ようこそ超能力者のいる教室へ   作:オールF

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窪谷須ミームで見返してたら面白かったから書いてしまったという経緯は必要か?
不要だ。なぜならこの作品に窪谷須は出てこないからな……。


自己紹介してくだΨ

 高度育成高等学校。

 60万平米を超える敷地のほぼ真ん中にある国が主導する高等学校には、進学率、就職率がほぼ100%という謳い文句がついている。

 しかしそれが嘘だと僕が知ったのは入学初日の朝、校門を通ってすぐのことだ。

 この日に校舎の前で立ち止まっていなければ何か変わっていたなんてことはなく、テレパシーを遮断する手立てがゲルマニウムしかない僕には無意味な想定だ。

 

 この学校の特徴として挙げられるものは他にもある。

 在学中は生徒全員が敷地内にある寮での学校生活を義務付けられていることや、身内の不幸などといった特例を除いた外部との連絡、接触の禁止だ。

 国が運営していることから、昨今の高校生の行動サンプルを取るためなんじゃないかとネットなどでは噂されているらしい。

 その面も含まれているだろうが、実際のところはどうなのか。いずれ分かることだろう。

 

 それに寮生活や外部との連絡、接触禁止に関しては僕にとってなんの問題も無い。

 喧しい夜なら実家に帰らせてもらうが、連絡、接触を取るつもりは今のところないしな。

 恐らく大丈夫だと思うが、おじいちゃんおばあちゃんに何かあれば虫の知らせでわかることだ。

 

 外部との接触禁止は60万平米を超える敷地に集まった娯楽施設や小売店、飲食店があるおかげで特に不自由することはないだろう。

 入学式やホームルームとやらが終わればこの小さくも大きくもある街に出てみるのも悪くないかもしれない。

 初日なら早くに授業が終わるのは新入生だけだから、ネタバレを食らうリスクが最も低い日に違いない。

 何処に何があるのか最低限の把握はしておいた方がいいだろう。

 まあそれも3日も経てばテレパシーで誰かしら教えてくれるようになるのだが。

 

 さて、肝心の僕のクラスだがどうやらBクラスらしい。

 つまりは上から二番目の実力を持つクラス。

 

 入学試験が全員一斉でなかったから、筆記の方が平均よりも少し上のラインがわからず、解ける範囲で解いてしまったせいか? 

 面接は面接官の理想とする答えより少しずらして回答したせいか、「変なヘアピンをしてる以外は悪くないな」と面接官からの評価が良かったのか? いや、面接官の理想が低すぎただけだろう。

 僕の前の入学希望者の面接はあまり良くなかったようだからな。

 

「今日はどうやって来ましたか?」

(あー、さっきのやつは元気に来たぜ! とか言いやがったからな。誰がお前の体調なんて聞くかよ。普通移動手段の話だろ)

 

「本校を志望した理由をお聞かせください」

(死亡理由じゃねぇよ。死亡って何言ってんだオッサン、生きてるぜ俺っちじゃねぇよ)

 

 まあ、テレパシーを通して聞こえてきた僕の1人前の希望者が散々だったからで間違いなさそうだが。

 そのせいで僕の評価が思っているより上振れた結果Bになってしまったと思うが、CやDよりは生活に困らなさそうだし、Aのように他クラス全員に追われる立場になるよりはいいだろう。

 

「ねぇ、君もしかしてBクラス?」

(さっきBクラスのクラス表見てたし多分そうだよね? 違ったら恥ずかしいな〜)

 

 自分のクラスを確認して教室へ向かう途中、僕か乗っていた次のバスから降りてきていた女生徒に声をかけられた。

 コクリと頷いた僕に、彼女は嬉しそうに手を合わせた。

 

「私は一之瀬帆波。よろしくね、えっと、ごめん、名前聞いてもいい?」

(よかった、合ってた! いきなりクラスメイトの子と会えたよ。名前なんて言うんだろ)

 

 先程僕と同じバスに乗っていた女子と似たような雰囲気を持つが、こちらの彼女は邪心が少ないな。

 

「斉木くん、よろしくね! 良かったら一緒に教室まで行かない?」

(楠雄……初めて聞く名前。やっぱり日本全国から集まるから珍しい名前の子とか多いんだ)

 

 斉木楠雄と普通に自己紹介すれば一之瀬さんはそんなことを考えていた。

 帆波という名前も珍しい気がするがな。

 しかし、一緒にというのは残念ながら無理だな。

 さっきから一之瀬さんを窺う視線が多い。

 

(あの子可愛い)

(めちゃくちゃ髪綺麗)

(モデルか?)

