溶けちゃっててもいいよね?
これ、本気のやつだから!
てことで9巻ラストです
エピローグかつあとがきメインなので本編は短めです
学年末試験当日がやってきたが、僕にとっては普段と変わらない普通の日々だ。
多くの生徒は仮テストを元に各自で様々な対策を立てて、今日を迎えたのだろう。
一之瀬さんにまつわる噂が無くなったことでAクラスはより一層前向きにテストへと臨むことができている。
恒例となっていた勉強会も行われ、僕は相変わらず姫野さんやら一之瀬さんらが開催する勉強会ではなく、個人でやりたいというメンバーの質疑応答がメインだった。
噂に踊らせられながらも勉強はしていたらしく、前回のペーパーシャッフルのようなややこしいテストでもないため、特に問題は無さそうだった。
僕も今回は誰かと点数を競うことはないため、平均点をとっておけば問題ないだろう。
(あっ、斉木くんだ)
寮を出て少し歩くと、一之瀬さんの登校時間と被ってしまったらしく、彼女の声が届く。
そして小走りに駆けてくる足音が聞こえたかと思えば、僕の傍で勢いを弱める。
「おはよう、斉木くん!」
朝から元気な笑顔で挨拶をしてくる一之瀬さんに僕は会釈を返す。
「今日はいよいよ学年末試験だね。斉木くんは特に心配ないけど……また平均点狙い?」
『そのつもりだ』
(成績で目立たないために取っているって言ってたけど、もう無駄じゃないかな……十分……目立ってるし……)
それを言わないでくれ。
姫野さんや別府とかにも言われてたんだ。
「斉木くん、その気になれば100点取れるってバレたんだし、別に取れるなら取ったら良くない?」
「目立たないためって言ってたけどさ、あの高円寺とか龍園とかとつるんでたら嫌でも目立つし……斉木が90点とかとっても誰も気にしないっていうか、そりゃそうだよなとしかならないと思うぜ?」
しかし、平均点こそが僕のアイデンティティなんだ。
平均点を取ることで僕の心の平穏は保たれるんだ。
良い方向でも悪い方向にも目立つわけにはいかないからな。
飛び抜けてトップになるのも、下すぎるのも良くない。
『僕のことよりそっちはいいのか?』
まあ聞くまでもないことではあるが、話を逸らすために必要なことだ。
「うん。結構自信あるよ? 斉木くんと勝負しても勝てる自信あるくらいにはね……なんて」
『そりゃ平均点を取ろうとしてるやつには勝てなきゃダメだろ……クラスのリーダーとして』
「にゃはは……っていうかさ、いいの?」
何がだ? と僕は真意の読めない一之瀬さんの質問に首を傾げる。
「私と一緒にいるの、目立つん、だよね?」
彼女が思い出しているのは僕と出会ったばかりの頃、極端に一之瀬さんの隣を歩くことを拒んでいた僕のことだ。
『確かに知らないうちに気にしなくなっていたな』
いつからだろうかと思い返してみるが、2学期には別に気にしなくなっていたと思う。
というか、気にしていたらクリスマスに出掛けたりもしなかったな。
「私も、斉木くんと一緒にいるのが当たり前みたいになっててさ、こうして一緒に学校に行けるようになって嬉しいんだ」
それは良かったなとだけ僕は呟いておく。
「こうして私がこの通学路を歩けてるのは斉木くんのおかげだよ」
一之瀬さんがそう思うんならそうなんだろう。
わざわざ否定する気にもなれないし、否定したところで一之瀬さんはそんなことないと美辞麗句を並べて僕のことを褒めそやしてくるのは予想に容易い。
『僕はただ押しかけて布教活動をしただけだが、それが助かったと感じるのなら良かった』
「にゃはは、あれは驚いちゃった。……他の子にしちゃダメだよ? 普通あんなの激ヤバなんだから」
それは一之瀬さんが普通じゃないってことになるんだがいいんだろうか。
「あのさっ」
あと少しで学校に着くというところで一之瀬さんが一際大きな声を出す。
そして大きく口を開けて言葉を続けながら、学生鞄に手を入れる。
「えっと、あの、その……あれぇ? おかしいな……もっと、スッと出すつもりだったんだけど……あはは、上手くいかないや」
カバンの中に入れた腕はチョコレートを包んだ箱を探しているらしく、中の筆箱や教科書やノートにぶつかっている。
そして、ようやく掴んだそれを僕の前に差し出してくる。
「少し遅くなっちゃったけど、バレンタインチョコ……斉木くんに、貰って欲しいんだけど……ほら、そのお礼? こういうのでしか、お礼できないから……」
バレンタインチョコは貰ってしまうとホワイトデーにお返しをしなくてはならなくなるから、お礼をまたお礼で返さなくてはならなくなる。
なんて野暮な話は要らないな。
