ボスとジョルノの幻想訪問記   作:フリッカリッカ

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銃弾と氷殻③

ボスとジョルノの幻想訪問記4

 

 前回のあらすじ!

 

 鈴仙のスタンド『セックスピストルズ』は小さなてゐの集合体だった!

 ディアボロは永琳との確執の末にドッピオで出し抜いたと思ったが、やっぱり全部見透かされていた!

 咲夜さんは『ホワイトアルバム』のスタンド使いになっていた!

 美鈴が裸になった!

 

 銃弾と氷殻③

 

 しばらくして、永遠亭のダイニングキッチンに朝食が運ばれてくる。

「今日は目玉焼きです。一応あの患者さんにも準備しましたが・・・・・・こんな人でしたっけ?」

「あ、ジョルノもやっぱりそう思う? いやぁ・・・・・・なんか違うような気がしてたんだけど」

 と、ジョルノが皿をテーブルに並べながら今朝起きたという患者――ドッピオ少年をまじまじと眺めていた。それに同調するように鈴仙も彼の顔を見る。

 ドッピオは見知らぬ二人――1人は自分と同じイタリア人に見えるがもう1人は頭にうさ耳を付けたブレザー姿の少女の視線を浴びて居心地が悪そうにする。食事をする部屋に入るが入り口から一歩も中に入ろうとしない。

「気のせいよ、二人とも。昨晩はいろんなことがあったから」

「ん~、師匠が言うならそうなんだろうけど・・・・・・」

 そして自分の肩を叩く赤と青の変な色合いの服を着た女性は自分を救ってくれたらしい。

「えっと・・・・・・その、ヴィネガー・ドッピオです。どうも」

 永琳に肩を押されるがまま食卓に着く。彼の前に出されたのは皿に盛られた目玉焼きと人参のサラダ。それと――。

「・・・・・・?」

「あ、それは箸といいましてね」

 ドッピオは手頃な長さの二本の棒を両手に持って首を傾げる。

 そうだった、自分にもこんなシーンがあったな。と、ジョルノは数週間前の自分を思いだしていた。

「ふふっ」

 その二人のやりとりを見て永琳が微笑んだ。

「何笑ってるんですか、永琳さん・・・・・・」

「いやね、ついぞ前にその光景を誰かがやってたから・・・・・・」

「・・・・・・僕のことですか」

 ジョルノはむっとした表情をする。

「いいですか、ドッピオ。僕の手を見てください。・・・・・・ホラ、箸はこんな風に使うんです。・・・・・・いいや、そうじゃあない。違うんだ・・・・・・。違う違う、ペンを持つ感じで・・・・・・そうそう・・・・・・」

 ジョルノがドッピオに箸の使い方を指南している。その光景を鈴仙と永琳は「くくっ」と吹き出しそうになって見ていた。

「ちょっと、二人とも! 見せものじゃあ無いんだぞ。君たちだって僕に箸の持ち方を教えるのに苦労していたじゃあないか!」

 さすがに耐えかねたのか、ジョルノは二人(特に鈴仙)の方を睨んで言った。

「ふふふ・・・・・・い、いやぁ。別にそんなことを自慢されても・・・・・・ねぇ?」

「ぐっ、鈴仙後で覚えててくださいよ・・・・・・」

 鈴仙が口を押さえてそう答える。ジョルノは若干頬を赤くして悔しそうに表情を歪ませた。

 ――――と、そこでドッピオが口を開く。

「・・・・・・ジョルノさん、でいいのかな? すまない、ハシなんて使ったことは無くて・・・・・・」

「・・・・・・。いや、ジョルノでいいですよ。見た感じ、ドッピオの方が年上っぽいし。それに同じ流れ者で国籍も近そうだ。僕はジョルノ・ジョバァーナ。イタリアに住んでました」

「そ、そうなのか? じゃあ俺と同じだ! 俺はイタリア人なんだが・・・・・・記憶が無くってね・・・・・・。一体、どういった経緯でここにいるのか・・・・・・。さっき永琳さんに聞いたんだが、いまいちここがどんな場所かがよく分かってないんだ」

