報はファンタジーアースの全てを作ったにしては少なすぎるし曖昧なんだ。それに、リーダーなら1000人全て知っているべきだよ。アッシュが何人の名前を言った? 100人にもいかないじゃないか。彼女は嘘をついていて、999人が沈黙を守るだけの何かがあるんだ」
「お金に目が眩んだだけかも」
「いいじゃないか。そんな途方もない金額が全員に配られるなら、レオにも配られるって事だから」
「パパ……」
僕はパパをぎゅうっと抱きしめた。涙が溢れた。
パパとママは仕事を辞めて、テッドに守られながら僕達は引きこもった。
家に閉じこもっていると、サウザンドの行方不明者や死者のニュースが飛び込んできた。
アッシュの偽物のせいで、追い詰められたんだ。
それで、転移や転生に掛けたのだろう。
人類対サウザンドの風潮が出来始めている。
これは不味かった。転生を繰り返すサウザンドが人類を憎むことになる損失は計り知れない。
だが何も言えないサウザンドは反論出来ない。
アッシュが作る世論に、何の対抗もできなかった。
僕が目覚めてから1ヶ月が経った頃、サウザンドに対する保護の大統領令が発令された。素早い決断。
だが、事態はそれ以上に加速していた。
その頃にはほとんどのサウザンドが行方不明になる、死ぬ、そして報酬受け取りの権利を失うなどしていたのだ。