(隣の男誰だよ)

 

 そういうお前も誰だよというツッコミはさておき、こんな目立つ子と一緒にいたら入学早々僕も目立つことになりそうだからな。

 

「そっか。じゃあ先行ってるよ。また教室でね」

(トイレなら仕方ないよね。でも、手を洗いたいからって几帳面、なのかな?)

 

 この子は少し人を疑うということを覚えた方がいいと思うぞ。

 一之瀬さんのお誘いを断ってトイレに向かい、彼女が教室に入るのを確認してから僕も教室に向かった。

 手は洗っても良かったがサイコメトリー防止用の手袋に穴でも空いたら大変だからな。

 そんなヤワなものでは無いが一応念の為だ。

 まだ寮に行っていないから替えも持って来れてないんだ。

 

 1年Bクラス。

 先輩たちのネタバレから察するに、平均以上の生徒が集められたクラスらしい。

 そのせいか、明るく社交的な生徒が多いように見える。

 今も既に親交を深めようと動き出している生徒が大半なのがその証拠だろう。

 

「よっ、オレ柴田颯。変わったヘアピンだな、どこのやつ?」

 

 源義経もびっくりな程の踏み込みで僕に声をかけてきたのは明るく活発そうな男子生徒だ。

 一之瀬さんと同じく僕が来る前から色んなクラスメイトに話しかけていたのはテレパシーを通じて聞こえていた。

 にしてもこのヘアピン、マインドコントロールをかけても多少目立つみたいだな。

 これは……あまり言いたくないが兄からプレゼントされたものだと言うべきだろうか。

 ただのヘアピンではなく、僕の超能力の力を抑える制御装置なのだ。

 超能力者ではなかったが超天才のドMだった兄が作ったもので、これのおかげで僕の日常生活は守られていると言ってもいい。

 

「そうか、いい家族がいるんだな。また話そうぜ斉木」

(なんかわけアリか? あんまり深くは聞かない方がいい感じだな)

 

 とりあえず身内から貰ったものだということと、名前だけ名乗っておいたが、察しのいい柴田くんはそっと話を切り上げてくれた。

 

(斉木と姫野、あと神崎はクール系って感じか? 白波は大人しい感じだったな)

 

 僕以外にも無口なキャラがいるようで助かる。

 それにクラスメイトのことに関しては一之瀬さんか柴田くんを通せば問題なさそうだな。

 

「はーい! みんな席に着いてー!」

 

 それから少しして、Bクラスの担任教師が入ってくる。

 セミロングの髪型に濃すぎず薄すぎないメイクをした女性は、教室の生徒たちが着席すると自己紹介を始める。

 

「初めまして、私がこのBクラスの担任の星之宮知恵です。保険医だからみんなの授業をすることは少ないけど、保健室にいるから何かあったらいつでも来てね」

(まあほとんど職員室でサエちゃんいじってるけど)

 

 まともそうだったBクラスの担任が1番ヤバそうなのは気のせいか? 

 

「入学式お疲れ様〜。今日はこれでおしまいって言いたいところだけど、この学校のルールについて説明するね」

 

 そう言うと、彼女は抱えて持ってきていた資料を各列の1番前の生徒に渡して、後ろに回させる。

 こういうところは普通の学校と変わらないんだな。

 そう思いながら前の席のクール系の神崎くんから資料を貰う。

 ずっと疑問だったがこの席順はなんなんだ。名前順でもなければ、誕生日順でもないが。

 

 まあいいかと僕は配られた資料に目を落とす。

 寮での学校生活に外部との連絡禁止……と、合格時にもらった資料と書いてあることはほとんど変わらない気がするな。

 

