ようこそ超能力者のいる教室へ -1年生編-   作:オールF

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戦うことが罪なら、俺が背負ってやる!

ホワイトデー書いちゃって、特別試験もちゃちゃっと終わらせようと思っていたのにちゃんと書いてしまってるワイ
何も成長してない……

てことで続きです
今日1時間遅れたからサービスだ
綾小路視点と+‪α


敵に塩を送る

 対決するクラスがAクラスと決まった翌日、本格的な話し合いが始まろうという中で山内の退学の傷が癒えていない平田は真っ先に教室を出る。

 何人かの女子が一斉に平田に対して声を投げかけるが、平田が足を止めるはない。

 クラスの邪魔にならないように、登校して、授業を受けて、帰路につく。

 まるでロボットのように決められたサイクルを繰り返す平田を呼び止める女子生徒達は多いが、堀北はそれに待ったをかける。

 

「これから話し合いなのよ。これ以上人数を欠けさせるつもり?」

「で、でも……」

「今の彼は誰にもどうすることも出来ないわ」

 

 席に戻ってとみーちゃんたちに促す堀北に、女子たちは飛び出したい気持ちを押し殺して席に着く。

 今は頭を切り替えて、クラスの方針を固めさせていくのが最優先だろう。

 それは高円寺も同じなのか珍しくこの手の試験の話し合いに参加している。

 

「にしても、高円寺、残ったんだな」

「フッフッフッ、私はこのクラスの仲間だよ? 当然参加するさ」

 

 須藤の驚き混じりの声に白々しくも当然のように言う高円寺。

 

「しかし、話し合いはこの1回で終わらせてもらいたいものだねぇ。楠雄が出てこないAクラスには興味がない」

「難しい相談ね。今回の特別試験は、一朝一夕で決められるものではないわ。仮に種目を決められたとしても、その種目で勝つための動きを長期にわたってしなければならない」

 

 教壇に立つ堀北が真っ向から高円寺の希望を一蹴する。

 

「それに、斉木くんがプレイヤーとしていないからと言ってAクラスは油断出来ないわ。運動能力に優れる柴田くんに、冷静で学力もある神崎くん。何より一之瀬さんがいるのが厄介だわ」

「楠雄に比べれば有象無象でしかないと思うがねぇ」

 

 確かにあのクラスがAクラスに上がったのは斉木楠雄の存在が大きい。

 一之瀬がその優しさと包容力でクラスを導いてきたとみんなには映っているかもしれないが、オレや高円寺、堀北、そしてこのクラスではあいつとの関わりが強い櫛田も斉木の強さを知っている。

 今回の特別試験はクラス同士の戦いだ。

 いくら斉木と言えどクラスメイト全員の長所と短所を理解し、7種目に当てるのは難しいのではないだろうかという希望的観測もある。

 だが、それすらも何とかしてしまいそうな不気味さがあいつにはある。

 しかし、斉木のことをよく知らない、最近ではプライベートポイントマンなるものをやっていた変人くらいの認識の生徒にはそう見えないのかもしれない。

 

「あのさー堀北に櫛田ちゃん。俺、そんなに斉木と関わりがないから聞きたいんだけど、高円寺が言うほど凄いやつなのか?」

「フッ」

 

 池の質問に高円寺は鼻で笑い、腕を組む。

 幸いにして池は気づいていないみたいだが、斉木を知るやつの反応としては正しいのかもしれない。

 池は夏休みのプールバレーやペーパーシャッフルの時の勉強会の時くらいしか接点がないしな。

 

「足が速くて数学はできるみたいだけどさ、あとはまぁ初期Bクラスって感じのやつじゃね?」

「確かにテストの点数もほぼ平均より少し上くらいって一之瀬さんとかが言ってたね」

「だがあの足の速さは異常じゃなかったか? もし仮に今回の種目に100メートル走とかがあって斉木が出てきたら誰にも勝ち目はないだろ」

 

