ボスとジョルノの幻想訪問記   作:フリッカリッカ

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銃弾と氷殻②

ボスとジョルノの幻想訪問記3

 

 前回のあらすじ!

 

 八意永琳によって尋問を受けるディアボロ!

 私はメイド長を辞めるぞおおおおお! オジョオオオオオ! 状態の咲夜!

 鈴仙に発現したスタンド、『セックスピストルズ』!!

 そして、ディアボロの中に芽生えた新たな人格ッ!

 

銃弾と氷殻②

 

 ここは幻想郷、永遠亭。不思議なウサギたちと、月の住民たちが共同で営む幻想郷唯一の病院施設である。

 普段からウサギたちによって騒がしいこの場所は今朝、いつもにもまして騒がしかった。

「オイ! ソレハオレノニンジンダロッ! トルンジャアネーヨ!」

「チゲーゾ、オレノダ!」

「ウエエエエン、レイセン! 6ゴウト7ゴウガオレノニンジンヲ~!」

「ウルセー!! コンナコトデナイテンジャアネー!!」

「ケツニニンジンツメコムゾ!! イイカラダマッテロ!!」

「こらこら! 仲良くしなさいよあんたら! 6号! 7号! 5号を虐めないの! ああ、2号も3号も! ちょっと、どうにかしなさいよ、1号!」

「ドーニモナラネーヨ、レイセン。レイセンノ『スタンド』ナンダ。オレハリーダーダガ、コイツラハマトメラレネーヨ」

「はぁ~、一体何なのよ・・・・・・このちっちゃいてゐ達は・・・・・・」

 鈴仙はベッドの上で6匹のミニてゐ達に人参を与えているところだった。・・・・・・何故かは知らないが、人参が食べたいという。仕方がないから鈴仙は朝の誰も起きていないうちに庭の畑から数本の人参を持ってきたのだが、これがどうも上手く食事が出来ない。いちいち喧嘩するのだ。

 しかし、その姿はスタンド使いではない永琳とてゐ(本物)には見えるはずもなく。

「・・・・・・ちょっと、永琳様。これは・・・・・・鈴仙、気でも狂ったの?」

「・・・・・・優曇華? 朝から一体何を・・・・・・?」

 ただ一人で朝から人参でお手玉をしながら独り言をぶつぶつと呟くイタい彼女を眺めていた。

「えッ!? あ、師匠! てゐ! えっと、これは・・・・・・その」

 鈴仙には小さなてゐ達は見えているが、二人には見えていない。そんなことを知らず、鈴仙はミニてゐ達を隠すが、二人にとっては虚空を掻く所作にしか見えなかった。

「・・・・・・優曇華、ごめんなさいね・・・・・・あなたが、こんなになってしまうまで傷心しきっているなんて・・・・・・」

「・・・・・・鈴仙、今度からあなたには優しくするよ・・・・・・今までちょっかいかけてゴメン」

 完全に頭がイかれてしまったと思い二人は視線を落としてそう呟く。

「え、ちょ? 二人とも何言って・・・・・・!? 何で泣いてるんですかー!? 謝らないで! そんな目で見ないでーーー!」

 その後、鈴仙が「落ち着いて」を1億2873万6807回ほど言った後にジョルノが病室に入ってきた。

 

*   *   *

 

 しばらくして、永遠亭は落ち着きを取り戻し今後のことについて話し合っていた。

「・・・・・・まさか、というかやっぱりか。優曇華にも『スタンド』が発現するなんて」と、永琳。

「複数体の自我を持ったスタンド・・・・・・僕には昔の記憶は完全に残っていませんが、これに近いものは何となく覚えています。――何だか、懐かしいような」と、ジョルノ。

「いやー、しかし驚きウサ。『スタンドは自己の精神の具現像である』っていうジョルノの言葉を信用するなら・・・・・・鈴仙あたしに気があったんだー」と、ニヤニヤしながらてゐ。

