ようこそ超能力者のいる教室へ   作:オールF

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いきなり船内試験入るのもあれだから1話挟みました。
特に意味の無い回なので読み飛ばしていいと思いますよ。


4巻くらい
船内でのひととき


 無人島での試験が終わり、僕たち高育生は豪華客船でのクルージングを楽しんでいた。

 とは言っても、無人島での生活は相当な疲労を蓄積していたらしくほとんどの生徒が1日目は自室のベッドで過ごしていた。

 元気に船内の施設で遊んだり、時間を潰していたのは特別元気な者か、試験を途中でリタイアした者のどちらかだった。

 ちなみに僕は元気ではなかったが、元気になるために実家に帰らせてもらった。

 煩わしい腕時計は外れ、監視カメラや周囲の目さえなければ瞬間移動しても問題なくなったからな。

 ただGPS機能付きのスマホがあるが、これも船の自室のベッドに置いておけば問題ない。

 問題があるとすれば、船で割り当てられた部屋は一人部屋ではないため、長時間部屋を空けていると心配される点だろうか。

 

「斉木、昨日は夜以外は姿を見なかったがどこかで時間を潰していたのか?」

 

 1日ふかふかのベッドで寝て、船のレストランで健康的でバランスのいい食事をとって回復した神崎に声をかけられる。

 朝起きてから神崎や他のルームメイトが死屍累々になっていることを良いことに、僕は実家に戻っていた。

 一応、昼食の時は船に戻ってきたが、夜は母さんが久しぶりだからと僕の好きな料理を作ってくれたため夜は家で食べた。

 ただそのせいで、船にいた時間はかなり短く、神崎に不審がられたわけだ。

 せっかくのクルージングだから、色々と見て回っていたと、全く何1つ見ていなかったにも関わらず、そう宣うと神崎は「そうか」とだけ言った。

 

(船に乗るのは初めてと言っていたし、酔い止めのおかげで楽しめているのならいいことではあるか)

 

 神崎なりに気を使ってくれたのか、

 それ以上の追及はなかった。

 代わりに別の話題を提示してくる。

 

「今日は一之瀬たちと無人島試験の振り返りと祝勝会をすることになっているのは聞いているか?」

 

 聞いてはいるが、興味はないな。

 今回の試験、僕がしたことと言えば初日と2日目に食料を見つけてきたくらいだ。

 振り返ることは特にないし、祝勝会も大勢で集まって楽しむというのは性にあわない。

 

「……それは表向きの話だろう」

 

 他のルームメイトは出払っていていないが、神崎は声を潜めてそう言う。

 

「お前は白波からリーダーを引き継いで、AクラスとCクラスのリーダーを当てている」

 

 白波さんが体調不良でリタイアし、僕が代わりにリーダーを引き継いだことはBクラス全体が知っていることだ。

 一之瀬さんや神崎のような目立つ生徒よりも、僕のような印象の薄い生徒がリーダーをした方が他クラスに当てられにくくなる。

 というような、論理的な理由はなく、単に僕がリーダーをした方が都合が良かったからだ。

 他のクラスメイトがリーダーになると、リーダー当てに及び腰になるかもしれなかったからな。

 自分がリーダーになっておけば、周りに反対されようとも強行突破できる。

 まあ他のクラスメイトがなっても、サイコキネシスでペンを操ったり、試験担当の教師に暗示をかけてリーダーの名前を龍園と戸塚に見えるようにするなど方法はいくらでもあったが。

 今のところ、AとCのリーダーを当てたのは一之瀬さんと神崎ということになっている。

 これを知っているのも一之瀬さんと神崎だけだ。

 

「一之瀬も言っていたが、中間試験の過去問といい、今回といい、お前の成果には救われてる。だからこそだ、お前が受けるべきその感謝や賛辞を横取りしてるみたいで……俺はあまりいい気分はしない」

 