 池に続いて勉強会に参加していた佐藤、体育祭での斉木の走りを見ていた明人が言う。

 最後の明人の言葉は須藤も同意なのか、噛み付くことなく淡々と受け入れていた。

 そこに恵が控えめに手を挙げる。

 

「でもさ、この前のプライベートポイントマンってやつ? あれってお願いごとを叶えるってやつだけど、よっぽど自分に自信がないと出来なくない?」

「あれは斉木くんの叶えられる範囲でって話だし、線引きはしてたからいけたんじゃない? そのおかげか分かんないけど実際ほとんど坂柳さんのお世話だったんでしょ?」

 

 松下が冷静にそう返すのを聞いて、オレはへぇと内心感心する。

 

「斉木くんの話は今はどうでもいいでしょう。そんなことよりも種目の話よ」

 

 堀北の言う通り、斉木についての話は今は捨ておくべき議題だ。

 これからオレたちは勝つための5種目とブラフの5種目を考えていかなければならないのだから。

 ルールや参加人数、勝利条件や司令塔の関与と決めることは多い。

 

「種目の話って……そういやさ、7種目で戦うって話だけど、全員に出番はないんじゃないか?」

 

 池の言う通り、どのクラスも40人近い生徒が在籍しているが、1つ2つ多人数の種目が選ばれた時でも7種目戦って20人から30人ほど。

 つまり組み合わせ次第では半数近くが種目に参加することはない。

 

「そんなのわかんないじゃん。20人とかの種目になったら?」

「バッカだなー軽井沢。サッカーでも1チーム11人だぜ? それ以上必要な種目ってなんだよ。俺なんて一つも思いつかないぜ?」

「え、えーっと……と、逃走中とか?」

 

 池の意見に割り込むように恵が発言したが、オレの知らない種目名だった。

 

「ハンター20人に逃走者20人は平等性に欠けるから無理なんじゃないかな……」

「うっ……」

 

 櫛田の控えめな指摘に恵が言葉を詰まらせる。

 一応、みんなが知っているスポーツのラグビーなら15人必要になるが、名前こそわかってもルールを詳しく知る人間はそういないだろう。

 マイナーなスポーツでは無いが、縁のない人間には未知の領域だ。

 種目として申請しても通るか怪しい上に、メリットも少ない。

 

「……要するに俺たちの出番はないんじゃないかってこと」

 

 脱線した話を戻すために池が言うと櫛田はそうとも限らないんじゃないかと首を横に振った。

 

「どれだけの人数が必要になるか、ルール次第なんじゃないかな? たとえばバスケットは5人対5人のスポーツだけど、ルールを決める権利があるなら時間制限40分の試合にして、10分ごとに全員交代のルールが設けるとかしたら、20人参加しなくちゃいけなくなるし」

 

 それだけで20人か。

 ほぼ半数の生徒が参加することになる。

 しかも、一度に必要な人数は5人のため、どの学年どのクラスでも問題なく参加可能なルールであるため、学校側も申請許可を出しやすい。

 櫛田の意見に付け加えるように堀北が言う。

 

「もしそんな種目が1つじゃなかったら? 蓋を開けてみれば、全員が2つ3つの種目に強制参加しなければいけない場合もある。それくらいの心構えは必要ね」

 

 もちろん、Aクラスの出してくる種目とルール次第ではあるが、楽をさせないという意味では、フェイクでもその手の種目を混ぜてくる可能性はある。

 ただAクラスがそんな搦手のような事をしてくるかは微妙ではあるが。

 

「今はまだピンと来ない人もいるでしょうけど、これは想像以上に複雑な特別試験よ」

 

 池が言っていたようなジャンケンや、トランプのような類の種目があってもおかしくはない。

 なんとしてでも4勝するためには、格好をつけているような余裕もない。

 どんな内容になろうとも、確実に勝てるだけの種目、そして人選が必要とされる。

 

