ボスとジョルノの幻想訪問記   作:フリッカリッカ

1 / 53
「荒木先生、ZUN神主、お許し下さい!」
この作品は東方プロジェクトとジョジョの奇妙な冒険の二次創作です。勝って解釈 妄想 申し訳程度の百合もしくは薔薇成分 ディアボロとジョルノが主人公 スタンドのパワーを全開!を含みます。それでも読むというのですね。覚悟はいいか?俺は出来てる。


プロローグ

ボスとジョルノの幻想訪問記 1

 

 2012年某日! 世界は一巡し、歴史は繰り返すッ!

 だが、『彼』だけは一巡していなかった! 一巡とは一度世界は閉幕を迎え、そして新たに始まったということ。そう、全ての生命はその活動を停止させ、再び蘇ったのである!

 ――――だがそれも、しっかりと終幕を迎えたものだけだった。もう一度、繰り返すようだが、『彼』だけは一巡していなかったのだ! それはつまり、『彼』には終幕が、終焉が、幕引きがやってこなかったのである!

 

 

――――――――――

 

 男は目を覚ますと、周囲の確認作業に移る。地面に横たえている彼はまず、頬に触れる肌触りで地面が『塗装されたコンクリート』であることが分かった。瞬時にここは町中であると判断する。すぐに起き上がり、周辺に人間がいないか、危険が存在しないか確認する。

「・・・・・・ッ!!」

 彼は左を向き、そして右を向いた直後に、危険物を発見した。息を付くまもなく、自身に起こっている現象を整理し、痛みを最小限に押さえられる方法を思案しようと思ったが。――出来ない、分からない。

「・・・・・・畜生ッがぁあああああ!!!!」

 彼の視界に移ったのは『幼女』。茶色の髪をして、コカ・コーラのカップを手に持ってこちらを凝視しているだけの、何の変哲もない『幼女』だった。

 だが、彼には幼女は死神にしか映らない。彼は思った。

 いつもだ、いつも、こうなってしまう。

 次の死因が分かる前に幼女を発見してしまうと、予期しない死因が彼に無理矢理上書きされる。普通ならば予測できる死因も、幼女が現れると全く違うモノになってしまう。

 彼の死因は毎回様々で普通は予測などつけられないものだが、100、200、1000、10000と数を数えるうちに大体ではあるが『あたり』をつけられるようになっていた。

 町中なら、偶発的な事故や通り魔など。

 水辺なら、大抵が溺死。

 荒原なら、野生動物による搾取が主。

 山中なら、滑落と転倒による全身の強打だろう。

 飛行機や車ならば、必ず爆発事故だ。

 他にも、様々なパターンがあり、しかし、どれも死を避けられないのが共通事項である。

 パターンを知っているなら対策は立てやすい――――とは言ってもどちらにせよ死んでしまうのだが、痛みを最小限に押さえることは可能だ。

 だが。

「くそッ、やめろ! 近付いてくるな、俺を、見るなッ・・・・・・」

 『幼女』が目の前に現れるときだけ、彼は深い絶望の中、異常な苦しみを味わいながらゆっくりと死んでいくのだ。

「・・・・・・オジサン、大丈夫?」

 幼女は彼の声には全く耳を貸そうとはせず、不用心に近寄ってくる。酷く狼狽する彼を心配そうに見つめ、その距離を詰めてきている。

「近付くなッ! あああ、ヤメロ! く、あぁ、あッ! 俺の――、俺のそばに近寄るなぁぁぁああーーーー!!!!」

 彼が息を切らし、とてつもない脂汗を額に浮かばせて全力でそう叫んだ後、幼女の口角がひきつった。

「・・・・・・コ・・・・・・ロ・・・・・・セ・・・・・・」

 その幼女の声が放たれた瞬間、幼女の周りにいる人間、動物を問わず、周りの物体全てが彼を一斉に攻撃する――――!!

 男は抵抗を何一つできずに、全身を殴られ、切り刻まれ、砕かれる。地下から何故か電動ドリルが姿を現し彼の左腕をぐちゃぐちゃにかき回し切断する。突然落下してきた看板が彼の右足を綺麗に毟り取る。その間も彼は意識を残し、痛覚を残し、絶望的な痛みを受けながら蹂躙されていた。

 ――――幼女だけだ。幼女だけが、不明の死因になる。一体何なんだ? ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの能力と何か関係があるのか? こいつらは――俺を襲い、殺しているこのサラリーマンたちは俺が死んだ後どうなるんだ? それとも、俺にも何か原因が存在するのだろうか?

 理解できない、これだけは――――。

 

 ――――だがッ! 運命は変えられる!

 

 彼が死に絶える正にその直前だった! 彼は気が付いた、いつの間にか自分が横たわる地面がコンクリートではなく、土に変わっていることに! 更に、周囲の町並みはいつの間にか失われ、大地は割れていく!

 

「な、何だこれは・・・・・・!? 今まで、こんなことは・・・・・・!!」

 

 彼は目の前で起こる自然現象の異常な光景にしばらく気を取られていた! 太陽が早回しのように昇っては沈み、昇っては沈みを繰り返し、その速度は乗加算的に加速していく。いつの間にか世界が寿命間際の勉強机の蛍光灯のように、連続的に明暗を繰り返すようになった。そして、再び大地が割れて自分の周囲にいた人間たちがどこかに消えた。落ちたのだ、割れた地面の下に。

「――――ハァッ・・・・・・ハァッ・・・・・・!!」

 まるで、この地球が終焉に向かっているようだった。そして彼は目にする――――。

「そんな・・・・・・バカなッ!?」

 絶句し、眼前に広がる光を見つめていた。

 

 ――――あれは・・・・・・人影・・・・・・?

 

 そして地球は『彼』のみを残して、終焉を迎えた。

 

 

――――――――――――

 

 目を覚ますと、彼――ディアボロは多くの花に囲まれて仰向けに寝ていた。いつもの癖で今がどこで、どんな状況かを確認する。

 ディアボロはバッと上体を起こし、周囲を見渡す。辺りは鉢や花壇などに様々な花が植えられており、その多くが綺麗な赤色をしていた。手入れが行き届いているようで、ここがどこかの庭園のような場所であると理解した。

 そして背後を確認すると、彼は今まで見たことも聞いたこともないような荘厳で壮観な建物を目にする。

「・・・・・・紅い屋敷・・・・・・」

 それは建物全体が燃えるような情熱的な赤で塗りつぶされた西洋風の館だった。

(・・・・・・周囲に人間はいない。ということは、死因として上げられるのは植物の棘で動脈を切り失血死か、植物の毒で死亡・・・・・・というくらいか)

 ディアボロは庭園の花に目を凝らすと、茎の部分に棘の付いたバラを発見する。

「ふん・・・・・・、今回は死ぬまでに時間がありそうだな。さて・・・・・・」

 ディアボロは背後の屋敷を見据えるが、今はどうしてももう一つ。一つ前の死について考えていた。

(あれは・・・・・・一体何だったんだ? 俺は死んだのか? いや、あのとき、俺は最後たった一人だった。周囲の大地は消滅し、空はめまぐるしく昼夜が入れ替わる。何というか、先に世界が死んでしまったように感じた。そして、そして何より、俺が最後に見たあの巨大な人影は・・・・・・)

 ディアボロは空を見上げて思案する。空は先ほどのように変化は起きていない。実に爽快な晴れ空だ。

「考えていても仕方がない。いずれ迫り来る死の運命に備えなければ・・・・・・」

 空を見上げるのを止めて彼は回れ右をする。かなり巨大な建物だ。

 足下を見る。少なくとも、ディアボロの危険になりそうな類の毒虫などはいない。彼は細心の注意を払い、植物に全く触れることなく、慎重に、焦らず、ゆっくりと屋敷に近付いていった。

 しかし、広い庭園だ。これほどの敷地の庭園なのにどの植物も手入れが完全に行き届いている。庭師が5人は必要だろう。この屋敷の人間は随分な金持ちだろうな。と、ディアボロは思った。

「・・・・・・何だ? 何も起きないな・・・・・・」

 目を覚ましてから5分以上経過しているのに、彼に迫り来る死の運命は一向に姿を現さない。今までこんなことは一度も無かったのだ。必ず、長くとも3分以内にはディアボロは絶命していた。一日240回以上のペースで死に続けているのである。

(そういえば、さっきの死――――。あれも長かったな・・・・・・。体感で5分程度だったか?)