「そ、そんなわけないでしょー! ば、ばっかじゃないの!?」と、鈴仙。

 四人は四者四様の感想を述べる。

「レイセン、レイセン!」

 と、鈴仙のスタンド『セックスピストルズ』の内の一匹、額に1と書かれたミニてゐが鈴仙の耳元へと上ってくる。

「な、何よ・・・・・・1号。何か気になることでもあるの?」

「イマスタンドツカイハレイセント、ソコノジョルノッテヤツダケダ! ダカラ、スタンドツカイニナッタオマエニハキニナッテイタジョルノノスタンドモミエルゾ!」

 もちろん、その言葉はジョルノにも聞こえており。

「あ、そうですね。鈴仙もスタンド使いになったから、僕の『ゴールド・エクスペリエンス』が見えるはずですよ」

「・・・・・・? 今、その『1号』っていう優曇華のスタンドが何か言ったのかしら?」

 永琳とてゐには1号の言葉は聞こえないためジョルノの言葉から推測するしかできない。

 だが、言っていることは何となく分かった。

 つまり、鈴仙はもうスタンド使いになったという事実、それに応じて彼女にもスタンドが見えるようになったということ。

「そ、そうね。ジョルノのスタンドか・・・・・・見てみたいわね。というか、何で1号はジョルノのスタンドを見たいって思ったのかしら?」

「ソリャ、オレハレイセンノセイシンノグゲンダカンナ! ナントナクダガ、オレタチトレイセンハドッカデツナガッテンダ!」

「へー・・・・・・、飯ってあんた達が言ったとき、一番ほしいのが『人参』って分かったのも、そのためなのかな・・・・・・?」

 鈴仙は一人で得心する。

「あー、ごめんジョルノ。話切っちゃったね。スタンド見せてくれる?」

「いいですよ、じゃあ・・・・・・『ゴールド・エクスペリエンス』」

 バァアアーーーーz____ン!!!

 突如としてジョルノの背後に金色のスタンド像が現れた!

「・・・・・・うわ、強そう。大きいし、名前の通り金ぴか。何この格差・・・・・・全然ジョルノに勝てる気がしないわ」

 あまりの自分のスタンドとの格差に鈴仙は呆然とする。ジョルノのスタンドは鈴仙のそれより遙かに大きく、力が全身に漲っているように見えた。しかも無口であり、どうやらジョルノの意志に自在に動かせるようだ。彼女は『うそ、私のスタンド・・・・・・弱すぎ・・・・・・?』と思わずにはいられなかった。

 だが、ジョルノはスタンドの右手を挙げながら優しく言う。

「違いますよ、鈴仙。スタンド像は人それぞれ違います。やはり、精神に大きく左右されるものです。僕のスタンドは人型で能力は生命を生み出す程度の能力。あなたのスタンドは群生自立型で能力はまだ分かっていない。一匹一匹は弱そうでも、集まれば強力な力になるかもしれません。それこそ、僕なんて足元にも及ばないほどに」

 あなたにはスタンドともう一つ、別の能力があるわけですから。と、ジョルノは付け加えた。

 なんだか煮えきらない鈴仙のことをしってかしらずか、1号は鈴仙の顔の前にやってきて思いっきり頬をつねった!

「ソーダゾレイセン! オマエオレタチノチカラナメテンノカ!? コンニャロー!!」

「いたたた、痛いわよ! ちょ、はなひて!」

 ギリギリッ、と鈴仙の頬はつねられている。スタンドの見えない永琳とてゐには不思議な光景が映るが、ジョルノがくすっと笑うのを見て――――。

「ふふふっ、まぁ楽しそうでなによりだわ」

「あはははは、鈴仙最高だよ、その間抜け面! やっぱりあんたには辛気くさい顔は向いてないよ!」

 笑っていた。

「ちょっと、なんれ笑ってるのひょー! しひょー! てゐ! それにジョルノもー!」

 未だにほっぺをつねらせる鈴仙もまた、涙目で笑っていた。

 ここは永遠亭。やはり、今日も平和である。

 

 ――――だが。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 隣のベッドに眠る、『彼』を除いて。

 

*   *   *

 

