ボスとジョルノの幻想訪問記   作:フリッカリッカ

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恐怖!紅魔館の悪魔たち④

ボスとジョルノの幻想訪問記11

 

 あらすじ

 

 フランドールの奇襲により半壊する永遠亭!

 ジョルノ、鈴仙、慧音、妹紅、美鈴と次々にスカーレット姉妹の前に倒れゆく者たち!

 奥の病室へと逃げ込んだ永琳とドッピオの運命やいかに!?

 あと、輝夜のスタンドって何!? 状態のてゐ!

 

*   *   *

 

 ボスとジョルノの幻想訪問記 第11話

 

 恐怖!紅魔館の姉妹たち④

 

「てーゐー、暇なんだけどー」

「ちょ、姫様緊張感無さ過ぎ・・・・・・」

 永遠亭で最も奥にある部屋、輝夜の部屋となっている母屋にはてゐも護衛として一緒にいた。

 ちなみに、この部屋は最強クラスの結界と輝夜の能力が合わさり鉄壁の要塞と変わりない空間となっている(ゴミ屋敷だが)。

「(一体どんな生活してたらこんなに部屋が汚れるのか・・・・・・うわ、この靴下いつ脱いだ奴ウサ・・・・・・、しかも片方しかないし・・・・・・)」

 まぁ、てゐからすれば危険な戦場に駆り出されるよりかは遙かにマシだなと思っていた。

「永琳むつかしい顔してたなー・・・・・・」

「・・・・・・まぁ、永遠亭のピンチなわけですからね・・・・・・」

 相変わらず呑気なもんである。

「ふわああ・・・・・・なんか暇になったら眠くなってきちゃった・・・・・・おやすみーてゐzzzz・・・・・・」

「寝るの早いッ! って本当に寝るんですか!?」

 てゐは高速で布団をかぶり睡眠に落ちていった(おそらくは能力を使った)輝夜を振り返るが時すでに遅し。

「ちょっと・・・・・・姫様・・・・・・その緊張感の無さはあんまりだぁあああ・・・・・・じゃなくてあんまりですよ・・・・・・」

 と、てゐは布団をゆするがまるで鉄の塊であるかのように布団はビクともしなかった。何製で出来てるんだよ。

「うーん、こうなったら姫様は20話くらいまでずっと寝っぱなしだろうなぁ・・・・・・」

 メメタァなことを呟きながらてゐは部屋を眺めた。

 ・・・・・・姫という地位の御仁にあるまじき汚さ。

「(でも片づけたら片づけたで『私にはどこに何があるか把握してた』って言うんだろうウサなぁ)」

 てゐは困っていた。というか、てゐを困らせるのは輝夜くらいしか存在しないだろう。

 呑気を体言する輝夜にてゐはたまらず問いかける。

「姫様・・・・・・本当にあなたは『スタンド』見えてたんですか?」

「ぐぅ」

 彼女はのんきに寝息を立てていた。もちろん返事はないが――。

『・・・・・・・・・・・・』

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 

 ――――無意識に『スタンド』を発現させていた。

 

*   *   *

 

 幻想郷で最も『人間』に恐れられている妖怪といえば、真っ先に挙がる名前はこの二つである。

 レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットだ。

 特に前者はたまに人里に出没する分、その存在は広く知れ渡っている。もちろん『悪名』としてだ。彼女が入った店は翌日不幸なことが起こるという噂まである。

 そして後者は更に質が悪い。姉ほど表に出ないため知名度は低いが伝説級の存在として一部の人間からは非常に恐れられている。

 それだけではない。むしろ、彼女たちがそれぞれが一人で出没する分には危険度はそれほど高くはない(それでも見かけたら全速力で逃げることをお勧めする)。

 問題は二人が揃っているときだ。普段は人間を襲わないレミリアも、普段は人目に付かないフランドールも、それは一人でいるときだけである。

 二人が揃えば彼女たちの欲求は連鎖反応的に影響しあい、高まっていく。

 レミリアの『目立ちたい』という欲求と、フランドールの『殺したい』という欲求はこの上なく『最凶』の組み合わせである。

 

(そして今、私の目の前にその二人が揃っていると・・・・・・)

 八意永琳は大勢の意識のない患者を背に、二人に向き合っていた。

「ねぇお姉さま」

「何かしら、フランドール」

 『会話』が始まる。

「私、とっても『イイ』こと思いついたの」

「あらあら、聞かせてもらえるかしら? あなたの『イイ』ことは本当に本当に『イイ』ことだもの」

「やっぱり? えへへ、お姉さまが私を誉めてくれたわ」

「うふふ、誉められるのが嬉しいなら何度だって誉めるわよフラン」

「じゃあさ、じゃあさ! 頭なでてなでて! 私、お姉さまにイイコイイコされるのすっごい嬉しくなるの、気持ちいいの!」

「お安いご用よフラン・・・・・・私のかわいいかわいい妹・・・・・・どうかしら?」

「ん~・・・・・・あっ、ふにゃぁ・・・・・・し、しあわひぇえぇ・・・・・・」

「気持ちいいかしら、フラン?」

「うん、い、いいよぉ・・・・・・お姉さま・・・・・・もっと」

「うふふ、ふふふふ・・・・・・あなたが気持ちいいと私も気持ちいいわ・・・・・・フラン、あぁ、フランドール」

「ああああぁ~・・・・・・く、くすぐったいよぉ、お姉さま・・・・・・」

「ん? やめてほしいの?」

「ちがうよ、ううん。もっとして、お姉さまの好きなように、もっと。強くても、乱暴でもいいから、私をもっと撫でて、愛して!」

「素直ね・・・・・・かわいいわよフラン。誰にも、誰にもあなたは渡さないわ・・・・・・望むなら、私の愛をすべて注いであげるわ・・・・・・」

「あぁ・・・・・・んっ、首筋ぃ・・・・・・舐めるの、ペロペロするのやめ、ひゃんっ!」

「『ご褒美』よフランドール、喜んで私の愛を受け取りなさい。快感に身を委ねるのよ・・・・・・そしたら、ほら・・・・・・」

「あ、はぁあああん・・・・・・っ! お、お姉さま、お姉さまぁああっ!」

「かわいい、かわいいわフラン。今のあなたは・・・・・・『最高』よ・・・・・・私にとってあなたは今『絶頂』なのよぉおおおお!!」

 

