新情報に世界が慌てていた。
転生を繰り返すという信じ難い情報。
最下級でありながら、人智を超えた報酬。
そして、青年実業家の命を賭した訴え。
転生チケットと転移チケットという恐るべき利益と、サウザンドに敵対する愚。
サウザンドの被害が大きかったのもあり、直ぐに各国が保護に動く事となった。
また、あまりの被害に、同じサウザンド、特に本当にリーダー的存在であり少年だったレオを気遣う者や、強硬に問い詰められて面倒くさくなった者など、報酬を諦めて情報を提供する事となった。
だが、このような経緯で信頼関係など生まれるはずもない。
ファンタジーアースに様々な物を設置するという形で惑星を作っていた事。
その、各自所持していた設置物が二回目の報酬として払われること。
不可思議な道具や建物、人物など様々なものがある事。
階級の数やそれぞれの人数。実際には半年ではなく、体感時間で十年は働いていたこと。
自分達の得るはずだった物がいかに大きいか。レオの財産がいかに多く、絶対に保護すべきである事。本当のアッシュは帰らない事を選んだ為、故にレオが希望であること。
何があるかわからず、ファンタジーアースも敵対するかもしれない以上、レオを筆頭といた階級の高い者の第二回、第三回のアイテムは絶対に必要なこと。レオがハッキング魔法で地球を守っていた可能性が高いこと。
相談ができず、それぞれがそれぞれの判断で動いた為、結果的に半分近くのゲストとわずかな職人が報酬を諦める事になり、当然ながら偽アッシュは彼らに恨まれた。
十年もあれば、ゲストでも真面目にやれば大量のアイテムを持てていたから、当たり前の事である。だが、唆した偽アッシュだけでなく、それに踊らされて直接サウザンドを攻撃した人類もまた、恨まれていた。今更保護だと言い出しても、下心は見え見えだし、感謝などするはずもない。
敵よりは、まだ見ぬ他人を気遣うのは当然のこと。無理に言わされた者達は、ファンタジーアース自体の情報を意図的にはぐらかせた。当然、転移・転生チケットも譲ったりはしない。
さて、とあるボロアパート。
幸運というべきか、不幸というべきか、半年間部屋で目覚めなかったにも関わらず、誰にも気づいてもらえなかった日本のフリーターの女(漫画家志望)は、その狂騒に巻き込まれる事なく、ほえーとニュースを眺めるだけで済んでいた。
ちなみに彼女はクリエイターである。ハンドルネームを0846(おやしろ)。名を綾瀬 花である。
名前の由来は簡単だ。麗夜x四郎である。有名漫画のカップリングだった。薔薇王国はこいつの所業である。
彼女のように運のいいサウザンドも、何人かはいた。
また、日本は無事なサウザンドの率が多く、もとよりサウザンドも多かった。
なお、アメリカはサウザンドが多いが、無事な率は低かったりする。
花は仕送りでお金を口座に振り込んでくれた両親に感謝した。
おかげでギリギリ家賃が延滞せずに引き落ち続け、無事に半年を過ごせたのだから。
花はひとまず、状況を注視しながら自分の手札を確認した。
マイハウスとマイファームがあるので、ぶっちゃけ後は住所さえあれば問題なく生活できる。自給自足って奴だ。
アイテムポイントが豊富なので、必要な物も店から買えばいい。
だが、税金と住所の為の家賃は支払わねばならない。
後10ヶ月。10ヶ月話さなければそれでいいのだ。
花はショップを確認し、買い物を行い、深呼吸した後、母親に電話した。
「あ、ママー? 私、失恋した。後、子供出来た。とりあえず帰るね」
花の買った物。それはマザーというジョブであり、妊娠に特化して優れたジョブ。
そして、人間の子供を妊娠させる事ができる魔法具(消耗品)を二つである。
これらとクリエイターという権能を駆使すると、麗夜と四郎そっくりの子供を作る事ができるのだ! ちなみにやおい穴完備である。素晴らしい。
ばーちゃんも曽孫を見たがってたし、いい事したな。イケメンのひ孫だ嬉しかろう?
一年近く両親に迷惑を掛けながら、マイハウスやマイファームの準備をして、生まれたら本性を表せばいいだろう。
何、持っていたアイテムさえ戻れば護衛用のペットも作れるし、換金アイテムも手に入る。
ドヤァ、と軽はずみに命を創造した花は、本物の命の育て方の大変さをまだ知らない。