ボスとジョルノの幻想訪問記   作:フリッカリッカ

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人間少女の二律背反③

ボスとジョルノの幻想訪問記 第49話

 

 人間少女の二律背反③

 

 目の前の全裸の幼女はただ只管に愉快な笑みを浮かべていた。まるで今から年上のお兄さんとおままごとでもして遊ぶかのような表情だ。ただ、少々邪な感情が混じっている。

 

「よく分かったね。私は必死で隠してたつもりだったけど」

 

 自分の違和を察知されたのは驚きだった。ただの力のない人間だと思っていたが、なかなかどうして勘の鋭い奴だ。

 

「……分かったというか、ただそういう可能性も捨てきれなかっただけだ。東風谷早苗の能力が幻覚というより洗脳に近いものだったからな」

 

 自分で食らってみて初めて分かることだった。ジョルノはそこから、この二人は洗脳によって自らを騙していたのである。

 

「本当はきっちり早苗にあんたが料理されてから私の出番だったんだけどね。順番狂っちゃったけど、『万全』じゃあなくなっただけさ。……あんたが餌食にならないわけではない」

 

「……その言い方だと、後ろの方の出番が無いように聞こえるが……」

 

 ジョルノは神奈子の方を示す。それについては「困ったなぁ」といった表情を諏訪子が浮かべて

 

「……うん。神奈子は今回おあずけする予定だったんだけどね。力が強すぎて、私たちも止められないから」

 

「……」

 

 諏訪子のその言葉にジョルノは神社の前で待っている文達が心配になる。薄々と感じていた。何か、とてつもないスタンドエネルギーのような物が上から伝わってくるような気がしていたのだ。

 

 神奈子は一切喋らない。おもむろに立ち上がり、さも当然の様に手錠を引きちぎって地上に上がろうとする。

 

「待てッ!! お前を上に行かせるわけには……」

 

「わけには……何だ?」

 

 ここでようやく神奈子がジョルノの方を見た。永遠亭で感じた威圧感の数倍の圧力がジョルノを襲う。だが、スタンド使いでは無い文が上で待っているのだ。こいつを行かせてしまっては、何が起こるのか皆目見当もつかない。

 

「……!! 行かせるか! 『ゴールドエクスペリエ……』」

 

 スタンドを出してジョルノが神奈子の行く手を塞ごうとした瞬間。

 

 

「――――だ魔邪――――」

 

 

 ジョルノの耳にはそう聞こえた。声がひっくり返ったような感じがしたかと思うと、いつの間にか天地が逆転していて背中と後頭部に激痛が走った。

 

「――ッがァア!!?」

 

 投げ飛ばされた、いや、押し飛ばされたのか? 分からない。ただ、一瞬凄まじい力を加えられて彼は無様にも壁に叩き付けられ受け身も取ることも出来ぬまま地面に這い蹲らされていた。

 

 うわさに聞いてはいたが……これが――――

 

「軍神。聞いたことくらいはあるんじゃあない? 神奈子はかつて日本では最強の名を冠していた有名な神様だったんだよ」

 

 飛ばされたジョルノの隣に諏訪子が笑みを浮かべながらカエル座りをする。その舌はかなり長く伸びており、全身にはぬらぬらと光る粘液状の液体が分泌されている。

 

「いってらっしゃぁい、神奈子。あんまり無茶しないでよね。早苗を助けるだけに……ってもう聞いちゃいないか」

 

 諦める様に諏訪子は無言で地上に上がる神奈子に言葉を送った。無論、受け取り手は立ち止まるどころか振り返ることも返事をすることもせずに上へ行ってしまう。

 

 神奈子がいなくなったところを見計らって諏訪子がジョルノの方へと向き直った。その眼球はギョロっとしており、段々と人間離れしていく。ジョルノの目にはカエルの化け物が眼前にいるような感じである。

 

「……さて、ジョルノ・ジョバァーナ。やっと二人になれたねぇ??」

 

「……!!」

 

 ずぞろぉ、と諏訪子は一切体を動かさず、長い長い舌を伸ばしてジョルノの首元から耳上まで舐め上げた。ひんやりとしていてぬめった舌の感触は非常にむず痒く、ジョルノの全身に悪寒めいたものがゾクリと駆け巡る。

