オマケCクラスルートと龍園視点のCクラスルートも書いたんですけどね
私には友達と呼べる人がいませんでした。
もちろん、友達は欲しいと思っていましたが、昔から人付き合いは苦手でした。
だからどうしても、読書をする時間が人よりも多くなってしまい、その事を当たり前として、いつしか友達を作ろうという気は無くなっていました。
高校生になってもそれは変わらず。
茶道部には入っていますが、部活動としての人付き合いはあっても、部活外での交友などはなく、毎日のように図書館に来ては本を探し、本を読む日々。
1人は楽でいいですが、時々寂しくも感じます。
クラスのリーダーである龍園くんが、そんな私を見かねてなのか声をかけてくれたりしますが、彼の周りにはいつもたくさんの人がいて、緊張してしまうというか、一緒にいることが出来ない。
せめてクラスメイトの中に読書に明るい人がいればと思っていたところ、入学してから3週間目に私はクラスメイトの斉木くんと知り合いました。
苗字が「さ」で、私が椎名で「し」であるため、存在自体は知っていましたが、無口で少し近づき難いイメージのある男子生徒でした。
けど、斉木くんが図書館のミステリーコーナーの前でどれを読もうかと悩んでいる姿を見て、斉木くんもまた私と同じく読書が好きなのではないかと観察し、そして私は意を決して声をかけました。
「あ、あの、ミステリー小説をお探しなんですよね?」
あれだけミステリー小説コーナーをウロウロしていれば間違いないと思って、私はおすすめの本があると斉木くんを新刊コーナーに連れていきました。
ここには図書館に入ってきたばかりの本が集められていて、司書の先生のおすすめの本も入っています。
そして、私はそこから1冊手に取りました。
「これは私たちがここに入学する1週間前に発売された本です。ここに来る前に読んでおきたかったんですけど、時間が無くて……でも司書の先生から今日入ってくるって聞いて楽しみにしてたんです」
『……それなら君が最初に読んだ方がいいんじゃないのか?』
「そうしたいのは山々ですけど、まだ読んでる途中の本があって、それにあなたがまだ読んだことの無いミステリーを探しているようだったので」
斉木くんが先程から手に取った本を戻したのは、表紙を見て読んだことがあるか記憶から引っ張り出していた。
そう考えたらあの動作も納得がいきます。
まさかこの高校に来て私と同じくらいのミステリー小説好きに会えるなんて思ってもみなかった私は心躍りました。
斉木くんは私から渡された本を手に取ってくれます。
「お先にどうぞ。あ、ネタバレはしないでくださいね。私、それ楽しみにしてるんですから」
『……善処しよう』
何か言いたげな顔でしたが斉木くんはそう言うと貸出受付に向かおうとします。
その背中を見送ろうとして、そういえばちゃんと自己紹介をしていないことに気付いて私は口を開きました。
「すみません、話すのは初めてでしたね。私は同じクラスの椎名ひよりです」
『同じクラスの斉木楠雄だ』
「はい、斉木さん。読み終わったら、教えてくださいね。そして、私も読み終わったら感想を言い合いたいです。……構いませんか?」
『あぁ、それくらいなら』
「よかった。じゃあ、またここで」
Cクラスの中には小説を好む人が居ないと思っていましたが、そんなことはありませんでした。
この日から私は斉木くんと話すようになりました。
「昼食はまだですよね? もしよければ一緒にどうですか?」
時にはお昼ご飯を食べながら小説の話をしました。
斉木くんはいつも無表情で落ち着いていて、小テストや中間テストで平均点ぴったしを取っていますが、話してみると聡明でとても大人びているというか、不快にならない上から目線という感じがしました。
そんな斉木くんとはミステリー小説の話をすることもあれば、小説の映画化やドラマ化の話をされることもありました。
