ようこそ超能力者のいる教室へ -1年生編-   作:オールF

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強さは力じゃない!生きる意志だ!

なんか坂柳有栖擁護みたいな話になった

シリアス「よぉ、久しぶり」
トンチキ「……マジか」

って感じの話


虚無感のループ

 その日の放課後はずっと坂柳さんに付きっきりだった。

 6日までの今日を含め4日間ではあるが、買ってもらった以上は尽くしてやるのが礼儀だと思ったため、部屋にも上がらせてもらっている。

 

「すみませんお待たせしました」

 

 風呂から上がって服を着て洗面所から出てきた坂柳さんは、壁伝いに歩いてくると僕の前に腰掛けた。

 

「ではお願いしますね」

『ああ』

 

 ドライヤーの電源をつけ、濡れた彼女の髪に温風を当てる。

 

「ふふっ、人に髪を乾かしてもらうなんていつ以来でしょう」

『そうなのか』

「はい(家にいる頃はお手伝いさんがしてくれていましたが、小学校の高学年くらいからは自分でしてましたね)ですが悪い気はしません。むしろとても気持ちがいいです……」

 

 頼まれたからには一応はやるが、どうにも思っていたものとは違うな。

 坂柳さんのことだからチェスの相手や何かしら勝負絡みが多くなると思っていたのだが。

 

「ポイントを払っているとはいえ、ここまでサービスしてもらっていいんでしょうか?」

『対価は貰ってるんだ。気にする事はない』

 

 とはいえ僕も女性の髪を乾かすのは初めてだな。

 ドライヤーを使ってやるのは初めてなだけで、パイロキネシスで父や母の髪を乾かすことはよくやった。

 無論、自分の髪は今もパイロキネシスで乾かしている。

 鏡で見ながらやってるわけじゃないし、やってもバレないか? そう思っていると坂柳さんが振り返った。

 危な。

 

「楠雄くんはもっと自分の価値を知るべきですよ? 1000ポイントでこれだけして貰えるのなら払う人は多いと思います」

『誰も彼もが僕に髪を乾かして貰いたいと?』

「そこまでは言いませんが、君にこんなことを頼める機会があるのなら頼む人はいるんじゃないですか?」

『質問に質問で返さないでくれ』

「それは失礼しました」

 

 朗らかに笑う坂柳さんの顔はこれから退学する生徒とは思えない。

 ただ受け入れるだけだった残りの時間を今は楽しんでいるようにも思える。

 

「ドライヤーを使っているのに楠雄くんの声は聞きやすいですね」

 

 まぁ、実際はほとんど喋らずにテレパシーだからな。

 違和感がないようにはしているが。

 こういう雑音や周りが騒がしい時には疑問に持たれることも少なくは無い。

 それからしばらく坂柳さんの髪を乾かす作業は続き、気づけばもう終わるところまで来ていた。

 

『終わったぞ』

「ありがとうございました。案外悪くないですね、誰かに髪を乾かしてもらうのも」

 

 プライドの高い坂柳さんは寮生活をする上でなるべく1人でできるようにと相当な努力をしてきたのだろう。

 もちろん、荷物持ちなどには神室さんや橋本を利用したこともあるだろうが、料理を作ったり、掃除や洗濯は1人でやっているようだった。

 お風呂も1人で入り、洗髪や身体を洗うのも1人でできていた。

 脱衣や着衣も少し時間はかかるものの問題はない。

 本人曰く、普通の人より時間がかかるだけでできないわけではないと、強がってはいたが、やはり体のこともあってかなり苦労をしているんだろう。

 

「今日だけで15万ポイントも使ってしまいましたね、これじゃ退学する時には本当にすっからかんになりそうです(冗談で背中を流してくださいと頼んだら何ポイントだったんでしょうか? まあ流石にそれは恥ずかしいですし、痴女だと思われても嫌なので言いませんでしたが)」

 

 嫁入り前の女の子の裸をポイントを貰ってみるほど落ちぶれちゃいないな。

 そもそもポイントを貰わずとも見てしまっているわけだが、これは生まれつきの体質だから仕方の無いことだ。

 そう、生まれつきなら仕方ない。

 超能力を持ってしまった僕と、先天性疾患を持ってしまった坂柳さん。

 苦労することはあれど、慣れてしまえばそこまで苦ではない。

 だが、望んでしまうものがあるのは事実だ。

 僕たちはお互いに世間一般的な普通の身体で、普通の暮らしをしたいと心の底では願っている。

 そういう部分では似ているかもしれない。

 