 と、ここでドッピオは我に返った。

「・・・・・・永琳さん。これは・・・・・・夢じゃあないんだよね」

 未だに信じられないが、だが、ドッピオは永琳の答えはほぼ予知できた。

「当然夢じゃあないわ。誠に残念なことに現実よ。ん? それともあなたにとってはこの情景は『幸運』なことかしら?」

 永琳は突如として目の前で始められた行為に目を細める。

「・・・・・・いいや、『最悪』だ。ようやく状況が飲み込めてきたが、吐き気がする」

「奇遇ね、私もよ」

「あなたと気が合うとは珍しい。俺は『切れた』ぞ」

「あらあら、女の子二人に男が『本気』を出す気?」

「知らん。そもそも俺は本能的にああいった『幼女』が大嫌いだ。なぜかは知らないがな」

 ドッピオの心の内で何かがざわつく感じがした。

(ディアボロの『幼女恐怖症』・・・・・・。その身に染み着いた『恐怖』はドッピオでは『憎悪』に変換するようね)

 永琳はドッピオの目に『ドス黒い炎』のような輝きを見た。

 

「永琳さん、俺は『友達』をこんな目に合わせたこいつらを絶対に許さない」

 

 彼に漆黒の意志が宿る――――。

 

「何か対策は考えているのかしら?」

 永琳は前に出たドッピオに尋ねた。

「・・・・・・いや、無いけど。でも俺には未来が見える」

「そう。でもあっちの青い髪の方は『運命』をねじ曲げることができるのよ?」

「・・・・・・すいません、やっぱり策がないと勝てそうにないや」

 ドッピオは永琳の言葉を聞いて大人しく引き下がった。

 ちなみに、この間レミリアとフランは盛り上がっていた。でもこれ以上描写すると全年齢タグが付けられないので止めておきます。とりあえず、敵前にも関わらず二人は全裸でナニかをしていました。ナニとはいいません。お互いの尻尾とか使ってナニかしたんでしょう。あとは妄想で補完してください。

 と、ドッピオは読者のみなさんを代弁するような台詞を言い放った。

「・・・・・・なぁ、これさ。今攻撃したら勝てるんじゃあないのか?」

「違うわよ、繁殖期の野生動物と同じでアノ時が一番凶暴なのよ。止めといた方が良いわよ」

「・・・・・・分かった」

 ドッピオは確かに、と頷いた。

 

「と言っても私にはスタンドが見えないから・・・・・・戦力には数えられないわよ?」

 早速戦闘可能者が自分だけだという現実を突きつけられたドッピオは眉をしかめた。

「永琳さんは強いんだろう? 俺一人じゃあ無理だぜ?」

 正直、自分のスタンド『エピタフ』であの二人を同時に相手取るのは不可能だということは火を見るより明らかだった。

「やっぱり2対1じゃ厳しいぜ。せめてジョルノが目を覚ましてくれれば・・・・・・」

 と、ドッピオがジョルノが横たわるベッドを見ると・・・・・・。

 

「大丈夫よドッピオ。私が彼の代わりになる」

 

 鈴仙が起きあがっていた。

「おい、鈴仙動いて大丈夫なのか・・・・・・?」

 彼女もジョルノと同じくフランドールの攻撃を喰らっていた。だが、ジョルノより先に目覚めるのは彼女も人間ではないからだろうか?

「いいえ、ジョルノは私を『かばった』のよ。あの一瞬で、私より肉体的に弱い彼は」

 鈴仙はジョルノを見た。

「私もドッピオと同意見です師匠。私はあの二人を許せない」

「・・・・・・」

 永琳は何かを考え込んでいた。

「そうねぇ」

「?」

 ドッピオは首を傾げる。一体永琳は何を考えているのか・・・・・・と思ったら。

 

「やっぱり雌を狩るには繁殖期が一番かしら?」

 と、鈴仙を見て言った。

 

*   *   *

 

「あぁ、お姉さまっ! もっとフランを虐めてっ、かわいがって!」

「もちろんよフラン、でも私もあなたがほしいわ!」

「じゃあ一緒にっ、一緒に!」

「ええ、一緒にしましょうッ!」

「あ、ああああああっ!!」

「あん、んんっくぅ・・・・・・あっ!」

「お姉さま、私っ、お姉さまに虐められて虐めてる!」

「私もフランドールを虐めて虐められてるわッ!」

「にゃああああんっ、あ、あああッ」

「あっ、っ・・・・・・」

「お姉さま、お姉さまっ」

「あ、ああああっ」

「おね、え・・・・・・さ・・・・・・ま??」

「フ、フラン・・・・・・最高、最高よ・・・・・・あなたは、あなたはあなたは、フランフランフランフランンンンンン!!!!」

「ああああああッ!?! い、痛い、痛いわお姉さまあああああッ!!」

「フラン、フランっ! フランドォォォォォーーールッ!! あ、ははは、あははっ、ははっははははッ!!!」

「止めてぇえええええーーーーーーーーッ!! フラン、痛いの、いやぁあああああーーーーーーーーーッ!!」

「ははははははははははははははッ!!! 美味い、美味い美味いッ! あははっははははっ、はははははッ!!」

「あ、あっ、お、あッ? あ、おね、お姉さまっ、血、血ぃ・・・・・・血を吸わないでェェェーーーーーー!!!」

 