 ドッピオの言葉にジョルノは驚きの表情を見せる。

「へぇ、それはまるで奇跡のようなことですね・・・・・・。まさか、こんな場所で同じ祖国で育った同志と会えるなんて・・・・・・。あと、僕も記憶がないんですよ」

 二人は箸の持ち方を教え、教わり、会話を弾ませる。やはり、同じ境遇の身に置かれているからだろうか、二人はすぐに仲良くなったようだ。

 それを鈴仙はどこか羨ましそうな目で眺め、永琳は何かを企んでいるように注視する。

 しばらく朝食の穏やかな時間が進み、もうそろそろ食べ終わるという時間に。

 すーっと襖が開かれた。

 

「んー・・・・・・おはよー、永琳。イナバ・・・・・・と、えっとジョジョ。・・・・・・眠い・・・・・・」

 

 眠い目を擦ってそこに現れたのは蓬莱山輝夜。永遠亭の大重鎮(?)である。

 ちなみに、永遠亭でジョルノのことをジョジョと呼ぶのは彼女だけである。

「おはようございます姫様。今日は早いですね」

 永琳は挨拶をして輝夜の席を整える。

「あー・・・・・・今日は姫様の寝起きが良くて助かったウサ。まだみんなご飯食べてる途中ウサね」

 そして輝夜の脇からひょっこりとてゐが入ってきた。

「・・・・・・ッ!!?」

 と、ドッピオは何故か驚愕の目をした。それは自分でも分からない。当然だ。彼の精神の奥深くに眠る防衛反応。

(・・・・・・やっぱり、ドッピオの状態でも出るみたいね・・・・・・)

 永琳はその変化に気付いていた。

 遅れて横にいたジョルノがドッピオの変化に気付く。

 恐れているような、怒っているような・・・・・・汗を全身から流し何かに畏怖するその表情を。

「・・・・・・ドッピオ?」

 ジョルノは心配そうに彼の顔を見る、がドッピオは答えない。

 彼は輝夜の方向――ではなくてゐの方だけを見ていた。

「・・・・・・? あれ、そこの少年起きたんだね。というか、少年だったっけ?? まぁいいウサ」

 何で私の方ばっかり見てるウサ。と、てゐは呑気に耳を傾げる。

(・・・・・・これはディアボロのみが持つ固有の反応・・・・・・)

 

『幼女アレルギー』ッ!!!

 

 これは永琳が勝手に付けたアレルギー反応の一種だが、端的に言うと幼女を見るとヤバくなるアレルギーである。犯罪臭がすごい。

「はッ!? い、いや・・・・・・何でも、ない・・・・・・。どうしたんだろう、俺・・・・・・」

 当の本人は困惑していた。最初は食って殺されるかもしれない、と思っていたてゐに対する印象もすぐに薄れていくのだ。「こんな可愛い少女がそんなことをするはずがない」と、落ち着きを取り戻していく。

「・・・・・・すぅ」

 と、近くで寝息が聞こえた。

「って、姫様ーーーー!!!! だめです、目玉焼きの上で頭を横にしないでくださいいい!! あ、もうこれあかん奴や・・・・・・」

 鈴仙が気付いて止めようとしてももう遅い。輝夜は席に着くや否や、すぐにテーブルに頭を乗っけて――卵の黄身で髪が汚れるのもいとわずに――寝てしまったのである。

「うわぁ・・・・・・これはヒドいですね・・・・・・」

「なに人事みたいに言ってんのよぉおおおーーーー!!! あんたあれだけ姫様の目玉焼きは完熟にしなさいって言ってたのに!!」

「すみません、完全に忘れてました」

「うるせええええ!! いいから布巾持ってこい!!!」

「しかし、客観的には貴方が一番うるさいですよ鈴仙」

「そうよ優曇華。もうちょっと静かにしないと姫様が起きてしまわれるわ」

「あんたらそれでいいのかーーー!!! って、姫様ッ!? あの、うわああ止めて下さい! ちょ、目玉焼きまみれの手で耳引っ張らないで!」

「うるさいぞー・・・・・・イナバー・・・・・・」

「ぎゃあああああああ!!! 髪の毛に黄身が絡むううううう!!」

 