「ポイントを無駄に使わずにいて良かったです……、食事の後に1局お願いしますね」

 

 坂柳さんのポイントの残りからして試験前日まで今のペースでお願いを続けても問題は無さそうだった。

 神室さんを連れ回して買い物やカフェに行っているためポイントは使っているイメージがあったが、意外にも手持ちは残っていた。

 元々はAクラスであったし、月々に入ってくるポイントの8割を貯めていたとしたらこんなものかという気もする。

 立ち上がろうとする坂柳さんに手を貸してやる。

 

「食事は楠雄くんも食べますか?」

 

 急な来訪にも関わらずそう聞いてくるということは余裕があるのだろう。

 しかし、僕の方は夜ご飯まで一緒というつもりはなかったため、一旦帰ろうと思っていた。

 お願いされれば付き合うがと坂柳さんの方を見る。

 

「その様子だと大丈夫そうですね。私は大丈夫ですから、食事が終わったらまた戻っていただけますか?」

 

 ポイントが1000ポイント振り込まれる。

 お願いごとを了承しつつ、坂柳さんの食事の準備のみ手伝ってから30分後にまた来ると伝えて坂柳さんの部屋を出る。

 ここは別にカメラもないからテレポートを使っても問題はないが。

 

(わっ、斉木出てきた……本当に坂柳さんのレンタル彼氏……? みたいなことやってるんだ)

(何してたんだろあの2人……手繋いで帰ってスーパー行ってたって聞いたけど……かれこれ2時間くらいいたよね……?)

 

 姫野さんと一之瀬さんに部屋の前を見張られていたためそうもいかない。

 坂柳さんの部屋にいた時から気付いていたがあの2人こそ何してるんだ。

 僕に限って何かやましいことがあるわけないだろう。

 やれやれと思いつつ、2人のどちらかに接触している時間もないし、2人には気付いていないふりをしてエレベーターに乗って自分の部屋のある階へと戻った。

 

 

 ###

 

 

 実家で手早く食事を済ませてから再び坂柳さんの部屋へと向かう。

 もちろんメガネは変えてからだ。

 今の僕は斉木楠雄ではなく、1000プライベートポイントマンだ。

 誰がなんと言おうと1000プライベートポイントマンなんだ……。

 そう言い聞かせつつ坂柳さんの部屋へと向かうと、彼女の部屋の前が騒がしい。

 見ればCクラスの山内がドア越しに坂柳さんに声をかけていた。

 

「坂柳ちゃん、なにか困ってない? こ、困ってるなら斉木なんかじゃなく、俺が助けるよ? だから開けてくれよ。こんな時間に女子の部屋の前にいたら目立つからさー」

 

 わかってるならさっさと部屋に戻れよと思いつつ、どうしたものかと腕を組む。

 すると、坂柳さんからメッセージが届く。

 

【坂柳有栖:部屋の前に山内くんがいるのですが、お引き取り願ってもまだいるので対応をお願いしてもいいですか? ポイントはお支払い済みです】

 

 そういえば、林間学校が終わった後あたりに坂柳さんが山内に連絡先を交換したり、一之瀬さんの噂を流す傍ら接触しているんだったな。

 それなら坂柳さんの蒔いた種な気もするが、以降坂柳さんが接触していないなら、山内の独善的な接触か。

 まあそういうことならと僕はエレベーターホールから出て、坂柳さんの部屋の前に行く。

 

「あ! お前は斉木! 何の用だ、ここは坂柳ちゃんの部屋だぞ!」

 

 お前こそ何の用なんだと首を傾げると山内は声を荒らげた。

 

「坂柳ちゃんが困ってるって聞いたからな。紳士として助けるのは当然だと思わないか?」

 

 思う思う。

 困らせてる原因がお前じゃなければな。

 しかし、力づくで動かすのは簡単だが、そうすると再犯に及ぶ可能性があるしな。

 挑発して引かせてもいいが、僕に怒りの矛先を向けられても困る。

 そもそもの原因はお前が林間学校で坂柳さんを転ばせておいて鈍臭いとか言ったせいなのにな。

 