 

 と、二人の矯声は途中でレミリアの気の狂った笑い声、フランドールの困惑した悲鳴に次第に変わっていった。

 

「・・・・・・永琳さん、よくこんなエグイこと思いついたな・・・・・・」

 ドッピオはゲンナリして言った。

「あらあら? 私は当然のことと思ったまでよ? 人の家に勝手に上がり込んで、勝手にベッドを使って・・・・・・そんなお客さんにはキツいお灸を据える必要があるわ」

 永琳はにこやかに笑っていた。

「・・・・・・」

 鈴仙は能力に集中していた。それは『狂気を操る程度の能力』。相手の瞳を見て幻覚や半狂乱に陥らせたりする能力である。

 ちなみに作戦は至極簡単。あの二人が盛っている隙に鈴仙が片方の気を狂わせて共倒れにしようという作戦だ。スタンドで戦ってくれ。

「これで姉一人に絞れたわ。さぁ、貴方たちやっておしまい」

「口調変わってるよ」

 永琳は頃合いを見て鈴仙に能力解除を命じ、スタンドで攻撃するように言った。スタンドはスタンド使いでしか倒せない。永琳はそれを知っているから攻撃しないのである。

「『墓碑名(エピタフ)』!」

「『セックスピストルズ』!」

 二人はスタンドを出して恍惚の表情のレミリアに襲いかかる。

「ヨッシャアアアアアア!!」

「ブチヌクゼテメェエエエエラァァァーーーー!!!」

「キャッホーーーー!!」

 鈴仙は弾幕を可能な限り展開し、ドッピオはそのまま突っ込む。弾幕はドッピオを取り巻く形で進んでいくがドッピオに当たることはない。事前のうち合わせ通りだ。

 ――――と、ここでレミリアが我に返った。

「――――ハッ!?」

「もう遅いッ!! 喰らえクソサイコレズヤロォォーーーーーー!!!」

 

 ドゴォッ!!

 

 と、ドッピオはレミリアに『墓碑名(エピタフ)』の拳を叩き込む。そして息をつかせぬままレミリアの全身に『セックスピストルズ』による支援弾幕が叩き込まれた。

 

*   *   *

 

 ドッピオはすぐに体勢を立て直し『墓碑名(エピタフ)』で十秒後の未来を見る。そこに写し出されたのは「全身を弾幕に打ち抜かれ、右腕はもげ、断末魔を叫ぶレミリア」の姿だった。確実に自分たちの攻撃が効いた証拠だった。

「――――どうよ、ドッピオ! 未来はっ!?」

「カンッペキだぜぇーー鈴仙!! ばっちり、奴は死にかけだ!」

 その言葉を聞いて鈴仙は安心する。てゐから聞かされていたドッピオの未来予知は必ず起こる現象である。しかし、もしレミリアが運命を変えようとしてもそれは体調が万全の時に限るはず。

「勝ったわ! 確信できるッ!」

 鈴仙がそう言った直後、レミリアの叫び声が挙がった。

「GYAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 全身から血を吹き出し、喉をバリバリとかきむしりながら彼女は悶えていた。

 ドッピオの言っていた未来予知の通りだ。レミリアはこれで死ぬ。――――と、思っていると。

「・・・・・・変だ、レミリアの右腕がまだ『繋がっている』」

 彼はそう言ったのだ。

「――――はッ!?」

 そういえば、と鈴仙は思う。ドッピオは顔面を殴り付け、鈴仙は『セックスピストルズ』には全弾急所を狙わせたのだ。『右腕』がもげるなんてあり得ない。そこに攻撃は当たっていないのだから――――。

 

「GGGGHAAAAAAAAAAAAッッ!!」

 

 そのときだったッ! 3人にとって全く予想外の出来事が起こったのだッ! ドッピオは確かに十秒後を見ていたッ! だが、それは課程をすっ飛ばして見た十秒後だ!

 どの段階でレミリアの右腕がもげるかなんて、彼は知らなかったのだ!

 

「「な、ナニぃーーーーー!?!?」」

 

 ドッピオと鈴仙は同時に声をあげた。それはレミリアの常軌を逸した行動を見たからである!

 彼女は叫びながら、左手で右腕を掴むと――自分でッ! それをもぎ取ったのだ!!

「な、何を考えているんだァァーーーーッ!!?」

 そしてレミリアは依然として叫び声を上げながら、その自分でもいだ腕を――――。

 鈴仙の幻覚によって根こそぎ血を奪い取ったフランドールの残骸に突き刺したのである!

「GYAAAAAAAAAAAA!!!!」

「く、狂ってるッ・・・・・・!!」

 レミリアの行動に鈴仙は表情を歪ませる。まさか、吸血鬼とはここまで『ネジが外れた』存在だとは思わなかったから。

「――――違うわ二人とも」

 その時、ドッピオと鈴仙の背後で声がかけられる。

 八意永琳の落ち着いた声だった。

「永琳さん・・・・・・」「師匠?」

「あれは『生命の危機に瀕した生物が最後に行う不明な行為』ではないわ。あれは・・・・・・言うなら『たった一人の愛すべき妹を救う姉の行為』よ」

 その言葉に二人は固まる。

 

 ――――まさか・・・・・・?