 しばらくして騒ぎは収まったが、鈴仙の髪の毛は痛む一方だろう。

「・・・・・・」

「・・・・・・これが幻想郷さ、ドッピオ。ちょっと騒がしいけど、至って普通の平和。僕がいたあっちの世界じゃあ、たぶんこんな暮らしは送れてなかったと思います。記憶がないから確証は持てませんが、今は楽しく過ごされてはどうですか?」

 ジョルノは呆然とするドッピオの手を取って優しく語りかける。

「・・・・・・そうだな。なんか、退屈はしなさそうだしね・・・・・・あと、その敬語、やめてもらってもいいかい? 俺もジョルノには敬語は使わないから」

「・・・・・・! そうですね・・・・・・ですが、これが僕にとっては一番の自然体なんですよ。気持ちだけは受け取っておきます。ですが――――」

 と、ジョルノは次の言葉を述べた。

 バカ丁寧な敬語を取って。

「これからよろしく頼むよ、ドッピオ」

「・・・・・・あぁ、こちらこそ」

 時空を越え、敵と味方も越えた奇妙な友情が芽生えた。

 永琳やてゐ、シャワーから戻ってきた鈴仙といまいち状況を読み込めていない眠そうな輝夜でさえも、笑っていた。

 そこには男二人の奇妙な友情があった。記憶のない二人の物語があった。

 

 ――――ただ、一人を除いて。

 

(・・・・・・吐き気がするぞッ!! このディアボロをこんな、こんなッ・・・・・・!!!)

 

 彼にとっては屈辱だっただろう。唯一の味方のドッピオにさえも裏切られた気がした。

 

 そんな時だった。

 

 ガラガラガラ!!!

 

 と、入り口のドアが開かれたと思ったら――――。

 

「おいッ!!! 永琳、永琳はいるかッ!?」

「た、大変なんだ、美鈴がッ! 人里近くで死にかけてたッ!!!!」

 

 つかの間の平和は終わりを告げた。

 

*   *   *

 

 永遠亭を訪ねてきたのは上白沢慧音と藤原妹紅だった。ここに来たときには既に息も絶え絶えでどれだけ美鈴が危険な状態であるかを物語っていた。

「・・・・・・ほぼ全身が凍傷になっているわ。今は季節は秋だから、こんなことが出来るのは・・・・・・チル・・・・・・。・・・・・・誰もいないわね」

 なぜ言い直したし、と数人が思ったがあえて聞かないことにした。

「でも、ありがとう二人とも。なんとか間に合いそうだわ。――特に妹紅。うまく体温調節してくれたのね」

 と、永琳は微笑んだ。

「えっ、いや、私はおんぶして美鈴を抱えてきただけだぞ? そんなこと、一生懸命で考えもしなかった」

 妹紅は手を前に出して感謝の言葉を拒否してしまうが。

「いえ、あなたのその無意識の一生懸命さがきっと炎を生み出したのよ。美鈴に代わって礼を言わせて。ありがとう」

 永琳は頭を下げる。妹紅は「えええっ、い、いや、そんな」と恐縮してしまっているが、そんな彼女の頭を押さえて礼をさせたのは隣にいた慧音だった。

「わわっ、慧音なにを・・・・・・」

「礼は受け取れ、妹紅。それと、こちらからも礼を言う。――まだ診療時間ではないのに、無理を言ってしまって」

「いいのよ。命に寿命以外の時間制限なんて、ないもの。救える命は今救わなきゃ。――――後は任せて、二人とも」

 そう言って永琳はすぐに奥へと入っていった。今から美鈴の治療が始まるらしい。

 永琳がいなくなり手伝いとして鈴仙とジョルノが治療室に入ってしまった今、玄関にはてゐ、慧音、妹紅、ドッピオの四人がいた。(なお、輝夜はこの時既に自室へと戻っている)