 永遠亭からそんな笑い声が聞こえてくる中、霧の湖では一匹の妖精が唖然としていた。

「・・・・・・え、これアタイの力? 何これ、まだ秋だったよね?? 一体・・・・・・どうなってんの?」

 そこには氷の妖精、チルノが湖の畔で立ち尽くしていた。

 彼女の目の前には完全に凍ってしまった湖が広がっていたのである。

「あ、チルノ! 良いところに!」

 そんな彼女を呼び止めたのは紅い髪をしてチャイナドレスを身に纏った紅魔館の門番、紅美鈴だった。

「め、美鈴! どうしたの?」

「いや・・・・・・ちょっと咲夜さんを捜しに・・・・・・ってなんじゃこりゃああああ! 湖が一面凍って・・・・・・寒っ! まさか、チルノ・・・・・・」

「ち、違うよ! いくらアタイがサイキョーでも一晩で湖を全面氷付けなんて・・・・・・! それにまだ秋だし!」

「・・・・・・よね。まさか、冬の妖怪? いや、彼女はこの時期山にいるはずだし・・・・・・」

「レティはそんなことしないよ! ・・・・・・でも、一体誰が・・・・・・」

 チルノもかなり困惑している。だが、美鈴はこの謎の現象より優先すべきことがあった。

「――と、チルノ! このあたりで咲夜さんを見かけませんでしたか?」

「咲夜? いんや、見てないわ。アタイはさっき起きたばっかりだから・・・・・・」

「ですよね。・・・・・・早く探さないと・・・・・・」

 美鈴はチルノに一礼をしてからすぐにどこかへ行ってしまった。

 そこに一人取り残されたチルノは・・・・・・。

「・・・・・・ま、いっか! まさか冬でもないのに湖が凍っちゃうなんて、アタイの日頃の行いがいいから神様がプレゼントしてくれたんだわ! よおーし、今日は遊ぶぞー!!」

 一面に凍る季節外れのスケートリンクに飛び込んでいった。

 

 美鈴は凍った湖を迂回しながら人里の方へ向かっていった。咲夜さんなら恐らく慣れた人里に向かっていっただろう、と思ったのだ。もしかすると歴史妖怪の元にいるかもしれない――――。

 美鈴は昨日の夜の出来事を思い返す。思えば咲夜のストレスはすでに限界を迎えていたのかもしれない。朝の進入者の時に気付くべきだったんだ。

(おかげでお嬢様と妹様はブチ切れ、館内はむちゃくちゃ。ほかの妖精メイドたちはもちろん、私やパチュリー様も手が全くつけられない。あの二人を穏やかに止められるのは咲夜さん、あなたしかいないんですよ・・・・・・!)

 美鈴は昨日の惨劇を思い出し、今は暴れ疲れて眠っている内にまともに動ける自分が早く咲夜さんを連れ戻さなければ、と思っていた。

 なお、パチュリーはぼろぼろになりながらも二人の大癇癪を何とか凌ぎきり、今は再び暴れ出さないように強力な結界を張ってもらっている。それも、二人が本気になってしまえば意味を成さないのだが。

『早く、今の内に・・・・・・はぁはぁ、あの子を、連れ戻すのよ・・・・・・。お願い、美鈴・・・・・・!』

 死にそうな表情でパチュリー様は自分を送り出した。何としても、夜までには連れ戻さなければならない――――。

「はっ――――!?」

 と、美鈴は違和感に気付く。もうすぐで人里に着く頃だが、何となく肌寒い。そう、この脇道の奥にこの『冷気』を発する何かがいる。

 直感的に美鈴はそちらの方へ向かう。もしかすると・・・・・・いや、そんなはずは・・・・・・だが、この気配は!!

 美鈴は確信して駆けだしていた。そちらの方向へ向かえば向かうほど、冷気は濃くなっていく。チルノやレティとは比べものにならない冷気。――――何なんだ、この感覚は・・・・・・。

 そして、林を抜けるとそこは少し開けた空間だった。何の変哲もない、ただの森林によくある空間(ギャップ)。だが、そこは・・・・・・。

「――――!!」

 全面が凍っていたのだ。うっかりしていると、美鈴の全身も凍ってしまいそうなほどの『冷気』。その中心にいるのは・・・・・・。

「――――あ、ああああ・・・・・・ま、まさか・・・・・・」

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 

「あら、美鈴。何しに来たのかしら・・・・・・?」

 

 氷の衣装に全身を包み、猫の耳のような物が付いたヘルメットを被る彼女は――――。

 冷めた視線で美鈴を見る彼女はッ!