「今日はひとまずこの場にいる全員に課題を出させてもらうわ。明日の放課後までに自分が得意な種目、そして絶対に負けない種目があればそれを考えてきて欲しいの。個人戦チーム戦に関係なくね」

 

 5種目のうち、必ず入れておきたいのは1対1の種目だ。

 しかしマイナーすぎる種目やルールであれば学校からノーを突きつけられる。

 その部分は今は気にせずに、意見を出すことを重視するため度外視するらしい。

 とりあえずこの日の議論は終わりを迎えた。

 次の日も議論は行われたが、平田はすぐに教室から出ていく。

 高円寺もまた話し合いに参加する意義を失っているためか教室を出ていく。

 だが、平田とは違ってやつを呼び止める人間はいない。

 平田が出て少ししてからみーちゃんが席から立った。

 

「ごめんなさい、今日、私……その、用事があるので……」

「それって……平田くんを追いかけるの?」

 

 櫛田の問いにみーちゃんは頷くかと思ったら、彼女は首を振った。

 

「私じゃ、無理、かもしれないので……その……」

「かもしれないじゃないわ。誰が行っても今の彼には何も響かないわ」

「で、でも、私は平田くんを見捨てたくないんです」

「見捨てるとか見捨てないの話をしているんじゃないの、今はそっとしておくべきよ」

「……このクラスの人に助けられないなら、それなら……!」

 

 重たいはずの足を動かし、堀北の言葉も振り払ったみーちゃんは教室を出ていく。

 

「全く、今は放っておかないといけないのよ」

 

 呆れてため息を吐いた堀北はみーちゃんを追いかけて連れ戻す意思を示す。

 

「私も少し席を外すわ。悪いけれど櫛田さん、任せてもいいかしら」

「ううん、堀北さんが残ってて。私が行ってくるから」

「いえ、あなたは優しすぎるからミイラ取りがミイラになる可能性があるわ」

 

 どちらが追いかけるかで言い合いを始めた2人に啓誠が毒づく。

 

「はぁ……平田のせいでまともに話し合いも出来ないな」

 

 結局、オレたちは3日目にして何も進み出せていない。

 しかし、先程のみーちゃんの言葉、このクラスの人に助けられないなら、か。

 言葉の真意を確かめるためオレは席を立つ。

 

「オイ、綾小路、お前まで追いかけるつもりかよ」

「ああ」

 

 須藤がそう言うと当然、堀北と櫛田も気づく。

 

「綾小路くん、あなたは動かないで」

「いや、堀北や櫛田が動いて議論が停滞することの方が問題だろう。オレがこの場にいても特に良い意見は出せないしな」

 

 それに櫛田はともかく放置しておくのがベストと考えている人間が追うべきじゃない。

 平田が壊れることになった1つの要因である堀北は特に。

 

「善は急げだ。みーちゃんと平田を見失ってしまう」

「あなたね」

「わかった。でも、早く戻ってきてね」

 

 なにか言おうとした堀北を遮るように櫛田が言う。

 あの様子だと櫛田もみーちゃんの言葉から何かを汲み取ったのだろう。

 母親のように送り出してくれた櫛田に頷きを返して廊下に出る。

 平田は誰とも会わないために一目散に寮に帰っているはず。

 ならば帰り道を辿っていけばいい。

 学校を出て少しすると、まずはみーちゃんと、そしてCクラスの人間には助けられないと踏んだみーちゃんが呼んだ助っ人の姿が見えた。

 

「すいません、試験期間中に……」

『全くだ』

 

 どうして斉木がいとも容易くみーちゃんに連れられているのかと注意深く見てみれば、斉木の口がモゴモゴと動いていた。

 多分、お菓子か何かで釣られたのだろう。

 もしかすると、櫛田がみーちゃんに助言したのか? 