「・・・・・・えっと、何だこの微妙な空気はウサ・・・・・・。何であんたら帰らないウサか?」

「ちょ・・・・・・そんな言い方は・・・・・・」

 てゐははぁ、とため息を着いて頭を掻いて失礼極まりない言葉を放つ。ドッピオはそのてゐのあんまりな言葉にフォローを入れようとするがまだ幻想郷に慣れていない彼は言葉尻が弱くなる。

「すまないな、いや、いいんだ・・・・・・えっと、外来人か? 最近ここに来たっていう・・・・・・にしては、永琳の話と少し違うな。金髪じゃあない」

 と、慧音はまじまじとドッピオの顔を見つめる。金髪、という言葉でドッピオは彼女がジョルノのことを言っているのか、とわかり。

「あ、いや。俺は違いますよ、昨日ここに来た新しい外来人? です。あなたが今言った特徴を持った人物はさっき、永琳さんと一緒に治療室に言った奴です」

「へぇ、もう一人外来人が来てたのかー。慧音知ってた?」

「いや、初耳だ。そもそも昨日の話なら私が知っているはずがない」

 と、何故か玄関先で初対面だというのにいらだちを感じたのだろうか。てゐは我慢できずに。

「あー、もう! 立ち話もなんだし、中に入ったらどうウサ! お茶くらいなら出すウサよ!? まぁ、私が作るお茶だけどウサね!」

 その言葉を聞いて二人はおっ、という風に目を開いていった。

「気が利くな、因幡てゐ。それじゃあお邪魔させてもらうぞ」

「私もいいのか? なぁ、慧音」

 いいんじゃあないのか? と言いながら二人はズカズカと永遠亭に入っていく。

「・・・・・・えっと」

 ドッピオは不思議そうに慧音たちとてゐを交互に見るが、当のてゐはと言うと・・・・・・。

「・・・・・・くっそ、しまったウサ・・・・・・何で上がって来るのさ。毒本当に混ぜちゃうウサよぉ~・・・・・・?」

 と、あからさまに嫌そうな顔をした。

「・・・・・・毒とか入れちゃ駄目だからね」

 一応ドッピオは物騒な発言をするてゐに声をかけるも・・・・・・。

「ええい、分かってるウサ! このっ」

 げしっ

「いたっ」

 小さな足でドッピオの臑を蹴って永遠亭に戻って行った。対して痛くはなかったが。

 

 それからしばらくして客間には四人が鎮座していた。

「・・・・・・はい、毒とか無いウサよ」

「ほう・・・・・・てっきりてゐのことだからオシッコでも入ってるのかと・・・・・・」

「どんなド変態だよあたしゃ!!」

 てゐが仏頂面でお茶を注いできたから場の雰囲気を慰めようと思ったのか慧音はそんなことを言う。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 気まずい。特に接点もないてゐと慧音。妹紅は慧音と二人きりの時以外他人に遠慮がちになるし、ドッピオに至っては3人のことをまるで知らない。

 なぜこの四人を同じ茶席に入れたか、正直なところ作者も困っている。

 共通の話題がない。(ここで慧音と妹紅がいきなりアーンなことをしだしたらどれだけ文章が捗ることか。)

 と、ここで辛気くさいという形容詞が世界で一番嫌いな因幡てゐがついに口火を切る。

「・・・・・・で、何であの門番はあんな大けがを負ってたの?」

 するとその言葉に「やっと話題が」と安堵の表情を妹紅が浮かべる。

「えっと、私たちも彼女が倒れているのを偶然発見しただけだから・・・・・・詳しいことは・・・・・・」

「違うウサ。いや、本質的には聞きたいことは変わらないけど」

 言葉を変えよう。

「門番はあんたらがここに運んでくる間、何も話さなかったのか?」

「・・・・・・? いや・・・・・・? 分からない、でも気を失っていたから何も話してなかったと思うよ・・・・・・? でも、何だってそんなことを」

「――妹紅、おまえは一生懸命で気が付いてなかったと思うが私は彼女が一言だけ発したのを聞いている」

 途中で妹紅の言葉を慧音が遮った。妹紅は「えっ、そうだったっけ?」という表情を向けて首を傾げた。

 それを待ってましたと言わんばかりの表情でてゐは言葉を継いだ。

「そうそう、それだよ。あたしが聞きたかったのはソレ。門番の怪我の様子とか、そんなことじゃあ無いウサ。瀕死の妖怪が今生の最後の言葉として捻りだした一言に興味がある」