 何かがおかしい。何かが、少しではあるが変わっている――。彼は周囲を警戒しつつ、あることを思い出した。

(最近にも、こんなことがあったな・・・・・・。ホテル、DISC、・・・・・・再び絶頂に返り咲いたと思ったら夢だったとは・・・・・・。夢の中でも1000回は死んだがな)

 目が覚めても全く時間は進んでいなかった。本当にあの不思議な空間は彼の夢だったのである。

「・・・・・・今回のは、少しアレとは毛色が違うな」

 密室空間や迷路など、そういう類ではなく人も滅多にいない。ディアボロは屋敷を見上げた。

 

 植物に血管をぶち切られないように注意しつつディアボロは館の玄関にたどり着いた。

 既に彼が目を覚ましてから10分が経過していた。

「さて・・・・・・どうしたものか」

 扉の周りに罠が仕掛けられていないか注意しつつ、ドアノブに手をかける。何も起きないのでドアノブを回すとカチャ・・・・・・と小さく音を立てて回った。

「・・・・・・!! 鍵がかかっていないのか? もしかすると、ここには誰も住んでいないんじゃあないか?」

 ボスは扉を開けるか開けまいか迷っていたが、どうせすぐに死に続ける命だ。『変化』には積極的に臨まなければ、と覚悟し中に入る。

 ギギギギギッ・・・・・・

 扉はどこか壊れそうな軋みを上げて小さく開いた。

「・・・・・・進入者、ね」

「お手柄よ、咲夜。たまには昼に起きてみるものだわ」

 ディアボロが中を覗いた瞬間、背後で声がした。

「・・・・・・なッ!? 何ィィィイイイーーーーーーー!!!???」

 振り向くといつの間にかナイフを構え、彼を睨むメイド服を着た女と、日傘を持ちにこやかな笑顔を浮かべる幼女――――その背中にはなぜかコウモリのような羽がある――――が立っていた。

(な、いつの間に!? 音とか気配が全く感じられなかった!? いや、そんなことよりも・・・・・・マズイッ!!)

 彼にとって、目の前の人間がナイフを構え、今にも進入者を排除しようとしていることは注目の範疇になかった。また、超能力とか超スピードとかそんなちゃちなもんじゃ断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗のような能力を持っていることも度外視だ。

 彼が真っ先に注目したのは、その隣に『幼女』がいる状況である。

「さて、いくつか質問を・・・・・・「待てッ! やめろ!!」

「え?」

 メイド服を着た少女が口を開いた瞬間、怪しいピンク色の髪をした中年の男性はそれを遮る。

「『2度』だと・・・・・・!? 一日に『2度』も、そして『連続』だとッ!! クソッ!! とんだ災難だ!! 折角『変化』が起きたのに、もうここで俺は死んでしまうのか・・・・・・??」

 ディアボロは『幼女』が目の前にいることで気が動転していた。何をされるか分からない。全く予想不可能。すぐに死ぬことだけは確定事項。食われるかもしれない。少なくとも、予想できる『ナイフで刺されて死亡』だけはあり得ないだろう。・・・・・・もっと、別の何かが起こるはずだ。数十秒、数秒後、数瞬後に!!

「俺は・・・・・・次は、どうなるんだ・・・・・・?? 予想が、予知ができない・・・・・・!!」

 訳の分からないことを口走る彼にコウモリの羽を生やした幼女とメイド服の女は眉を寄せて怪訝そうな顔をする。

「・・・・・・どうしたのかしら、咲夜」

「え、いや・・・・・・私にも分かりません・・・・・・」

「なんかコイツ様子がおかしいわ。咲夜」

 幼女が顎でメイド女を使う。メイドの方はしぶしぶそれに従い、ディアボロに話しかけた。

「ちょっと、いいかしら」

「うるさい! 近寄るな!! ウゥーー・・・・・・クソッ! 嫌だ、死にたくない・・・・・・『変化』だ・・・・・・折角起きた千載一遇の『変化』なんだッ!! これを逃したら、二度とないかもしれないんだッ!!!」

 右手を前に出して玄関に寄りかかり謎の弁明をする彼にメイド服の女――――十六夜咲夜は静かに溜息をついた。

「・・・・・・春は変な虫が沸くものね。気でも違っているのかしら? まぁ死にたくはないのでしょうけど、ご愁傷様ね。あなたは私のナイフに殺されるわ」

 と、咲夜がナイフを更に数十本取り出し眼前のマヌケな浮浪者を殺そうとしたとき。

「・・・・・・今、ナイフで殺す・・・・・・と言ったか?」

 ふと、気が付いたときにはディアボロは冷静さを取り戻していた。

「貴様は今、俺のことを『ナイフ』で殺すと言ったのか?」

 瞬間、咲夜は原因不明の寒気に襲われた。背筋がゾクっとし、ナイフを握る手に冷や汗がにじみ出る。

「・・・・・・だったらどうしたと言うの?? あなたは結局死ぬのよ、依然変わりなく」

 咲夜はナイフを構えたまま答えるが、男の不適な態度は変わらない。

「・・・・・・やってみろ。『幼女』出現の時は、予想できる死は訪れない・・・・・・」

 カチッ。

 咲夜が懐中時計を起動させる。

 

 ドーーーーーz______ン!!

 

「止まった時の中は『私の世界』。他人に一切干渉できないから攻撃はできないけど・・・・・」

 咲夜はDIOが承太郎に対してやった時止め&ナイフコンボを展開する。

「十分かしら・・・・・・量はこの程度で・・・・・・」

 扉を背にして全く動かないディアボロに咲夜は20を越えるナイフを投げつける。しかし、時が止まっているためナイフはディアボロには刺さらず、数センチ手前でピタリと停止した。

「そして時は動き出す・・・・・・」

 

「――――はッ!? 何ぃッ!?」

 ディアボロが気が付いたときには自分の目の前に数え切れないほどのナイフが飛んできていた!!

 な、何だこの女は!? 一体いつ、どうやって攻撃したんだ!? まさかこの女も『スタンド使い』なのか・・・・・・?

「回避せねばッ! 『キング・クリム・・・・・・』・・・・・・ッ!?」

 その時、ディアボロは余りに焦っていたためかスタンドを出せないことを忘れていた。焦りと動揺、そして「しまった」という精神的不安が体の行動に表れたのか。

 彼はナイフが刺さる前に足をもつれさせて、後ろに倒れていった。

「う、おおおおおおッ!?」

 倒れることによってナイフは顔には刺さらなかったが、彼は後頭部を打ちつけた。

 

 ドグシャァッ!!

