ボスとジョルノの幻想訪問記 42
前回までのあらすじ(時系列順)
東風谷早苗、人里での布教再開
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八坂神奈子、洩矢諏訪子、永遠亭に訪問
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東風谷早苗、射命丸文と姫海棠はたてに接触
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射命丸文、姫海棠はたての予知を確認
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ジョルノ、てゐ、チルノの3人、妖怪の山へ出発
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咲夜、ディアボロの2人、旧地獄へ出発
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河城にとり、ジョルノたち3人を捕獲
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比那名居天子、八意永琳を誘拐
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ジョルノたち3人、河城にとりを撃破。守矢神社に再出発。
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東風谷早苗、河城にとりの元へ。
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ボスとジョルノの幻想訪問記 第42話
青娥娘々の異常な愛情①
東風谷早苗が玄武の沢に行く直前。場所は守矢神社。そこには東風谷早苗と八坂加奈子、そして洩矢諏訪子がいる。
スタンド能力に目覚めてから早苗はかなりタガが外れてしまった。神奈子も諏訪子も認識すら不可能なこの力を、見ず知らずの外来人が奪いに来るなんて彼女の癪に障ったのだ。自分にとって害となる存在は根こそぎ葬り去ろう、というのが彼女の考えだった。
「でも、神奈子様と諏訪子様だけは例外です。お二人がいくら私のこの能力を無碍に扱おうと、私はお二人には一切手は出しません!」
そう笑顔で言う早苗の目の前には――――。
「……早苗……」
「うぅ……どうして……早苗、元に、……元に戻ってよ……」
何も服を着ておらず、両手両足に封印の紋が刻み込まれた杭を柱に打ち付けられ、身動き一つとれない神奈子と諏訪子の姿があった。
「あれあれぇ~~? 何か変な言葉が聞こえますねぇ。私の耳が腐っちゃいましたか? ううん、正常だ。鼓膜の振動は正常だ。つまり、お二人のお口が腐っちゃっているわけですね、そうですよ」
猟奇的な笑顔に表情を輝かせて早苗は背後を振り向いた。
ここは守矢神社最奥に位置する狭い御堂。つまり、特に許可が無ければ早苗たち3人しか入ることが出来ない神性にて不可侵の領域に部外者が一人。
「そうですわね、早苗さんが言いたい事は……こういう事かしら?」
青い髪を蝶の羽のような結わい方で纏めた、美しい女性が立っていた。彼女は早苗の言葉に頷いて納骨堂から出て行き、そしてすぐに戻ってきた。
「何ですか、そのツボ?」
その女性は手に乗るサイズのツボを持っている。早苗はにこやかな笑顔のまま女性に尋ねた。
「これは神聖なるお水よ。今日は『出がいい』みたいで、一杯取れましたわ」
ちゃぷん、と波が立つ水面には何かゴミのような物体が大量に浮かんでいる。早苗は直感的に近付くことはしなかったが、凄まじい腐臭を放っていた。
「……それをどうするんですか?」