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 レミリアの叫び声が止んだ。

 

 嘘だ、いや、嘘に決まっている。レミリアは死んだ。致命傷だ。いくら吸血鬼と言っても全身の急所を同時にぶち抜かれたのだ。再生力より先に死が訪れるハズだ。

 だから、背後にいる『二人』は――――。

 

 レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットな訳がない。

 

「「そんな訳あるのよねェェエエエエーーーーーーー!!!!」」

 

 二人は混ざり合うようにお互いの体を絡めながら、ドッピオと鈴仙を見下していた。 二人の予想は裏切られた。最高に悪い形で。

 

 それを見た永琳は肩をすかす。

 うーん、やっぱり失敗だったか、と言いたげに。

 

*   *   *

 

 レミリアは確かにあのままでは死んでいた。だが、それは『フランドールの血液を吸っていなかったら』の話である。

 吸血鬼の力の源泉とはもちろん血液である。そして彼女らは量より質を好む。

 また、吸血鬼は同族を手に掛けることは殆どない。以前も言ったが吸血鬼という種族は『もっとも人間に近い』のだ。少数の状態であるならば吸血鬼たちが争う状態は稀有だと言えよう。

 ゆえに、彼女たちはお互いの血の味を知らなかった。

「ごめんねごめんねフランドール・・・・・・私が、しっかり者じゃなかったばかりに辛い思いさせちゃったわ」

「ううん、いいのよお姉さま。仕方がないし、それよりも今私はお姉さまと血を共有しているのがなによりも幸せだわ」

「本当に? フランドールは幸せなの?」

「うん、幸せだよ。お姉さまと一つになれた感じ」

「・・・・・・あなたが幸せなら私も凄く幸せよ」

「私の方がお姉さまより幸せだよ?」

「いや、私の方がフランよりもっと幸せよ」

「じゃあ私はその何倍も幸せ」

「いいや私は更にその何倍も幸せ」

「無限に幸せ」

「無限に幸せ」

「同じだね」

「ええ同じだわ」

「嬉しいわ、お姉さま。こんなに嬉しいときは・・・・・・」

「そうね、フラン。こんなに嬉しいときは・・・・・・」

「殺しましょう」

「ええ、殺しましょう」

「どっちから殺す?」

「あっちから殺す?」

「私はお姉さまを操ったあの兎を殺したいわ」

「私は私の顔面を殴りやがったあの人間を殺したいわ」

「分けっこしましょう」

「そうしましょう」

「私が左で」

「あなたが右ね」

「そうね」

「そうしましょう」

 どちらが話しかけているのか、交互に話しているのか分からない錯覚に陥ってしまう不気味な会話。と、レミリアとフランドールは同時に臨戦態勢に移った。

「『キラークイーン』」

「『クレイジーダイアモンド』」

 ババァァーーーーーーーz_________ン!!

 

 

――――――――

 

 「藍、今なんか失礼な擬音語が聞こえた気がするわ」

 「気のせいでしょう」

 

――――――――

 

 二人の背後にスタンドが現れる。片方は見る者を魅了するほど『美しい』スタンド。もう片方は見るもの不快にさせるほど『汚い』スタンド。ドッピオと鈴仙は二人が完全にやる気なのを見て一瞬たじろいだ直後――――。

 

 ぶつッ・・・・・・!!

 

「――――は?」

 ドッピオのすぐ耳元で何かが砕ける音がした。

「ぎゅっとしてドカーン」

 

「れ、鈴仙ーーーーーーーーーッッ!!?」

 

 ドッピオの横にあったはずの鈴仙――――いや、鈴仙の頭部が一瞬にして砕け散ったッ!!

 

 い、いつ!? 一体、どこから、何がッ!? 攻撃!? いや、それとも――――

「う、うおおおおおおおおおおお!!?」

「そして『元通り』」

 

「――――あれ?」

 

 と、ドッピオが言葉を失っている間に――――鈴仙の頭は元に『戻って』いた。当の鈴仙は目をパチクリするだけである。

 自分の身に何が起きたか全く把握してない。

「あれれー? 自分に何が起きたか、全く分かってないみたいだねぇーーーー?」

 フランドールはにこにこしながら鈴仙に笑顔を向けた。

「今のは――」

 永琳は先ほどの光景を一部始終見て可能性を考える。

 今のは幻覚じゃあない。確かに優曇華の頭はフランドールの『あらゆるものを破壊する程度の能力』で吹き飛んだが――――一瞬で治ったのである。現実だった。

「――く、何したかは知らないけどっ! 同じスタンド使いなら負けられないわ!!」

 と、鈴仙は『セックスピストルズ』を出してフランドールに向かって乱射する。そして鈴仙はフランドールとの距離を詰めていく。

「全員配置について!! 取り囲むの!!」

「ブッツブスゼェエエエエーーーー!!」

「ドオリャアアア!!」

 ピストルズは鈴仙の放った弾幕に乗り、フランドールの周りで弾幕を弾き飛ばしながら囲んでいく。その間も鈴仙は弾幕を展開し続けているが

「・・・・・・はぁ」

 フランドールはため息を付きながら――――。

「ぎゅっとして――――」

「鈴仙ッ!! 頼むっ、逃げろぉおおおおおーーーーーー!!」

 未来を予知したドッピオは鈴仙へ力の限り叫んだ。彼は見てしまった。鈴仙に起こる地獄を――――。

 

「よそ見とはいい度胸ね?」

 

「はッ!?」

 

 ガンッ!!!!

 

 ドッピオは突然目の前にいたレミリアに顔面を思いっきりぶん殴られた!

 

 ドゴォッ!!