 

 運の悪いことに、ディアボロの後頭部は勢いよくドアノブに突き刺さった。そして、ドアノブが突き刺さった直後に全身にナイフが刺さる。

 

「・・・・・・」

 咲夜はただただ言葉を失っていた。全く持ってマヌケな進入者だったと思うだけだった。

「・・・・・・興が冷めたわ。先に部屋に戻ってるわ」

 と、隣にいた幼女――レミリア・スカーレットは欠伸をしながら屋敷の中に戻っていった。

 それを見届けた後、咲夜は思案する。彼は確かに私のナイフでは死ななかった。何故ならナイフより先にドアノブに殺されたからだ。なんとまぁ、呆気のない・・・・・・。

「他に進入者はいないのかしら・・・・・・庭園を少し見て・・・・・・」

 咲夜は辺りを見回すがいつも通りの紅魔館だった。はぁ、と溜息をつく。たった一人の進入者に、しかもこんなマヌケに門の突破を許した門番に説教をしなければ。

「おっと、まずはこの死体を片づけなければ・・・・・・って」

 咲夜が先ほど自滅した男の死体の方を見ると・・・・・・。

「・・・・・・死体が無い」

 そこには咲夜のナイフが散乱しているだけで、死体はおろか、血液の後も全く残っていなかった。

 

今日のボスの死因:ドアノブに後頭部をドグシャァッされて死亡

 

*    *    *

 

「・・・・・・ハッ!?」

 彼が目を覚ますとそこはさっきとは打って変わって真っ暗な場所だった。地面をさわると土の感触だ。時間はそこまで変わらないはずだから、ディアボロは瞬時に地下か、洞窟内部だと判断する。

「地下か洞窟・・・・・・。濃厚な死因は毒ガスの充満や天井岩盤の崩落による圧死か・・・・・・どうしようもないな」

 特に天井の岩盤が崩れるといよいよ何も出来ない。そして、岩盤による圧死は即死しなければ異常に苦しいのだ。

 そんなことより、彼は先ほどの死について考える。

(ドアノブに刺さって死ぬのは初めてだったな。過去にも『ベビーカーにひかれて死亡』とか『臭くて死亡』とかあったが、どうでもいいことで死にすぎだと思うんだが・・・・・・。いや、それより『幼女』出現であるにも関わらず『即死』だった。それに、あの幼女と女・・・・・・今よくよく考えると普通に会話が出来たぞ)

 今までディアボロは死に続ける中で『幼女』と話が通じたことは一度もない。

「・・・・・・明らかに『変化』している。やはり二個前の謎の現象が何かを引き起こしているんじゃあないか?」

 と、ここでディアボロはあることに気が付く。

「・・・・・・待て、俺は今何をしゃべっているんだ?? 『何語』を話しているんだ? イタリア語じゃあないぞ・・・・・・何で俺は理解できているんだ? い、一体・・・・・・何が起こっているんだ・・・・・・ッ!?」

 彼は次々と引き起こる『異常』に戸惑いを隠せなかった。

 めまぐるしく変わる月と太陽。崩れ落ちる大地。突然の光、謎の巨大人影。『幼女』と『死』。不思議な言語。死に続ける運命。

「・・・・・・クソっ、なにかわからんが・・・・・・ここは・・・・・・」

 と、彼の耳に川のような水が流れる音が聞こえてきた。

(近くに川があるのか? ということは先ほどの予想死因に『溺死』も追加しなくっちゃあな)

 ディアボロは周囲を警戒しつつ、歩いていくと、目の前に川があった。

「・・・・・・やはり、川だ。川縁から1メートル以上離れなくては、滑って落ちたら死んでしまう」

 別段、流れが急なわけでも水深が深いわけでもない。子供が入っても大丈夫そうな川ではあるが用心に越したことはない。第一、人間は10センチ程度の水深があれば溺れてしまうのだ。今の彼ならば子供用のビニールプールでも溺死する自信があった。

(そんな自信、さっさと捨ててしまいたいのだがな)

 ディアボロは川の流れている方向に向かって歩きだした。

 

 しばらく歩いただろうか。彼はあるものを発見した。

「あれは・・・・・・橋か?」

 近付くと正に彼が予想したものだった。川の両岸を渡すために作られたのだろう。木製で出来た橋だ。

「・・・・・・道が伸びているぞ。つまり、この橋は誰かがこちら側の道に続くところとあちら側の道に続くところを行き来するために作られているというわけか」

 そう呟き、彼は橋を調べようとしたとき。

 

「そっから先は地底よ、お兄さん」

 橋の中腹に何者かが突然姿を現した!

「・・・・・・ッ!? だ、誰だッ!」

 ディアボロは橋から距離を取り声の主に大声で尋ねる。

「うるさいわね、妬むわよ・・・・・・。まぁ、初対面だし外来人っぽいから答えてあげるけど」

 声の主は気だるそうに呟き立ち上がった。すると、橋の上の人物に呼応したのか、橋周辺が急激に明るくなった。

「――――ウッ、ま、眩しい!?」

 突然の光源に目を眩ませながら、ディアボロは橋の上にいる人物を見た。

(・・・・・・女、か? 外見からして『幼女』ではないが、少女に近いことに変わりはないな・・・・・・。何をされるか分からん。警戒は怠ってはいけない・・・・・・)

 額の前に腕を据えて目に光が直接入らないようにしつつ橋の上の人物を確認する。

「私は水橋パルスィ。地上と地底を結ぶこの橋を守る者よ・・・・・・というか、ここは滅多に人が来ないから守るというか暮らしてるだけだけどね・・・・・・あぁ、地底の町に住む奴らが妬ましくなってきたわ」

「ミズハシ・・・・・・? 珍しい名字だが生まれはどこだ?」

「珍しいこと聞くわね。日本よ。決まってるじゃない」

「ニホン・・・・・・ジャッポーネか?」

 ここが日本であることを知ったディアボロは(では今俺が話している言葉も日本語なのか・・・・・・? 一体何がどうなっているんだ)とただただ疑問符を浮かべるばかりだった。

「まぁ、ここで説明するのも何だし。着いて来なさい外来人。すぐ近くが私の家だから」

 パルスィは橋を渡った先を指さしディアボロに着いてくるように命じる。

「いや、しかし・・・・・・」

 渋るディアボロにパルスィは「遠慮はいらないわ」と言う。

「違うんだ・・・・・・その、申し訳ないが橋を『渡る』のが怖いんだ。俺が橋を渡っているときに底が抜けたらきっと死んでしまう」

 ディアボロは『再び』と思っていた。『再び』訪れた変化なのだ。今まで他の『人間』がこうして彼に状況を説明しようなどと提案はしてこなかったのだから。無碍に死んでこのチャンスを逃してはいけない、と思っていたのだ。

「・・・・・・はぁ? ちょっと、用心にもほどがあるわよ? というか心配しすぎでしょ。子供が落ちても足が着くのよ、この川」

 パルスィは怪訝そうに眉を寄せてそういうのは当然だった。

「分かっている、だが俺の場合はそうはいか・・・・・・」

 と、ディアボロが事情を説明しようとしたときだった。

 

「お、ほらみろほらみろ! ほ~らほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほら! 言っただろぉ~勇儀ぃぃ~、こっちの道で合ってるってさぁああああ~~。オマエやっぱり酔いすぎだって、自分の家の帰り道すら覚えてないとか、やっぱり酒船を一人で一杯はやりすぎたンじゃあないのかぁぁ~~~??」

 遠くから賑やかな声がしてきた。

「んんんんんっるせぇええよ萃香ぁあああ、酔い醒ます前にパルスィんとこ着いたら怒られるだろぉぉぉ~~? つーかここらへん道が暗すぎなンだよ~~。これじゃあクソしたくて早く帰っても迷子になっちまったらその辺でするしかねぇじゃあねぇ~かよぉ~~~」

 もう一人いる。

 そしてどちらも泥酔しているようだ。

「・・・・・・ごめんなさいね、外来人。厄介が帰ってきたわ」

 パルスィは深い溜息をついてディアボロの背後の暗がりから現れた二人を睨んだ。

 同時にディアボロもそちらの方を向くと・・・・・・。

(――――な!?)