「もちろん、こちらの両生類のお口に流して、清めますの。きっと泣きながらお喜びになるでしょう」
しかし、女性はそのツボに鼻を近づけすんすんと香りを嗅ぐと恍惚とした表情になってそう言った。
諏訪子は二人の会話を聞いて「えっ」という声を漏らして早苗の顔を見た。
「ま、待って早苗! なに、それ……やだ、謝る……。謝るから『それ』はやめて!!」
「……」
諏訪子は動かない四肢を必死に揺らして早苗に懇願する。その様子を神奈子は黙って見るだけだった。
「ほらほら諏訪子様。清めのお水ですよ? 有難く受け取りましょう、その腐りきった口で。神奈子様を少しは見習ってください」
緑の髪を揺らして無情にも諏訪子に言い下す。その横を女性は通って諏訪子の口に太い筒を突っ込んだ。
「ま、やめ……えぐっ!?」
「五月蠅いわよ、蛙。汚らわしいからさっさとお口をそそぎなさい」
そして、一気にツボを傾けて強烈な臭いを放つ水を諏訪子の小さな口に流し込んだ。
「う、げぇえええ!! おええっ、うぶ、ごほっ!!」
筒を通して諏訪子の口の中が汚液で満たされる。両目を引ん剝いて諏訪子は液体を出そうとするが、女性が容赦なく注ぎ込むので吐くにも吐けなかった。
「諏訪子様、大丈夫ですか? 苦しいなら飲み干した方が多分生存出来ますよ?」
まるで他人事のようにのたまいながら、早苗は諏訪子の様子を眺めていた。早苗の言う通り、苦しみから逃れるにはもう飲むしかないのだ。彼女の両目からは苦しみの涙が零れ、思考は「これは悪い夢だ」のような現実逃避のものに一辺倒していく。
(……すまない、諏訪子……。だが、いずれは早苗はこうなってしまう運命だったんだ。……彼らに頼むしか、もう早苗は……)
神奈子は目を閉じて心から諏訪子に詫びながら、あの時のことを考えていた。
自分がジョルノたちに早苗を止めるよう頼んだから、今私たちはこうして成す術もなく虐げられている。
「うぇええ! ごぼぉ!!」
あまりの強烈さに全身が痙攣し失禁まで犯してしまう諏訪子に対して、更に嗜虐的な二人の行為は加速していく。
「あらあらあらあら、諏訪子様は下のお口まで腐っているようですね」
「しょうがない神様ですわ。下のお口にも同じく飲ませて差し上げましょう」
既に意識を半ば手放しかけている諏訪子に二人は寄って集って神としての尊厳を汚していく。異常な光景の中、神奈子は黙って耐え忍ぶしか出来なかった。
* * *
「あぁうぅ……」
ボロ衣の様に全身汚れきった諏訪子を前にして早苗は青い髪の女性に思い出したかのように切り出した。
「あ、そういえば私、ちょっと仕事がありました。例の3人が捕まったって聞いたので……」
例の3人とはジョルノ、てゐ、チルノのことである。それを聞いた女性は「なるほど」と手を打って。
「あらそれは良かったですわね、早苗さん。でしたら、そちらに向かわれますか?」
笑顔のまま女性は諏訪子の舌に突き刺していた針を抜いて早苗の方を向いた。
「ええ、一応確認のために。数刻、ここを空けますがお二人のお世話を頼めますか?」
「そのためにあなたの元に来ましたのよ? 当然、大丈夫に決まってますわ」
その言葉を聞いて安心したのか早苗はすぐに堂を出て、どこかに立ち去っていく。
「……あなたたち、お二人もかなりの災難ですねぇ」
早苗がいなくなったことを見計らって女性は神奈子と諏訪子に話しかけた。
「……お前は誰だ? どうして早苗に肩入れをする?」
神奈子も早苗がいなくなったことを察して、口を開いた。
「……私はただ、人間が壊れる様を眺めていたい、通りすがりの邪仙ですよ? 早苗さんと知り合ったのは昔ですが、私が彼女に対して肩入れをしているつもりは全くありませんし」
意外な返答が帰ってきた。
「それにねぇ、最初に言ったけど。私は壊れる人間が見たいだけなの。だから私は壊れる人間と壊れない人間の区別は着くわ。――あなたは壊れない。隣の蛙ちゃんは微妙だけど……でも、基本神様は壊れない様に出来てるから、蛙ちゃんが壊れるかどうか試してるだけよ?」
