ようこそ超能力者のいる教室へ   作:オールF

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本編とリンクさせるかは未定ではありますが、前々から考えてはいた高育入学前に坂柳が空助と出会っていてプライドを岩盤のごとくボロボロにされていたらという話です。
まあ読んだらそんな話ではないだろとなるかもしれませんが……。

前提は坂柳が高育入学前に空助と出会っているだけで、他は特にないです
ただ楠雄への捕捉が早いので、本編やおまけなどで書いたAクラスルートとはかなり違っているかなーと思います。
長い前置きは置いておいてまあ読んでみてください。



特)坂柳有栖の野望

 私は坂柳有栖。

 父が理事長を務める高度育成高等学校に通う生徒の1人です。

 高育とも略される高校は、東京の埋立地にある日本政府が作り上げた、未来を支える人材を育成する全国屈指の国立の名門校。

 3年間外部との連絡は断たれてしまう上、学校の敷地内から出るのは禁止された寮生活になってしまいますが、希望する大学、専門学校、教育機関、就職先にほぼ100%応える学校です。

 60万平米を超える敷地内は小さな街になっていて、何1つ不自由なく過ごす事のできる楽園のような学校。

 

 それを楽園ではなく監獄と称したのは私の目の前にいる男性、斉木楠雄くん。

 日本、いや世界に誇る天才、斉木空助さんの弟。

 斉木空助さんとは、父の伝で1度だけ会ったことがあります。

 色素の抜け落ちたような髪色ながらも、やたらとツヤツヤした髪が印象に残っています。

 弟の楠雄くんと異なるにこやかな表情はフレンドリーな印象を与えると同時に、高校を飛び級し、イギリスのケンブリッジ大学で発明の特許やライセンス料で巨万の富を築いている自信もあるのでしょう。

 彼に潜む傲慢さを見抜いた私でしたが、彼もまた私の中に潜む攻撃性、苛烈さに気づいたのでしょう。

 

「キミ、何か特技はない?」

「はい?」

 

 にこやかな表情を崩さずにそう尋ねてきた空助さんに戸惑いつつも、私はすぐに余裕のある笑みを浮かべていたのでしょう。

 何故ならばそれが彼が私と遊ぼうとしているとわかったからです。

 

「そうですね、チェス、でしょうか」

「いいね。やろう」

 

 足の不自由な私にとって、趣味であり特技であるチェスは日頃から持ち歩いており、すぐさま広げると空助さんは楽しげに笑います。

 

「へぇ、そんなのあるんだ。オセロとかなら見たことあるんだけど」

「あら、そうなんですか? ちなみにルールなどはご存知ですか?」

 

 念の為、聞いておくと空助さんは表情を変えずに答えてくれる。

 

「うん、知ってるよ。弟とやったことあるから」

「そうですか」

 

 この時は、弟と遊んであげるいいお兄さん、あるいは弟をいじめる悪い人と思っていたのですが現実は違いました。

 

「チェックメイト。中々楽しめた方かな」

「も、もう一度……!」

「いやこれでもう3回目だよ? 仏の顔も三度まで、三度目の正直、二度あることは三度ある……ってね。何回やっても結果は同じだよ」

 

 表情は変わらないのに、冷めた口調で、私を宥めるようで、蔑んだ言葉だった。

 

「日本人って3って数字好きだよね。ナベアツが流行ったのもそれなのかな」

 

 クルクルと私のキングを回しつつ、彼は話し続ける。

 

「君、結構頭は良い方なんだね。ボクがここ数年見てきた中ではマシな方だと思うよ」

「マシ……?」

 

 たしかに私はまだ井の中の蛙だと思います。

 坂柳家という尺度にしか収まっていないかもしれませんが、それでもチェスの腕では誰にも負けないという自負がありました。

 そう、それが作られた天才でも。

 ただ目の前の男は違ったのです。

 彼は本物の天才。

 一般人が数ヶ月、数年単位で身につける技術を短期間で取得してしまう。

 赤子の時なら周りがハイハイを覚えているのに対して、彼はすでに立つどころか走ること、さらには平仮名カタカナの読み書きができるようになっている。

 たった3度の対局でそれが分からされてしまうほど、彼の実力は本物と言わざるを得ませんでした。

 そんな私を慰めたいのか、いや彼は慰めることで私をさらに打ちのめしたいのでしょう。

 

「まあキミ伸び代はあると思うし、世界3位とかは狙えると思うよ」

 

