ボスとジョルノの幻想訪問記   作:フリッカリッカ

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えくすとりーむ・えんじぇう①

ボスとジョルノの幻想訪問記 37

 

 前回までのあらすじ

 

 東風谷早苗の底知れぬ暴虐を止めるため、妖怪の山に潜入したジョルノとてゐとチルノの3人は、早苗に手引きされた河城にとりによって捕獲される。その中でゲーム勝負を戯れに始めたにとりだったが、てゐの蓬莱山輝夜を降臨させるという裏ワザの様な勝ち方でにとりに強制的に勝利を収め、脱出。

 

 ついでにジョルノたちは早苗のスタンドは『近距離パワー型』であるという可能性が高いという情報を得た。

 

 ……3人は更に山の頂上を目指す……。

 

*   *   *

 

 ボスとジョルノの幻想訪問記 37話

 

 えくすとりーむ・えんじぇう①

 

 場面は移り変わり、ここは永遠亭。ジョルノたちが去って行ってから永遠亭にいたのは鈴仙・優曇華院・イナバ、上白沢慧音、紅美鈴、八意永琳、蓬莱山輝夜、十六夜咲夜、そしてディアボロである。

 

 現在、ディアボロはドッピオの姿で隠れ、誰もそのことに気が付いていない。咲夜も診療所で大人しくしている。

 

 

 

 物語から少し時間は遡り、ジョルノたち3人が妖怪の山に出発してから1刻後。

 

「咲夜さん、昼食ですよ」

 

 病室に美鈴が入ると十六夜咲夜は不機嫌な表情をして

 

「……美鈴、言わなかったかしら。貴方たち――特にジョルノ・ジョバァーナと馴れ合う気はない、と」

 

 頑として皆と昼食を取りたがらない咲夜だが、美鈴からすればその姿は少々寂しく映り……。

 

「……そうですか。……」

 

 と俯いて黙ってしまった。ちなみに、永遠亭にいる中で咲夜とまともにコミュニケーションが取れるのは美鈴しかいない(ジョルノとはすぐに喧嘩、てゐは見下され、永琳に至っては怖くて咲夜に近付かない)。

 

「……でも、ジョルノさんは今てゐを連れて妖怪の山に行ってますよ?」

 

「……何ですって?」

 

 カチッ!

 

 美鈴の言葉に咲夜はまず、時を止めた。

 

「……聞いたかしら、ディアボロ」

 

 ベッドで隠れるように眠っていたディアボロに視線だけ向けて咲夜は言った。

 

「なるほど……さっそく、チャンスが巡って来たというわけか」

 

 彼はベッドから身を起さずに静かに呟いた。今すぐ動くつもりはないという意思の表れだろう。

 

「……早速動き出したいところだが、まだ待つのだ……。いいか、貴様を気にかけているそこの女が貴様から目を離した隙を突くのだ。――幸い、そこの女はあの八意永琳のお守りを任されているのだろう? だったらいくらでもチャンスはある」

 

「……了解。まだ『待つ』のね?」

 

 そう言って咲夜は能力を解除した。

 

「……それは本当なの?」

 

 会話の続きのように、違和感なく咲夜は美鈴に尋ねる。当然、時が止まっていたとはつゆも知らない美鈴は「はい。山の神様から依頼を受けたか何かで……だから今日私が呼ばれてるんですよ」と答えた。

 

「……なら、今日は久しぶりにあなたとご飯でも食べようかしら。彼……ドッピオもまだ目覚めないようだし、今日はゆっくりさせてもらうわ」

 

「え?」

 

 美鈴は目を丸くした。まさか、今の咲夜がそんな提案をしてくるとは思わなかったからだ。

 

「言葉の通りよ。……何驚いているの? 先に向こうに行ってるわ」

 

 咲夜は美鈴の脇を通って病室を出た。どうやら、普通に歩けるほどにはすでに回復しているようだ、と美鈴は思った。そして、今の言葉……。

 

(何だかんだ言って、やっぱり咲夜さんは咲夜さんだ)

 

 美鈴はふふ、と笑みを零して「待ってくださーい」と咲夜の跡を追った。

 

*   *   *

 

「――――大体事情は分かった。っとにあのメイドはじっとしないな……。美鈴も大変だな」

 