 

「な、何が目的だ……!!」

 

 先ほど神奈子によって投げ飛ばされた体を起こそうとしながら諏訪子と距離を取るジョルノだが、その動きは痛みで緩慢になっており、諏訪子にとっては無意味そのもの。

 

「顔が赤いよぉ? こんな幼い子相手に何興奮してるんだろうねぇ……」

 

 本来ならば諏訪子の方が数千年単位で年上なのだが、見た目は幼女そのものである。一端の男であるジョルノが全裸の幼女を見て全く劣情を抱かない、というのは無理な話であろう。

 

 ぎりっ、と歯を軋りながらジョルノは諏訪子から離れようとする。だが、彼女は逆に彼の耳元まで既に近付いていた。

 

「知ってる? 人間は死を感じると生存本能として種を残そうとするらしいの。だから、死ぬ直前の男は大抵勃起してるらしいんだけど……あなたは死ぬ予定でもあるのかなぁ?」

 

「なッ……!! 貴様ッ!!」

 

「怖がるのも無理はないよ。わたしだって、神奈子と半世紀以上戦争を繰り広げた祟り神さ。あなたの本能は私という存在をよく理解している」

 

 甘い息がジョルノの首元にかけられる。全身から分泌される粘液から発せられる何とも言えない甘ったるい香りが地下に充満していく。

 

「……貴様の、狙いは何だッ……!!」

 

 必死で絞り出した言葉はそれだけだった。上気していく脳みそでは考えが煮詰まって言葉が上手く口から出ない。

 

 種としての根源的恐怖に陥った人間に対して、神である諏訪子は全てにおいて優位に立っていた。もはや、ジョルノはスタンドを用いて抵抗することさえも忘れてしまっている。

 

 そのまま諏訪子は馬乗りになり、劣情を含んだ表情で彼を見下ろし、答えを口にする。

 

「――――『矢』を奪いに来たんだ。……『シビル・ウォー』」

 

 身に覚えの無い単語と、不可解なワードを唱えた直後、地下室に諏訪子たちを中心として漆黒が広がった。

 

「――――ッ!!?」

 

 落ちる、と思い咄嗟に目を瞑るが、この漆黒の何かは地面を覆っているだけである。しかし、そこからジョルノは目を疑う代物が這いずり出てくるのを見た。

 

「こ、これは……『腕』……い、いや……人間だ……!! 何だ、こいつらは!? 一体、どこから……??」

 

 その光景は余りにもショッキングだった。地面から腕が伸びたかと思えば怨念の籠った声を響かせながら現れる人間の顔。しかも、そのどれもが異常なまでに痩せ細り、色は白く、白目をむいている。

 

「静かに。こいつらは『私の物』だ。あなたのじゃあないから安心して」

 

 にこりと笑みを浮かべる諏訪子だが、確かにこのバケモノ達はジョルノたちの周りに群がるだけで攻撃はしてこない。

 

「私のスタンドは『シビル・ウォー』。こいつ自体は戦闘力なんてほとんどないカスみたいなもの。本当に恐ろしいのはこの能力」

 

 と、説明しながら諏訪子の背後からロボットの様な小型の人型スタンドが姿を現した。彼女の説明通り、華奢でスタンド自体からは微塵のパワーも感じられない。

 

「その能力は『過去に捨てた罪を呼び起こす程度の能力』。おまけに私の能力は対象指定では無く空間指定だから、その能力は私にも適用されちゃうんだよねぇ。だから、こいつらはあなたの過去ではなく、私の過去ってこと」

 

 そんな説明など耳に入らないほどの絶叫が地下室にこだましている。つまり、諏訪子はこれほどの数の人間を捨てたということになる。

 

「私は祟り神。どうやら人間が勝手に祟って殺した人間や、自然の祟りと呼ばれるような大規模自然災害によって死んだ人間も私の過去に捨てた罪に含まれるらしい。ほんと、損な役回りだよねぇ……ってそんなことはどうでもよくて」

 

 にやにやと話しながらようやく諏訪子は本題に入った。

 

