ようこそ超能力者のいる教室へ   作:オールF

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前回のあらすじ

高度育成高等学校 Bクラスの斉木楠雄は、Cクラスの龍園から、Bクラスが無人島試験でどうやってリーダーを指名したのかを詰問される。
無言を貫き、静観を保っていた斉木だったが、試験に勝利するためにクラスメイトの白波千尋を傷付けた龍園が何の反省も謝罪の意もないことに気づく。
そんな龍園に斉木はやられたらやり返す、10倍返しだと誓うのだった───────。

櫛田桔梗視点から始まります。
櫛田って一之瀬のこと一之瀬さん呼びな気がするけど、帆波ちゃんでも違和感、違和感……いやこれでいい
ということで一旦放置してます



ディスカッション②

 ディスカッションと名付けられたリーダー間の話し合いは、葛城くんの平和的解決策の提示から始まった。

 全クラスの人間が平等に50万プライベートポイントを得られる。

 本当にそうなるのなら、なんて薔薇色の話だろうと思う。

 けど、そうはならないことを私は知っている。

 人は愚かな生き物だと私は知っている。

 嫉み、妬み、僻み、そんな感情から来る足を引っ張り合う醜い争い。

 他人を信じれず、他人を疑い、蹴落として自分を守る。

 今まで見てきたそんな愚かな光景を、私は幾度となく見て来たから。

 まとまりかけていた葛城くんの案も堀北と平田くんが反対して、賛成派に傾きかけていた神崎くんを説得している。

 その間に起きた、どうやってBクラスが無人島試験で1位を取ったかという詮索が始まり、私は微笑を浮かべたまま静観している。

 男の子同士の言い争いは仲裁してもいいけど、今回は粗暴で有名な龍園くんに、見た目が同い年とは思えない葛城くん、そして意外と熱い心を持っている神崎くんと私が割って入っていけるような相手ではない。

 試験中だから殴りあったりするようなことはないだろうけど、龍園くんの挑発には神崎くんも限界が近いみたい。

 

「なんの事だ? なにか証拠でもあるのか?」

「お前……!」

「龍園やめろ。神崎も、気持ちは分からなくは無いが落ち着け」

「……ああ、すまない。取り乱した」

 

 話はBクラスで仲のいい女の子から聞いている。

 Bクラスのリーダーをしていた白波千尋ちゃんが、Bクラスにスパイとして送り込まれた金田くんにリーダーということが知られた。

 そして、Cクラスがリーダー指名してポイントを得るために「リーダーを降りたら一之瀬さんや他のクラスメイトがどうなっても知らないぞ」と脅され、それに怯えて体調不良になり6日目の夜にリタイアしたと私は聞いている。

 それでBクラスは運良く、そのリーダー情報を使って指名したCクラスと、多分葛城くんの言い方からしてAクラスの指名を逃れることが出来たってとこかな。

 別に違和感はないと思う。

 うちのクラスに比べれば。

 平田くんを挟んで隣に座っている澄まし顔の女も、試験中に体調不良が祟って、6日目の夜にリタイアしている。

 ただこの女が体調を崩していたのはクルージングが始まってから間もなくで、6日目まで無理をしたのなら、この女は最後まで島に残ったはずだ。

 それなのに堀北は6日目の夜にリタイアした。

 けれど、これを堀北はCクラスに勝つための作戦だと言い張り、Dクラスは思わぬ成果を得ることができた。

 

 ムカつくことに堀北鈴音は優秀な女だ。

 持っている能力は総じて高くて、見た目も悪くない。

 それらを帳消しにするほどに孤高を気取って、高圧的で傲慢な態度を取って周りとは馴染めない。

 だからどうせすぐにみんなから排斥されると思っていたが結果は違った。

 

 中間試験の時は赤点組のための勉強会を開かせて教師役にしたら、案の定あいつは須藤くんたちを詰り、貶して勉強会を崩壊させた。

 その後私と綾小路くんのフォローがあって、勉強会は形を取り戻したが、それでも須藤くんの成果では赤点は免れないかもしれないと私は感じていた。

 そんな時にあいつが持ってきたのは中間試験の過去問だった。

 どこから? いつの間に? あのコミュ障がどうやって? という疑問は尽きなかった。

 おかげでDクラスは中間試験を退学者なしで乗り越えるができた。

 まあ須藤くんは英語で1点足りなかったらしいけど、それも堀北がポイントで先生から1点買い取ってあげて退学にはならなかった。

 

