ようこそ超能力者のいる教室へ   作:オールF

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動き出す理由がないと動けない人間もいる

ってことで続きでーす
ほんまは12:00に出したかった
早く読んで欲しいから怒涛の連続投稿だ
ハーメルンの伏魔御廚子


チョコレートのΨ典

 僕の部屋は綾小路の階の下の3階にある。

 階段でも行ける距離ではあるが、文明の利器であるエレベーターを使うことは別に悪いことじゃない。

 登校後、6時間もの授業を受けて疲れた身体では階段を上がる元気も無い……ということはないが、エレベーターを使うことが普通だと思うのでそうしている。

 しかし今日ばかりは階段で行けば……いや、それでも着いてきたんだろうなとエレベーターに同時に乗ってきた神室さんに目を向ける。

 

「何階? (3階だよね確か)」

 

 操作盤の前には立たず、壁際にいた僕に神室さんが尋ねてくるが、知ってるなら聞くなよと思う。

 頷くわけにはいかないが、男子のフロアの方が先のため黙っていては神室さんが「早くしてよ」と急かしてくるだけだろう。

 渋々、3階であることを伝えると神室さんは3階のボタンを押す。

 静かに動き出したエレベーターは、瞬く間に3階に着くと、僕はエレベーターから降りる。

 それに続くようにして神室さんも降りてくる。

 これが単なる偶然で気になる男子生徒にチョコレートを渡しに来たとかならどれほど良かっただろうと部屋の前まで歩きつつ神室さんに尋ねる。

 

『僕に用があるなら早めに声をかけて欲しいんだが』

「気付いてたんでしょ? 途中早歩きになったりしてたし」

 

 バレンタインという日ではあるが僕にとって普段と変わらない1日のため、普通に放課後になった瞬間に教室を出た。

 しかし、それを見越してかBクラスの神室さんはそれよりも早く教室を出てきており、教室から出て帰宅する僕のあとを追いかけてきていた。

 躱すのは簡単だが、明日も明後日もとなると面倒極まりないし、内容も内容なので外で話してやる訳にもいかない。

 外で捕まっていた場合、カラオケといった個室に連れていかれたことは間違いなかったからな。

 

「予定でもある?」

『ああ』

「すぐ終わるから、話聞いてよ」

『……チッ』

(一応橋本から聞いてたけど、本当に機嫌悪いな。無理もないか)

 

 鍵を開けて部屋の中へ入り、神室さんが入ってから鍵を閉める。

 神室さんは一切表情を変えずに真顔で室内を見渡した。

 

(色のない部屋……ってのは言わない方がいいか)

 

 言ってたらテレポートで上空350mに飛ばしてたぞ。

 少し長話をされることは読めていたので、手を洗ってから飲み物を用意してやる。

 要望は聞く気はない。

 そもそもこの部屋には水とコーヒーとココアくらいしかないしな。

 お茶の類は実家に持って行ってしまった。

 

「どうも(作るの早……って、これホットだよね? この季節にアイスココアなんてことはないよね?)」

 

 冷蔵庫に入れていた冷やしココアを出してやると神室さんはお礼を言いつつもやや懐疑的な目で湯気の立ち上らないココアを見ていた。

 僕はそれを無視してパイロキネシスで温め直したホットココアを飲みながら、勉強机前の椅子に座ると神室さんを見下ろす。

 

『で? 要件は?』

 

 正直いって興味もないし聞きたくもないが、聞いてやらないと帰らないだろう。

 

「一之瀬の手紙の件、どう思ってるの?」

『回りくどいな、僕は要件を言ってくれって言ったんだが。その質問に答えなければ進まない要件なのか?』

 

 神室さんが坂柳さんの小間使いで僕のところに来ていることは重々承知しているが、それでも思うことがないわけではない。

 しかし一之瀬さんに飛び交っている噂の件を言わないと進行しない会話イベントか、まるでゲームみたいだな。

 

「もしかしてだけど、あんたって全部気付いてる上で何もしてないの?」

『それに答えたら帰ってくれるか?』

「いやまだココア飲んでないんだけど」

 

 知るかよそんなの。

 さっさと飲めばいいだろ。

 

「(こいつ私が坂柳に命令されてここに来たことも気付いてそうだな……てことは私が裏切ってるとかって嘘はいらないか)じゃあ話して来いって言われたことだけ簡潔に話したら帰る」