確かに、諏訪子は連日早苗やこの女から行き過ぎた虐待を受け続けているが、早苗が元に戻るのを願う事だけは放棄していない。それは神奈子も同じである。
「……そんなことが貴様の目的か?」
神奈子は怒りを帯びた視線で彼女を睨み付ける。だが、彼女は首を振った。
「違う違う、本当の目的は違うわ。そもそも、今蛙ちゃんを虐めてるのは単なるひ・ま・つ・ぶ・し♪」
にこにこと笑顔を浮かべながらどこからかホースを持ってきて真水を諏訪子の体にかけてあげる。
「つめたっ!」
「ほらほら、ちゃんと流さないと綺麗な体が勿体無いわ。死んだら私のものなんだから」
諏訪子は突然の水に驚きながらも、本能的に求めていた水を受けて必死で体を擦る。よほど水が嬉しいのだろう。ちゃんとうがいも忘れない。女性が何か物騒なことを言っているが、諏訪子の耳には届かなかった。
「可愛いわ、蛙ちゃん。ここの神様にしておくのは勿体無いわねぇ」
「勘弁してくれ。諏訪子は私と早苗の家族だ……」
神奈子はこの女性の掴めない性格にうんざりとして言った。
「うふん、そう構えなくていいわ。しばらくしたら私はすぐにいなくなるから」
「?」
そう言い残して、女性は御堂から出て行こうとする。
「待て、お前どこに行く気だ?」
神奈子は呼び止める。妙な動きをする気なら溜まったものではないからだ。
「お前じゃなくて、私にはちゃんと名前が……って、言ってなかったかしら?」
「言ってないな」
神奈子の言葉に「あらやだ私ったらドジっ娘さん」と舌を出して右手で頭を小突く女性。
「私の名前は霍青娥。青娥娘々って呼んで下さる?」
「……遠慮する」
その言葉を聞いて青娥は「残念」と呟いて、頭から簪を抜いて壁に穴を開けた。これが聞いていた『壁を抜ける程度の能力』である。
「……ドアぐらい開けて出て行け……」
動けない神奈子はホースから流れる水で全身を洗い流す諏訪子を尻目にそう呟いた。
* * *
御堂から出て、神社の表に出ると青娥は彼女を探した。
「芳香~~! どこにいるの~~?」
青娥が優しく呼びかけると、神社の軒下から声が届く。
「こ~~こ~~だ~~ぞ~~~、出れぬ~~~」
聞き覚えのある彼女の声。すぐに青娥は軒下を見て彼女を見つけ出した。だが、どうやら軒下に入り込んだはいいが出られないらしい。
「芳香! んもう、そんな場所に入っちゃって可愛い! どうやって出るか分かる?」
「……前に出る~~。でも、出れぬ~~~~~」
芳香と呼ばれた少女は軒下で這い蹲りながら這い這いで前に進もうとするが、彼女のいる地点から先はさらに軒が下がっており、それ以上前には進めずにいたのだ。
「う~ん、芳香ちゃん。そこにどうやって入ったの?」
青娥は優しく芳香に尋ねた。声を聴いた芳香はぴたり、と這い這いを止めて考える。
少しの間を置いて、芳香が口を開いた。
「せーががおトイレ手伝ってくれたあと、暇だったからごろごろしてたら……」
と、芳香は口を閉じた。どうやらそれ以上のことは忘れてしまったらしい。
青娥はそんな芳香に対して心の底から可愛いを連呼しつつ、芳香に導きの答えを告げる。
「可愛い! ……じゃなくて、ほら、芳香? 可愛い! えっと、這い這いしてるのと逆の動きをするのよ。きゃわたん! ……うん、腕を後ろに、足を後ろに……か~わ~い~い~~! そうそう、いい感じよ芳香! 最高にキューティクル!」
いちいち芳香の動きに可愛いと感想を述べながら青娥は芳香に指示を出す。
そして、5分後。
ついに芳香が軒下からはい出してきた。全身が泥だらけである。だが、青娥はその泥で自分の美しい絹で出来た青い衣が汚れてしまうのも厭わずに芳香に抱き付いて。