 小走りで2人を追っていると、その先に平田の帰っていく背中が見えた。

 オレは2人の声が聞こえるようにと距離を詰めると、足音を立てないようにしていたが気配で斉木が気づいたのか視線を向けてきてそれにつられてみーちゃんもオレに気づく。

 

「綾小路くん……」

 

 気付かれてしまった以上は仕方ない。

 もう少しで追いつくところではあったし、2人に並ぶと平田の背中を見つめる。

 

「声、かけないのか?」

「えっと、尻込みしてしまって……」

 

 みーちゃんは今朝に声をかけて拒否されたばかりだ。

 気持ちはわからなくもない。

 

「なんで斉木が?」

「私が呼んだんです。櫛田さんが相談してみたらどうかって……」

 

 やはり櫛田が1枚噛んでいたかと斉木の方を見るとみーちゃんから貰ったのであろうビスケットを噛んでいた。

 

「で、どうするんだ?」

「えっと……どうするんですか?」

 

 みーちゃんに問いかけると、どうやら追いかけてきたはいいが特に考えていなかったらしく斉木にバトンタッチする。

 

『どうすればいいんだ? 助けて欲しいとは言われたが』

 

 斉木もよく分かっていないらしく、どうしたらいいんだとこちらにボールを蹴ってきた。

 

「みんな、今の平田くんはそっとしておくべきだって言うんです。でも……私、それは違うと思うんです。苦しい時、辛い時だからこそ、助けてあげなきゃいけないんじゃないかって……」

「それでみーちゃんが嫌われることになってもいいのか?」

「それは嫌……ですけど、私が嫌われることで少しでも平田くんが自分は1人じゃないって感じてくれるなら、救われるって後でもいいから、思ってくれるなら……嫌われても平気です!」

 

 目に見えてみーちゃんが強がっていることはわかった。

 でも、その瞳に宿る力強さは本物だった。

 決して平田を1人にしたくない、失いたくないという思いだけは。

 

「私は間違っていますか?」

 

 そう聞いてきたみーちゃんにオレは正しいとは思った。

 今、平田のことを放置することは事態を好転させてはくれない。

 そんなことをすればわ、あいつは深い闇に囚われて抜け出せなくなる。

 斉木の方はどうかとオレとみーちゃんが見る。

 

『それで後悔しないなら、正しいんじゃないか』

 

 正直に言えば、斉木はどんな風に答えるかは全く予想が付かなかった。

 どちらの答えも想像できただけに、みーちゃんが否定されなかっただけ良かった。

 さて、どうやって平田に声を掛けるかだが、斉木お得意のモールス信号は平田の視線がこちらを向かない以上は使えないだろう。

 

「私と斉木くんで声を掛けてきます。綾小路くんは教室に戻って試験の話をしててください。私は、大丈夫ですから」

「……そうか」

 

 いらない子扱いされてしまったし、みーちゃんが斉木を引っ張って平田との距離を詰めていくのを見守る。

 あとで堀北には怒られることになるかもしれないが、今はこうしておくのが最適解なはずだ。

 斉木の介入は予想外ではあったが、斉木のようなクラス外からの声掛けも必要になるかもしれない。

 事の経緯を見てみたいところだが、オレが残っていてはみーちゃんも気にしてしまうと思って言われた通りに教室にもどる。

 1年生のフロアの廊下は閑散としており、BとDが互いにスパイを送りあっているのか、Bの教室の前には伊吹が、Dの教室の前には知らない女子の姿があった。

 うちのクラスには誰もおらず、Aらしい正々堂々さが窺えた。

 教室に入り、みーちゃんを連れ戻せなかったことを目で堀北に伝えつつ着席する。

 偵察がないと分かっているためか、口頭での議論は進んでおり、書記の櫛田が黒板に書いた文字などから大体の流れを察する。

 須藤はバスケ、小野寺は水泳、明人は弓道といったように各々が得意とするスポーツが並んでおり、堀北や啓誠のような学力に自信のある生徒は特に高得点を取れる科目を挙げているといった形だ。

 ただ、スポーツの一点特化と違って学力勝負は相当な実力がないと種目にするにはハードルが高い。

 

「バスケ、バスケは絶対に入れてくれ!」

 