 咲夜は昼食のあとに「少し眠るわ。しばらく静かにお願いするわね」と美鈴に言った。それから5時間経って病室の様子を見に来た美鈴が目にした光景はもぬけの殻の病室である。

 

 美鈴に代わりに永遠亭の留守を頼まれた妹紅は溜息を付いて頼みを聞いた。

 

「恩に切ります妹紅さん。すぐに戻ってきます」

 

 そういって美鈴は日が傾きかけた空に飛翔していった。残され、動ける者は妹紅と小さい永琳、そしてぐーたら輝夜だけだ。

 

「……永琳、いるか?」

 

「はいな!」

 

 妹紅がおそるおそる永遠亭に入って永琳を呼ぶと、すぐに診療所から元気な声が飛び出してきた。

 

(はぁ~、美鈴も大変だが、私に押し付けられたこの仕事も大変だな……。子供のお守りなんて……)

 

 妹紅は子供が苦手である。あまり子供心が分からないというか、よくもまぁ、慧音は子供たちを相手に先生なんてできるものだ、と関心をするくらいだ。

 

「どうしたの??」

 

「うぉ、いたのか。いや、何でもないわ」

 

 いつの間にか自身の足元にまで来ていたちっちゃい永琳は妹紅の顔を覗きこむと首を傾げる。

 

「そう? じゃあ遊ぼう妹紅!」

 

「え? ちょ、おい!」

 

 妹紅の手をグイグイ引っ張るろーりん。逆らえないほどの力ではないが、この無邪気さを無碍にするわけにもいかず、妹紅は仕方がなく永琳に着いていった。

 

 着いていった先は永琳の自室――調合室だ。適度に照明が光を発しており薄暗いとも言えない部屋。窓から差し込む光はわずかだが、部屋が見えないほどではない。また、様々な薬がろーりんの気まぐれで生成され、その辺に瓶に詰められて散らばっている。妹紅が適当に拾い上げた瓶のラベルに『人をくるしまずにころすおくすり』と書かれていた時は永琳の倫理観を疑ったが……。

 

 その中で一つの水槽が目に入った。何も生物が入っておらず、何か透明な液体が入ってるだけの水槽。妹紅はその中に永琳の『残り』が保存されていると直感的に理解した。

 

 果たして、永琳はどうやって残りを回収するのだろうか? というか、この幼女の脳内にそのような考えが残っているのだろうか? 妹紅はそんな危うい疑問を浮かべる。

 

「……なぁ、永琳」

 

 思わず妹紅は口を開いた。

 

「? どうしたの、妹紅?」

 

 あどけない表情で首を傾けて、永琳は振り返った。そこからは小さくなる前の理知的で、全てを達観していたあの天才の面影は残っていない。

 

「……お前、元に戻れるのか?」

 

「……なに? なんのこと?」

 

 どうやら永琳は何もみんなから聞かされていないらしい。ある種の記憶喪失とでも言うべきか。まるで何も覚えていないのだ。

 

(……? 待てよ、じゃあ何で永琳は能力をさも当然のように使えているんだ?)

 

 妹紅はふとした疑問に駆られた。永琳は自分に元の姿があることを覚えていない。また、どうしてこのように小さな体になったのかも覚えていなかった。てゐや私、鈴仙のことも覚えていない節もある。だが、永遠亭についてや自分の役割などについては覚えていた。はっきりと自分は医者だとは分かっていたのだ。

 

 生来の記憶……というか、身に染みた性分とも取れるだろうが、やはり不可解である。

 

 まるで意図的に記憶を無くしているようだ。

 

「……永琳、『スタンド』って言われて……何かピンと来ないか?」

 

「もう、妹紅は質問ばっかりね! 遊ばないの?」

 

 再び、永琳に疑問を投げかける。だが、彼女は遊びたいのだろう。妹紅の質問に答えようとしない。

 

「……あ、あぁ。分かった。遊ぶか」

 

 ふぅ、と溜息をついて妹紅は適当に永琳に合わせながら考える。この、遊びたいという衝動も小さくなる前の永琳には一切なかったものだ。小さくなった、と言っても『幼児退行』をするのはやはりおかしいのではないのか?