『そういうのは見ないんだな』
「はい。でも、興味はありますよ」
ただ原作が小説で映像化されたものは、私の中で見た目や声がある程度固まっていて、それをいざ映像化されたものを出されても腑に落ちないことが多い。
そんな話をすると、斉木くんは言います。
『じゃあ、逆はどうだ?』
「逆、ですか?」
『ドラマが原作の小説だ』
そう言って斉木くんが貸してくれたのは刑事事件を専門にする弁護士が依頼人の巻き込まれた事件に隠された0.1%の事実を探すために立ち向かうというお話でした。
『これもある種のミステリーだ』
「なるほど……」
本を勧めた経験はあっても、逆のことをされたことがない私は物凄く興味を持ってその本を読み始めました。
結果的に私は物凄く楽しめました。
斉木くんが教えてくれた作品は他にも沢山ありまして、古典部にまつわるミステリーや、ジーパンで被疑者を取り調べる検事や法廷をブロードウェイと思っている型破りな弁護士と……謎解きの要素は入れてくれていて、私でも楽しめるものを用意してくれました。
話をしていくうちに、私の知らない小説のことを知っている斉木くんが羨ましくなったりもしました。
もっと多くの小説を読みたいという欲求が沸々と湧き出てきて、それと同時に斉木くんに対する興味も抱くようになりました。
斉木くんは中間テストに過去問なるものがあると気付いていて、それを確かめたにも関わらず、過去問をクラスに配布することも、自分で使うこともしませんでした。
使っていないと確信できたのは斉木くんがクラスの平均点近くしか取っていなかったからです。
今回と全く問題が同じだったという過去問を使えば暗記しておけば80点は取れたはずです。
しかし、斉木くんはそうはしませんでした。
その事が気になって、つい伊吹さんに話してしまい、そのせいで斉木くんは龍園くんによく絡まれるようになってしまいました。
ただ、Dクラスとの争いには無関与で、なんなら私に『訴えを取り下げるから手を引くように頼んでくれ』とDクラスの方に伝えるように言ってきました。
その後、何があったのかは分かりませんが龍園くんはDクラスとの裁判から手を引いていました。
「テメェのせいで学校側がどこまで介入してくるか分からなくなったじゃねぇか」
『決定的な証拠がある時は学校が主体で、生徒同士の争いで証拠が不明確なものは生徒会が審議するってことは分かっただろ。よかったな』
「よくはねぇよ!」
心なしか龍園くんと斉木くんがいることが増えて、私と話すことは少し減ったか、と言われればそうでもなく、私も交えて話すことも増えました。
おかげで龍園くんや伊吹さん、石崎くんに山田くんとも仲良くなることが出来ました。
そして、高校最初の夏休みと思いきや始まった無人島試験で斉木くんは何もしない、リタイアしてやると言っていましたが龍園くんにスイーツで懐柔されてしまいました。
『スイーツは僕が食べる。僕が1人で1000ポイント獲る』
「斉木氏、クラスのリーダーを当ててももらえるのは1クラス50ポイントですよ」
両手に龍園くんから貰ったモンブランやケーキ、エクレアを抱えた斉木くんはギラついた目でそう言いますが、金田くんにそう言われてしまいます。
私は2日目が終わると共に龍園くんの命令でリタイアしてしまいましたが、結果発表の際に聞いたのはCクラスが3クラス全てのリーダーを当てることに成功していました。
今回の試験で斉木くんが1つでも外したら、報酬なしの隷属をさせようとしていた龍園くんも、この結果には驚いたようでずっと文句を言っていました。
「クソが……頭が良いってんなら褒めてやれるが、運がいいだけってのがな……」
「まぁいいじゃないですか。Bクラスに大きく近づけたんじゃないんですか?」
Cクラス全体が祝勝ムードの中、船に戻ってからわずか3日で次の特別試験が始まってしまいます。