 

 それももうだいたい把握したから話さなくてもいいんだがなと思いつつ、腕を組む。

 

「……明日か明後日には一之瀬が隠してるであろう事実が明るみになる。その前に斉木にそれを教えて来いって言われた。その前に私が坂柳にこき使われている理由を話す必要があるわね」

『本当に必要なのか?』

「興味ないのはわかってるけど聞きなさいよ」

 

 そこから神室さんが坂柳さんとの出会い、彼女に従うことになった理由を聞かされる。

 退屈な日常を満たすために万引きをしていたこと、そのスリルを味わうための行動であったことを。

 あくまでそれは坂柳さんの分析だそうだが、当たってはいたのだろう。

 実際、神室さんは坂柳さんに指摘されてから万引き行為を行っていない。

 道徳的に犯罪行為はダメと諭されたところで神室さんは万引きをやめないのなら、万引きが出来ないように退屈な日々から脱却させるというのは悪くない手ではある。

 万引きすることでしか満たされない神室真澄の心を別のモノで埋めることが、坂柳さんの提示した主従関係。

 

「……はぁ、疲れた。こんなに口を動かしたのは久しぶり」

 

 話を終えた神室さんは来た時と変わらない目で僕を見上げてくる。

 

「てか、聞いてた? 半分以上上の空だったけど」

『ああ聞いてた。社会厚生施設に入ったと思ったら別の犯罪に加担させられるようになったという話だろう?』

「ヤな言い方だけど……否定はできないね」

 

 今まで誰にも必要とされない人生だったが、形はどうあれ自分を必要としてくれる人間が現れた。

 坂柳さんにとっても、自分の小間使いと元Aクラス時代に受けるかもしれなかった損失は免れたわけだ。

 

『一之瀬さんに万引きの経験があるというのは何か証拠があるのか?』

「……今のでそこまでわかるものなの? (それとも坂柳から合宿の時とかに聞いてたとか? いや、その時は坂柳も一之瀬がどういう犯罪をしたかまでは特定してなかったし……)」

 

 話の流れから考えてそうだろう。

 じゃなきゃ、神室さんが万引きをしていたことを僕に打ち明ける理由は無いはずだ。

 懺悔がしたいのならその辺の電柱にでもしておいて欲しい。

 

「坂柳はあんたの気付かないところ……まあ気付いていたかもしれないけど、ちょくちょく揺さぶりをかけて、その反応が顕著だった万引きが一之瀬の犯した罪だって確定させたって言ってた」

 

 いや坂柳さんが一之瀬さんに接触していたのは僕が不在の夕方以降や休みの日だったりしたんだろう。

 僕が気づいた時には一之瀬さんは坂柳さんにはもうバレてると焦りを見せていた。

 だから彼女は僕に言ってきたのだ。

 

 “私はこれから坂柳さんに何かしらの嫌がらせを受けると思う。でも、それは私自身の問題で、私自身が解決しなきゃいけないことだから……斉木くんには見守ってて欲しいの”

 

 遠回しというか、僕には何もするなと言われてしまったわけだ。

 まあ言われずとも坂柳さんから一之瀬さんへの嫌がらせを止める義理は僕にはないし、何か積極的に動く気はなかった。

 やったとすればプリントを投函した瞬間にポスト内で発火させてボヤを起こして坂柳さんたちにプリントでの噂の流布をやめさせる。

 口頭でやろうとしたら暗示で逆に一之瀬さんの良いところしか言えなくするだとか、彼女が万引き犯であるという噂が流れるようなことはさせなかったかもしれない。

 たとえ噂が流れたあとでも僕なら186通りの解決策を思いついていたが、人を傷つけるプランは一之瀬さんが好まないため、そこから54通りにまで減ったが、それでも解決は容易だった。

 けれども噂の中心である一之瀬さんから何もするなと言われているため僕は何もせずにいつも通りの日常を過ごしている。

 

「坂柳も一之瀬も、私は好きじゃないけどさ、一之瀬が万引きしてるって事実は、正直いって衝撃だったよ。本当かは分からないけどさ、一之瀬が一切反論しないのはそういうことなんだろうなって思う。沈黙は肯定って言うんでしょ?」

 

 検察官からの取り調べなどではむしろ推奨される行為らしいがな。

 

「あんなに人気があって、何もかも満たされているはずなのに、私と同じなんてね」

『一緒にするな』

 