 曇りのある表情で神崎がそう言った。

 僕自身、目立ちたくないし、感謝されたいわけでもなければ、賛辞を受けたいわけじゃない。

 Bクラスが今後も体良くやっていくためには、一之瀬さんと神崎が活躍したことにしておく方が色々と都合がいいのだ。

 富、名声、力なんてものは僕には不要なのだ。

 

(……まあ斉木は自身の力を適切に使っている。ただそれを誇示して龍園をはじめとした面倒な連中に目をつけられたくないという気持ちは理解できなくも無い)

 

 クラス内で目立つということは、学年内、さらには学校内でも目立ってしまう可能性があるということだ。

 それを好まない者が一定数いることも神崎は知っている。

 神崎だって、他人に合わせたり協調性を持っているタイプではないのだから。

 

(だが斉木の功績を俺たちが被るほど、一之瀬と俺が龍園や他のクラスからマークされる可能性が上がってしまう。しかし、そうなれば裏で斉木が動きやすくなるのも事実か……)

 

 僕が黙っていると神崎は一人で考えをまとめ始め、小さなため息をついて結論を出した。

 

「まあいい。気が向いたら顔は出すといい。一之瀬も喜ぶだろう」

 

 いや、誰も行かないとは言っていないが。

 

「……?」

 

 僕はそこまでクラスに貢献してはいないし、大勢で集まったりするのは苦手という話をしただけだ。

 振り返りは祝勝会の中でやるんだろう? 

 その輪には僕は入らないでいるというだけだ。

 

「……つまり、来るということでいいのか?」

 

 特にやることも無いしな。

 こういう集まりはなるべく出ておいた方がいい。

 変に断ると逆に悪目立ちしてしまう。

 それに祝勝会とやらは船内のレストランかカラオケルームを借りるのだろう。

 なら、そこで今まで食べれてなかった分、船にあるスイーツを楽しませてもらうとしよう。

 時間と場所が決まったら知らせてくれてと伝えると、神崎はなんとも言えない顔で返事をしてくる。

 

「あ、あぁ、わかった(よく分からないやつだ、本当に……)」

 

 出会って3ヶ月なんだからそんなもんだろう。

 僕も神崎のことはよく知らないしな。

 ただ、神崎の思考の狭間に出てきた『力を持っていながら使わないのは愚か者のすることだ』という言葉を言った男は、綾小路の回想によく出てくる男によく似ていたように思うが……今はいいか。

 部屋を出て、祝勝会までの時間潰しをどうするかと思案する。

 そういえば、カフェテリアで日替わりスイーツなるものがあるとリタイアしたCクラスの生徒が言っていたな。

 数量限定らしいし、暇つぶしに食べに行ってみるかと船内を歩いていると(あれ? 斉木じゃん)と夏休み前に口に出す言葉と脳内で思っている言葉の差が激しい女生徒の声がテレパシーで届いた。

 

(そういや、あいつ綾小路くんと堀北と仲良いんだっけ。堀北がBクラスのリーダーを当てに行かなかったのってあいつがいるからなのかな……暇だしちょっとちょっかいかけてみるか)

 

 人を暇つぶしに使わない方がいいぞ、今から僕はスイーツを食べに行くから忙しいんだ。あまり構っている時間はない。数量限定らしいからな。

 

 櫛田桔梗。

 綾小路のいるDクラスの女子で、学年を通して人気が高く、顔も広い。

 性格は優しく、女神のようであり、相談もしやすいというのが学年内での彼女の評価だ。

 

「お〜い、斉木く〜ん(相変わらず綾小路くんみたいな仏頂面。てか、私が声かけたこと気付いてる? 耳あるよね? 飾りなの?)」

 

 ただし、中身は超絶腹黒な一面を持つ。

 彼女は、西澤桃華並に本音と建前が乖離しているタイプだ。

 彼女のようなタイプの人間は珍しくないし、ちゃんと表に出さないように徹底している点は評価するべき点だと僕は思う。

 