「つまり、空間支配のこの能力下ではあなたの捨てた過去の罪も戻って来るわ。……もう気が付いてるでしょう??」

 

 次第にジョルノの息が荒くなる。彼の目の前に現れたのは見覚えのある人物だった。

 

「ハァッ、ハァッ……そ、んな……馬鹿な……!! 僕は……君を捨てたとは……おもって……!!」

 

 だが、言葉ではそう言っても心のどこかでそう考えていたかもしれないのだ。この手の能力は本人の魂が強く関係している。

 

「――――魂に嘘は付けない。それがあなたの捨てた罪だよ、ジョルノ・ジョバァーナ」

 

 諏訪子はジョルノから離れる。同時に彼が捨てた彼女が襲い掛かる。

 

 その姿は鈴仙・優曇華院・イナバに酷似していた。

 

「う、わああああああぁぁぁッッ!! 『ゴールドエクスペリエンス』ゥゥゥ!!!」

 

 我が身を守るため、ジョルノは鈴仙を思い切りスタンドで払いのける。すると、簡単に鈴仙は体制を崩し、地面に頭をぶつけた。その頭部は粉々に砕け散ってしまう。

 

「あぁっ!! あ、く、そ……れ、鈴仙……」

 

 認めたくはない。認めたくなかった。もはや魂が鈴仙を救うことを放棄してしまっていることを。

 

 しかし、頭部が粉々になった鈴仙はむくりと起き上がり、崩れた表情をジョルノに向けてニタァと笑みを零した。

 

「――も、守矢諏訪子ォォーーーーーッ!!! 貴様、貴様はァァアアア!!!!」

 

 迫りくる狂気に背を向け、ジョルノは諏訪子に攻撃しにかかるが、その足に何かがしがみ付いた。

 

「……ッ!? え、……あ」

 

 彼の足を掴んでいるのは小さな水色の少女だった。

 

「ち、チルノ……! 君まで、そんな……あぁッ!!」

 

 捨てたという認識は無いはずだった。だが、確かにジョルノはチルノを置いてここまで来たのだ。

 

「……『ゴールド……』」

 

 すぐにスタンドを出そうとするが、その動きも既に封じられている。『ゴールドエクスペリエンス』が何者かに押さえつけられていた。

 

 

 

「……だ、誰だ?? いや、待て……見覚えがある……あんたは……」

 

 ジョルノの額から今まで感じたことの無いような不穏を孕んだ汗が浮かび上がる。捨てた。僕が? 誰だ?

 

 

 捨てたのだ。僕が。彼女を。彼らを。思い出した。

 

 

「お、思い出した……ッ。僕は、僕は……!!!」

 

 挫けそうだ、心が折れそうだ。彼らの苦しみの表情を僕は見ていることが出来ない。

 

 名は……何てことだ、『思い出した』。だけど、思い出すには酷すぎる。

 

「……『ブチャラティ』……!! 『アバッキオ』、『ナランチャ』……」

 

 彼を取り囲み、まとわりつくのはかつての仲間の姿をした者たち。しかし、今はもはやその表情は見る影もなく、苦しみに歪んでいる。

 

「『ミスタ』……『フーゴ』……、『トリッシュ』……ッ!!」

 

 僕が捨てた……いや、僕の無力のせいで捨てられた僕の罪たちだ。

 

 

 『僕が矢の力を得るに値しなかったせいで死んだ者たちだ』。

 

 

「う、わあああああぁぁぁぁぁぁぁッッ!!! うあああああああああああッ!!!!」

 

 絶叫と共に、彼は過去の罪達の中に飲まれていく。

 

*   *   *

 

 ジョルノが隣で絶叫し、罪に飲まれていく中、諏訪子はようやく目当ての品物を発見した。

 

「……これが『矢』か……。これを手にした者はこの世の全てを統治することが出来るとか何とか……。まさか、本当にこれだけ『具現化』してるなんてねー」

 

 『矢』を手にした諏訪子は謎の魅力に引き込まれていく。気が付けば矢じりを自分に向けて突き刺そうとしているのだ。

 