 けらけら、と笑いながらてゐは不謹慎な言葉を吐いた。

「お、おい・・・・・・それはあんまりじゃ」

 とドッピオはどうしていいか分からなかったが取りあえず何かを言おうとしててゐの方を向くと――――。

 

「――――取り消せッ!」

 

 そこにはさっきまで温厚だった彼女――――藤原妹紅が、今の一瞬でテーブルに全身を乗りだし、ギラギラとした獣のような瞳でてゐを睨み付けていた。

「・・・・・・っ!?」

 その表情はドッピオに恐怖感を与えるには十分であった。一瞬、妹紅の背後に獰猛な猛禽類の顔が幻覚で見えてしまうほどの気迫にドッピオはビビっていた。

「妹紅、座れ。ここには一般人もいるんだ」

「いや、止めないでくれ慧音。こいつは私の目の前でワザとあの発言をしたんだ。後悔させてやらなきゃ私の気が済まない」

 さっきまで慧音の言葉には従順だった彼女だが、今はお構いなしにてゐに食ってかかる勢いだ。

「そうだよー、妹紅。落ち着いてよ。何もあんたをバカにしたわけじゃあないんだし」

 対しててゐはその態度を崩そうとはしない。へらへらとしながら言葉を続ける。

「不老不死で人間のあんたが命の話になると熱くなるのは分からないでもないウサ。でも単なるあたしの知的好奇心にあんたの定規を当てはめないでくれるかな?」

「ッ知的・・・・・・『好奇心』だとッ!? どこまでも馬鹿にしやがってこのウサ公がッ!」

「ウサ公を馬鹿にするなよ? たかだか1000年程度生きただけの甘ちゃんが」

 まさに一触即発! 今にも妹紅が痺れを切らしててゐに殴りかかろうとしたその時ッ!

「や、やめろよ二人ともッ!」

 ドッピオは自分でも分からないまま、二人の間に入っていた!

 それに一瞬遅れて慧音も止めに入る!

「落ち着け妹紅! ただの挑発だッ! 乗るんじゃあない!」

 ドッピオはてゐを、慧音は妹紅をそれぞれ取り押さえる。

「うわ、ちょ、ドッピオ! 何するウサ!」

「慧音っ!? 離してよっ!」

 ドッピオはてゐを不意打ちのタックルで地面に転ばせ、慧音は妹紅を後ろから羽交い締めにする。流石の二人もただの人間と唯一の友人に手は出せず、その場は何とか収まった。

 

「・・・・・・で、だ。取りあえず二人は反省の意味も込めて正座をしておくこと。次はないからな。次は慧音先生のスペシャルヘッドバッドだからな」

 慧音は二人を仲良く並べて正座をさせ、くどくどと説教を始める。

「次があるのか無いのかどっちかにしてほしいウサ・・・・・・」

「あ?」

「何でもないです」

 てゐが小声で文句を言うが慧音に聞き取られていたようだった。

「えっと、ドッピオ君、だったか? すまないな。わざわざ手を煩わせてしまって」

「あ、いえ。僕も争いごとは好きじゃあないですから。えっと・・・・・・」

「上白沢慧音だ。慧音でいい。あと、こっちの白い髪の方は藤原妹紅だ」

 と、慧音は正座中の妹紅の方をみる。

「・・・・・・さっきはごめん」

 妹紅は照れくさそうに俯いて言った。

「あぁ、よろしく。慧音に妹紅。別に気にしちゃいないさ。明らかに悪かったのはてゐの方だったしね」

「ああ~! ちょっとドッピオ! おまえは誰の味方ウサ!?」

「少なくとも君の味方ではないよ」

「ぐぬぬぬ・・・・・・!!」

 てゐはギリギリと歯ぎしりするが無視。

 再び席に着いた二人。今度はすぐに慧音が口を開いた。

「さっきの話だが・・・・・・一応、永琳とジョルノという外来人にも伝える予定だったが君たちに先に言っておこう」

 慧音の言うさっきの話とは、もちろん美鈴が死に際に残した言葉についてだろう。(死んでないけど)