 そして、無人島試験でも土壇場で綾小路くんと平田くんに他クラスのリーダー予想を与えてリタイアしたと言う。

 本当にそうか? と私は疑ってしまう。

 けれどあいつは優秀な人間だから、出来てしまう可能性もある。

 愛想が悪くて、傲慢で、自分は優秀だと思っているあの顔がたまらなく私は嫌いだ。

 それだけならまだしも、あいつは私と同じ中学で、私の秘密も知っている。

 だから、あいつには退学して欲しい。

 この試験はその協力者を探すのにはうってつけの場だった。

 特にこの竜グループは各クラスのリーダーが集まっていて、能力が高く、発言力や行動力もある。

 彼らの誰かに私、櫛田桔梗が優待者であるという情報と引替えに堀北潰しを持ちかけて、退学に追い込んでもらう。

 それが私の今回の目標だった。

 だから、葛城くんの示す結果①で終わるとかはどうでも良くて、誰に交渉を持ちかけるか、それだけを考えていた。

 

 葛城くんは話を聞いている限りだと、Aクラスの利になれば手伝ってくれる可能性があるが、誠実そうで、協力は難しいと思う。

 神崎くんも同様で、他クラスとはいえ女子生徒を退学に追い込むほどの非情さを持ち合わせていないし、帆波ちゃんが気付けば必ず止めに入ってくるだろう。

 となると、残るは龍園くんだけだが、彼ならば正当な対価を支払えばやってくれるという確信がある。

 勝利のためなら同級生どころかクラスメイトすら傷つけることを厭わない。 

 このディスカッションが終われば、みんなにバレないように優待者の情報を手土産に彼との接触を図ろう。

 そう考えながら龍園のBクラスに対する追及を見ていると、矛先が黙りを決め込んでいた斉木くんに向かう。

 

「おい、クソメガネ。お前、最後にリーダーやってたんだろ? 誰に、どんな指示を受けてAとCのリーダーを指名したんだ?」

 

 斉木くんが龍園くんにどうしてクソメガネというあだ名を付けられたのかは知らないが、私もそれを使おうかと思うほどには斉木くんにいい感情を持っていない。

 スイーツに夢中だったからと私の声掛けを無視し、相手にしたくないからと私の接触を全て避けた男だ。

 これで私の過去を知っていたら役満だったけど、そこまでには至っていないから許してやっている。

 キョロキョロと辺りを見渡してから龍園くんへと顔を向けた斉木くんは口を開いた。

 

『……そのクソメガネっていうのは僕のことか?』

「他にどいつがいるっていうんだよ。いいからさっさと話せ」

 

 龍園くんが急かすように言うと、斉木くんは『やれやれ』と肩を竦めた。

 その態度が気に障ったのだろう龍園くんが斉木くんに睨みをきかせる。

 

「朝からなんだその舐めた態度は……てめぇから潰してやろうか?」

『やれるもんならやってみたらどうだ?』

 

 それは誰から出た言葉か一瞬分からなかった。

 何を考えているのか見当もつかない表情をしている斉木くんが明確に向けた敵意と分かるには少し時間がかかった。

 

「……面白れぇじゃねぇか。今までのふざけた態度が嘘みてぇだな」

 

 そう言った龍園くんは斉木くんに興味を持ったのか、前のめりになって両肘をテーブルにつけて両手を組んでいる。

 そんな中で、平田くんが龍園くんを窘める。

 

「ま、待ってくれ! 喧嘩をするために話し合ってるわけじゃないんだ! もっと冷静になろうよ」

 

 平田くんは龍園くんと斉木くんの雰囲気に怯えつつも、この場にいる全員のために勇気を出して間に入る。

 

「お前は引っ込んでろ。今はオレとクソメガネが話をしている」

「っ!」

 

 邪魔をするなと龍園くんの眼光が平田くんを射抜き、彼が萎縮すると再び斉木くんを見た。

 