 

 ドッピオは病室の壁を突き破り外へと放り出される。

 

「――ってことでさっきの『借り』を返したけど・・・・・・永琳は何もしないのかしら?」

「冗談ね、スタンドを使えない私が貴方たちに勝てるとは思ってないわ。――――私は優曇華の援護に徹底する」

 永琳は横切るレミリアを流し見る。その右腕は既に再生していた。

「・・・・・・あなただけでも逃げればいいじゃあない。私たちはここを全滅させるつもりだけど・・・・・・。あなたくらいなら逃げきれるかもね?」

 スタンドを出現させて永琳を睨む。

「――――全滅?」

 と、レミリアの視界が歪んだ

「ゑ――――」

 永琳は普段では思いも寄らないほどの超スピードでレミリアの澄まし顔を蹴り抜いていた。

 

「やってみなさい。たかだか500歳程度の餓鬼が――私と姫様の箱庭を破壊そうだなんて」

 

 ズガンッッ!!

 

 先ほどドッピオがレミリアからぶん殴られて飛び出していった数倍の速さでレミリアは永遠亭から追い出される。

「――――っく、あのババア・・・・・・!! ぶっ殺・・・・・・」

 すぐに起き上がり永遠亭に向かって段幕を展開しようとすると・・・・・・。

 ごんっ!

「かっ――――!?」

「おまえがこっちに気付かないのは予知済みだマヌケがッ!!」

 背後からの衝撃に思わず足を着く。ドッピオが頭から血を流しながらレミリアの後頭部をかち割った。

「・・・・・・ええい、忌々しい・・・・・・ッ! 私とフランの包容を邪魔した挙げ句、こんなことをッ!!」

「・・・・・・頭割れてんのに何で生きてんだよコイツっ!!」

「吸血鬼だから。それよりお前は一体何なのよ?」

 展開していた弾幕を止めて挑発してくるドッピオの方を振り返る。

「俺はヴィネガー・ドッピオ。ただの人間だ」

「・・・・・・殺してもいい人間ね。紫が言ってたわ」

「『ゆかり』?」

 ドッピオが首を傾げていると「いや、貴様には関係ないわ」とレミリアは首を振る。

「謝っても許してあげないわよ? このレミリア・・・・・・容赦せん!!」

 レミリアは叫び弾幕を展開する。大小様々な大きさの弾幕だ。普通なら避けることはほぼ不可能な高密度弾幕だが――――。

「『見える』! 俺が避ける『未来』がッ!!」

 するするとドッピオは右に左に彼女の弾幕をかわしていく。弾道が予知できるのであれば、避けるのは簡単だ。

「人間の癖にやるわね・・・・・・」

 と、レミリアは懐からカードを一枚取り出した。

「スペルカード 獄符『千本の針の山』」

 彼女が唱え終わるとドッピオの予知には足下から大量の剣山が生えてくる状況が見えた。

「な、なにぃぃぃーーーーーーッ!!」

 レミリアの目の前から剣山が伸びる! その間もレミリアは高密度の弾幕を浴びせ続けているためドッピオに逃げ場はなかった。

「串刺しになれッ!」

「うおおおおおおおぉーーーーー!!」

 叫びつつ弾幕をかわしているがどうあっても逃げ場が見あたらない。次第に剣山はドッピオの目の前まで生えてきていたッ!

「死ねぇええええ!!」

 レミリアは止めとばかりに自機狙い弾をドッピオに乱射するッ!

 

 だが――――消えた。

 

「――――はッ!? 奴が消えたッ!?」

 ドッピオはレミリアの弾幕に為す術もなく殺された――と思ったが瞬時にレミリアの視界から消えたのである!

 弾幕を一旦止めて辺りを見回すレミリア。もしかするとあの人間はまだ何か能力を持っているかもしれない――。と、ドッピオが消えた辺りに警戒しながら近づいた。

「・・・・・・」

 が、やはり真っ暗なままだった。まさか瞬間移動か? と考えた瞬間!

 レミリアの下顎に鈍い衝撃が走る――――!

「――油断しすぎだクソマヌケがッ!! この攻撃が入るのもも予知で確定済みッ」

 突然ドッピオが下から現れたのである!

 レミリアは視界の端に『穴』があることに気が付いた。

 しまった――――落とし穴だ。何で、というか普通ないだろ。と思っていたが。

(ぐっ・・・・・・! そうか、兎の・・・・・・!)

 地の利はドッピオにあった。

「もいっぱぁあああつッ!!」

 レミリアは続けざまにドッピオの『墓碑名(エピタフ)』の拳を右顔面に叩き込まれる――――。

 ボギィッッ!!

「ぐ、あッ!?」

 彼女の綺麗な八重歯が飛んでいった。

「――――そしてッ! そこの地面も『落とし穴』であることは予知済みッ!! 串刺しになるのはお前だァアア!!」

 ボゴォッ! 

 ドッピオの宣言通り、レミリアが飛んでいった先の地面は落とし穴になっており――――。

(だから、何でこんなに落とし穴が多いのよッ!!)

 心底うんざりしていた。

 ザグザグザグゥ!!

「きゃああああああああッ!!」

 落とし穴の底にはてゐ特製の竹槍が敷き詰められておりレミリアは綺麗に突き刺さった。

(ぐ、畜生ッ! 運が悪すぎるッ! 『運命』は私に味方してくれるんじゃあないのかしらッ!?)