「彼女の最後に残した言葉・・・・・・君たちもここにいるからにはおそらく聞いたことがあるだろう」

 そして確かに慧音はその条件に当てはまる言葉を口にする。

 

「『スタンド』。彼女は最後に消えそうな声でそう伝えた」

 

 慧音の言葉にてゐとドッピオはピンと来た。

 そして、彼にもそれは同様だった!

 

(・・・・・・スタンド、新たな・・・・・・スタンド使い、か・・・・・・)

 

 ディアボロはドッピオの心理の海の中でその言葉を反芻していた。

 

*   *   *

 

「・・・・・・永琳さん」

 治療室でジョルノは治療中に瑛琳に尋ねる。

「何かしら? ジョルノ君」

 

「・・・・・・どうして、この人全裸なんですか?」

 

 ・・・・・・当然の疑問だったが誰もそこには言及しなかった。

「・・・・・・」

 何て言えばいいか分からない鈴仙。

「あらあら」

 と、永琳はつぶやいた。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 ジョルノも鈴仙と同様に沈黙する。

「・・・・・・」

 気まずい雰囲気が流れた後――――。

「あらあら」

 何故か永琳がもう一度そう言った。

 

*   *   *

 

 その後、慧音と妹紅は永遠亭を後にして、居間にはドッピオとてゐが美鈴の治療が終わるのを待っていた。

 もちろん、その間てゐはドッピオに「余計なことを」とか「つまんなかったなー、誰かがとめたせいで」とかネチネチと責めていた。

「余計なことって、あれ。僕が止めなきゃてゐじゃあの子に勝てなかっただろ?」

「勝てばいいっていうもんじゃ無いウサよ。あたしゃ他人を煽ってそれを楽しむのが一番好きなんだから。その結果で勝ち負けが付いたところで、どうでもいいウサ」

 ぶっすー、とスネながらてゐはぶっきらぼうに答えた。

「・・・・・・そんなもんなのかなぁ? 変わってるね」

 やっぱり妖怪と人間じゃどこか違うんだな、とドッピオは改めて思う。てゐはさっきの二人のうち妹紅は人間だと言っていたが、てゐに対する反応を見るに人間くさいところがあった。

 他人のために怒ることが出来る――――これが人間と妖怪の違いなのだろうか。

「そういえば、ドッピオってスタンド知ってるの?」

 唐突にてゐはドッピオの元にとててて、と駆け寄ってくる。ドッピオは何となく不快感を覚えたが(主にディアボロの無意識の恐れ、『幼女アレルギー』のせい)すぐにそんなものは消え失せる。