何故かブチ切れた母さんの顔がよぎったのでありがたく受け取ることにする。
だが、これを持ったまま今日テストがある教室に入るのは些か宜しくない。
ちょっといいかと、この場では目立つため体育館裏に行き、リボンを解き、蓋を開ける。
「えっ、わっ、わっ……こ、ここで食べるの?」
柴田や浜口にでも見つかったら面倒だからな。
他クラスの生徒からもらったとかなら言い訳もきくが、一之瀬さんからのチョコレートとなればまた面倒なことが起きそうだ。
「えと、私、こういうの初めてで……美味しくない、かもなんだけど……」
『なんだ手作りなのか』
初めてにしてはよくできていると思うが、母親の手伝いをしていたのなら料理の心得などはあるだろうし、特に大きな問題はないと結論づけて1つ口の中に放り込む。
(ど、どうだろ……斉木くん、甘いもの好きだからミルクとか多めにしてみたんだけど……)
ふむ、火はちゃんと通ってるし、一之瀬さんの言う通りミルクの量が多いせいで甘ったるくなってはいるが悪くないアジだ。
「(いつもの美味しそうな顔だ……)あははっ、喜んでもらえて良かったぁ……」
心の底から嬉しそうに微笑んだ一之瀬さんを見ながら、2個目3個目とチョコレートを食べる。
これを作ってくれた過程がとても丁寧だったのだろうというのは手に取るように分かった。
1年Aクラスの男連中にも配ってやれば、さぞ喜んだだろう。
どう考えても僕のような反応の薄い男子に渡すよりも喜んでくれるはずだ。
彼らも一之瀬さんのために噂の出処を探ったり、Bクラスの連中と対峙したりしてたしな。
『悪くなかった。ご馳走様』
「そっか、良かった……本当に良かった……」
嬉しそうに胸を撫で下ろす一之瀬さんを横目に、食べ終えた空箱をしまう。
そういえば、ホワイトデーのお返しって何をあげるべきなんだろうな。
この辺は慣れてそうな橋本にでも聞くか。
『さて……どうした?』
「ふぇっ?」
じっと僕を見てくる一之瀬さんに問いかけるも、一之瀬さんはすぐに両手を振って照れ笑いをする。
「ううん、なんでもないっ、口に合ったみたいでよかったよ。じ、じゃ、行こっか……!」
一之瀬さんはそう言うと、何故か校舎に向かって走り出した。
『朝ドラの主人公か?』
なんて、くだらない独り言をつぶやきながら、その後を追った。
本当は一之瀬復帰後様子とか書こうと思ったんですけど気持ちがかなり10巻に向いてて上手く書けなさそうだったので、あとがきで
1年Bクラス(元Aクラス)▶︎坂柳の攻撃失敗とそのやり方により元から下がっていた坂柳への信頼と信用がガタ落ち。
しかも噂の中心である一之瀬に言い負かされたのも追い風になっている。
また一之瀬が万引きに至った経緯が学校全体に知れ渡ったこともあり一之瀬に同情が集まっている。
葛城が期末テストが終わったあと、Aクラスに行って一之瀬たちに謝罪している。
橋本は完全に坂柳から離反。
何かしらの制裁や報復があっても斉木との口約束があるため、問題ナシと思っている。
坂柳が橋本を外したのは林間学校で元Bクラス中心のグループおり、終了後の様子からかなり絆されてそうと思い、今回の攻撃には不向きと思ったから
ただし、橋本が噂を流してることにしようと画策したのは坂柳ではなく坂柳派で橋本を快く思ってなかった男子の一部だが、坂柳も黙認してたので橋本からすれば同罪
坂柳は学校には来ているが今までのような余裕そうな表情はなく、神室や鬼頭を伴うことも減っている
白石は斉木が動くものと思っていたが一之瀬が一貫してやったことに意外さを感じている
森下はこれ以上クラスポイントが減らないようで何よりとクルクル回ってる
1年Aクラス(元Bクラス)▶︎本編通り。坂柳に勝ったことで調子に乗ってるが仕方ないね。
1年Cクラス(元Dクラス)▶︎一之瀬が立ち直ったことで親しい堀北や櫛田、平田は安心している。
堀北と綾小路曰くバレンタインの次の日から櫛田の様子が少しおかしいらしい
1年Dクラス(元Cクラス)▶︎ひよりが一安心。原作のような乱闘もなく平和。
龍園があまり動いていないことに反龍園派が不思議に思いつつ下克上を狙っている。
平田と軽井沢が別れたことである女子たちが龍園に相談したいことがあるとソワソワしてる。
こんな感じですね
次巻はみんな大好き?山内メインとも言うべき巻ですが斉木の介入が多すぎて原作で退学になるメンバーにヘイトやら退学になった理由がなかったりでほとんどオリジナルというかごちゃごちゃすることになると思います。
話の流れと結末はもう決まってるので書け次第投稿していきます
2年生編のさきっちょが見えてきた……!