「クク、おもしれぇじゃねぇかクソメガネ。お前にそんな感情表現ができるとは思わなかったぜ。ただのスイーツヲタクじゃなさそうだな」

『ヲタク? 僕がか?』

「ああそうだ。口を開けばスイーツ、スイーツ。女子でもそう言わねぇだろうよ」

 

 なぁ? と私や紗代ちゃん、Aクラスの西川さんらに問いかけてくる。

 

『そうじゃない。ヲタクと呼ばれることが不服なんじゃない、畏多いって意味で言ったんだ』

「あ?」

『僕程度がスイーツヲタクを名乗れるわけがないだろうという意味だ』

 

 分からないのか? と言わんばかりに再びやれやれと肩を竦める斉木くんに龍園くんは苛立ちの笑みを浮かべた。

 

「ほんとに気色悪い野郎だな……まぁいい、これが最後のチャンスだ。誰にAとCのリーダー情報を貰ったんだ?」

 

 そんな龍園くんの詰問を斉木くんは爽やかで余裕のある、それこそ葛城くんや神崎くんに龍園くんが向けていたような笑顔を浮かべた。

 

『そんなことも分からないなら……君に僕は潰せないんじゃないか?』

「言ってくれるじゃねぇか……!」

 

 ビキビキと、青筋を浮かべ怒りを顕にする様相が見て取れる龍園くんに、場の空気が悪化していくことを感じる。

 平田くんや、さっきまで龍園くんと対立していた神崎くん、堀北ですら斉木くんの豹変ぶりに驚いているようだった。

 普段、争い事は好みません、大人しくしてますという態度ばかりとっていた男が、ここに来て相手を煽るような言動ばかりしているのだから、私も内心驚いている。

 そして、斉木くんはこれまで通りの何を考えているのかわからない顔に戻ると、『さて』と話を区切った。

 

『知りたいなら一之瀬さんにでも聞いてくれ。僕は彼女の提案に乗っかっただけだ。直接クラスメイトを傷付けた龍園くんを懲らしめたいというな』

「……ちっ、そうか……そりゃそうだな。白波の前に姿を見せたのがオレの敗因ってことか」

 

 斉木くんの言葉に1人勝手に納得した様子を見せる龍園くんに、葛城くんが怪訝な顔で尋ねた。

 

「どういうことだ?」

「……オレはスパイにした2人を除いたCクラス全員をリタイアさせたと見せかけた後に、白波の前に姿を見せている。つまりは、オレが残っていることは白波と、それを聞いた一之瀬は把握できたってことだ」

 

 龍園くんらしからぬミス、というよりは帆波ちゃんのファインプレーと呼べるものかもしれない。

 千尋ちゃんの挙動不審な態度を見てなのか、龍園くんの脅迫による恐怖で体調を崩したのかまでは知らないけど、おそらく帆波ちゃんには龍園くんからのことを話したのだろう。

 そして、スパイの2人ではなく、島に残っているのならリーダーは龍園くんがやるはずだと。

 

「クク、教えてくれたことに感謝してやるよ、クソメガネ。潰すのはまたの機会にしてやる」

『そうか』

 

 それだけ言うと斉木くんは再び黙りになった。

 でも、今度は葛城くんが斉木くんに尋ねる。

 

「ちょっと待て、じゃあAのリーダーはどうやって把握したんだ? うちは徹底的に他クラスからの干渉を避けていたし、そもそもBクラスの人間はうちの拠点に1度も来ていないと聞いているが」

 

 確かAクラスが拠点にしていた洞窟の周りには他クラスが来ても立ち入らないように見張りをつけていたと聞いたけど、本当だったんだ。

 でも、そこまでしてもBクラス、更にはうちのクラスが指名できた訳は確かに気になる。

 再び斉木くんに視線が集まると彼はまたもや『やれやれ』と口を開いた。

 

『誰かは知らないがAクラスの人間から密告があったそうだぞ。うちのクラスのリーダーは戸塚弥彦だとな』

「なにっ!? 誰だ! リーダー情報を漏らしたのは!」

『気の毒だが、僕も知らない。僕も一之瀬さんも神崎も又聞きした情報だったからな』

「……その情報はBクラスではなく、他のクラスが手に入れた、というわけか。それなら、うちと協力関係にあったCが漏らした可能性も……!」

「それは契約違反になるからしねぇよ。少しは冷静になれ」

 