『とりあえずあまり騒がしくすると他の生徒に迷惑だから帰った方がいいんじゃないか? 今、問題を起こすとクラス内投票で批判票を入れられる可能性もある』

「うぐっ!? だ、だけど坂柳ちゃんが……」

『彼女はお前が思うほど弱くないから大丈夫だ』

「け、けど、俺にぶつかられて倒れちゃうくらい繊細なんだぜ? そんな子、俺が守ってやらないと……!」

 

 だったら転ばせた時にすぐに助けて……やったのは僕か。

 まあ助けに入らずとも坂柳さんは山内の手を取ることはなかった気もする。

 

「そ、そうだ、1000ポイント払えば何でもお願い聞いてくれるんだよな!? だったら、俺と坂柳ちゃんを会わせてくれよ!」

 

 先に坂柳さんからのお願いを聞いているからそういうわけにはいかないな。

 

『仕方ない。櫛田さんと堀北さんに連絡してお前が他クラスの生徒に迷惑をかけていることを報告させてもらおう。そうなると、Cクラスのクラスポイントに影響が出るかもしれないな。大事な期末試験前にそんなことになれば、クラスメイトたちはどう思うんだろうな』

「(こ、こいつ俺を脅すのか……!)ち、ちくしょう! 覚えてろよ斉木!」

『僕は1000プライベートポイントマンだ』

 

 って、行ってしまったな。

 円環の理に導かれて。

 メッセージで山内は帰らせたことを伝え、ドアをノックする。

 透視でドアの先を見ていると、やや恐る恐るという様子で坂柳さんがゆっくりと歩いてくる。

 

「楠雄くん、ですか……?」

『1000プライベートポイントマンだ』

「(楠雄くんですね……)山内くんは行きましたか?」

『ああ、願いは叶えた』

 

 そう言うと、ガチャリと鍵が開く。

 山内が戻ってくる可能性もなくはないが、一応脱兎のごとく部屋に戻ったことは確認できた。

 部屋に入ると坂柳さんが目を少し潤ませて立っていた。

 

「……すみません、お見苦しいところを」

 

 僕が見ていることに気づき、目元を拭った坂柳さんは隠れるように部屋の奥へと歩き始めた。

 まあ、色々言いたいことはあるが、頼まれてもいないことを言うのは1000プライベートポイントマンの主義に反する。

 

「せっかく戻ってきていただいたのに変なことを頼んですみませんでした」

 

 割と素直に謝る坂柳さんは相当参ってしまったのか、用意していたチェスボードの置かれた机ではなく、ベッドの方に座る。

 

「覚えていますか? 以前、合宿の際に彼が私にぶつかって失礼な態度をとったことを」

 

 今の今まで忘れかけていたが、山内と坂柳さんの接点はどこかと考えたら自然と思い出せたな。

 

「その報復に利用してやろうと思って近づいたのですが、今や私は退学者筆頭です。もう彼を利用することもないので、連絡は取っていなかったのですが、楠雄くんとの接触が彼を焦らせたのでしょうね。これも因果応報というやつです。仕方の無いことですが……」

 

 坂柳さんは知恵は回るが、身体的疾患のせいで力づくで来られるとどうしようもない。

 特に今のように護衛のいない状況では。

 非力さを補って余りあるほどの頭脳を持っていながら、その身体的疾患は彼女の大きな足枷となっているのだ。

 そして、その頭脳すら他者を貶めるために使ってきた報いと言わんばかりに、今の彼女を締め付けている。

 

「私は愚かですね(もしかすると父の不正疑惑とやらも私が一之瀬さんに行った吹聴行為などが原因かもしれませんね)」

 

 いつも飄々としている坂柳さんがここまで落ち込むのは珍しい。

 父親の件はうっすらとテレパシーで聞いていた。

 綾小路父の手が伸びてきたことも、この試験も本来は綾小路を退学させる試験であることも。

 坂柳さんがその補助をするように命令されていることも。

 最後の最後まで他者を蹴落とすことを強いられた坂柳さんは、弱り目に祟り目と言わんばかりに今、過去の自分という存在に悩まされていた。

 

「ごめんなさい、楠雄くん、今日はもう帰ってもらってもいいですか?」

『分かった』

 