 自嘲するように笑った神室さんに僕は鋭く言い放ったのだろう、彼女の表情が強ばった。

 

「あんた、一之瀬から万引きのこと聞いてるの?」

 

 しまった。

 本人からは何も聞いていないのに言い切ってしまった。

 けど、彼女がスリルを味わうために万引きをしていたのなら神室さんと同じく坂柳さんや他の生徒の誰かに見つかっていた可能性もある。

 

『少なくても君と同じようにスリルのためという可能性はないだろう』

「わかんないでしょ。この高校に来てから私とは別の理由で万引きをやめたってだけで、私と同じ理由でしてた可能性もある。事実は何一つわかってないんだから」

 

 事実? 

 君は一之瀬さんの何を知っているんだと問おうとして、僕は言葉を引っ込める。

 これ以上の議論は不毛だ。

 事実は知っていても、本人から直接聞いたわけじゃない僕では神室さんを納得させることができないし、それをしたところで何の意味もない。

 

「とにかくさ、早く一之瀬を助けなよ。このままだと、あいつの心は潰れちゃうよ」

『潰しにいっておいて随分な言い草だな』

 

 なんで僕が坂柳さんの蒔いた種を刈るのに協力しなきゃならないんだ。

 

「それは坂柳があんたと直接対決するため。一之瀬を傷つけられたあんたなら手を抜くことなく戦ってくれるだろうって」

 

 それも知ってる。

 ただ南雲や龍園、高円寺と違って坂柳さんは身体疾患があるため手を抜かないと木っ端微塵に吹き飛ぶ。

 ……あぁ、それは身体能力で競い合った場合か。

 頭脳戦なら……本気を出さずとも勝てそうだが。

 チェスをしてる時に駒からホログラムで作った化身が出てきたり、相手側のポーンやキングといった駒だけ勝手に動いたりとかしないんだろ? 

 だったらあのドMよりは遥かに楽に倒せる。

 

『僕がなにかする必要もなく、一之瀬さんが解決するさ』

「……じゃあ好きにすればいい。私と坂柳は忠告はしたからね」

『ああ』

 

 最後に神室さんは立ち上がると僕がいれてやったココアではなく、ちょうどいいくらいの温度になった僕のホットココアを飲み干す。

 

「ちょっとがっかり、あんたならこんなことすぐ終わらせると思ってた」

 

 それは本心だったのか、神室さんは僕に失望したという顔を浮かべて背中を向ける。

 神室さんはそのまま何も言わずに部屋を後にした。

 勝手に期待して、勝手に失望されても困るなと空になったマグカップを見つめる。

 最近糖分をあまり取っていなかったからやや疲れたなと思っていると、玄関のドアが開く。

 やっと帰ってくれるかと思っていると、唐突に予期せぬ相手からのテレパシーが流れてきた。

 

(ほんとに神室さんがなんで出てきたわけ? 私は忘れ物を届けにで誤魔化せたけど、神室さんの要件はなに? 斉木の部屋から出てきたの本当にわけわかんないんだけど)

 

 は? なんで櫛田さんが? 

 チョコレートを渡そうとしていたのは知っていたが、ポストにでも入れておいてくれたら食べたんだが。

 そう思っているとインターホンが鳴る。

 鍵は開いているが、流石に無理に入ってくるということはしないらしい。

 居留守は使えないし仕方なく、玄関は開いていることを伝えると(知ってる)と心の声が返ってくると共にまた扉が開く音がする。

 

「こんにちは、斉木くん」

 

 入ってきた櫛田さんはにっこりと笑いながら手を振って挨拶してくる。

 もう片手にはカバンを持っており、それにチョコレートが入っているのが透視で見えた。

 それを受け取り、今日はお引き取りいただこうと思っていたら櫛田さんは僕の横を素通りして部屋を見る。

 

「結構シンプルな部屋なんだね。男の子にしては片付いてるほうかな(まあこの高校来てから男の子の部屋なんて見たことないけどね)」

 

 僕が座っていた椅子に腰を落ち着かせた櫛田さんは周りを見渡して、僕を見てニコッと笑う。

 

「で? さっき神室さんが出てきたけど、何かあったの?」

 

 特に何も……とは言い切れないな。

 しかしあったことを話すと神室さんのことや一之瀬さんのことが露見してしまうしな。

 一之瀬さんの噂をどうにかして欲しいと頼まれたという部分だけ伝えようと、立ったまま話すと、櫛田さんが顔を傾ける。

 