 

(……何か、何かが引っかかる……。永遠亭の奴らは『そういうものか』とあっさり割り切ってはいたが……)

 

 永琳は笑顔で妹紅とじゃれて遊んでいる。こうして見ればただの小さな少女である。

 

「妹紅、妹紅!」

 

 きゃっきゃと笑いながら無邪気な笑みを零す彼女の顔を見て妹紅は不安感がなぜか募っていた。

 

「ほら見て! これ美鈴からもらった玩具だよ!」

 

 そういって彼女にはいつか貰ったであろう子供向けの玩具が握られていた。特に妹紅はそれに興味を持たなかったが、適当に相槌だけはしておいた。

 

(……どうなるんだ? 永遠亭は……)

 

 拭えない不安に逃げるようにして永琳から視線を外し、燃え尽きそうな西日がわずかに差し込む窓の外を見た。

 

 

 ――――そして、そこに影が二つ。

 

 

「……永琳、隠れろ。『誰か』が空から来ている」

 

 妹紅は二つの影から視線を外さずに静かに永琳に告げた。その冷めた命令に幼いながらも永琳は危機を察知したのだろう。何も言わずに部屋の奥にある押し入れの中に隠れた。

 

 てゐから聞いた話で、妹紅はすぐにピンとくる。

 

「……八雲紫の差し金か? 私のスタンドの回収っていうなら上等だが……」

 

 ちなみに、現在永遠亭にスタンド使いは3人。『スパイスガール』の藤原妹紅。『セックスピストルズ』の鈴仙・優曇華院・イナバ(再起不能)。そして『21st Century boy』の蓬莱山輝夜だ。

 

 輝夜は完全防御で全く危険じゃあないし、そもそも妹紅が輝夜を助けるなんて構図はありえない。妹紅は輝夜を完全に度外視して、鈴仙を守るために動いた。

 

 永琳には絶対にそこから出るな、と釘を刺しておき妹紅は急いで病室に向かう。病室に入った妹紅は誰もいないことを確認し、すぐに眠っている鈴仙を背にして臨戦態勢を取った。

 

 ……だが、いつまで経っても敵が来ない。

 

 もしかすると、ただの来訪者か? いや、真っ直ぐにこちらに向かってきていたのだ。それに、表から訪ねてくるならチャイムを鳴らすはずだ。

 

「……ただの思い過ごしだったか? いや、二人。真っ直ぐにこちらに来てたはずなんだが……」

 

 しかし、待てど暮らせどあの二人は姿を現さない。……やはり単なる思い過ごしのようだ。病室から出て、先ほどの永琳の自室に戻る。

 

「永琳、どうやら私の勘違いだった。多分安全だから――――」

 

 そう言って、妹紅は自分の過ちに気が付いた。

 

 押し入れが空いている。

 

 さらに、窓が開いていた。

 

 

「――永琳ッ!!」

 

 

 慌てて押し入れの中を覗き見るが、そこには誰の存在もない。もぬけの殻だった。

 

「――クソッ!! 馬鹿か私はッ!!」

 

 妹紅は情けない自分に悪態をついて、すぐに永琳を探す。すると、窓から見える範囲で二人の人間と片方の背中に永琳が抱えられているのを発見した。

 

 まだ遠くにはいっていない。すぐに妹紅は窓から外に飛び出して声を張り上げた。

 

「待ちやがれてめぇら!!」

 

「もっ、妹紅!! 助けてーーーッ!!」

 

 妹紅の声に気が付いた永琳は目に大量の涙を浮かべて泣き叫んだ。

 

「待ってろ!! 今からそいつらを消し炭にしてやるからな!!」

 

 妹紅は駆け出す。あの二人の姿に妹紅自身見覚えは無かった。その姿は背中しか見えないが、永琳を抱えている方は大量のフリルをあしらった奇抜な服装をしており、もう片方は黒いハットと青色のスカート、そして幻想郷では見慣れないブーツを履いている。

 

(……あの恰好、外来人か? どちらも女性のようだが……どちらにせよ手加減はしない! 一瞬でカタを付ける!!)

 

 竹林にあの二人が入る前に妹紅は永琳を救出するつもりである。スタンド、『スパイスガール』を出しながら全速力で追いすがった。

 

 コツ、コツ、コツ……。

 

 二人は特に妹紅の様子を気にするでもなく、背を向けて歩いているだけである。

 

 舐めやがって、今すぐ助けてやるからな永琳。その小汚い誘拐犯どもを消し炭にしてゴムボールみたいに地面に叩き付けて謝らせてやる!!