 そこには、一人は片方の肩に身を任せて顔を真っ赤にさせて足を引きずりながら歩く体格のいい女性だった。それだけを見ればただの酒癖の悪いOLのような感じだが、彼女の額には本来の人間にはない物が存在していた。赤く、その存在を激しく自己主張するかのようにそびえる長い角である。

 そしてもう一人、その額に一本の角を持つ女性に肩を貸し、ふらふらとした足取りで手に持った瓢箪をあおる人物がいた。そいつにもなんと、頭の両脇部分から角のような物が二本あった。

 だが、ディアボロが驚愕したのはそんな理由ではない。

(あれは・・・・・・『幼女』!?)

 そう、後者を説明した人物は見た目年齢8歳程度の『幼女』だったのである。

「よぉーパルスィ!!! 元気ー? って、なんじゃそいつは??」

「あぁぁ、クソッ。萃香てめぇ、耳元ででけぇ声出すんじゃねぇよ、頭に響いちまうじゃあねえか」

 萃香と呼ばれた幼女はパルスィに向かって大声で呼んで手を振った。

「勇儀の言う通りよ萃香。少し声が大きいわ。――それと、こちらは外来人の・・・・・・名前聞いてなかったわね」

 と、パルスィがピンク髪の奇妙な男性に視線を向けると。

「・・・・・・あ、あの『幼女』を俺に近付けさせるな・・・・・・。でないと、ま、またッ! また俺はッ!」

「・・・・・・ハァ? 何、急に息荒くして。あなたロリコンなの? で、名前は?」

「・・・・・・ロリコンじゃあない、ディアボロだ。それより、・・・・・・簡単に言うと俺はもうすぐ死ぬ。だからあの『幼女』を俺に近付けさせるな」

「・・・・・・」

 パルスィは目を閉じて深い溜息をついた。

「あなたの言ってることは全く理解できないし、全然理解しようとも思わないのだけれど。余りの動揺ぶりが可哀想だから一つ、親切にも教えてあげるわ。――彼女、あなたの指している伊吹萃香は『幼女』じゃない。アレは鬼よ」

「・・・・・・何を言っている」

「額面通りよ。アレは人間じゃあない、そして隣にいる大きい方の彼女も鬼、星熊勇儀よ」

「・・・・・・全く」

 と、ディアボロはつぶやいた。

「全く持って意味が分からない。それではなんだ? 貴様は妖怪だ、とでもいうのか?」

「あら、そうよ。よく分かったわね」

 ディアボロは笑いながら冗談半分で言ったつもりだったが、パルスィがきょとんとした顔でそう即答したので――。

「・・・・・・ふふふ、ふははは!! 何だ、じゃあここはあの時のホテルと同じように夢か。今度は鬼と妖怪・・・・・・、『幼女』じゃないならどんな死でも可能性があるというわけか。全く持って、訳が分からんな」

「ふふふ、夢だったら良かった。とか思ってるの? でも残念ねここは・・・・・・」

 

「だから気に入った」

 

「・・・・・・ッ!?」

 急に冷静さを取り戻したディアボロに驚くパルスィ。だが、彼は言葉を続ける。

「夢ならよかった? ならば、そうか。じゃあ何にも問題なんてないじゃあないか。前回のは夢だったが、今回は違う『かもしれない』んだろう? だったら十分だ。1%でも可能性がある限り、この永遠の死から脱出してみせる・・・・・・」

 と、ディアボロが笑みを浮かべて言った。

「・・・・・・何のことよ」

「いや、こちらの話だ。少し嬉しくてね・・・・・・むぉッ!?」

 すると背後から突然誰かに肩を組まされた。

「何だ外来人。嬉しいことでもあったのかぁぁ~~?」

「クッソ、萃香ぁ! 私を地面に捨てたままいくんじゃねぇええ!」

 いつの間にか酔っぱらいの『幼女』が彼の後ろにいたのである。

(クッ!? 何だ、こいつ・・・・・・。く、臭すぎる、全部酒か!? ワインじゃあないようだ・・・・・・この国独特の物か?)

 ディアボロの脳内には『臭くて死亡』とかいうみっともない死因が浮かんだ。

「嬉しいこと祝いだ、この外来人も混ぜて飲むぞパルスィ! 勇儀! 今の私は気分がいい! 明日まで永遠に飲んでいたい気分なんだ! 酒ッ! 飲まずにはいられない! ってね!」

「い、いや。お、俺は・・・・・・」

 ふざけるんじゃあない。普段からワインは嗜む程度にしか飲まないんだ。こいつらの飲んでいそうな酒なんて飲んだら、急性アルコール中毒で死んでしまうかもしれない。

「んん~~~~? 何だねピンクのおっさん、私の酒を断るというのかそーかそーか。なら無理矢理でも付き合ってもらうぞぉ~~」

 萃香はとろんとした表情でディアボロの肩を組みながら顔をのぞき込む。

(うぉう! 口臭がッ! 鼻が曲がる!)

 その様子を見ていたパルスィは「そうねぇ。私もたまには飲んで妬みを和らげてみようかしら」なんて言っている。

「よぉぉしっ、そうと決まればパルスィの家に行くぞぉ~お前ら!」

 萃香は体重70キロはあるディアボロを片手で引きずり、橋を渡っていく。

「なっ、おいこら離せ!! やめろ、本当に死ぬ!」

 パルスィの話ではこの『幼女』は『幼女』では無く『鬼』らしい。明確な違いはよく分からないが、『少女』ではないならば予想される死因でも発生するだろう。だが、予想されるならば対策が立てれる。

 立てれるのだが・・・・・・。

(マズイ! これは急性アルコール中毒による心配停止が濃厚! な、何としても回避しなければ・・・・・・だが、うわあああ!? こいつ、なんて力だ! 全く振り切れん!)