 みんな怒ったり冷静になったり忙しないなと葛城くんを宥める龍園くんを見てそう思う。

 

「試験の終わりにも言ったが坂柳の下についてる誰かだろ。心当たり、あるんじゃねぇのか?」

「それは……」

「お前、そんな脇の甘さで本当に全グループで結果①にできると思ってんのか?」

「……わかった。すまないが、さっきまでの話は一旦忘れてくれ」

 

 みんなに頭を下げる葛城くんに、葛城くんへの同情を感じさせる視線が向けられている。

 葛城くんが悪いわけではない。

 ただ、議論が停滞するような葛城くんの出した提案を白紙に戻せたのは龍園くんのおかげのように見える。

 しかしそう誘導したのは彼じゃない。

 何者なのという視線を向ける前に船内にアナウンスが響く。

 

《時間が経過しました。議論が終了したグループは次回の議論まで自由にしてください。繰り返します……》

 

 話はまとまることはなかったが、最低限話すようにと命じられていた1時間が経っていた。

 この放送を聞いて神崎くんは大きく息を吐くとみんなの顔を見やる。

 

「時間だな。今日はここまでにしておこう」

「そうね。話す機会はまだ5回もあるわ」

 

 賛成する堀北に平田くんも頷く。

 葛城くんはというと、自クラスに裏切り者がいると確定したことがショックなのだろう。

「悪い、先に行く」とクラスメイトたちも心配するような顔で部屋を出ていく。

 そんな彼を龍園くんは機嫌良さそうな微笑みで見送る。

 

「ククク、あれは相当参っているな」

 

 趣味悪と思いつつも、途中までは自信に満ちた顔だったのに最後はああなってしまうとは分からないものだなと思う。

 それは斉木くんにしてもそうだ。

 

「斉木、さっきは無理していなかったか? 大丈夫か?」

「もうちょービビったよ! でも、斉木くん凄いね龍園くんに物怖じせずさ!」

 

 Bクラスの2人に囲まれている斉木くんを見ていると、私を無視したあの気に入らない無表情のままだが、腹の底では何を考えているかわからない。

 暴力を得意とするCクラスのリーダーに潰すぞと脅されて、逆にやってみろと挑発できるほどの胆力が彼にあったのは意外だ。

 最終的には龍園くんを引かせて、彼の疑問に答えるヒントを与えていた。

 その龍園くんはCクラスの生徒を連れて部屋から出ていっており、残ったのは私たちDクラスと、Bクラスだけ。

 

「斉木くん大丈夫……そうだね。良かった。さっきは驚いたよ。龍園くんに言い返せるなんて」

 

 平田くんもさっきの斉木くんの言い返しに驚いたこと、龍園くんに一矢報いた姿が良かったのか、彼に話しかけに行っていた。

 堀北も近づきこそしてないが、気にはなるのか、部屋に留まって聞き耳を立てているように見える。

 

 

 ───────もしかして、このグループの中で1番頭がキレるのって……。

 人を見た目や噂話、会った時の出来事といったモノで形成される第一印象とは異なる印象を斉木楠雄に抱き始めていた。

 





頭どころかトイレットペーパーで人も斬れるであろうのはこの男〜!
\高育のニューウェーブ 斉木楠雄/

ディスカッション一発目が終わりましたが…10倍返ししてないじゃないかって?いや10倍返しってそんなすぐにできるもんじゃないので……。
まあ温かい目で見ていただければと。

みんなの前で同級生の中でも屈指の暴君に斉木が喧嘩を売るかという話になるんですが、相手から配ってる場合と相手が自分の身内を傷つけたりしてたら斉木もポケットなモンスターの現在の催眠術の命中率くらいは乗っかってくる
あと「やれるもんならやってみろ」という半沢(大和田も言ってたな)のセリフが言えたので少しご満悦だったりする

けれど違和感などあればどしどしドスドスオラオラ言うてくれたら助かります
斉木のエミュムズいのだ!

今月の更新はこれで終わりとなります
次話はまた次月からになりますが、よろしくお願いします

小説は

  • 書け次第すぐに更新して欲しい
  • 一定のタイミングで更新して欲しい
  • 更新されればどちらでもいい
  • そんなことよりラーメン食いに行こうぜ
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