 

 妹紅はそう誓い、全速力で追いかけた。

 

*   *   *

 

 幻想郷の大賢者、八雲紫は一つの事象において頭を悩ませていた。それは紫からすれば取るに足らない路傍の石と変わらないのだが、その石ころが何時までたっても紫の目の前から失せず、掴もうと思っても掴めず、付かず離れずで常に紫の妨害まがいのことを行っている。石には確かに私怨はある。だが、そんなのは半分向こうの言いがかりであり、正直に言ってこちらに全く悪気はない。あの日からしばらくの間、紫に対して何度も何度も性懲りもなく嫌がらせの様な行為を続けていたが、ここまで面倒くさいと感じたことは一度としてなかった。非常に目障りだった。その元凶を今度こそ本気で痛い目に合わせてやろうと思い、接触を図ったとき。紫はその石ころからこんなことを言われた。

 

「私はもうあんたには捕まらない」

 

 とんだ笑い話である。境界を操る紫に対して、「捕まらない」のような鬼ごっこの勝利宣言とは、身の程知らずにもほどがある。その言葉に少しばかりプライドが傷つけられた紫はこう返した。

 

「じゃあ今捕まえましょう」

 

 ――――その日からすでに2週間は経過している。紫としてはまだまだやるべきことは沢山残っているのに、こんな関係のない石ころに時間を費やされては溜まったものではない。藍から放っておくように、と提言されたがこう2週間ものらりくらりと躱されたんじゃあ大賢者としての立つ瀬がない。

 

 何より、あの人を舐め腐りきったあの小娘に自分がいいようにあしらわれているのが我慢ならない。

 

「……」

 

 だが、事実だ。認めよう。この八雲紫の追従を現在進行形で躱し続けているということは称賛に値する。素晴らしい。だが許さん。

 

 一体、どうやってこの私との鬼ごっこを逃れられ続けているのか。

 

 手を伸ばしても届かない。スキマに閉じ込めても閉じこもらない。スキマに落としても落ちない。私の持つあらゆる捕縛が、あの小娘には全く効果が無い。

 

 こんなことが今まであっただろうか? この私が、ここまで振り回されているという事実。いや、そんなことはかつて無かった。藍を従えるときだってもう少し手際よく行っていた。幻想郷を作るのも、造作は無かった。

 

 だが、今回は何てザマだろう。あらゆるものが届かない。

 

 全く意味が分からない。

 

「ただ、一つだけ言えることがありますわ」

 

 紫は隙間を作り出し、開く。

 

 開かれたスキマから見える景色は真っ赤に燃える夕焼けに照らされた一軒の建物。周りには竹林。そしてその二つの間を走る人影。その視線の先にある二つの人影。

 

「……これが彼女の『スタンド』のせいだとしたら……何としても回収しなくてはならない……」

 

 紫は妹紅だけでは絶対に敵わない、と分かっていた。なぜなら自分自身さえも触れることさえ出来なかったのだから。

 

 ……だけど、八意永琳なら、あるいは……。

 

「……手を貸しましょう藤原妹紅。八意永琳の救出を――――そして、やれやれですわ。私自身も舞台に上がらざるを得ませんわね……」

 

 そう呟くと、彼女の背後から突然現れた『それ』が、スキマから景色の先に飛び込んだ。

 

 絶対に、藍以外には見せないと思っていた自身の『スタンド』を送り込んだのである。

 

38話へ続く……

 

*   *   *

 

 あとがき

 

 結構ペース速めで投稿します。ボスとジョルノの幻想訪問記37話、えくすとりーむ・えんじぇう①でした。

 

 この話はジョルノたちが永遠亭を出発した後の永遠亭の動き、そして幼い八意永琳を取り巻く八雲紫と謎の人物の争いですね。もこたんは巻き込まれる形で活躍します。

 

 ちなみに、新キャラの二人はあの方々です。分かる方は分かったでしょう。紫と私怨がある人物なんて数が限られてますからね。

 

 ちょっと話の内容が短いですが、投稿ペースでごまかします。ごめんなさい。あと2倍くらいはノルマにしてるんですが、ちょっと区切りが悪かったので……。

 

 まだまだ、感想、意見、批判、各キャラの予想スタンドなど受け付けております。

 

 では、次は38話でお会いしましょう。

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