 

「さ、咲夜さん!?」

 

 十六夜咲夜ッ!! だったッ!!!

 

*   *   *

 

 十六夜咲夜 スタンド名『ホワイトアルバム』

 なお、ホワイトアルバムのスーツは実体のため、美鈴にも見える。

 

*   *   *

 

 私は戦慄していた。一体咲夜さんの身に何が起こったのか。いや、そんなことではない。

 今の彼女に全く敵う気がしないのだ。

 戦って勝てる相手じゃあない。幸い、私と咲夜さんの関係はまだ良好の方だろう。彼女の痛みも私は分かっているつもりだ。

「さ、咲夜さん・・・・・・」

 と、私は第一声を彼女に投げかける。

「さぁ、戻りましょう。今にも紅魔館は壊滅してしまいます。あなたが居なければ・・・・・・私とパチュリー様だけではお嬢様と妹様の制御は不可能です」

 イヤな汗が額を流れる。全く暑くないのに・・・・・・これは冷や汗か?

「・・・・・・美鈴、私はもう戻らないと誓ったのよ」

 影がかかるヘルメットの奥で咲夜さんは静かに呟いた。

「どの面下げて戻ればいいのよ・・・・・・私は、あんなことを・・・・・・」

 言葉から察するに咲夜さんは自分の行動を後悔している。どうやら本心から飛び出していったのでは無いらしい。ついカッとなってやってしまったのだろう。

 ――――だが、それだけではこの『冷気』の説明にはならない。

 何か、別の何かが彼女の背後にある。そんな気がした。

「――大丈夫ですよ・・・・・・、二人は・・・・・・もちろん貴方の行動にも怒っていますが・・・・・・何より貴方が居なくなったという『事実』に対して怒りを覚えています。きっと、戻れば許してくれます。だから、さぁ早く」

 私は慎重に言葉を選び、伝える。自分の精一杯の説得を。

「だめよ・・・・・・今更だわ。『今更』過ぎる・・・・・・もう間に合わないのよ美鈴」

 首を振って否定の意を示す咲夜さんだが、どこか違う違和を覚えてしまう。

 咲夜さんは本当に私の言葉を聞いているんだろうか?

 確証はないが、違う物を見ているようだった。

 しかし、説得を止める気は毛頭無い。

「そんなことはありません! お願いです、私たちにはあなたが必要なんです!」

「・・・・・・そんなわけ、ないじゃない・・・・・・あなたたちは・・・・・・」

 ――――と、美鈴は一瞬。自分の言葉を後悔した。

 必要、なんて言葉。後から思えば完全なNGワード。

 しまった、と思う間もなく美鈴は身構える――――。

 

「私の『時を操る程度の能力』だけを、欲しがっているじゃあないのよォォォオオオオオオオーーーーーーー!!!!!」

 

 一瞬の後、冷気が一気に私を襲った!

「・・・・・・!? ぐ、あああああ!?」

 全身が凍り付きそうな圧倒的『冷気』! 力を緩めてしまえばその箇所から一気にピキピキと凍ってしまうであろう『力』! 溜まらず私はジャンプで後退する!

 十数メートル離れた地点で冷気は急激にその力を弱める。なるほど、あの力には適応範囲があるらしい。弾幕よりも狭いが、360°全てをカバーする『能力』!

「URRRYYYYYYYY!!」

 ふと前を向くと咲夜さんは前傾姿勢を取り、ダッシュを始める! 彼女の氷のスーツの足の裏部分はブレードになっており、走ると同時に地面を凍らせることで爆発的な推進力を得ているのだ!

 は、速い!!