 幸いにも急所ではなく頬をかすめたり、腕を貫通しただけだったりと致命傷では無かったがこんなにも痛めつけられてレミリアは内心超、ぶちぎれていた。

「・・・・・・ッ!! ええい、このくらいっ」

 無理矢理竹槍から腕を引き抜き羽を広げて飛翔するもその動きはどこと無くぎこちない。続けざまに頭に打撃を食らっており巧く飛行できる状態ではなかった。

 が、なんとか穴から脱出する。

「くそッ・・・・・・、私の歯は・・・・・・」

 口元を押さえながらドッピオの方を見ると彼の足下にレミリアの八重歯を発見する。

「・・・・・・歯が取れたわ・・・・・・拾って頂戴」

「イヤだね。自分で拾いに来い」

「・・・・・・大事な歯なの。お願いだから取って」

「何言ってやがる。何で俺が取らなきゃいけないんだよ!」

「だって取ろうとしたときに貴方攻撃してくるでしょう?」

「・・・・・・まぁ、するだろうな」

「ほらね?」

「それでも俺が取ってやる理由にはならない」

「じゃあどうすればいいのよ」

「自分で取りにくればいいじゃあないか」

「だって攻撃するでしょう?」

「じゃあ分かった。攻撃しないよ。『約束』する」

「・・・・・・信じられないわ」

「じゃあお前の歯は一生このままだな」

「・・・・・・分かったわよ。取りに行けばいいんでしょう」

 と、レミリアは忌々しく顔を歪ませて地面に降り立ちドッピオの脇に落ちている八重歯を拾おうとしたとき――――。

 ガスッ!

「おおっとぉおお~~!! やっぱり気が変わった、『拾って』やる!」

「ぐぅぅッ!?」

 拾おうと伸ばした左手を歯に触れる直前でドッピオはレミリアの左手を踵で思いっきり踏みつけたのだ。

「ちなみに攻撃しないっていう『約束』は俺の気が変わった時点で『破棄』したからな? そのことで俺を攻めるのはお門違いだぜ?」

 ぐりぐりと骨が折れてしまうほど踏みつける。そのたびにレミリアは痛そうに顔を歪ませてしまう。

「よっと」

 ドッピオはそう呟きながらレミリアの歯を拾い上げた。

「俺の友達を殺そうとしたお前等が悪いんだぜ」

「・・・・・・そうね私が悪かったわ。だけど」

「――あ?」

 ドッピオは素っ頓狂な声を上げてレミリアを見下ろす。そこには血塗れでドッピオに屈服していた彼女の姿があった。だが、その背後に――――!

「貴方が間抜けなことは本当に良かったわ」

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 

「『キラークイーン』第一の爆弾ッ!!」

 レミリアはドッピオを睨みながらスタンドを発現させていたッ!

「しまッ!?」

 ドッピオは反射的に未来を見るが――――そこに映し出されたのは真っ黒な映像。それはつまり――!!

 

 『ドッピオの未来は存在しない』ことを示していた。

 

「こ、この人外の雌風情がァアアアーーーーッ!!」

 ドッピオは激昂して『墓碑名(エピタフ)』の拳をレミリアの頭部に叩き込もうとするが――――。

 

 かちっ!

 

 ドゴォォォォォオオン!!!

 

 レミリアの八重歯はすでに『爆弾』に変えられていたのだった!! 辺りに閃光と爆音が響き渡り、その爆弾は被害者をたやすく塵に変える。

 

 

 しばらくしてレミリアは起き上がりぺっと血を吐き出す。

「私の『キラークイーン』は触れた物体を爆弾に変える能力・・・・・・。フランドールにもまだ知られていないこの能力に『弱点』はない」

(だけど・・・・・・結構手間取っちゃったわね・・・・・・未来を読まれるとこうも苦戦してしまうのか・・・・・・)

 レミリアは歯を押さえながら自分の八重歯が既に生え変わりつつあることを確認して妹がまだいる永遠亭へと戻っていった。

 

*   *   *

 

 時は少しだけ遡り、レミリアが永琳に蹴り飛ばされた直後のこと。

「ぎゅっとしてどかーん」

 フランドールはスタンドを出しながらそう言った。すると――――。

 

 ぶつっ・・・・・・!

 

「優曇華ッ・・・・・・!?」

 永琳の目の前で再び鈴仙の頭部が爆散した。

 同時に鈴仙の弾幕とスタンドは消失し、鈴仙だった首のない死体は糸の切れたような人形のごとく崩れ落ちる――――直前で

「そして『元通り』」

 フランドールの合図で鈴仙の頭は元に戻っていた。

「・・・・・・??」

 もちろん、鈴仙はそのことに気が付いていない。おそらくは一瞬にして自分の弾幕が相殺されたと勘違いしている。

「く、くそ!? 一体何が起きているのっ!?」

 状況を理解していないのは鈴仙だけだった。

「待ちなさいッ優曇華! 今貴方は・・・・・・ッ!」

 永琳が説明しようとしたところで――――。

 

「ぎゅっとしてどかーん、そして『元通り』」

 

 悪魔は三度鈴仙の頭をすりつぶした。

「――――ッ!!!」

 流石に三回目となると永琳も理解する。これはフランドールの『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』と彼女のスタンド『クレイジーダイアモンド』を組み合わせて使っている極悪のコンボだ――! おそらく、フランドールのスタンドは『壊したものを元に戻す能力』とか、『一瞬にして怪我を全て治す能力』とか、そんな感じだろう。

「・・・・・・?」

 流石に鈴仙も疑問符を浮かべ続ける。自分の身に何が起こっているのだろうか、という疑問。そんな疑問を抱いている最中でさえ――。

 

「ぎゅっとしてどかーん、そして『元通り』・・・・・・ふふふ、あははは・・・・・・♪」

 

 フランドールは鈴仙を殺し続けていた。

 

*   *   *

 

 何だ? 私は今どうなっているの? 一瞬記憶が飛んで、そして全て最初の状態に戻ってしまう。状況を整理しようとする度に、再び記憶が飛んでしまう。

 フランドールのスタンド? いいや、彼女のスタンドは常にフランドールの背後にいるだけだ。

 ――――ほら、また記憶が飛んだ。どういうことだ? 師匠が何かを言っているが飛び飛びで全く話が理解できない。フランドールも何かを言っている。でもそれもよく聞こえない。

 でも、記憶が飛ぶときはフランドールが何かを言っている最中だ。彼女は笑っていた。師匠は必死に叫んでいる。何だ、何がおきているのかしら? フランドールは笑う。ただ笑い続ける。師匠は何かを訴えている。何を? 何が?