「え? あ、うん。そういえば、永琳さんが僕にこれをって・・・・・・」

 と、ドッピオは懐から一枚のDISCを取り出しててゐに見せる。

「あー、これがスタンドの元かぁ・・・・・・ってこれ、あたしが昨日拾った(詐欺った)奴じゃん。ドッピオの物だったんだ」

「そうなの? ありがとう、君って実は良い奴なんだな。僕が落としたかどうかは分からないけど・・・・・・こんなのどうやって使うんだい?」

 途中の一言にかちんと来たてゐだったが、感謝はされているので抑えることにした。

「使い方知らないのにあんたのウサか? ・・・・・・確か、鈴仙はそれ頭に入れてたけど」

「えっ?」

「いや、頭に」

「・・・・・・こう?」

 と、ドッピオはDISCを持っていない方の手でDISCを頭に挿入する手振りをする。

「そうじゃないの? あたしは鈴仙が頭に入れるとこは見てないけど、鈴仙のレントゲンにはしっかりDISCが埋まってたし」

「へぇー・・・・・・」

 と、てゐの説明を半分にドッピオは何かに引き寄せられるようにDISCを頭に当てた。

 ずぶッ。

「うわわわああああッ!?」

「おー、本当に入っていくウサ」

 どういう原理かは分からないが、何となく頭に入れてみたくなってくる。と、ドッピオはDISCを引き抜きてゐを見る。

「てゐは・・・・・・このDISC見ても何とも思わないのかい?」

 するとてゐは「は?」と言う風に眉を潜めて。

「何言ってるウサ。全く興味ないウサね」

 彼女の性格を考えるに、DISCは奪ってでも手に入れたいと思うだろうけど・・・・・・。と、ドッピオは思った。

 ちなみに、これには理由がある。幻想入りしたスタンドDISCは誰にでも使えるわけではなく、それぞれのDISCは誰かの精神と繋がっている。よって、ドッピオのDISCに興味を引かれるのはドッピオだけであり、もしてゐの精神とリンクするDISCがある場合、ドッピオはそれに何の興味を抱かないのである。

「・・・・・・どれ」

 と、ドッピオは好奇心に任せてDISCを一気に押し込んだ!

 ずぶずぶずぶッ!!

 てゐは「おー!」という声を上げてその様子を見ていた。

「・・・・・・ど、どこか変わったとことかあるウサか?」

 DISCを全て挿入し終えるドッピオにてゐは尋ねる。

「・・・・・・い、いや? 特に何か変わったというわけじゃあ・・・・・・?」

 彼は視界にぼやつきを感じる。何か、重なって見えるのだ。

「ちょっと待って。視界が・・・・・・」

 ふらっとしつつドッピオはてゐの方を見る。すると彼女は何か口をパクパクと動かしているようだ。

「・・・・・・? てゐ、何を言っているんだ?」

 そう尋ねるとてゐは怪訝そうな顔をする。

「何もまだ言ってないウサ。それより、どうなんだ? 気分でも悪いウサ?」

「・・・・・・いや、何というか・・・・・・ちょっと待ってて」

 と、ドッピオは二重に重なるように見える視界を正す為に目を擦り、前髪を上げる。そして目を開けると、そこには何ということもない、普通の眺めだった。

「あれ? いや、普通に見えるなぁ・・・・・・」

 首を傾げて前髪を下ろすと・・・・・・。

「!?」

 再び世界が二重になって見えた!

「どうしたウサか? 何か分かったのウサ?」

「あ、ああ。分かりかけてきた。秘密は俺の『前髪』だッ!」

「・・・・・・前髪?」

 てゐは耳を折り曲げる。前髪って、『前髪』のことだよなぁと思っていると

「なぁ、てゐ。今から俺が言うことを行ってくれ。確かめたいことがあるんだ」

 ドッピオはてゐの肩を掴んで言う。

「えー、めんどくさいのは嫌ウサ」

「めんどくさくないぞ。いいか、今から僕と『じゃんけん』をしてくれ。五回勝負だ。『五回』のうち『三回』先に勝った方の勝ち。もしてゐが僕より先に『三回』勝てたら何でも言うことを聞こう」

「ん・・・・・・? 今何でもって言ったよね? いいウサか? 本気で勝ちにいくウサよ」

 にやり、とてゐは笑った。どんな面倒くさいことを言われるか分からなかったがじゃんけん勝負とはしめたものである。

 てゐの持つ能力は『人間に幸運を与える程度の能力』。実は彼女の能力は人間だけではなく『人型の妖怪』にも効果が適用される。

 つまり、自分が対象に入るのだ。

 じゃんけん勝負は運によって勝ち負けが決定する。運を引き寄せるのはやはり『幸運』。事実、てゐは幻想郷においてほとんどじゃんけんで負けたことはない。流石に『奇跡』に『幸運』は敵わないが。

 

 

「よし、行くぞ!」

 だが、因幡てゐはただ能力に頼ってこの世界を生き抜いてきたわけじゃあない。

(あたしには幸運の他にも、幻想郷一のずる賢さが備わってるウサ!!)

 ドッピオは大きく降りかぶり、じゃんけんを始める!