「貴様等紅魔館の連中にはこの私の『時を操る力』は必要なしッ!! この全てを氷の世界へと誘う『ホワイトアルバム』のみで圧倒してくれるわッ!!」

「く、くっそおおお!!」

 一気に彼女の冷気の及ぶ射程距離内に詰められてしまい、再び全身を寒さが襲う。私は後退しながらスペルカードを取り出し、発動。

「スペル! 『彩符「彩光乱舞」』!!」

 瞬時に私の周りに虹色の弾幕が展開される。が、咲夜さんはお構いなしに突っ込んでいき――――。

 

 ズガガガガガガァン!

 

 ほとんどを被弾してしまった。

「・・・・・・あれ? 避けなかった・・・・・・? まさか、やったか?」

 と、私は動きを止めて弾幕の巻き上げる土煙で視界が悪くなった方に目を凝らす。するとそこには・・・・・・十六夜咲夜は普通に立っていた。

(無傷ッ!? そんな、一体どんな硬度なの、あの氷の鎧は!?)

「・・・・・・ふふふふふ、ははははははは!!」

 咲夜さんは右手を顔に当てて突然笑いだし。

「・・・・・・」

 止まった。そして左手をこちらに指さすように向けて、見下しながら気持ちよさそうに言い放つ。

 

「貧弱、貧弱ゥッ!!」

 

「ぐっ、くそッ! だったら、直接攻撃してやるッ!」

 私の弾幕は攻撃が通らない。だったらスペルで強化したキック、名付けて『波紋蹴り』でその鎧を砕いてやる!

「くらえっ! 『波紋蹴り』!!」

 全力で相手に飛び込み、スペカで強化した両足をさながらドロップキックのように相手に叩き込む。これを破った妖怪は一人としていないッ!

「・・・・・・ククク、いいのか美鈴・・・・・・その技は、死亡フラグだぞ?」

 だが、咲夜さんはニタリと笑みを浮かべながら私の『波紋蹴り』を簡単に両手で受け止める。

「やはりな。このまま全身を・・・・・・むッ!?」

 しかしッ!!!

「かかったなアホが!!」

 私は両足を開き咲夜さんの両腕を大きく開かせることに成功する。さっきの『波紋蹴り』なんて簡単に神砂嵐でピチュっちゃう技は単なる囮。あなたの鎧を砕くのはこの技だ!

 

「『稲妻十字裂空拳(サンダークロススプリットアタック)』!!!」

 決まったッ!! 私の渾身の一撃は咲夜さんが身に纏う氷のヘルメットの脳天にぶち込まれる!

 

 べきんッ!!

 

「――――はッ!?」

 だが。

「・・・・・・」

 砕けたのは私の両腕だった。

「ぐうううううあああああああああ!!!??」

 何て硬さだッ!! ヒビ一つ入らず、私の両腕は完全に使いものにならなくなってしまった!

 急いで体制を立て直し、彼女から離れなくてはッ!

「――――な、なに!? う、動けん、ばかなッ!?」

 しかし、私はそこから動くことができなかった! 恐怖で体が硬直したのではない! 痛みで足が竦んだのではない!

「――――貧弱、貧弱ゥッ!!」

「うっわあああああああああ!!?」

 一瞬のうちに、顔以外の全身が凍っていたのである!!

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!! ちょいとでもこの咲夜に敵うと思ったかこの間抜けがぁ~! 『スタンド』は『スタンド』でしか太刀打ち出来んということ知らないのか??」

 すたんど・・・・・・?? 何のことだ、一体、彼女は何を言っている?

 い、いや、そんなことより。この全身を覆う氷! きょ、極低温だッ! マイナス5度とかそんなもんじゃあない! 寒いという感覚ではなく、痛いという感覚さえもない!! ま、まずい・・・・・・意識が・・・・・・。

「――――貴様にはもっとも残酷な死を与えよう・・・・・・死の忘却を迎え入れよ!!!」

 

 咲夜さんがそう言って手に力を込めたのが分かった。

 

 ま、まさか・・・・・・!!

 

「URRRRRRYYYYYYYY!!!」

 

 ガッシャーーーーz_____ン!!!

 

 私の体は――――。

 

「・・・・・・ふん、この力。美鈴に試すには少し強すぎたようだ・・・・・・。まぁいい。時間はたっぷりとあるわ・・・・・・」

 

 そう言い残して咲夜さんはどこかに行ってしまった。

 

 全裸の私を残して。

 

(・・・・・・何で全裸?)