 

「――――飽きた」

 

 と、フランドールは呟いた。

「――はッ?」

 記憶の断続的な途切れが唐突に収まった。いまいち状況が把握しきれない。フランドールは何に飽きたのだろうか?

「フランドールッッ!!!」

 と、隣で師匠が叫び弓を構えていた。

「し、師匠?」

「落ち着きなよおばさん。当の本人は何も気が付いてないんだから」

 フランドールは矢を構える永琳にそう言った。

 

「たかが16回殺しただけじゃん。生きてるんだし」

 

「――――は?」

 私の頭では理解しきれなかった。フランドールの言葉が全く理解できなかった。

 

 ――――16回? 何のことだ・・・・・・??

 

 訳が分からないままフランドールは口を開けた。

 

「ぎゅっとしてどかーん」

 

 次の瞬間、私の体は崩れ落ちた。まるで支えを失ったかのように、ごろんと地面に倒れた。

 どちゃあ

「・・・・・・え??」

 いや、倒れた音にしてはやけに鈍い音だ。泥だらけの地面に転んだような汚い音。私の耳にはそう聞こえた。

 そして起きあがれなかった。

「・・・・・・あ、あれ?」

 起きあがるために手を突くが起きあがれない。何かが足りない。立ち上がるために絶対的に必要な――――。

 無意識に私は下半身を見た。見えなかった。角度的な問題ではない。

 

 そこになかった。

 

「うわあああああああああああああああああああ!!!!!???」

「フランドールッ!!! 今すぐ治しなさいッ!!!!」

 理解不能、理解不能。

「あああッ・・・・・・あっ・・・・・・」

「イヤだ♪ 今度は壊れる瞬間じゃなくて悲鳴が聞きたいの♪」

 理解不能、理解不能。

「貴方・・・・・・ッ!! この・・・・・・ッ!? がはッ!?」

 理解不能、理解不能、理解不能!!

「『クレイジーダイアモンド』。あなたには見えないよね? だから攻撃を避けられるはずがない――――」

「・・・・・・ッ!! れ、鈴仙・・・・・・ッ逃げ・・・・・・」

 理解不能、理解不能、理解不能理解不能理解不能ッ!!

「ドシャシャシャシャシャシャァアアアアアアアーーーーーッッ!!」

 理解不能、理解不能、理解・・・・・・

 

「そして『元通り』」

 

*   *   *

 

 フランドールが再び呟くと鈴仙は再び意識を覚醒させた。

「・・・・・・??」

 自分に今起きたことは果たして現実だったのか。いや、彼女は理解していた。

「い、あ・・・・・・」

 自分は彼女に『何度も何度も何度も何度も』殺されたのだと。

「どう? 『絶望』してる?」

 鈴仙に話しかけたのは無傷のフランドール。辺りに永琳の姿は見あたらない。

「あなたの師匠は私の能力で『壁』と一体化してもらってるよ。死ななくても、これじゃあもう動けないよね・・・・・・?」

 フランドールの視線の先には壁があった。不自然に顔の模様のある、『壁』が・・・・・・。

「あなたは殺さないであげるわ。でも、私たちの邪魔をしたんですもの。『慰み物』にはなってね・・・・・・?」

 悪魔は右手をかざした。これから何が起こるかは鈴仙にとって容易に理解できるものだった。

 

「ぎゅっとして・・・・・・」

 

*   *   *

 

 鈴仙の耳にはこんな会話が聞こえていた。

 

「フランドール・・・・・・こっちは終わったわ。ちなみにあいつが紫の言ってたドッピオって奴で・・・・・・。いや、こりゃまたヒドいことしたわね」

 

「あら、お姉さま。たった一人の人間相手でそんなにぼろぼろになるなんて・・・・・・。スタンド使ったの?」

 

「使ったわよ! あんたには教えてあげないけどね。と、そういえば咲夜は・・・・・・」

 

「こっちだよお姉さま! ほら、ヒドい顔!」

 

「うわぁ、ボコボコにもほどがあるわね・・・・・・」

 

「治してあげよっか?」

 

「早めに済ませてね。早くしないと夜が明けてしまうわ」

 

「もう治した」

 

「早い!」

 

「美鈴はどうするの?」

 

「・・・・・・あー、じゃあアイツに咲夜を運ばせましょうか。私たちじゃ重いし」

 

「そうだね。おーい、美鈴ー! 怪我治してあげるから手伝ってー!」

 

「しょうがないから私が美鈴のところまでは咲夜を運びましょう。『キラークイーン』、咲夜を運びなさい」

 

「あっ、お姉さま・・・・・・柱が邪魔で美鈴が取れないんだけど」

 

「直せばいいじゃない。柱を」

 

「そうだね、そうだった!『クレイジーダイアモンド』、柱を直してついでに美鈴の怪我を治せ!」

 

「おぉ~・・・・・・、スゴいわね。ぶっ壊した玄関まで元通りなんて・・・・・・」

 

「う、う~ん・・・・・・ここは??」

 

「美鈴! おはよー! ほら、咲夜運んで!」

 

「え? あ、はい・・・・・・あれ?」

 

「ほら、さっさと帰るわよ。こんなところにもう用はないわ」

 

「えっと・・・・・・あれ、記憶が・・・・・・」

 

「いいから帰るの! ほら、咲夜おぶって!」

 