簡単に言うとグループの中にいる人狼を見つける試験で、自分のクラス以外の人狼を見つけたら報酬が貰えるというものです。
龍園くんはクラス内の優待者と呼ばれる人狼役の人達に名乗り出させると私と金田くん、そして斉木くんに優待者の法則を見抜けと言ってきます。
「これは難解ですね」
知恵を絞りますが、なかなかいい推理は思い浮かびあがりません。
斉木くんはというと、腕を組みながら私に『干支のグループでそれが12個か。生まれ年は関係ないとしたら、他はなんだろうなぁ』とボヤいたりしてきます。
「12……誕生日などでしょうか?」
『それだと確認するのが難しいし公平性を重視してそうな学校側のやるとには見えないな』
「12……時間? 月……あとは……」
『そういえば、千葉の学校では誕生日順に席順が決まってるらしい』
「そうなんですか? 変わってますね。普通は名前順ですもんね。誕生日を覚えてもらいやすくするためでしょうか」
そう言いながら、誕生日順よりは遥かにわかりやすい名前順に入れ替えるということをやってみる。
すると、巳グループにいる優待者が名前順にしたら6番目に来ることに気づく。
そして、寅グループなら3番目、戌グループなら11。
「これって……」
『とりあえず、龍園に言ってみたらいいんじゃないか?』
「はいっ!」
私はこの時は謎を解けたかもしれないという興奮で状況が見えていませんでしたが、謎を解いた過程を龍園くんに伝えると、彼に言われてしまいます。
「ひより、お前……斉木に上手いように使われたんじゃないか?」
「え?」
斉木くんはこの法則が初めからわかっていて、それを私に解かせて龍園くんに伝えに行かせるためにヒントを与えてきたんじゃないと。
「斉木くんっ!!」
「ククク、まぁいい。これでこの試験も俺らの勝ちだな。解いた褒美に小遣いはやる。それで船にいる間は斉木をこき使えばいい」
龍園くんに言われて、斉木くんは特に悪いことをしたというわけではありませんが、私をいいように使ったということは腹立たしいのでそうさせてもらおうとお小遣いとやらを受け取ります。
「分かってましたよね? 私より早く。龍園くんから罰ゲームだそうです。付き合ってくれますよね?」
『……ウス』
そして、その後は龍園くんの命令で他クラスの優待者を当てて試験を終わらせて、私は斉木くんと船の中にあるライブラリや映画館に連れ回しました。
以前の私なら上手く利用されたからと言ってこんなことはしなかったと思います。
斉木くんが私に悪意を持って試験の法則を解かせたのではないというのが分かっていたのもありますが、斉木くんを連れ回してもいい口実ができたから、私はこうして2人で出かけることができたのではないかと今なら思います。
『これで満足か?』
「はい。ありがとうございます」
嫌なら断ってもいいんですよと私は言いましたが斉木くんは下船するその日まで私との買い物や映画鑑賞などに付き合ってくれました。
『やれやれ』と肩を竦めることはしても嫌がる顔や迷惑そうな顔はせずに黙って、私と一緒にいてくれました。
いつも通りの学校生活が始まると石崎くんが挨拶もすぐ終わらせて私にあることを聞いてきました。
「椎名ってさ、斉木と付き合ってんの?」
石崎くんの発言と共にクラスが一瞬静まり返りましたが、私が皆さんの方を見ると目を逸らして、ぎこちないながらも会話を再開させていました。
「斉木くんは読書仲間ですよ? あ、でもこの前初めてお友達と映画館で映画を見たり、男の子の部屋でドラマを見ました。すごく楽しかったです」
斉木くんの勧めてくれるドラマは外れがなく、推理モノやミステリーでなくても楽しむことができました。
ただ映画はなんだかよく分からない内容のものもありましたが。
「そ、そうなのか……」
言い終えると石崎くんはやや引き気味でしたが、近藤くんたちと「ヤッたか?」「斉木は付き合ってもない女とんな事しねぇ」とかヒソヒソと話していました。