「じゃあ、学生証カードを配ります。これは君たちの身分証と財布を兼ねてるからなくさないでね。これがあれば施設内にある全ての施設を使えるし、ポイントを使って買い物もできるよ。基本的に学校内ではこのポイントを使って買えないものはないわ」

(買い物以外にも退学の取り消しとかテストの点数も買えちゃうのよ〜って言いたいけど聞かれないと言っちゃダメなのよね〜)

 

 言っちゃってるよ。

 僕にしか聞こえないが。

 

「ポイントは毎月初めに自動的に振り込まれることになってて、1ポイントにつき1円の価値があるよ。そして、この学年全員1人1人に10万ポイントが支給されているよ」

 

 10万という数字にクラスからどよめきが起こる。

 1ポイント1円なのだから、10万円もらえたことと変わらない。

 高校生には破格の額だろう。

 

(まあ毎月初めにポイントは振り込まれるけど10万ポイントとは限らないのよね。これから1ヶ月、みんなの過ごし方や態度次第で減っていくんだけど。みんな毎月10万ポイント貰えると思ってそうだけど……必ず10万ポイントもらえるとは言ってないのよね。誰か気づくかしら)

 

 あんたのせいで気付かされたよ。

 なるほど、先輩たちの言う通りあの監視カメラは生徒の素行を見るためか。

 流石にトイレにはなかったが、教室や廊下、校門や玄関にもあったことからプライベート空間以外にはあると判断していいだろう。

 

「10万ポイントも貰えるのは君たちがこの学校に入学できたから、それだけの価値と可能性があるってことだから、負い目とか感じずにポイントは使っていいからね」

(まあBクラスなら7万くらいは残ると思うし、変に無駄遣いしても大丈夫と思うけどCやDはどうかしらね)

 

 ポイントは卒業後に学校が回収するため、人生ゲームのように多く持っていても意味は無いらしい。

 ポイントの受け渡しは可能のようだが、他人の端末を勝手に操作して奪うということもできないようだ。

 まあ仮にできても履歴も残るし、場所によっては監視カメラもあるから、直ぐにお縄につくことになりそうだが。

 

「じゃあ、最後に質問はあるかな? なかったら残り時間は好きにしてくれていいよ」

(大抵Bクラスの子はこういう時何も聞いてこないのよね。様子見ってところかしらねー)

 

 聞きたいことは勝手に喋ってくれたから今のところはないな。

 強いて言うならもらった連絡用端末についているGPS機能の切り方を教えて欲しいくらいだ。

 まあ常に携帯を携帯しておかなければならないという校則はないし、充電している時くらいは持っていなくてもいいだろう。

 その間なら実家に帰って寝ていても学校側にバレることは無さそうだ。

 

(10万ポイントだってやっべー!)

(これって毎月貰えるんだよね。すごいなぁ、やっぱり国が運営してるから、なのかな?)

(合格祝いにしてはいささか多い気がするが、生活資金以外にも家具の調達費なども兼ねているのか?)

 

 みんな疑問はありつつも今は聞かなくていいと判断したのか、星之宮先生に質問をする者はいなかった。

 

「じゃあこれで終わりね。解散!」

(はい! 今日の仕事終わり! 男漁りにいこ〜!)

 

 星之宮先生は笑顔を貼り付けて教室を出ていった。

 ナチュラルメイクだったのはそういう理由だったのか。

 残りの時間は自由となったクラスメイトたちは一斉に動き出した。

 

「よっしゃあ! 買い物行こうぜー」

「何買いに行こうかな」

「ポイント貰えすぎて逆にやることないな」

 

 とりあえず何か買うかという考えは同じらしい。

 大金を貰って舞い上がる気持ちはわからなくもないが。

 さっきまで質問する様子すら見せなかったのに、みんな行動が早いな。

 

「ねぇ、みんな!」

 

 今にも誰か教室から出ていきそうな雰囲気の中、一之瀬さんが立ち上がると共に声をかける。

 

「これから3年間一緒に過ごすことになるし、お互いのことを知っておいた方がいいと思うんだ。だから今から自己紹介しようと思うんだけどどうかな?」

「お、いいねぇ!」

「その意見に賛成だ!」

 