 3位。

 彼は3が好きなのでしょうか。

 私に3位なら、世界で3番目にならなれるかもしれないと笑っています。

 

「1位は貴方だとして、2位は誰なんですか……?」

 

 3位ではダメだと私の自尊心が吠えている。

 この男を倒すために、彼が知りうる2位の男を倒さないと。

 そう思って訊くと、彼はぷっと吹き出しました。

 

「あははは、違う違う。1位は僕じゃないよ」

「……え?」

 

 面白いこと言うなぁとお腹を抱えて笑いだした空助さんに、私は唖然とします。

 

「じゃあ誰が……!」

「誰って、決まってるでしょ」

 

 空助さんは笑みを消すと至極当然、それがこの世の摂理のような当然のことのように口にします。

 

「世界一、いや宇宙一は弟だよ。断言する」

「宇宙一……?」

「そうだよ。まあキミは僕の弟を知ることも見ることもないかもね」

 

 憐れむように私を見つつ、再び空助さんは笑みを作りました。

 

「だって、弟は目立つことを嫌うからね。よほどの事がない限り、キミと会うことはないよ」

 

 その後は「帰省がてら会いに来て良かったよ。面白い研究をしている人の知り合いの娘さんだったから会ってみたけど、そこそこ楽しめたよ」と彼は帰って行きました。

 1人、部屋に残された私は思案します。

 

「宇宙一……」

 

 ありえない。

 私が倒すと決めていた目標、作られた天才。

 綾小路清隆くん。

「刻まれたDNA以上のことは出来ず、人は生まれた瞬間にそのポテンシャルが決まっている」という私の結論を覆した努力の天才。

 ホワイトルームという天才を作る教育機関で見た少年。

 彼に影響されて始めたチェス。

 彼を超えるために続けてきたチェス。

 偽りの天才は本物の天才に勝ち得ない。

 その証明のために生きてきたと言っても過言ではありません。

 ただ、私や綾小路くん、空助さんすら超える天才がこの地球に、ましてや同じ日本にいる? 

 

 与えられた力を示さず、目立つことを嫌ってただ大人しく生を全うしようとしている人間に自分が劣っていると突きつけられる現実。

 それに私は震えるはずのない足が震えるのを感じました。

 私は空助さんの言う弟のことは、表舞台に出てこない限り会うことの出来ない仮初の存在として葬り、綾小路くん、そして空助さんの打倒を目指し、その成長の一環として高度育成高等学校に入学しました。

 そしてそこで出会ったのが───────。

 

「こんなに早くお会いできる日が来るとは思っていませんでしたよ、斉木……楠雄くん」

 

 あの兄とは同じ血筋とは思えない変わらぬ表情からは信じられませんが、間違いありません。

 彼は名前を言いませんでしたが、非論理的ではありますが女の勘がそうだと告げています。

 面倒なのに目をつけられたなと困った顔をしている彼を見ると、なんだか胸の奥が熱くなるのを感じます。

 今まで経験したことのない感情ですが、これは一体……? 

 どうやらその答えが出るまでは彼から離れることはできないようです。

 ふふっ、覚悟してくださいね? 

 私、狙った獲物は逃がしませんから……ふふっ。

 




空助はホワイトルームのことをもちろん知っていて、主導している総理や綾小路パパに助力を請われたりしましたが「ははは、無理無理」と普通に断っています。
日本にいる家族がどうなってもいいのかという脅しに対しては
「良くは無いけど、僕がなにかしなくても五体満足どころか、襲わせた連中が気の毒になるんじゃない?」
とケロりと答えた上で
「で、今のって脅迫罪だよね?僕のボールペンって録音機能がついてるんだけど、どうする?僕の家族に手を出す前に政治家やめてみる?あ、言っとくけど、僕の心肺が止まったり、睡眠以外で意識がなくなると自動的に日本のマスメディアに送られるようになってるから無駄なことはやめておいた方がいいよ。というか僕ごときにいいようにやられてるおじさん達が作る天才って程度が知れてると(以下略」みたいなこと言って顔真っ赤にさせて送り返すくらいはしそう。
感想にあった空助がいる時点で〜から着想を得たので書けて楽しかった。

セミコロナかなんだかよく知りませんが、とりあえず喉と鼻をやられて体調崩してるのでまた投稿が空いてしまうかもですがお許しください!自分の息子に殺されるとは……これもサイヤ人の宿命か……

個人的に面白かった誤字

斉木楠雄ぬん
綾野剛清隆
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