 堀北に須藤がそう直談判するが、1対1の種目が1つしか盛り込めないルール上、その1つにバスケを割り当てるのは惜しいと考えているようだ。

 何よりも、試験当日にバスケが種目として選ばれるかはわからない。

 運動能力に優れている須藤ならバスケ以外のスポーツ種目が選ばれた際に、活躍もできるし、バスケだけで使うのは勿体ないと考えているのだろう。

 1対1ではなく5対5で最小限の戦力で絶対に勝てるというのなら1種目として学校側に提出することを約束した堀北は席に戻っていく。

 櫛田か、あるいは兄貴から刺激を受けたのか進化、成長を見せる堀北はその後も冷静に意見をまとめていく。

 櫛田は今回は堀北に任せるつもりなのか、書記として堀北のサポートをしており、たまに意見を挟んでいるようだ。

 平田とみーちゃん、高円寺が欠けた状態ではあるが話は上手く進んでいき、少しずつではあるが形となっていく。

 あとは個人個人に堀北と櫛田が詰めていく形になっていきそうだ。

 

 

 ###

 

 

 綾小路くんが去っていった後、斉木くんと私は平田くんに声をかけた。

 

「斉木くん……? なんで君が」

 

 暗く、どんよりとした目を斉木くんに向けると平田くんは寮に帰ろうとまた歩き出そうとする。

 それを私は「待ってください」と言って止めるけど、平田くんは止まらずに歩き出す。

 

『やれやれ』

 

 斉木くんはそう言って肩を竦めると走って平田くんの前に回り込みました。

 

『君が元気にならないと僕も帰れないんでな、悪いが付き合ってくれ』

「それは無理だよ。僕を元気にしたいなら山内くんを、僕のクラスに連れて帰ってきてくれ」

『そうしたところで今度は僕が学校から出て行かされるんだがな。自分のクラスの人間が助かったら、他のクラスの人間は退学してもいいのか?』

「そんなわけ! ないだろ……!」

 

 声を荒らげる平田くんに、私は落ち着いてと2人の間に入ります。

 

『立ち話もなんだし、あそこのベンチで話さないか?』

 

 マイペースにそういう斉木くんに、私はオロオロと2人の間で視線を彷徨わせます。

 すると、平田くんは観念したようにベンチへと向かっていったので私もそれについて行きます。

 

「斉木くんみたいななんでもできる人には僕の気持ちがわからないんじゃないかな。2000万プライベートを集めてクラスメイトを退学させずに済んで……Bクラスの方も君がなにかしたんじゃないのか?」

『ホワイトデーの適切な返しが分からない人間がなんでもできると言えるのか?』

「……ん?」

 

 思いもよらない斉木くんの返しに、平田くんの怖かった顔が一瞬で疑問符を浮かべた顔になります。

 

『ホワイトデーの適切な返しはなんだ? 相手に好意を持たせず、かと言って不快にさせないものといえば』

「えっ、うーん……? ハンカチとか?」

 

 えっと、女の子的にはアクセサリーとか形に残るものがいいかなって思うかな……まぁこれは好きな人から返してもらうなら……だけど。

 義理とかならジュースとかお菓子でいい、ですね。

 

『平田は今回何を返すつもりなんだ?』

「一応、ケヤキモールでお菓子のアソートとかにしようかなって思ってたけど……今はちょっとね」

『貰ったものに対しては返さないと失礼じゃないか? 今の君がそうなっていることにチョコをあげた人達は関係ないんだろう?』

「……そうだね。それは、うん。ちゃんとお返しはするよ……けど、今回の試験の話し合いには……」

『いやそれは僕には関係ないからどうでもいい』

「えっ」

「えっ」

 

 なにか良いことを言っていたのに斉木くんは急にハシゴを外してきた。

 

『相談内容は平田に元気になって欲しいという話だからな。それさえ済めば僕は帰る』

「それは……無理かな。知っているだろう? 山内くんが退学したのは……僕は君みたいに2000万を集めて救済することはできなかった。もう、嫌なんだ……自分が……消えたい……だから、1人にしてくれないかな?」