「よぉ~~~~~しよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしかよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしか。1人で、出来たね。エライ、エライ」
「うおおおお、ここはどこだー!? 私はどこだー!?」
芳香は両手両足をぴーんと伸ばしたまま青娥に全力で何度も何度も何度も何度も頭を撫で回される。
なぜ、芳香の両手両足は曲がらないのか。それは彼女が霍青娥に半自立的に操られているキョンシーだからだ。中国風の帽子にたれざがったお札には青娥の書いた命令が書かれる。今は「せーが大好き」と日本語で書いてあるが。
「うふ、私の可愛い可愛いアイドルちゃん。一人で出来たご褒美をあげましょう」
「ごほーび? ごほーび!」
芳香はごほーびと聞いて飛び上がって喜んだ。四肢は曲がらないため奇妙な飛び方ではあるが。
「そうね、二つ……二つにしましょうか?」
「うおお」
芳香が首を振った。どうやら二つじゃ不満らしい。
「んもー! 可愛いわね! じゃあ3つね!? 3つも欲しいのね!? このいやしんぼめっ!」
「うおっ! うおお!」
青娥の言葉に芳香はかくんかくんと頷いて口を開けた。それを見て「可愛い」と思いながら青娥は懐から角砂糖を3つ取り出す。
「1,2の3! で投げるわよ。ちゃんと口でキャッチするのよ?」
「うおお!! うおっ!」
芳香は再び首を大きく縦に振りながら、グパァ! と大口を開けて待ち構えている。
「1,2の3! それっ! あっ、しまっ……」
同時に投げた3つの角砂糖の内、2つは芳香の方に飛んでいったが、残りの一つが青娥の手から離れるのが少し遅れた。それを見た芳香は――――。
「うぉお……」
ぺし、ころん、ころん、ころころ……。
青娥が投げた3つの角砂糖の内、一つも取ることが出来なかった。しかも、1つは芳香の顔に当たって地面に落ちた。
「……可愛い!!!!」
落胆している芳香も可愛い、と言わんばかりの笑みで青娥は芳香に抱き付いた。芳香も角砂糖はいつもどおり一つも取れなかったが青娥が喜んでいるので悲しい感情もすぐに吹き飛んだ。
「せーが! せーが!」
「よぉ~~~~~~しよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしか。あなたはなんて可愛い子なの」
名を呼ぶ芳香を抱擁して青娥はナデナデ。再び芳香を全力で撫でまわす。
「――ところで芳香。今からお仕事よ」
「うん」
と、青娥が芳香を撫でることをぴたりと止めてお札を取り出した。
芳香への命令が書かれたお札。芳香の額にそれが貼られると芳香はその命令を機械の様に忠実にこなす。
「早苗さんに頼まれた神様2人のお世話、それはもういいわ。もう一つの頼まれごと……2匹の烏天狗の処分……。私とあなたでやるの。いつもみたいに、ひとりじゃあ無いわよ芳香」
「せーが、と一緒。うれしい」
二人はそう言って山の下を眺め降ろす。
「……ついでに東風谷早苗も処分出来そうね……」
青娥がにわかに呟いた。悪い笑みを携えて……。
43話へ続く……。
* * *
あとがき
混沌としてきました、第2章風神録編! なんと、青娥娘々の登場です!
きっとこの二人の登場は誰も予期しなかったでしょう。しかも、やはり娘々は悪いことを考えてらっしゃる(平常運転)。
さてさて、勿論ここで出てきて更にある程度早苗からの信頼(宗教の違いは気にするな!)もある娘々……当然、『スタンド使い』です。まぁ、たぶんすぐに分かるでしょう。というか分かってくれ。ついでに早苗さんも攻撃できるくらい範囲の広いアレです。
今回はちょっと話が短かったですが、次回からはそんなことはありません。
それでは、青娥娘々の異常な愛情①でした。また次回でお会いしましょう。
感想、評価、批評、受け付けてます。感想返し楽しいです。いつも応援ありがとうございます。