「……おっと、こんなことをしてはいけないな。さっさと『矢』を回収したことを神奈子に伝えなきゃ……」

 

 すぐに諏訪子は準備してあった矢袋に石の『矢』を入れて地上へと上がる。

 

 地下室に『シビル・ウォー』だけが残った。

 

*   *   *

 

 早苗が倒され、ジョルノが守矢神社内に入ってから半刻。守矢神社前の広場には既に人っ子一人もいない状況だった。

 

 当然だ、この炎天下の中で立っていられるような人間や妖怪はいない。従って、唯一残っていた早苗も地面に倒れ伏したまま動かなかった。

 

「……早苗」

 

 神奈子自身にも大量の汗が流れ落ちている。いくら強靭な肉体を持とうとも、自分のスタンドの凄まじいエネルギーには長く耐えられそうになかった。

 

 頭上に浮かぶ巨大な太陽が、彼女たちの身を焦がしていく……。

 

 

「……ッ!! ま、まさか八坂神奈子も……」

 

 凄まじい熱気の中、唯一あった林の中の日陰に身を隠していた天狗衆は、照り付ける太陽の元で立つ神の姿を見る。

 

「暑い……あちぃぃ~~~よぉぉ……何だってんだ……。身が、身がもたねえ……」

 

「畜生、暑さで段々眩暈が……」

 

 既に天狗衆は暑さに大半がやられ、日陰から出ることがかなわない状況だ。

 

「……」

 

 勿論、文の隣で貧血気味にガクンガクンと頭を揺らして意識を手放しかけている引きこもり天狗も例に漏れない。

 

「……はたて、しっかりしなさい。ここで気を失ったらそのままゴートゥヘヴンよ」

 

「……引きこもりにこれは…………辛い……うぅ……」

 

 何とか絞り出したセリフは掠れ、今にも消え入りそうだった。

 

「気持ちは分かるけど……このままじゃあ八坂神奈子に早苗を連れて行かれちゃうわ。このまま……みすみすと逃がしてなる物ですか」

 

 と、林の中から様子を見ていた文は神奈子が早苗の元にしゃがみ込んで何かを与えていることに気が付く。既に早苗の体はボロボロで、照り付ける灼熱の熱線でミイラと化したかに思われた早苗だが……。

 

 次の瞬間彼女は立ち上がり、大きく背伸びをした。

 

「――――なッ!?」

 

 文が自分の目を疑った一瞬。その刹那の隙を突いて、早苗が文の視界から消え去り眼前に肉薄していた。

 

「――――神の粥はドーピングじゃあないから」

 

「は――?」

 

 にやぁ、と笑みを浮かべて早苗は『愚者』を出し、文の顔面を切り裂いた。

 

「――――アァッ!!」

 

「這い蹲れ烏天狗。よくも、よくも私を蔑んでくれたな??」

 

 狂気に満ちた眼球で、辺りを睨み付ける。神奈子のスタンドでかなり疲弊している彼らに文を助けることは敵わない。

 

「ぐ、あ……目が、私のっ……」

 

 縦に三本、早苗の『愚者』によって抉られた傷から大量の血が流れ落ちる。その上で頭を踏みつけられ、傷に土が入り込み、更なる激痛を生み出す。

 

「あ、あああああッ!!! あ、あ、あっ!!!」

 

 その悲鳴に早苗は心底見下す視線を送り、更に踏みにじった。

 

「……私はいくら痛めつけられても神奈子様の粥を口にすれば全快する。そういう風になってるんだ。お前たちのような社交辞令の様な縦社会とは違う、あのジョルノとかいう人間共のなれ合いの様な関係とは違うッ!! 私たちは、運命を共にした共同体のようなものだッ!! 貴様らに、貴様らなんかに、お二方と同等である私を傷付けられて、お二方を傷付けられて、たまるかッ!!」

 

 狂気に満ちた怒号で戦意を失った烏天狗たちを早苗は一蹴し、『愚者』を辺りに散布し始める。

 

「貴様らには幻覚など生ぬるい……悪夢だ。悪夢を見せてやる……!! 『愚者の奇跡』……!!」

 

 と、スタンド能力を用いている早苗の足下で、文は奇妙な感覚をその肌に感じた。

 

(……? 何だ、この顔に当たる……この物体は?)