 ディアボロはもがき、苦しむが萃香の手はディアボロの腕から全く引きはがれない。ミシミシと音を立てているが折れてはいないだろうか。

 こうしてディアボロは半ば強制的にパルスィの家に向かったのである。

 

*   *   *

 

 その頃、紅魔館では――――。

「美鈴」

「ゲェッ! メイド長!」

 先ほど謎の進入者を殺した(死体はなぜか消えた)十六夜咲夜は、ディアボロの進入を許したであろう紅魔館の門番。紅美鈴の元へ来ていた。

 咲夜にいきなり呼ばれてびくっと体を振るわせたのは門番の紅美鈴。仕事の時間よりも食事睡眠休養の方が10倍時間を使っている職務怠慢妖怪である。

「ゲェッて何よ。いつから私そんな嫌われキャラになったの?」

「いや、何でもないです。それよりどうかしましたか? 私今日はまだ寝てませんよ」

「さらっと日常の罪科を吐露したわね。・・・・・・まぁ、いいわ。あなた今日誰か門に通したかしら?」

「・・・・・・えっ? だ、誰か敷地内にいたんですか?」

 美鈴の顔から汗が流れる。

「いたわよ。なんか、ピンクの髪の毛にカビみたいな緑の斑点模様をつけた変なおっさんが」

「特徴的な髪の毛だ・・・・・・。組織の要人には向きそうにない人物ですね」

 要人どころか、トップに君臨していたわけだが。

「でも私はそんな人間、今日通してませんよ?」

 と、美鈴が首を傾げて言った。

「よねぇ。あなたの無傷具合から見てそうだと思ったけど・・・・・・」

 咲夜は顎に手を当てて何かを悩んでいるように言った。

 それに美鈴は少し引っかかったのか、心配そうに聞く。

「でも、咲夜さんソイツ倒したんでしょう? ならいいじゃないですか」

「そうよね・・・・・・とも、言い切れないわ。実際倒したのは私でもカリスマ(笑)でも紫モヤシでも引きこもりでもないのよ」

「(うわぁ、毒舌咲夜さんキマシタワ)」

 美鈴は苦笑いでその話を聞いていた。

 説明しよう! 『毒舌咲夜さん』とは! 第6作の東方紅魔郷より既に10年の歳月が経過していた! と、なるとあの吸血鬼は510歳の誕生日を迎え、貧乏巫女も生活費の工面のためにオトナの仕事に手を染め始めていた!

 そんなおり、普通の人間の少女(永遠の17歳)だった『十六夜咲夜』もいつの間にか27歳! 男性とのお付き合いなど恋愛経験皆無の彼女は30歳まで残り2年半となり、『焦り』を感じ始めていたのである!

 自分は人間だ。だったらもう大人の人付き合いの一つや二つ、なくてはならないだろう。そう言えば同期(自機の面々)だと自分が一番遅れているのだ。貧乏巫女は仕事柄多くの男性と接点がある。白黒魔女は同姓愛者のぼっち魔法使いと同居し、荒人神は外界から昔の彼氏を連れてきて幸せな家庭を築いている。更にあの短絡思考剣士でさえ最近彼氏が出来たという。ただし兎、てめーは私と同じだ。

 そんなこんなで十六夜咲夜はまだ『男』を知らなかった。だから、まぁ過保護にし過ぎるこの紅魔館の主たちに陰に隠れて毒づくのも分かる気がするが。

「じゃあ突然庭園に現れたってことですか? あの胡散臭い隙間妖怪でもないのに?」

「そういうことね。私最近疲れてるのかしら??」

「(明らかに疲れてます。いろんな意味で)」

 美鈴は咲夜の身を案じた。このままじゃ30歳になる前に暴動を起こしてしまいそうだ。

「じゃあ引き続き仕事頑張って頂戴。わたしはこれからクソガ・・・・・・じゃない。お嬢様たちの洋服の洗濯があるから」

 そう言って咲夜は美鈴と別れて屋敷に戻って行った。

「・・・・・・咲夜さん、疲れてレミリアお嬢様とかの前で暴言吐かなければいいんだけど・・・・・・」

 美鈴は心配そうにそう呟いた。

 

*   *    *

 

「なぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁ、パルスィパルスィ~~~~。聞いてくれよ、今日勇儀がさ・・・・・・」

「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい、パルスィパルスィ~~~~。聞くなよ、そいつの話をよ~~~~」

「あああああ? いいじゃねぇか別に減るもんでもないしさぁぁ」

「ざけんなよ萃香。私の話をネタにして私のパルスィを奪おうって魂胆かぁぁ?? 見え据えてんだよこのトンチキがッ!!」

 二人の鬼が酔った勢いで間にいる妖怪女を口説いている間。

 ディアボロは隣で『溺死』していた。

 

 遡ること15分前。

「ほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほら、ディアボロだっけ? 遠慮はいらんよさぁさぁ飲みたまえ飲みたまえ」

「据え酒飲まぬは人の恥、だぜ? しみったれた雰囲気なんて酒飲んで消しとばしちまおうぜ?」

 ディアボロは半ば強制的に二人の鬼から晩酌されていた。

「・・・・・・も、もうやめてくれ・・・・・・。は、吐きそうで死にそうだ・・・・・・」

 ディアボロは顔面蒼白の状態で既に生死の境をさまよっていた。

「(く、・・・・・・そ・・・・・・意識が、飛びそうだ・・・・・・! こいつら断ろうにもスタンド以上のパワーでこちらを拘束してくる・・・・・・! 割と華奢な俺では全く歯が立たん!)」

 と、小さい方の鬼が巨大な杯をどこからか取り出した!

「勇儀勇儀~。こいつを一気呑みさせてみるってのはどうだい? 瀟洒じゃねぇ?」

「いいなそれ。瀟洒って言葉は何だか知らんが、酒って漢字が入ってるから気に入った! やらせよう」

「(な、何だその大きさの杯はッ!? ピザを乗せる皿より大きく、グラスより底が深いぞ!?)」

 そんな量の酒を一気呑みなんてしたら急性アルコール中毒で死んでしまう。そんなコンパで調子に乗った大学生みたいな死因は嫌だ。

 と、ディアボロが必死に抵抗を試みるも無惨。

 すぐに体を固定され小さい方の幼女鬼から大量の酒を流し込まれる。

「ほれほれほれほれほれほれほれほれほれ~~~。私の瓢箪からも追加しているから飽きるほど飲めるぞ~」

「が、ぼッ!?(なんだこの量は!? まるで鉄砲水に飲まれているかのようだ!? 杯の許容量を完全にオーバーしている・・・・・・!? だ、ダメだ・・・・・・息が・・・・・・)」

 その様子を見ていたパルスィはため息をつきながら。

「全く・・・・・・。ほどほどにしなさいよ? あなたたちは酒のこととなるとホントに好き放題ね」

「おお? パルパルが嫉妬してるぞ?」

「構ってもらえなくて寂しいのか?」

「ばっ、そ、そんなんじゃあないわよ! バカらしいわね! ぱるぱるぱる・・・・・・」

「悪かった悪かったって。一緒に飲もうぜパルスィ」

 と、勇儀がパルスィの方に歩いていった。

「おい萃香。いい加減にその辺でやめとこうぜ。死んじまうぜその人間」

「分かってるって。でもこの杯分は飲ませないと・・・・・・」

 ・・・・・・そのとき既にディアボロは死んでしまっているのを彼女たちは知らなかった。

「よし・・・・・・って人間? お~い・・・・・・ダメだこりゃ。完全にノびちまってる」

 動かないディアボロを寝てしまったと勘違いした萃香はその場を離れ、パルスィとともに飲むことにした。

 

 今日のボスの死因:酒に溺れて死亡!