 

「最初はグー!」「パー!!」

 

 だが、てゐはパーを出していた。

「やったー! まずは一勝♪ まさか最初は絶対グーだなんていうルールは設けてなかったもんねー♪ 最初にルールを確認しなかったあんたが悪いのさッ! このスカタン!」

 てゐは上機嫌にくるくると回りながら最初の一勝を喜んでいた。

 すると、ドッピオは――――。

「そうだな・・・・・・『最初にグーを絶対出せ』なんてルールは無いし、『かけ声と同じ手を出せ』っていうルールも設けて無いな」

 ドッピオの手はグーでは無かった!!

「――――何ッ!?」

「よく見ろ、てゐッ! 俺の手は『チョキ』なんだぜェーッ!!」

 そ、そんな馬鹿なッ! あ、アタシの『ルールの裏をかく作戦』が・・・・・・完璧に読まれているなんて!!

「次にお前は『てめェー何であたしが最初にパーを出すって分かったんだッ!』と言う」

「てめェー何であたしが最初にパーを出すって分かったんだッ! ――――ハッ!?」

 完全にてゐはドッピオに先を読まれていた。

「悔しいかァ~? 悔しいだろうなァ~。自分の得意技で揚げ足を取られるなんてなぁ・・・・・・?」

「ぐぎぎぎぎッ・・・・・・! チョー悔しいぃいッ!」

 だが、ドッピオはどうやってかは分からないが完全な先読みをしたのは事実。

 でなければ、いきなりチョキを出すなんて不可能なのだから。

「どうする? 続けるかい?」

「・・・・・・いや、いーよ。おそらくだけど、『未来』が見えてるんだろう?」

 てゐはへらへら笑いながらドッピオに指さした。

「・・・・・・驚いた、そうだよ。すぐ分かったんだね」

「まぁー未来予知なんて幻想郷じゃ珍しくないからねー。・・・・・・ん? いや、あいつは『運命操作』だったっけ?」

「幻想郷は広いな。そんな奴までいるのか?」

「物理的には狭いけどね。他にもすごい奴らは一杯いるよ」

「・・・・・・あ、ちなみにてゐ」

「ん?」

 ドッピオは驚愕の事実を語った。

「いや、実はじゃんけんの前にてゐが最初にパーを出すように誘導してたんだ。俺のこの前髪に写る未来はどうやら『確定事項』のようで・・・・・・。だから俺がしたかった確認は『てゐがパーを出して俺がチョキを出す』っていう状況を作ったあとに未来を見て実際に事がそんな風に運ばれるか確認したかったってことなんだ」

「・・・・・・ってそれってつまり。・・・・・・えっと、ドッピオの見える未来の現象は『絶対に避けられない事』ってこと?」

「そうだね」

 瞬時にてゐは理解する。

 つまりこの男は私の『幸運』と『ずる賢さ』を『スタンド能力』無しで上回ったと言うことになる。

「・・・・・・えげつないウサね・・・・・・」

「・・・・・・?」

 ドッピオが何に対しててゐがその言葉を言ったかは分からないが、てゐはため息をついていた。

(こいつ、どっか抜けてる癖に実はとんでもない奴ウサ・・・・・・)

 その後、美鈴の手術が終わり三人が居間に戻ってきた。

 

 その頃、ディアボロは・・・・・・

 

(・・・・・・何にせよ、スタンドは戻ってきた! 意外と順調ではないか。・・・・・・だが、ドッピオよ・・・・・・なぜそんなに簡単にスタンド能力をバラしてしまうんだ・・・・・・)

 

第五話に続く・・・・・・はずです

 

*   *   *

 

 ヴィネガー・ドッピオ スタンド名『墓碑名(エピタフ)』

 

*   *   *

 

おまけ

 

てゐ「ん? ちょっと待って。じゃあドッピオのあの最後の『お前は次に~と言う』っていう下りは何だったの?」

 

ドッピオ「え? ノリ?」

 

てゐ「ノリかよウサ!」

 

ドッピオ「てっきりてゐが上手く乗ってくれたのかと思ったけど」

 

てゐ「・・・・・・ん、じゃあ・・・・・・それでいいウサ」

 

*   *   *




次から闘います。一部ディオ強いよね。
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