 

 不自然に思いながら文は動く右手で地面を掘った。そうしている間にも早苗のスタンド能力は周囲を覆い尽くし、烏天狗たちは一様に幻覚に陥る。その悲鳴は意味を成す文章では無く、野獣の雄たけびにしか聞こえない。

 

 ただ、その中で文だけが眼前の奇妙に興味を示していた。

 

 

――――東風谷早苗の足元を掬う?

 

 

「……?? 何だ、おい、貴様ッ!! 何をしている射命丸文!」

 

 何か違和感を察知した早苗は足を文の頭から上げてその顔を見る。傷付けたはずの眼球はこちらを見ており、何か覚悟を決めたかのような表情をしている。いや、そんな情報は今の早苗にとってどうでもよかった。

 

 何より彼女にとって衝撃だったのは、文の額に8割ほど突き刺さり、頭部に沈んでいく金色のDISCの存在だ。

 

「――――ッ!!! きさ……」

 

 すぐさま『愚者』を手元に戻して攻撃を試みるが、それより早くDISCは沈んでしまった。

 

「見える、あんたの…………それが、『スタンド』なのね? はっきりと、見える。今なら……!」

 

 『愚者』の攻撃をすれすれで回避して文は早苗を蹴り飛ばした。彼女は自分の傷付いた顔に手を当てて信じられない、と言った目で早苗を見る。

 

 隣に今までいなかった砂の化け物が見えるのだ。

 

 そして、彼女は更に不自然な点に気が付く。自分の右手を見ると皮が捲れていた。

 

 ぺり、ぺりぺり……

 

「――ッ!?」

 

 驚いたことに、その皮は更に大きく捲れていく。そして、その内側に『文字』が書かれている。

 

「何!? ……これは……??」

 

 目を疑った。何故なら、その文字は正しく自分の筆跡だったからだ。

 

「わ、私の筆跡!! 『やったぞ、スタンドを手に入れた。これで東風谷早苗をやっつけてしまおう!』 いつ書いたの? いや、それよりも、この後の文字!!」

 

 能力、と書かれた所まで捲り、文の手が止まった。能力とはつまり、この不可解な現象の原因だろう。凄まじい興味と共に、文は自分の腕をめくった。

 

「――『能力 ①記事を魅せる。ただ見せるだけでは駄目。相手に読ませ、そして魅せなくてはならない。 ②対象を本にする。本にされた対象は上手く動くことが出来ない。 ③命令を書き込む。書き込まれた命令は『絶対』だ!』……!!」

 

「――まだ能力を理解していない今がチャンスッ!!」

 

 早苗はすぐに体勢を整えて文に向かっていく。どんな能力に目覚めたか分からないのだ。叩くのは今しかない。

 

 よく理解が出来なかった。だが、記事なら持っている。そして、それは正に対象が読んでいた物だ。

 

「――――号外ッ!!」

 

 それは守矢神社の不正をゴシップにした記事だった。早苗に目を付けられることとなった原因の記事である。

 

 迫る早苗の目の前にその記事を見せつけた。だが、

 

「今更それがどうしたッ!! 貴様には攻撃の隙も与えんッ!!」

 

 と、意に介せずそのまま『愚者』で攻撃をした。

 

「――――は?」

 

 すかっ、と早苗の攻撃は空を切った。だが、文は全く避けてはいない。自分が外したのだ。

 

「……『愚者(ザ・フール)』ッ!!」

 

 砂を纏い、再び攻撃するも見当違いの方向を攻撃してしまう。そしてバランスを崩し、早苗は地面へと倒れてしまう。

 

「――――ッ!?? !?」

 

 その衝撃で早苗の体はバラバラと開いた本のように広がってしまった。その切断面には文字が大量に書き込まれていた。

 

「……!? 何だ!? 何が……!?」

 

「命令を、本当に書き込めたわ……!」

 

 その様子に驚いていたのは文も同様だ。

 

「『③命令は絶対――!! 名を冠するなら……『ヘブンズ・ドアー』。』……!!」

 

第50話へ続く……

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