 

 また蹲って自責の念にかられている平田くんに私はどうしたらいいか分からなくなる。

 どんな言葉をかけても山内くんは戻ってこないし、平田くんには邪険に扱われるだけ。

 けれど、斉木くんはクラスメイトや私が言っていた心配の声や励ます言葉では無いものを投げかけた。

 

『平田は明日何をしていると思う? 明日も飯を食ってると思うか? 明日もベッドで十分な睡眠が取れると思っているか?』

「えっ……?」

『隣にいる王さんが……明日も隣にいると思うか? 僕はそうは思わない。明日急にまた退学者を決める特別試験が始まるかもしれない。平田が立ち直らないのは自分のせいだと自分を責めて王さん自ら退学してしまうかもしれない。もしかすると……試験の話し合いに参加しているからと理不尽な特別試験が始まって平田以外の全員が退学するかもしれない』

「そんなこと、有り得るわけ……」

 

 平田くんの言う通り、そんな試験が起こることなんてありえない。

 

『ありえない、なんてことはありえない。実際そうだっただろう?』

 

 けど、退学者が1人も出なかったからという理由でこの前の試験は始まった。

 もうこの学校が何をしてくるか、私たちには予想がつかない。

 

「……それは、でも、僕が教室に残ったって」

『僕は君のことをよく知らないが、クラスメイトが退学しないように、クラスが上に上がれるようにしてきたんだろう? だからこうして王さんが君を心配して追いかけてくれている。これは君が今までやってきた行いの報酬でもあり、報いでもある』

「報い……?」

『君がクラスのために動かなければ、誰も君のことは心配しなかったんじゃないか? 教室から出る時も誰かに呼び止められたんじゃないのか? それは今まで君がやってきた行いが生み出した信頼による結果だ。今、君を苦しめているのは王さんやクラスメイト、退学した山内じゃない。過去の君自身だ』

「過去の……僕……?」

 

 顔を上げて、声を震わせる平田くんを庇うように私は斉木くんに言う。

 

「斉木くん、その、やめてください……平田くんをこれ以上追い詰めるのは……!」

『そんなつもりは無い。が、言いすぎたのは事実みたいだな。 ただ、平田。これからの自分が後悔しないようにすることができるのは今の君しかいない。君が議論に参加しないことで君はこれ以上傷つかないと思っているかもしれないが、未来の君やクラスメイトたちを傷つける可能性は視野に入れておいた方がいい』

 

 平田くんがいたから、2月までは誰1人退学することなく、私たちは特別試験やテストを乗り越えることができた。

 それは覆すことのできない事実。

 そんな平田くんだから、私は、平田くんのことがもっと好きになった。

 

「未来の僕を救えるのは……今の僕……だけ……」

『人間何をどうしたって悔いは残る。せめてその悔いが残らない方を選び取っていくしかない』

 

 おすそ分けだと、斉木くんは私があげたクッキーを平田くんの口に入れる。

 

「…………っ、そう、だね……僕がここでこうしていても山内くんは戻ってこない……分かっているんだ……そんなことは……でも……こんな僕が……みんなの前を、歩いても……いいのかな……」

 

 私の焼いたクッキーを噛み砕きながら、声を震わせて涙を流す平田くんには私はただ隣にいてあげることしかできない。

 

『立って歩け、前に進め。君には立派な足があるじゃないか』

「……でも」

「大丈夫ですよ、平田くん」

 

 私は勇気を振り絞って、言葉を紡ぐ。

 伝わらなくても、届かなくても、言うことに意味はあると思うから。

 私が後悔しないように、悔いなき選択ができるように。

 

「平田くんが躓いたり……転んだりしたら……私じゃ頼りにならないかもしれませんけど……一緒に立って……支えて……私が一緒に前に進みますから……」

「みー……ちゃん」

 

