ようこそ超能力者のいる教室へ   作:オールF

40 / 53
タイトル特に思いつかなかった

0時投稿できなかったのは俺が新しいWiFiルーターの設定に手間取ったからだ……WiFiの説明書やテレビが悪いんじゃない……俺が悪いんだ……


仮説は実証して初めて真実となる

 兎グループの1回目のディスカッションはあまりいい結果とは言えなかった。

 まずAクラスの対話拒否。

 葛城くんが打ち出した方針みたいだけど、無人島試験での負けがよりそれを強固にしている感じなのかな。

 結果①になれば、クラスポイントの変動はないし、無人島試験の結果を踏まえてもクラスの変更もない。

 全クラス、全員にプライベートポイントだけが手に入って、悪い話ではないというのはわかるけど、Aクラスの逃げ切りというのは納得がいかない。

 かといって、Aクラスが議論に参加していない状態じゃ他の結果に導くのも難しい。

 これがAクラスの優待者がグループにいるところだけの作戦ならやりようはあるけど、どのグループでも同じみたい。

 

「はぁ」

 

 先が思いやられるなぁとため息を吐いてしまう。

 綾小路くんたちには優待者がどのクラスにいるか絞るだけでいいとか、Aクラス以外に優待者がいるなら隠し通してもいいとか色々言ったけど、結局は優待者がどこのクラスの誰なのかが肝になる。

 

「斉木くんの言う通り、優待者は把握しておくべきだったかな」

 

 思い出すのは今朝、Bクラスの何人かで集まって試験の方針を決めた時だった。

 結局、方針らしい方針は出せず、優待者の把握は私は本人たちの自主性に任せることにした。

 けど、そんな私の提案に対してチーズケーキを食べていたスプーンを落とすほどに落胆してしまったのか、斉木くんは先に食事を終えて帰ってしまった。

 斉木くんが帰ったあとも、試験が始まってから他のクラスの出方をみて決めようって形で解散になった。

 しかし、結果は何も決まっていなくて、どうしようかなと悩みの種になっている。

 話し合いの場はまだ5回あるし、なんとかなるとは思うけど、他のクラスが優待者の法則とかこの試験の必勝法みたいなのを見抜いたらおしまいだ。

 多分そうなると、無人島試験で一番のポイントを得ているBクラスが狙い撃ちにされることは十分に考えられる。

 特にCクラスは。

 

「うーん……」

 

 同じグループの浜口くんたちとは別れて考えを整理するために艦尾の方へと歩いているが、やっぱり1人ではまとまるものもまとまらない。

 そもそも情報が少ないどころかないに等しいし、人狼ゲームで議論の場をもたれないということがこんなにもキツいとは思わなかった。

 そう考えていると、艦尾の方では人気の少ないエリアに入って、純喫茶魔美という看板の出ている店の前に立つ斉木くんの姿が目に入る。

 

(む、一之瀬さん……1人か。珍しいな。グループのメンバーか、もしくは他の女子と一緒にいると思っていたが)

 

 斉木くんは店の前でショーケースに並んだコーヒーゼリーを見ていた。

 中に入っていないのを見るに、待ち合わせなのかなと考えてしまい、声をかけるかどうか悩んでしまう。

 

(待ち合わせをしていたんだが綾小路と佐倉さんは艦首の方に居て、来るのに時間がかかるから綾小路一人でなんとかすると連絡があったが、せっかく来たから何か食べようと選んでいただけなんだがな。しかし、一之瀬さん1人か。それなら好都合かもしれないな)

 

『こんなところに1人でいるのは珍しいな一之瀬さん』

「ひゃぁっ!」

 

 意外にも声をかけてきたのは斉木くんからで、気付かれていないと思っていたこともあって変な声が出てしまう。

 恥ずかしくて、少し顔を逸らして、チラリと斉木くんの様子を窺う。

 

『どうかしたのか?』

「う、うん。なんでもない……」

 

 本当に気にしていないのか、敢えて触れないでいるのか、斉木くんは首を傾げていた。

 とりあえず、ホッと胸を撫で下ろして私は斉木くんに尋ねる。

 

「斉木くんは待ち合わせ? それともこれから昼ごはん?」

『待ち合わせだったんだが、事情があって来れないそうだ。しかし、せっかく来たから何か食べようと眺めていた』

「そうなんだ。どれも美味しそうだね」

 

 コーヒーとコーヒーゼリーが売りなのか、ディスプレイに並んでいるのはコーヒーゼリーパフェにコーヒーゼリー、コーヒーゼリーのミニパフェなどコーヒーゼリーに特化したメニューばかりである。

 もちろん普通のコーヒーも美味しいんだろうし、コーヒーだけのお店でも成り立ちそうなぐらいにはコーヒー豆も並んでいるのが見える。

 けど、斉木くんにはコーヒーゼリーしか映っていないのか、ずーっと【プレミアムコーヒーゼリー】のサンプルに視線を注いでいる。

 竜グループがどんな感じだったのか聞きたいし、朝のお詫びも兼ねて、斉木くんの要望なども聞いておこうと私は口を開いた。

 

「じゃあ、2人で入らない? そっちのグループの話とか聞きたいし」

『そうだな。一之瀬さんがそこまで言うならそうしようか』

 

 そんなに言ったかな私。

 ドアを開けるとチャリンチャリンとドアベルの音が鳴って、店内に響き渡ると「いらっしゃいませ」と清潔感のある店員さんが私たちに気が付いて、テーブル席へと案内してくれた。