 本当に社交的だなBクラス。

 そんなガキみたいなことするかよと突っぱねる不良キャラはいないらしい。

 

(え〜めんどくさ〜自己紹介なんて別にいいじゃん。3年間もいるなら嫌でも知ることになるんだし)

 

 黒髪のツインテールの女生徒は乗り気では無いらしいが、あれが柴田くんの言っていたクール系の姫野さんだろう。

 みんながみんな、協調性があるというわけではなくて少し安心した。

 

 一之瀬さんの一声で自己紹介をすることになった。

 名前だけでは味気ないから趣味か得意なことを言うことになったが、これといった趣味は僕にはない。

 強いて言うならミステリーモノの鑑賞だな。創作物ならテレパシーが聞こえることがないから予想のできない展開に僕も楽しませてもらっている。

 但しリアタイに限るが。

 

 特技はこれといってないな。

 超能力? あれは特技じゃない。当たり前に歩ける人が特技歩くこととは言わないだろう。

 

「ありがとう神崎くん。これからよろしくね、じゃあ次……、うん、後ろの君、みんなに自己紹介お願いしていいかな?」

(斉木くんだ。どんな自己紹介するんだろう。物静かな感じだし、名前だけで終わりそうだけど、大丈夫かな?)

 

 そこまで心配してもらわずとも、自己紹介くらいできる。

 趣味や特技はないが、他のクラスメイトは胸を張れるものがない時は〜が好きですで乗り切っていたからな。

 僕もそれにならってスイーツが好きだと言っておこう。

 

「お〜意外。斉木くん、これからよろしくね」

(スイーツか。スイーツ男子流行ってるもんね。まあ中学の後半ほとんど学校に行ってなかったからテレビとかネットの情報なんだけど)

 

 ん? 一之瀬さんが不登校? 

 あまりそんな感じには見えないが、余程の事情があったのだろうか。

 まあスイーツ男子以外にも、いじめとか流行ってる嫌な世の中だしな。

 そこから立ち直ってここでやり直そうという心構えなのだろう。

 だから、クラスの中心を引き受けようとしているのにも納得がいく。

 

 Bクラスの解散は4番目となった。

 1番は自己紹介の時間を取らなかったCクラスで、他クラスはしていたが、Bクラスは全員がしたことと、質問タイムのようなものがあったせいか延びてしまったようだ。

 ようやく街と寮に行けると腰をあげると、前の神崎がこちらを振り向いた。

 

「斉木、だったか。よかったら少し街を見て回らないか?」

(他の奴と見てもいいが騒がしいのは少し苦手だからな。自己紹介の雰囲気だと斉木はそこまでお喋りというわけではなさそうだしな)

 

 誰かとみて回るか、僕が普通の高校生なら喜んでついて行ったかもしれない。

 僕は普通に憧れはあるが、無理に人と関わろうという気はないんだ。

 しかし、こういう言い方をすると後々、角が立つ。

 それに断って、行った先で鉢合わせをすると気まずいしな。テレパシーがあるから避けられるとはいえ、回避出来るトラブルは回避しておくに限る。

 

「ありがとう。俺は特に行きたいところは無いがどこに何があるかくらいは確認しておきたい。斉木はどこか行きたいところとかあるのか?」

 

 行き先が同じになるならと頷くと神崎は穏やかな笑顔を浮かべている。

 僕も特にないがスーパーの品揃えなどは見ておきたいな。あとは、落ち着けるカフェなどもあれば嬉しいが、全校生徒が利用するカフェとなると難しいだろうな。

 

 他の生徒に誘われる前にと2人で教室を抜け出すと、僕たちは敷地内の施設でこれからの学校生活や日常生活で行きそうな場所を確認して回るのだった。




結局Bクラスにしました。
名有のキャラがそこまで多くないので一之瀬、神崎、姫野、白波、柴田以外はあんまり絡まないかも。網倉や安藤みたいな名有女子もそんなに。

他クラスとは否が応でも関わるでしょう。くーちゃんだからね。

おまけの有無

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