 震える平田くんの手を握ると、平田くんと視線が合う。

 平田くんが色んなものを背負って、誰よりも頑張ってきたことを私は知らなかった。

 けど、今、こうして一緒に背負えるのなら、私は……。

 

「ありがとう……ありがとう……みーちゃんっ……」

「はうっ!?」

 

 ギュッと抱きしめられるように平田くんに包まれて、私は変な声を出してしまう。

 それを見ていた斉木くんにあわあわとしていると彼は『やれやれ』と肩をすくめると背中を向けます。

 平田くんの涙を受け止めながら、私は離れていく斉木くんの背中を見つめます。

 彼が離れたということはつまり、平田くんが元気になる……ということなんでしょう。

 

「こちらこそ、ありがとうございます……」

 

 また2人で斉木くんにお礼を言いましょうと、平田くんの背中を擦りながらそう言いました。




おい……なんでみーちゃんが平田のヒロインになってる……?
まぁええか。おめでとさん。
吊り橋効果感は否めないが。
元々あとがきでどうなったか書いてたら1000文字超えたからちゃんと書くか〜で書いた。
おまけみたいなもんだから適当に読んでもろて(その名残で楠雄の平田への発言がやや辛辣なところもあるかも)(お前こんな美味し……悪くないクッキー作ってくれる子を無碍にしてるの?っていう怒りもちょっとあるかもしれん)

斉木がCクラスからどう思われているか書くついでの回でしたが、やはりΨ難体質の楠雄くんが何事もなく生きられるわけもなく……。
多分他クラスから見たら足速くて数学のできる変なやつくらいの印象……ほぼ原作綾小路だなこれ。
まあ数学できる綾小路は2年生編からの印象やが。

対決クラス決定後の夜 みーちゃんが櫛田に相談▶︎櫛田が斉木に相談▶︎『ふーん』
2日目プライベートポイントマンの話が出て「斉木くんならもしかしたら……」とみーちゃんが櫛田に相談▶︎お菓子あげればもしかしたら?とアドバイスする▶︎みーちゃんがその日の夜にパパっとクッキー焼く
3日目 昼休みに打診しておき、放課後に合流……って感じ

クッキーなかったら来なかったんですか?▶︎来ても平田を立ち直らせることまでしなかった(相談には乗ってた)

櫛田はみーちゃんに楠雄を紹介するの躊躇わなかったのか▶︎みーちゃんが平田好きなのは知ってるから別にいいかなって感じ

クッキーが思った以上に悪くなかったから必要以上に手を貸してしまった楠雄くん『今回ばかりは一之瀬さんにも怒られそうだな』『あと言い方も悪かったな』『結構めちゃくちゃな事言ったし』『明日平田と王さんには謝ろう。うん』って感じ

くーちゃん自クラスにいなくていいの?▶︎司令塔だから特に話すこともいる意味もないと思っており、一之瀬と神崎にその旨を伝えて帰宅するフリしてみーちゃんと合流した

みーちゃんとくーちゃん、なるほど似てる。
今回はここまで。


真嶋先生▶︎現Bクラス(坂柳クラス)の担任
真面目で生徒思いの先生
サエチエと同級生で、彼女らは友達として見ているから彼女は別で作ったりしてる
良くも悪くも高育の教師なので、クラスの方針に口を出したりはしない。
リーダー同士が仲悪かったり、いじめを助長してたりしてもなんにも言わない(学校のルールで言えない可能性もある)
斉木からの評価はサエチエと同級生かぁ……で良くはなかったが生徒思いで真面目な人間と分かってからはかなり良くなっている。ただ真面目すぎるなとも思われている。
斉木への評価はいい生徒であり、自クラスの生徒の救済をしてくれたことにとても感謝している。
生徒と教師は適切な距離感を保つようにするべきという信条があるため、礼を言うことは出来ないことをもどかしく思っているが本人にはテレパシーでしっかり伝わっている。
休みの日など、もし会うことがあればアイスかクレープを奢りたいと思っている。

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