 そう言われれば、帰るしかない。

 チェスをする気がないのであれば、今日のところは帰るしかないと思っていたところだ。

 明日は明日で1000ポイントを使うかどうかは彼女次第、もしかすると明日からはもうお願いはしてこないかもしれない。

 立ち上がって、坂柳さんの方を見ると俯いて小さくなっている彼女と目が合う。

 

「(いけませんね、いくら退学するからといってこんな弱い所を見せてしまうのは)気にしないでくださいね。今の弱音は全て嘘ですから」

 

 何故今そのような嘘をつくのか、全く理解できなかったが、そうしないと自分が保てないのかもしれない。

 彼女を確立していたのは圧倒的な自己と頭脳であり、その2つが打ち砕かれた今となっては平凡な女子へと成り下がってしまっている。

 このまま彼女が山内や、他の生徒からの悪意に怯えて部屋に引きこもられると残りのプライベートポイントが回収できない。

 それは困るなと思い、僕は坂柳さんとは視線が合わないようにしてから、1000プライベートポイントマンのメガネを外して、いつものメガネにかけかえる。

 

『これは持論だが、躾に一番効くのは痛みだと思う』

「え……?」

 

 僕の持論ではないので持論とは言えないが、坂柳さんが変わるためには言葉による“教育”ではなく心の痛みによる“教訓”だ。

 彼女は本来なら弱者として生きていくはずだったが、なまじ頭が良かったせいで人を管理し支配しようとしたのだ。

 まるで神であるかの様に。

 そして、他者より優れた頭脳を手に入れた坂柳さんは弱者を喰らい、どんな犠牲も厭わずに自らの力を示した。

 まるで獣であるかの様に。

 

『退学した生徒がこれからどうなるかは僕は知らないが、君がまだ学生として、将来的に社会に出るのならもう少し考えた方がいい。人としてどうあるべきか』

「人として……ですか?」

『自惚れない方がいいということだ。僕たちは神ではなく、ただの学生だからな』

 

 詮索も分析もされたくないだろうと思って、あまりアドバイスはしてやれないが、今後のことを考えてみてもいいんじゃないかと思う。

 

(私はただの学生……)

 

 頭の中でぐるぐると思考が回っている様子の坂柳さんを見て、これ以上は余計なお節介かと思い、僕は坂柳さんの部屋を後にした。

 もし、明日から学校に来ないようであれば開けロイト市警になる必要があるが、プライドの高い彼女であれば来るだろうと信じて、僕は自宅へと戻った。

 





すべては2000万ポイントのために。
一之瀬クラスが退学者を出さずに済んだのも、綾小路が退学せずに済んだのも、全部坂柳さんのおかげじゃないか……!

坂柳がクソ参ってる理由
▶︎一之瀬にぼろ負け
▶︎パパが不正で停職
▶︎それってもしかして一之瀬への攻撃をした私のせいでは?と思い始める
▶︎山内からの執拗なメールや訪問
▶︎これも自分のせいだし護衛がいないので山内に強く言えない
▶︎何もしたくないのに綾小路清隆退学させろメールがくる


これにて試験発表日が終わり
坂柳さんは退学するまでに変わることができるのか
そして楠雄は2000万ポイント貯められるのか……!?

なお2000万ポイント貯めれなかったら姫野さんにポイント全部渡して退学しようとしている男子がいるらしいんですよ〜、なぁにぃ〜!?
一之瀬さんもポイント足りなかったら退学する覚悟あったからね。
覚悟だ!覚悟が道を切り拓く!

くーちゃんが退学したらどうなるんですか?▶︎Aクラスから転落すると思いきやくーちゃんの意志を継いだ一之瀬、神崎、柴田が覚醒する
あとは3人が理不尽なピンチになったら不思議なことが起こって助かったり、逆転できたりする
卒業後、くーちゃんに会いに行ったら手に包帯巻いた男の子や明らかに不良な見た目だけど不良じゃなかったらただのバカとか見たところ普通のメガネをかけた男子とオーラからして美少女の女の子とその子に比べると普通なショートボブの女の子とかに囲まれてるのを目撃することになる

まあ楠雄を退学させるようなクラスではないのでどうにかするし、楠雄がやれやれって言いながらなんとかする

てかクラス内投票の説明されてから試験開始ィ!までの期間短すぎる
その分話数は短そうだなと思ったら1日目で既に4話も使ってる


投稿できないのは土曜と月曜な気がする!
なんで昨日の俺は投稿できないと思っちまったんだ
てことでまた次回
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