「そうなんだ。あ、座ったら? 私だけ座ってたらなんか私が偉そうみたいだからさ」

 

 いや僕の席ねぇからになってるんだが……まあいいかとベッドの方に腰かける。

 

「帆波ちゃんの噂かぁ。確かにそろそろなんとかしないと期末テスト前だしね。Aクラスのみんなも気が気でないんじゃないかな?」

『だろうな』

 

 そんなことより要件を続けようとして、櫛田さんが目を細める。

 

「で? それになんで神室さんが斉木くんに解決するように求めるのかな? 私の記憶だと林間学校で帆波ちゃんを排斥してた神室さんが」

 

 そんな僕に聞かれても……櫛田さんも友達の一之瀬さんが傷つけられてご立腹なのかと怒りを浮かべている。

 櫛田さんの言う通り、神室さんは坂柳さんの命令で一之瀬さんは当時Aクラスだった坂柳さん中心のグループには入れないと口にしていた。

 そんな神室さんが一之瀬さんを助けるように言うとは、なるほど確かにおかしいな。

 

「堀北さんから聞いたんだけど、斉木くん、今回は本当に何もしない気なの?」

『ああ』

「それは帆波ちゃんから何もしないで欲しいって頼まれたから?」

『ああ』

 

 櫛田さんからの質問に答えていきながら、五条が夏油に言われたような、君ならできるだろ楠雄、的なことを言われるんだろうなと背筋を伸ばすと出てきた言葉は思っていたものとは違った。

 

「あのさ、斉木くんはそれで傷ついたりしなかったの?」

『……は?』

 

 予想外の質問に面食らう。

 

「いやさ、斉木くんってさ、この学校の中で一番なんでもできることを知ってるし、私たちには出来ないことを難なくやってのけるよね? そんな斉木くんに何もしないで欲しいって頼むのは帆波ちゃんが自分の力で解決したいってことなのは分かるよ? けどさ……友達が苦しんでるのを黙って見てるのも辛いんじゃないかなって……」

 

 櫛田さんの言う通り、彼女は今自分の力で、過去の自分の罪を乗り越えようとしている。

 それを邪魔することは誰にも許されない。

 加えて、僕は何もするなと言われている。

 ならば、友達……ではないが、クラスメイトとしてその覚悟を見届ける責務のようなものが僕にはある。

 

「それに帆波ちゃんって自分で何とかするって言っててもどうしたらいいか分からないんじゃないかな? 結局は黙りしてるだけでみんなのこと心配させてるだけで、こんなの誰も救われないよ……」

 

 テレパシーの聞こえない本音の声に、僕は返す言葉が見つからず黙り込む。

 彼女の言う通りだ。

 一之瀬さんは噂を否定しなければ収束すると思っているかもしれないが、むしろ噂は広まる一方である。

 否定していないと聞いて、あいつそんなことする奴だったのかと新たな風評被害も生んでいるし、明日か明後日には新たなビラが投函されることにもなっている。

 一之瀬さんが今、学校に来ていないのは風邪が原因の体調不良だが、それも噂に苦しめられて十分な睡眠時間が確保できず体内の抗体が機能していなかった結果だとしたら。

 

「斉木くんはどうしたいの? このまま見てるだけでいいの? 帆波ちゃんが傷ついて、このまま学校に来なくなっても、それでいいの?」

 

 結果的にそうなってしまったのなら、それはそれで仕方ない。

 そう言うのは簡単だ。

 けれど、それで本当に僕はいいのかと問われれば。

 

『それは、少し困るな』

「……なんで?」

『一之瀬さんがいないとあのクラスをまとめられる人間がいなくなる。僕にはああいうのは向いてない』

「そうだね、斉木くんが率先してみんなをまとめてるのは想像できないかな」

 

 なにわろてんねん。

 ……はぁ、やれやれ。

 まさか僕が面倒を見ていた櫛田さんに面倒をかけることになるとはな。

 

『でもやっぱり、今回の件は一之瀬さん自身で解決するべきだ。だから、噂の出処を絶ったり、首謀者を追い詰めることはしない』

「……じゃあ、本当に何もしないの?」

『ああ、この絵を描いた首謀者にはな』

 