 

*   *   *

 

 紅美鈴 再起不能!(恥ずか死)

 

*   *   *

 

 永遠亭に舞台は戻る――。

「さて、朝ご飯にしますか。今日の当番は僕でしたね」

「そうね、あたしゃ姫様を起こして来るわ」

 ジョルノの一言でその場は解散となり、てゐは姫様――――蓬莱山輝夜の寝室へと向かっていった。

「・・・・・・優曇華、体調は大丈夫かしら?」

「あ、もう大丈夫です。というか、特にスタンドが発現しただけで何も起こってないので・・・・・・」

「そういえばそうね」

 と、永琳が鈴仙の目の前まで迫ってくる。

「え、ちょ・・・・・・師匠??」

 鈴仙はどうしていいか分からず視線を逸らすと。

 

 『スタンド』使いは――――。

 

「・・・・・・?」

「だ、そうよ。・・・・・・気を付けてね、優曇華」

 そう言い残して永琳はその場を後にした。

「・・・・・・何のことなの・・・・・・?」

 鈴仙はきょとんとした目でその場に座っていた。

 師匠は私に何を伝えたかったのだろうか――――。

 

「あっ」

「? ドオシタレイセン」と、1号

「いや、そういえば隣の人。どうなったのかなーって」

 突然そんなことを言い出した鈴仙はベッドとベッドの仕切りカーテンを開けた。

「・・・・・・あれ?」

 そこには確かにあの男が未だに眠ってはいたが・・・・・・。

「・・・・・・こんな人だったっけ?」

 鈴仙は首を傾げるしかなかった。まぁ、私もあのときは結構動転してたし、・・・・・・以外とこんなものだったのかなぁ?

「ま、いっか。1号、あんた達はもう先に人参食べたんだからもう戻りなさいよ?」

「チェー、デキレバモットクイタカッタノニヨォッ!」

「・・・・・・その口調はどうにかならないのかしら・・・・・・」

 自立型スタンドはある程度しか制御がきかないらしい。まぁ、それはそれでミニてゐ達にもかわいげがあるのだが・・・・・・。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 鈴仙がそんなことをピストルズと会話しながら部屋を出ていったその後、彼は目を開けた。

 

「・・・・・・ここは・・・・・・」

 

 少年は起きあがると全身に痛みがあるのを感じた。

「いっつ・・・・・・!? 何だこれ? 病院? それより・・・・・・俺は何をしてたんだっけ・・・・・・?」

 彼の名前はヴィネガー・ドッピオ。ディアボロのもう一つの人格であり――――。

 永琳の薬で記憶をすべて失った少年だ。

「何だ・・・・・・? 一体、ここはどこで、いつだ? 何も・・・・・・覚えていない・・・・・・?」

 彼は痛む体を無理矢理起こしてベッドから降りる。

「・・・・・・俺は、ヴィネガー・ドッピオ・・・・・・。名前だけ、それだけしか・・・・・・」

 彼は名前だけしか覚えていなかった。だが――。

 

(く、ぅッ! ハァッ! せ、成功した!! 危なかった、何とか切り抜けたッ!! だが、ドッピオの奴。俺の存在さえも忘れてしまうとは・・・・・・このままでは上手く指示が出せない上に、自由にドッピオと変わることも出来ない! ・・・・・・あのクソ女にバレてしまう前にキング・クリムゾンを回収し、脱出しなくては!)

 

 彼の魂は生きていた! まだ、邪悪の魂は消えていなかった!

 

(いずれにせよ、ドッピオのスタンドもキング・クリムゾンの一部・・・・・・。精神ではリンクしているからきっとドッピオもあのDISCを見つけたら装備するはずだ! 俺を出し抜けたと思うなよ・・・・・・八意永琳!!)

 

「ふぅーん・・・・・・多重人格ねぇ」

(なッ!!!?)