 

*   *   *

 

「うぅぅ・・・・・・くそッ! なにが鬼だ、なにが妖怪だッ! 騙したなあの女! 酒で溺死なんてそうそう予想できることじゃあないぞ!」

 ディアボロは目を覚ますなり先ほどの死因を思い出して悪態をついた。

「・・・・・・」

 だが、考えていても仕方がない。とりあえず自分は今非常に不可解な状況にあるということだ。

 なぜか二回連続で幼女と遭遇し、しかもどちらも日本語を用いて話しかけてきた。

「そして、ここもどうやらイタリアではないようだ・・・・・・」

 ディアボロは周りを見るとどこかで見たことがあるような植物の群生を認識する。

「どこかの本で見たことがある・・・・・・これは確か『竹』だな。日本に広く群生しており非常に早い成長速度を持つ背の高い植物・・・・・・。こんなに普通高いものなのか? 高すぎて空が見えないぞ・・・・・・」

 太陽は西に傾きかけていた。だが、竹林はまるで夜であるかのように、暗く静かだった。

「何とも不気味だ・・・・・・野生動物におそわれたら即死だな」

 幸いまだ『少女』は出現していない。それならば死因はある程度予想がつくはずだ。

「さて、歩くか」

 と、彼が一歩ふみだした瞬間。

 

 ズボォッ!

 

「――え」

 足下が崩れ落ちる感覚がしたかと思えば。

 

 ドスン!!

 

「ぐぅあぁっ!!?」

 体に激痛が走る。これは今まで何度も体験してきた痛み。

 『物体が体を貫通する』痛みだった。

「うおおおあああ!??(な、何だ!? なにが起きている!? この突き刺さるような鋭い痛みは・・・・・・ま、まさか)」

 と、ディアボロは途切れ途切れになる意識の中で自分の体を確認する。

 彼の腹部には竹槍が複数貫通していたのだ。

「――――がッ!(ま、まずい・・・・・・『幼女』が出現していない状況で俺は予測不可能な死はほとんど実現しない・・・・・・! だから刺される前に『竹槍が刺さって即死』と予想できなければ『即死』が出来ないッ!! お、おそらくこのまま失血死が妥当・・・・・・だが、死ぬまでこの痛みはずっと襲ってくるッ!!)ぐおおおおおおああああッッ!!!!」

 痛みに耐えるため彼は叫んだ。あと、あと何分だ? あと、どれくらいでこの苦しみから解放される・・・・・・??

 彼は早く死んでしまいたい状況下で痛みに耐えることしかできなかった。

 しばらく経過して、竹林から悲鳴がやんだ。

 

*   *   *

 

 時刻は少し遡り――――。

「ふんふふんふふーん♪ 落とし穴、おっとしあなー♪ 今日も鈴仙ひかかってくれるかなー♪っと。よしよし、これで10個目が完成ウサ! そろそろ瑛琳様が私を心配して鈴仙を派遣する頃ウサね。適度に足跡も残しといたし、この辺で隠れて・・・・・・ん??」

 ご機嫌そうに鼻歌を歌いながら落とし穴(竹槍設置ver)をしかけ終えた妖怪兎、因幡てゐはあることに気がつき特徴的なうさみみを揺らした。

「およおよ? なーんであんな所に人が倒れているのかしらん。さっきまではいなかった筈なのに・・・・・・って、起きあがった」

 とっさにてゐは近くの竹藪の中に身を隠した。するとその人間(変な髪ー!)は何かぶつぶつと呟いて一歩を踏み出した。

「・・・・・・あっ、そっちは罠が」

 と、てゐが言う前に男は落とし穴に見事に引っかかってその場から消えた。そして直後に断末魔の悲鳴が聞こえる。

「ぐぅあ! うおおおおおああああ!! がっ・・・・・・ぐううううああああああ!!!!」

 てゐはその声を聞きながら何となく悪い気がしたが「引っかかった方が悪い」と思い直し、鈴仙が来るのを待った。

 ちなみに、鈴仙とは因幡てゐの上司(年齢的にはてゐの方が断然上)である鈴仙・優曇華院・イナバのことである。

 そして悲鳴が途切れるか途切れないかの時にもう一人の声が聞こえた。

「て~~~~ゐ~~~~~~!!!!! あんた一般人に迷惑かけて・・・・・・ッきゃああああああああイエエエ!!!??? あぶねええええええええええええ!!!!! 何今日の罠!? 直葬コースじゃん、直葬コースじゃん!!!」

「あ、鈴仙」

 知り合いの声が聞こえたので首を出すと両腕から血を流し、てゐとは少し違ったうさみみの少女が穴から出てきている所だった。すごい息切れしてる。

 ちなみに、鈴仙のうさみみは付け耳である。

「なんだ、両腕だけか」

「なんだとはなんだボケぇええええ!!! 殺す気かあんたああああ!!!」

「いやぁ、鈴仙の一匹や二匹、まぁ殺しても支障はないかと・・・・・・」

「二匹目をどっから持ってきたんだ! ってそうじゃなくて! あんた一般人も巻き込んでるでしょ!? 男の人の断末魔が聞こえたわよ!!」

「それは違うよ! 私は注意したんだけど、その男が私に危害を加えようと・・・・・・!」

 てゐがうるうるした瞳で鈴仙に訴えた。

「・・・・・・ま、まぁそういう理由なら・・・・・・」

「(ちょろい)」

「と、とりあえず助けるわよてゐ! 医者の弟子が人殺しなんて師匠に知られたら事だわ!!」

「あ、うん。分かった応援してみておくね! その辺で」

「あんたも手伝うんだよこのアホがああああ!!!」

 てゐと鈴仙はなんやかんや言い合いながら男の救出を始めた。

 

*   *   *

 