 坂柳さんが望んでいるのは僕が直々に動いてこの噂を断ち切ること。

 方法はいくらでもあるが、どれも一之瀬さん本人にはできない手となると僕か僕が誰かを動かしてやるしかない。

 けれど、それでは一之瀬さんの成長には繋がらないし、坂柳さんの思うつぼだ。僕が何もせずに一之瀬さん自身に過去を乗り越えさせれば、坂柳さんには僕がわざわざ動く必要もなく、一之瀬さんの力を見誤った三下としての烙印を押し付けることが出来るかもしれない。

 まぁその辺は目の前の女の子にも手伝ってもらうことになるかもしれないが。

 そう思って顔をあげると櫛田さんは何故か微笑んでいた。

 

『さっきから何笑ってるんだ君は』

「うん? だって、斉木くんやっといい顔になったから。そっちの方がいいよ。いつもより愛想なくて変なことも言わなくてスイーツも食べない斉木くんなんて路肩の石ころみたいなもんだよ」

『それなら君も素を出すんだな。そっちの方が似合ってるぞ』

 

 と、本来の調子を取り戻していつものように軽口を叩く。

 全く、チョコを貰ったら帰って貰うはずが余計な心配をかけたな。

 

「は……? え……? は……?」

 

 うん? どうかしたんだろうかと瞬きして透けた体をリセットして見ると、櫛田さんの顔はやけに赤くなっていた。

 

『どうした』

「いや、素って……え? 気付いて……? え? 何言ってるの? 私の素はこれだよ〜……えっ?」

 

 ふむ、言う順番が逆な気がするが、何をそんなに動揺しているのか。

 以前からちょくちょく僕の前と話す時は素を出していたし、まあテレパシーで元から知っていたのもあるが、別にそんなに恥じらうことではないだろうに。

 

「(いつから気付かれてたの? いやたまに出ちゃうことあったけどさ、指摘されなかったし、気づかれてないと思うじゃん? しかもなにそっちの方が似合ってるって話の流れ的に嫌味? 本音? なに? ホントこいつなんなの?)…………私、かえる」

 

 そう言うと櫛田さんは椅子から立ち上がり、カバンを持って足早に出て行ってしまう。

 バタンと閉じられたドアに僕は『なんでさ』と呟くが、当然返事が返ってくることはなかった。

 さりげなく、一応はチョコレートの入った箱を玄関に置いていってくれたのでそれを拾い上げる。

 丁寧に包まれた袋を開けて中に入っているチョコレートを摘みながらもきゅもきゅとその味を楽しむ。

 ふむ、僕好みの甘みの中にいちごの風味が……実に凝ってるな。

 悪くない味だと2個目を口に放り込みながら、テレポートで実家の方の部屋へと帰る。

 朝のうちに椎名さんから受け取ったいちご大福の横において、ベッドに寝転ぼうとして、ちょうどドアの隙間からこちらを見ていた母さんと目が合った。

 

「くーちゃん、それもしかして女の子に貰ったの?」

 

 ……やれやれ、考え事をしたくて帰ってきたのにまた面倒なことになりそうだが、母さんにも心配かけたわけだしな。

 

『義理だけどな』

「あひゅ〜……! 義理でも、くーちゃんが女の子からチョコレート……あひゅう〜」

『片方はいちご大福だけどな』

「あ〜いちごだいあひゅ〜っ……!」

 

 手作りみたいだが、こういうのも家で作れるものなんだなと感心してしまう。

 感涙している母さんをなだめつつ、僕はリビングに母さんを連れて行く。

 本当に動く気はサラサラなかったが、なかなか踏ん切りがつかない一之瀬さんが悪いしな。

 程々にではあるが口くらいは出させてもらうとするか。

 





斉木くんならたくさんチョコをもらうかもしれませんし、1つくらいはチョコ以外のものがあった方がいいでしょう
という椎名の気遣いでいちご大福になった
一応他石崎や龍園、綾小路などには義理チョコ(市販)をあげてる
綾小路は後日渡す予定

鬼龍院さんは柄じゃないとのことで恥ずかしいのと作れないし渡さなかった 乙女かな

櫛田さんは逃げ帰るように楠雄の部屋から自分の部屋に戻ってる時のエレベーターで堀北に遭遇したけど「何かあったの……?顔真っ赤だけれど」「なんでもない!!!」で堀北にキレてる


こんなもんかな
次回で解決編です
短ーいね

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