「おーい、斉木くーん? 無視しないでよ〜(こんな真横まで来てスタスタ歩くって何? ほんとに気づいてないの? イヤホンでもしてる? それともなに? 櫛田さんが僕なんかに声かけてくれるわけないよ〜って現実逃避でもしてるわけ?)」

 

 普通こんなに露骨に無視されたら嫌になると思うんだがな。

 しかし彼女の培ってきた努力による容姿と性格から来る絶対的な自信が、僕のようなモブ男子に私が気づかれないはずがないと猛烈にアピールをしてくる。

 口でダメなら直接ボディタッチでと触ろうとしてくる。

 

(ぜ、全避け!? どういうこと!? 気づいてないんでしょ!? それとも何? 私のことが高尚な存在すぎて触ってもらうのも烏滸がましいってか!?)

 

 流石に触れられると反応せざるを得ないというか、ここまで来ると気付いていないフリを続けるしかない。

 別に綾小路や堀北さんのことを訊かれるのは構わないが、無人島試験でのことを深掘りされると面倒だからな。

 しかし、人が通らない廊下を選ぶのも困難になってきた。

 そろそろ撒くためにトイレか、彼女の死角に僕が入ったら上か下のフロアにテレポートするとしよう。

 

(クッソ〜! モブ男子の分際で私を無視し続けるってなんだよ〜! ムカつくな〜! 山内くんとか池くんなら声をかける前に「く、櫛田ちゃん♡」ってあっちから擦り寄ってくるのに!)

 

 一緒にしないで欲しいものだな、特にその2人とは。

 

(てか、さっきから誰も通らないようなとこばっか通ってこいつどこ行く気なの!? もしかして私との鬼ごっこでも楽しんでる!?)

 

 そんなことはない。

 むしろ早く終わらせたいと思っている。

 それはあちらも同じようで、さらに苛立つテレパシーが届く。

 

(あ〜もう! 仕方ない! こうなったら、大声で名前呼んで、どうして振り向いてくれないの! って叫んでここに人集めてやる!!)

 

 それは些か面倒だな。

 そうされる前に僕は走り出すと角を曲がって階段を駆け降りる。

 

「はぁっ!? ちょっ!」

 

 急に僕がスピードを上げ、駆け出したことで櫛田さんが驚く声が聞こえた。

 そのまま階下に降りても良かったが、そのまま降りるだけでは櫛田さんは僕を諦めないだろう。

 ならばと千里眼で僕のいる地点を基準に周囲に誰もいないフロアを見てから、テレポートを行う。

 これでスマホのGPSは反応は変わることがないため、学校側に不審に思われることもない。

 監視カメラからも死角になる位置にしたしな。

 

(くそっ! 見失った! てかやっぱりあれ私のこと見えてるし気付いてるだろ!)

 

 相手が悪かったな櫛田さん。

 僕は池や山内のような単純な男じゃないんだ。

 

(てかなんで私斉木くんのことこんなに追いかけて……っ! バカみたいじゃないっ……!)

 

 実際バカみたいなことはしていたよ。

 多分監視カメラにはしっかり映っているだろうからな。

 僕に触れようとする櫛田さんの姿が。

 次会った時はちゃんと相手をするが、今は勘弁してくれと本日限りの日替わりスイーツを食べるため、僕は早歩きで目的地へと足を向け直した。

 





斉木楠雄のΨ難(以下災難)読んでる人には分かるであろう照橋さんと斉木が休みの日に街で出会って、照橋さんにおっふしたくない斉木が全力回避しまくる話のオマージュです。
災難ではおっふしたくないからという理由でしたが、今回は限定スイーツのためでした
無理があるか?と思いつつ、なんか書けてしまったし投稿します

あと斉木ってそんなにスイーツ好きなの?と聞かれると、断っていたデートもスイーツがあれば行き、早く帰ろうと言っていてもスイーツを食べきってからにしようとか言ったり、女性限定のスイーツバイキングにわざわざ女体化していくくらいには好きです。
どんだけ好きなんだよこいつ


次回で試験入ると思われ(ほんとにござるか?)
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