 

 ドッピオは突然の呼びかけにはっと振り向く。心の奥底に隠れているディアボロは驚愕した。

「・・・・・・誰ですか? それに、今何て?」

「あぁ、あなたは気にしなくていいわ。――――私は八意瑛琳。傷だらけのあなたを保護して介抱した医者よ、ビネガー・ドッピオ君」

(ば、バカなッ! 気付いている・・・・・・!! こ、こいつッ!! まさかッ!!!)

 永琳の見透かしたような視線・・・・・・それはドッピオではなく更にその奥にいるディアボロの心を見透かしていた。

「・・・・・・ありがとう。ところで、何で僕の名前を?」

「んー、それはあなたを知っている人から聞いたわ。名前、何て言ったかしら? 忘れちゃったけど」

(・・・・・・それは俺のことかッ! どこまでもこの帝王をコケにしやがってこのクソカスがぁあああ!!)

「・・・・・・はぁ。俺には全く覚えがないんですが・・・・・・」

「きっと怪我による一種の記憶障害よ」

(――――ッ! こ、こいつ・・・・・・やっぱりドッピオのことに気付いて、ワザとドッピオの記憶をなくさせて、俺を封印しやがったッ!!)

 つまり、永琳は昨晩の尋問でディアボロには気付かれないようにドッピオの情報を抜き取っていた。そこで彼女は3つのセーフティーロックをかけている。

 

 1つはディアボロのスタンドを奪っておくこと。

 

 2つは心臓にさした指輪でいつでも殺せるようにしておくこと。

 

 3つはドッピオからディアボロの記憶を消去し、自由に入れ替わりをさせないこと。

 

「・・・・・・あ、あと私実は蓬莱人っていう種族で」

 と、永琳は唐突に話を切り替えた。

「はぁ」

 ドッピオは不自然そうな顔をする。

 

「死なないから」

 

(・・・・・・ッ!!!!)

 

「・・・・・・はい?」

 ディアボロは絶望した。これは完全に弄ばされてると確信した。

「言葉通りの意味よ。私は不老不死なの。例えば、これ」

 と言って永琳は短剣を机から取り出して――――。

「ひッ!?」

 なんと心臓に突き刺した!!

「う、わあああああ!!? い、一体何をッ!?」

「落ち着いて、落ち着きなさい」

 ドッピオは突然の出来事に唖然とするが、永琳は胸にナイフが刺さったまま平然としていた。

「まぁ、こんな風に私は不死だから。抵抗しても意味ないわよ、人間」

 にっこりと笑ってはいるが。

 

 その言葉は明らかにドッピオではない誰かに向けられていた。

 

(・・・・・・ッ!!! な、なんということだ・・・・・・!!)

 自分はこれからどうなってしまうのだろう。これから一生ドッピオの中の人格として生きていくのか? そんなことが・・・・・・そんなことが・・・・・・。

 と、そのとき。

「はい、これ」

 永琳は一枚のDISKを取り出してドッピオに投げ渡した。

「あなたのものよ。大切に使いなさいね?」

(は・・・・・・??)

「あの、ここは・・・・・・そしてあなたは?? 一体どうなってるんですか?」

 ドッピオは渡されたDISCを眺める。そこには確かに『キング・クリムゾン』とあった。

(!? い、いよいよ訳が分からんぞ?? あの女は一体何がしたいんだ??)

「ここは幻想郷。あらゆるものを受け入れる場所。でも、ビネガー・ドッピオ。あなたは元の世界に帰らなくてはならない」

「・・・・・・は?」

「そして私は八意永琳。あなたを助ける者よ――――」

 

 そして――――彼女の口はこう動いたように見えた。

 

『デ ィ ア ボ ロ』

 

 

第4話へ続く…

*   *   *

 

 解説。話がややこしくなるので一言でまとめます。

 永琳はディアボロの過去を知って興味が湧いたので自分とジョルノが危害を受けないように彼を死の輪廻から断ち切ろうと思っています。

 

*   *   *




一応、もうすぐ銃弾と氷殻のクライマックスがきます。
誰か鈴仙(セックスピストルズver)と咲夜(ホワイトアルバムver)描いてくださいお願いします(土下座)何でもしますから!

…ん?
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