「って咲夜さん!? 怪我は・・・・・・治ってる!?」

 

「私が治したんだよ!」

 

「え? 妹様が? も、もう何がなんだか・・・・・・って慧音さんが倒れてるんですが」

 

「あぁ・・・・・・ほっときなさい。見ちゃだめよ(説明面倒だし、さっさと帰りたい)」

 

「分かりました・・・・・・」

 

「お邪魔しましたー」

 

 鈴仙が聞いていたのはそこまでだった。

 

 

*   *   *

 

 ヴィネガー・ドッピオ スタンド名『墓碑銘(エピタフ)』

 死亡

 

 鈴仙・U・イナバ スタンド名『セックスピストルズ』

 再起不能(精神的破壊)

 

 八意永琳

 行方不明(永遠亭病室の壁に不自然なシミあり)

 

*   *   *

 

 ここは魔法の森。この中心である一人の男が倒れていた。

 

「っはぁッ!? ぐっ、くそッ! 久しぶりに死ぬとなると・・・・・・キツいな・・・・・・。だが、おかげで邪魔だった『記憶のないドッピオ』は絶命した!! これで俺が再び表に出ることが出来たぞ!!」

 彼――――ディアボロは復活していた。ドッピオの呪縛から解放され喜びに浸る。そして彼には確認すべきことがあった。

 

「『キング・クリムゾン』」

 彼が呟くと当然のように背後にスタンドが現れた。

「よしッ! スタンドは扱える! これであの憎き八意永琳に一泡吹かせてやったというわけか・・・・・・!!」

 彼は邪悪な笑みを浮かべた。そして我に返る。

 復活したということは、まだ自分にはレクイエムの効果が続いているということ。つまり、再び死の輪廻が迫っているということだ。

(一度目、二度目とこの世界でもしっかりと『俺』のときは死んでいたからな・・・・・・。再び用心の生活に逆戻りか)

 とにもかくにも、最悪だった状況が好転したのだ。あの悪魔姉妹には感謝しなくてはならない。

 ディアボロは周囲を確認する。まだ幻想郷は夜だ。ドッピオの中にいたときはここにはいくつかのルールが存在することを知ったのだ。

(夜は妖怪が出没しやすい・・・・・・まぁ、今の『キング・クリムゾン』がある状態なら負けることはまず無いと思うが・・・・・・あの姉妹のような妖怪はゴメンだ)

 ディアボロはまだ真っ暗の魔法の森を見渡す。次第に目が慣れていき、周囲に見たことがないキノコや不自然な形をした花が咲いていることに気が付く。

「ふん・・・・・・、予想死因に『中毒死』が加わったな」

 二日ぶりくらいの『予想死因』に若干の懐かしさを覚えつつ、ディアボロは『墓碑銘(エピタフ)』で未来を確認しながら歩を進めた。

 現実世界とは違い、幻想郷ではレクイエムの効果が薄くなっているのか、ディアボロに襲いくる『死因』は1時間おき程度まで減少していた。

 と、ディアボロが『キング・クリムゾン』で死ぬ瞬間の時(ほんの1秒程度)を飛ばしながら進んでいるととある民家を見つける。

 それは普通の洋風の一軒家だった。

 

(・・・・・・民家か。妖怪に襲われる危険が減るだけでもましか)

 

 彼はそう判断してその魔法の森に佇む民家をノックした。

「・・・・・・すまんが、道に迷ってしまったんだ。泊めてくれはしないか?」

 当然、返事はない。ディアボロは現在の時刻が分からないため無理はないだろう。彼は知る由もないが現在の時刻は午前3時。ふつうの民家なら誰も起きていないはずである。

 だが、なぜディアボロはこの家をノックしたのか?

 答えは簡単だ。『家の窓から暖かい光が爛々と漏れだしていた』からだ。当然、ディアボロの頭ではまだ時刻は深夜を回っていないと思っただろう。

 

 ――――もちろん、魔法の森という辺境の地で午前3時という真夜中にも関わらず部屋の明かりがついているような家はまともではない。

 

 ディアボロがしばらく待っているとドアがガチャリと開いた。

「・・・・・・こんばんは、ごめんなさいね。ちょっと出るが遅れちゃって」

 民家から出てきたのは肩に掛かる程度の長さの金髪でカチューシャをし、青い瞳をした見た目18歳程度の女性だった。若干『幼女』かと思い身構えたがどう見てもせいぜい『少女』が限界である。ディアボロは心を落ち着かせながら尋ねた。

「すまない、こんな夜更けだが・・・・・・一晩泊めてもらえないだろうか? 妖怪に襲われそうで・・・・・・」

 するとその少女はにこりと笑顔を作って頷く。

「構いませんよ。どうぞ、いらしてください」

 意外だな、とディアボロは感心した。こんな狂った世界にもこんなに優しい人物がいるとは。まるで自分とは対極にいるようだ。

 ――――彼女は礼儀正しい態度でディアボロを迎え入れた。

 

 現在時刻は午前3時。明らかに怪しいという疑問を持たず、ディアボロは民家に入ってしまった。

 

 第12話へ続く・・・・・・

 

*   *   *

 

 後書き

 

 というわけでボスとジョルノの幻想訪問記 恐怖!紅魔館の悪魔たちが終わりました。

 永遠亭メンバーほぼ全滅ですね・・・・・・姉妹が強すぎた。

 

 あと、祝!ボス復活おめでとう!そろそろタイトル詐称とか言われてもおかしくなかったけど、やったね!

 

 さてさて、お察しの通り、次回からは東方の可愛い専門、アリス・マーガトロイドさんのお話です。ん? 永遠亭はどうするかだって? ちゃんと考えてあります。気にするな!

 

 12話でまた会いましょう。では。

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