「はぁ、なるほどなるほど。ご苦労鈴仙、てゐ。あと1分遅れてたら間に合わなかったでしょうね。特にあなたたちの首が」

 その女性は地べたに正座する鈴仙とてゐににっこりと微笑みながら言った。

 彼女は八意永琳。彼女の医学薬学は世界一ィィィィィ! と言われている。鈴仙の直属の上司だ。

「「いや、だってそれはこいつが」てゐが」

「どっちもどっちよ。――――私は病気なら何でもござれだけれど、外的な裂傷・出血・欠損などにはうとい方だから、『彼』がいてくれて助かったわ」

 と、永琳は手で顎をさすりながら言った。その時だ。

「永琳さん、大体は終わりました。腹部を複数貫通した患者なんて初めてですから非常に大変でしたけど・・・・・・あの男に何があったんです?」

 と、正座する二人の背後からこの幻想郷には似つかわしくない珍妙な髪型と髪の色をした15歳前後の少年が現れた。

「あら、ご苦労ジョルノ君。あなたの給料はこの二人から差し引いた給料分上乗せするわ」

「ええ!? そんな師匠殺生な! そもそも私に給料とかあったんですか!?」

「私はそもそも人間からいろいろ貰える(騙し取る)から給料はあまり使ってないウサね」

「ええ!? てゐも貰ってるの!?」

 鈴仙はお小遣いさえもほとんど貰っていないのに、と言いたげな目で永琳を見つめた。

「それはあなたが欲しいとか言わないから」

「えええええ!? ジョルノも何か言ってよ! あんたもまだ貰ってないわよね!?」

 その言葉にジョルノと呼ばれた少年は眉をしかめて。

「鈴仙、僕はしっかりと日給で貰ってる。そもそも鈴仙は仕事をしてるんですか?」

「ギギギギギギギギ・・・・・・!!」

 彼の素っ気ない態度に思わず怒りを露わにするが、当のジョルノはそしらぬ顔。

「も、もういいわよ! 私は師匠の奴隷じゃないのにー!!」

「あ、逃げた」

 てゐがそう言うがもう遅い。鈴仙は文字通り、脱兎の如く部屋から飛び出した。

「・・・・・・何だか可哀想ね、あの子。ジョルノ君? 様子を見てきてくれるかしら?」

 永琳はため息をついてジョルノにそう言った。

「分かりました」

「あぁ、あと」

 と、永琳は早速部屋を出ていこうとするジョルノを呼び止めて。

「あの子はあれでも精一杯だから、助手同士仲良くしてね?」

 笑顔で言った。それに対してジョルノはふっと笑って。

「・・・・・・それも分かってますよ。彼女の頑張りは大体理解できています」

 そう言い残して彼は部屋を出た。

 めでたしめでたし。

「――――じゃあないでしょ。てゐ」

「ギクッ」

「なにがめでたしめでたしなのかしら? 一般人に怪我をさせた元凶はあなたらしいじゃない??」

 永琳は陰のかかる笑顔でてゐを見下ろした。

「あ、えーと・・・・・・あの、永琳様? まずはそのウィンウィン動く不気味な長い棒をしまってくれませんか・・・・・・?」

「ダメよ」

「ひいいいい!!! ゆ、許して助けて神様ァ!! もう悪いことしません! 落とし穴も1日5個までにします! だから、助けてぇええ!!」

「この幻想郷じゃあ神も仏も妖怪も医者も等しく平等よ。観念してケツの穴を出しなさい。そーれウィンウィンウィンウィン」

「穴ですか! うわ、ちょ、な、何をするだァァァァアアッー!!」

 

*   *   *

 

 私は永遠亭の入り口の反対側にある縁側に来ていた。

「はぁ~」

 何だか最近運がない気がする。てゐの罠にはすぐに引っかかるし、お給料は貰えないし、助手の座は奪われるし。

「何ため息ついてるんですか、鈴仙」

 と、すぐ背後で聞き覚えのある声がした。思わず耳を立ててしまう。

「ジョ、ジョルノ・・・・・・いつからここに?」

「今さっきですよ。永琳さんに言われてあなたを連れ戻してくるように言われたんです」

 ジョルノは若干あきれ顔でそう言った。

 こいつはジョルノ・ジョバーナ。最近永遠亭付近に流れ着いた外来人である。そして何故かは知らないが記憶喪失だと言う。

 そして、スタンドという能力が使えるらしい。私や師匠には見えないが。

「ふん、いいわよ。あんたに呼ばれなくても行くつもりだったし」

「とは顔は言ってませんよ。ほら、頬を膨らませてないで戻りましょう」

「そ、そんなことしてないし! そもそも今師匠が必要としてるのは私じゃなくてあんたでしょ!」

「・・・・・・本当にそう思ってるんですか?」

「え?」

「本当にそう思っているのか、と聞いたんです。もしそう思っているなら、それは彼女に対する侮辱だ」

「・・・・・・それって師匠があなたより私の方を必要としてるってことかしら? 笑わせないで、給料も貰えてない私が師匠の役に立っているわけが・・・・・・」

「ありますよ。というか、おそらく鈴仙は僕どころかてゐよりも彼女に信頼されているはずだ」

「そりゃてゐよりかは・・・・・・まぁ、アレだけど」

「逆に羨ましい限りですよ。お金じゃ結べない主従関係が今の君たちには成り立ってるんですから。――――外の世界じゃほとんどありえなかった、奇跡のような関係がね」

「・・・・・・」

 どうしてこいつはここに来て間もないのにこんなクサイ台詞が言えるのだろうか。スタンド使いってのはみんなこうなのか?

「まぁ、そうだね」

 頷ける私もある意味こいつの影響を受けていると言えるのだろうか?

「そもそも師匠とは月からの関係だから、あんたみたいな私と師匠の間に生えた雑草には負けないから」

「雑草ですか、酷い言われようですね・・・・・・でもその表現はなんか鈴仙と永琳さんの禁断の子供みたいな」

「お前は何を言ってるんだ」

「言ってみただけです。まぁ、端から見ればあなた方は家族に見えますからね」

「・・・・・・」

 またこいつは惜しげもなく恥ずかしいことを・・・・・・。

 ――――ぽちゃん。

「って、あれ? 今何か池に落ちたような・・・・・・」

 気になった私は縁側を降りて庭の池をのぞき込む。

「何やってるんですか、落ちたら即死ですよ」

「あんたはこの池を何だと思ってるのよ・・・・・・」

 ジョルノが少々バカにしたように言ったが、私はまだ波紋が立つ池を凝視した。

 何かがある。黄色い何かが・・・・・・。

「なんか落ちてる」

「なんかって・・・・・・今いち要領を得ませんね・・・・・・」

「拾ってみよ」

「あっ、こら。落ちますよ。僕が腕を掴んでおくので鈴仙はなんやかんやで頑張ってください」

「自分が取りに行こうって発想は無いのね」

「服が濡れるのはいやです」

 まぁ、ジョルノが私を押さえて(二回くらいわざと落とそうとしやがったが)くれたおかげで池の底に落ちていたそれを引っ張りあげることが出来た。

「・・・・・・よし、取れた! って、何これ。円盤??」

 と、私は塗れた手を振りながら手に入れた謎の黄色い円盤を眺める。

 もしかすると、と思い光にかざして見ていると・・・・・・。

「・・・・・・ッ!? れ、鈴仙! 危険だ! 今すぐそれを投げろ!!」

「え、えぇ!? は、きゅ、急に、何? 何なの?」

 ジョルノが急に大きな声を出すので驚いた私はその謎の円盤を手からこぼしてしまう。

 そして信じられないことに私の顔にぶつかったそれは瞬時に視界から消えてなくなった。

「あ、あれ? ジョ、ジョルノ? 今のはどこに・・・・・・どこに行ったのかしら?」

 と、私が後ろに立っているジョルノを振り返ると彼は何か異常なものを目の当たりにしたかのような形相で叫んだ。

「れ、鈴仙ッ!! 顔だ、円盤が顔に刺さってるッ!!」

 その異常な焦りようと声色でこれが尋常ならざる事態だと察知した私は急いで顔に手をかけると・・・・・・。

 ぐにっ。

「う、っわああああああああ!!? な、何よこれ!? 顔に、円盤が入っていくううううううううう!!???」

「れ、鈴仙――――ッ!!!」

 私たちの叫びが永遠亭の庭に交錯した。

 

*   *   *

 

 ずぶずぶずぶッ! と、円盤はどんどん鈴仙の顔に入っていき――――。

「く、『ゴールド・エクスペリエンス』!! 鈴仙からさっきの円盤を取り出せぇええええ!!」

 ジョルノは瞬時にスタンドを出し、鈴仙の脳内に入っていく円盤を掴もうとするが・・・・・・間に合わなかった。

「うわああああああああああ!!! な、何これ、私どうなっちゃうのおおおおおおお!?」

 鈴仙はひどく狼狽し、血が吹き出るほど頭をかきむしるが先ほど埋め込まれた円盤が出てくることはなかった。

「どうしたの優曇華! 叫び声がしたけど・・・・・・」

 と、そこに永琳が飛んできた。

「え、永琳さん! 大変なんです、鈴仙の頭に・・・・・・!」

「じじょおおおおおおおおお!!! 私死んじゃいますうううううう!!!!!」

 ジョルノの声は焦りと動揺が入り交じり、鈴仙は鼻水垂れ流し、頭から血を噴き流しで大泣きしながら永琳の元へとかけていった。

「・・・・・・な、何が起こったかは分からないけど、二人ともこっちに来なさい! 優曇華、歩けるわね?」

 永琳も鈴仙の焦りようには驚き、流石に面食らっているのだろうか。鈴仙は泣きながらこくこくと頷き奥へと入っていく。ジョルノもそれに続いて永遠亭に戻っていった。

 