2学期からは伊吹さん以外の女の子とも話す機会が増えました。
どういうわけか斉木くん絡みの話ばかりで、休みの日は何をしてるのかとか図書館では本を読んでるだけなのかとか。
そんなことを聞いてどうするのかよく分かりませんでしたが、読んだ本や見たドラマのトリックや動機などを話すと蜘蛛の子を散らすように自分たちの席へ帰っていきました。
やれやれ、本当によく分かりません。
別に友達の部屋で映画を見たりご飯を食べるのは本を読んでいる限り普通だと思うのですが……ただ、彼女達の言わんとすることも分かります。
斉木くんといる時は私はどこにでもいるような女の子になれているようで、嬉しくて、ふわふわとした不確定な感情がやってきます。
今の私はそれの究明をしつつ、お友達との時間を過ごしているにすぎません。
だから、木下さんたちが期待しているようなことにはならないと思います。
会えば映画やドラマ、小説の話ばかりで、高校生の男女がするようなデートとは程遠い会話ばかりですし。
ただ、私とは見ないような映画を伊吹さんとは見ているというのは少し気になりますが……そんなことを言うと斉木くんを失望させたり、困らせることになるかもしれないので言えはしませんが。
「斉木! 一昨日公開された蜘蛛人間VSトカゲ人間! 観た!?」
『あぁ。昨日の最後の回で観た。僕以外誰も座っていなかったぞ』
「あははは! やっぱり!? 私も私も! 朝イチの回なのに誰もいないの!」
そう考えていると伊吹さんが斉木くんに声をかけていました。
伊吹さんは時々斉木くんと一緒に映画を見るそうで、おふたりとも私がよく分からないと評する部類のB級映画が好きらしく、休み明けの日はその話で休み時間を使い切っていました。
『途中で出てくるハチ人間の方が毒の量が多いから勝ちというのはよくわからなかったな』
「てか、最後はみんなバッタ男に殺されるの意味わからなすぎるでしょ。まぁそこそこ面白かったけどさ」
むぅ。
なんか最近の伊吹さんは斉木くんとよく楽しそうに話している気がします。
友達に仲のいい友達が増えるというのはいいことではあるのですが、どうにもモヤモヤとします。
「今度は帰ってきたクワガタ男とか、あとは天を征くカブト人間観たいよね!」
『あれは履修しておかないといけないシリーズが複数あるから全部借りてこないといけなくなるぞ』
「そん時は私も協力するって。それならお金も半分でいいしさ」
『なんで僕も借りる前提なんだ?』
「は? 違うの?」
斉木くんも満更ではない顔をしていて、伊吹さんとそんな約束をしていました。
2人をじっと見ていたためか、伊吹さんが私の視線に気付いて「うっ」と身を引きます。
「さ、斉木、椎名が……」
『さっきからあんな顔だぞ』
「気付いてたのかよ! だったらなんで言わないんだよ!」
『コソコソ話す方が誤解を生むだろ』
私がどんな顔をしていたのかは分かりませんが……やれやれと呆れたように言う斉木くんは穏やかで、いつもの無表情ながらもどこか笑っているような顔を向けてくれます。
私は、その顔に吸い込まれるように笑いかけていました。
どのルートでも図書室にいるため知り合う女、椎名ひより
このルートだとくーちゃんの日常の象徴になる
そのため激甘
2人とも冷やかしやからかいに強い(ひよりは無自覚)
なお2年生編でひよりが恋心完全に自覚してからはそうでもなかったり
2年生編のifは2年生編終わってから書くべきか、書きたいと思った時に書くべきか
くーちゃんが天沢、七瀬世代だったらとか考えてるんですけどね
書くべきタイミングがわからん
てことでまた別のifで
Dクラスルートかつ栗子ルートは栗子ハーレムができそうでぐぇー!ってなって書けない……
精神的BLやんけ……
純粋なDクラスルートなら書けそうとも思ったが無理かもしれん
また何か書く気が起きたら戻ってきます。
では、また……