 

「し、師匠・・・・・・えぐっ、すん、私、どうなっちゃうのかなぁああ・・・・・・」

「・・・・・・まだ何とも言えないわ。X線で検査すると確かに何か円盤状の物体があなたの脳内には存在しているようだけど・・・・・・」

 永琳は医務室で横になる鈴仙の隣に座り、さきほど撮影したX線写真を見てうなった。

「僕のスタンドでも取ることが出来ないだなんて・・・・・・」

 ジョルノは苦々しい表情をして申し訳なさそうに呟いた。

「まぁ、あなたの能力は・・・・・・たぶん優曇華の頭を割る羽目になるわよ」

「ひいいいい!」

「落ち着いてください、鈴仙。そんなことしませんってば」

 訳の分からない恐怖に当てられて、永琳の冗談(?)にも悲鳴を上げてしまう鈴仙。ジョルノは大変に申し訳なかった。

 自分が取りに行けば、こんなことにはならなかっただろうと。

「ジョルノ君」

「え、はい? 何でしょうか?」

 そんな様子のジョルノを見て瑛琳は口を開いた。

「自分を責めても仕方がないわよ。今は幸い、優曇華には何の害悪は起こっていない。もしかすると、無害な物質かもしれないわ。・・・・・・私の医学を持ってしても正体不明だなんて、少し悔しいけど」

「・・・・・・」

「それと、優曇華」

「は、はい?」

「あなたは絶対私が救い出すわ。私が患者を死なせたことがある?」

「・・・・・・ッ」フルフル

 永琳の柔らかな笑顔と自信のこもった言葉に鈴仙は首を横に振った。

「よろしい。大船に乗ったつもりでいなさい。――――じゃあ、ジョルノ君。優曇華をちょっと見ててね」

「あ、分かりました・・・・・・どこに行くんですか?」

「ちょっとね。――気になることがあるの」

 そう言って永琳はその場を後にした。

 

「鈴仙」

「・・・・・・」

 永琳が部屋を出てしばらくした後、ジョルノは横になって目を赤く腫らしていた鈴仙に声をかけた。

「これが君たちの絆ですよ。こんな状況でも、あなたに対する彼女の態度は頼もしくもある。そこに僕が介入できる余地はない」

「・・・・・・」

 鈴仙は黙って聞いていた。彼女は不安と同時に奇妙な嬉しさもまた、心に抱いていた。

「何言ってるのよ・・・・・・こんな時に」

「こんな時だからですよ。僕はただ黙ってあなたを見守るしかできません」

 ジョルノは嘆息しながら言った。

「じゃあ黙っててよ・・・・・・」

「・・・・・・了解しました」

 しばらくの沈黙の後――――。

「・・・・・・・・・・・・ありがと」

 その言葉に彼は何も答えなかった。答える必要はなかった。

 

*   *   *

 

 その頃、永遠亭付近の竹林。

 日は暮れて竹林の中は真っ暗だった。

「ふぅ~、なんだか知らないけど鈴仙が騒ぎを起こしてくれたおかげで永琳様のお仕置きルームから抜け出すことが出来たウサね。全く、不幸中の幸いというか・・・・・・ん?」

 てゐはお尻をさすりながら竹林を散歩していると――。

「行くよ、リグルー! そーれっ!」

「うわっ、ミスティア! 速いよ! スピードが・・・・・・ぶへっ!」

 虫の王、リグル・ナイトバグと夜の歌雀、ミスティア・ローレライがフリスビーで遊んでいた。

「・・・・・・むむっ、あの二人がフリスビーにしてるのは金色の円盤? お金の臭いがするウサね」ニヤリ

 悪い笑顔を浮かべながらてゐは二人に近づいていった。

「よっす、二人とも最近どお?」

「あー、てゐちゃん! 私はぼちぼち儲かってるよー!」

 てゐの呼びかけにミスティアは手を振って答える。

「いちち・・・・・・私は・・・・・・出番がないなぁ最近・・・・・・」

「そうかいそうかい、ところで最近聞いた話なんだけど、『金の皿』っていう怪談話知ってるウサ?」

「げ、怖い話かぁ私あんまり好きじゃないんだよな・・・・・・」

「ちんちーん! 私は結構好きだよ! 人間おどかす参考になったりするからね!」

 二人は両者反対の反応を返した。リグルの反応は「ホラー系苦手だけど見ちゃうの><」っていう感じである。

「ふーん、じゃあ教えてあげるウサ。金の皿っていうのは・・・・・・君たちアレ知ってる? お皿の小町さんっていう」

「あ、お皿が一枚足りないうらめしやー、って奴? それなら私は聞いたことあるよ」

「うんうん、私も知ってるけど・・・・・・。それ定番中の定番じゃないのー? もう聞いても怖くないよ私」

 すると、てゐが声色をドス黒く変えて言った。

「・・・・・・それは民衆が怖くないようにって改変した話ウサ。本当の『お皿の小町さん』にはただの皿じゃなくてもう一枚、『金の皿』っていうのが・・・・・・」

 てゐの語りは引き込まれるようだった。一つ一つの言葉が恐怖感を募らせるように配置され、聞く者を物語の深淵へといざなうようであった。最初は余裕そうにしていた二人の表情も次第に曇り始める。それを見ててゐは更に語りを加速させる。その様子は例えるならば義太てゐ節。彼女の独特の語りに二人は恐怖感に襲われずにはいられなかった。

「・・・・・・と、いうわけウサ。これがお皿の小町さんの真実。知らなかったウサ?」

「・・・・・・」

「あ、あああ・・・・・・」

 リグルは歯を打ち鳴らし、ミスティアは得体の知れない恐怖に刈られ、まともに言葉を発することが出来なかった。

「・・・・・・ところで、ふたりとも」

 と、てゐが見計らったようにしてリグルの持っていた円盤を指さして言った。

「それ、金の皿じゃないの?」

 

「「うわああああああああああああああああああああああ!!!!!」」

 

 二人はてゐの言葉に顔を見合わせた後、その円盤を手放し一目散に逃げていった。

 

「・・・・・・ふふん、毎度ありウサ~。バカルテットの相手なんてチョロイチョロイ」

 てゐは二人の落とした円盤を拾い上げると違和を感じ取った。

「ん? 何だこれ・・・・・・ぐにぐにしてて変な感触ウサね。お金になるウサか?」

 と、ふり返ってみると。

「・・・・・・ご苦労、てゐ。鴨が葱背負ってやってくるとは正にこのことね」

 そこには額に血管を浮かべて立ちふさがる永琳がいた。

「・・・・・・えっと、永琳様いつからそこに?」

「あなたが怪談の途中で『おっぱいお化けヤゴコロ』って言い始めたあたりから」

「・・・・・・」

「あとでお仕置きルームにいらっしゃい」

「はい・・・・・・」

「それと、その円盤も没収ね」

「はい・・・・・・」

 うなだれるてゐと怒りを抑える永琳。二人は仲良く永遠亭へと戻っていった。

 こうして永琳は優曇華救出の唯一の手がかりを鴨葱的に得たのである。

 

 

 ――――そして翌日、あの男が目を覚ます。

 

*   *   *




「文字稼ぎじゃない、尺稼ぎだ!」
あと、八意永琳さんの名前が間違ってた箇所があったので修正しました。何?全部間違っていた? おいおい、お前は何を言っているんだ? 彼女は月の頭脳だぞ? そんなことあるわけ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。