 メニュー表を見ていると、多分先生や船の乗組員の人向けの通常料金と、私たち学生向けの学割無料と2つの価格設定がある。

 入学前の私なら来れなかったであろう値段を見て呟く。

 

「本当にすごいよね、この船の施設が全部無料だなんて」

 

 お母さん達とも来てみたいな、なんて思いながらメニューを見ていると、ふと無人島試験で見た夢のことを思い出す。

 

 6日目の夜に目が覚めた私は、固まった身体を伸ばすために外に出た。

 その日の夜は雨が降っていて、普段は外で寝てくれていた男子も少し手狭になるけどテントで寝ていた。

 でも、斉木くんだけは『この下なら雨風も関係ない』と1人外でハンモックで寝ていた。

 そんな斉木くんが気になって少し覗いてみると、真上は葉っぱの傘で覆われていて確かに雨風は気にならない場所で寝ていた。

 凄いなと思いながら斉木くんの方を見るとヘアピンをしたままで、寝返りを打ったら危ないんじゃないかと引っこ抜いたら、その後別の夢に移っていた。

 多分、外に出たところが夢だったんだと思う。

 その夢はジャングルから始まって、何故か斉木くんが一緒にいて、明晰夢というやつだったから、島に戻れ〜! って念じたら戻ることができた。

 頭の中では子守唄が聞こえていたけど、もしこれが夢で、本当に叶うならもう一度お母さんと妹の顔を見たいと願うと、私は3ヶ月前に離れた自分の家にいた。

 お母さんと妹はすぅすぅと寝息を立てていて、夢の中だとしても起こすのはいけないと思った。

 けど、2人に抱き着きたかったし、ハグしてあげたかった。

 自分だけ学校の用意したベッドで寝て、ご飯を食べている自分がそうする権利はあるのかと、悲しくなって、泣いて、また夢の中で眠ってしまった。

 でも、私が2人に会えて喜んでいる時も、悲しんでいる時も、斉木くんは黙ってずっと傍にいた。

 理由は分からないけど(君が安全装置を抜いたからな)現実の斉木くんもそうしてくれる気がして……って、何考えてるんだろ私。

 

 ……やば、あんまり考えないようにしてたのに思い出すとなんだか恥ずかしいよ〜! 

 

(やれやれ、喜怒哀楽が激しいなまったく。ずっと黙って聞いているこっちの身にもなって欲しいな)

 

『……一之瀬さんは何を頼むか決めたのか?』

「へっ!? あッ! うん! この、魔美製カプチーノにし、しようかな!」

 

 咄嗟に指差した商品を読み上げると、斉木くんは『そうか』と店員さんを呼ぶベルを鳴らす。

 そして、私の注文とプレミアムコーヒーゼリーを頼んでくれる。

 しばらくすると店員さんが持ってきた。

 

「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」

 

 手元に来ると、ほんのりとミルクの甘い香りとコーヒーの香ばしい匂いが鼻腔を擽ってくる。

 斉木くんのプレミアムコーヒーゼリーも生クリームがたっぷり乗っていて美味しそうに見える。

 まずは一口と啜ると、口の中にはミルクの甘さが広がって、ちょっと心地よい苦味が追い掛けてくる。

 やっぱりコーヒーって美味しいなぁと自然と笑みが零していると、目の前の斉木くんはもっと笑みを零していた。

 それはなんだか妹を見ているみたいで微笑ましくて、ついじっと見ていると斉木くんと視線が合う。

 

『……どうかしたか?』

「あっ、うん、なんでも……あっ、そういえばさっきのディスカッション、どうだった?」

 

 誤魔化すように話を振ってしまうが、斉木くんは特に気にすることもなく、コーヒーゼリーを飲み込んで答える。

 

『そうだな、率直に言えば早く終わって欲しいな。メンツも面倒だし、僕のような地味な生徒には気が重い』

「本当に率直だね。そういえば葛城くんが何か言ってなかった?」

『Aクラスが最後まで議論の場を持たないと言っていた』

「うん。うちも同じ。葛城くんの指示だって」

 

 じゃあどこのグループも同じかなと私が思っていると『だが』と斉木くんが口にする。

 

『終わり際にその話はなかったことにしてくれと頭を下げていたぞ』

「えっ、なんで!?」

 

 町田くんとかあんなに頑なだったのに、リーダーで提案者の葛城くんがどうして? 

 

『僕たちがどうやってAクラスのリーダーを当てたかという話になって、それがAクラスの内部情報をリークした人間だと伝えたら、龍園に裏切り者を抱えた状態で本当にできるのかと煽られていた』

「あー、そっか……葛城くん、誰も裏切らない前提で組んでるもんね。それが自クラスにいるってなったら、他のクラスへの説得力も失せるし、何より葛城くんが無理だって思っちゃったのかな」

『まあ内部に裏切り者がいるなら、Aクラスの優待者の情報を他のクラスに漏らして、またAクラスに攻撃させる可能性もあるからな』

 

 ということは、夜のディスカッションでは話し合いの場を持ってくれる可能性が出てきたわけだ。

 それならまた話は変わってくるね。

 

「CとDはどうだった? 兎グループはAの方針には反対って感じだったけど」

 

 聞くと、斉木くんは竜グループであったディスカッションの内容を話してくれた。

 櫛田さんが司会進行を行い、自己紹介を終えてから葛城くんが結果①で終わらせることを提案してきた。

 それに堀北さん、平田くん、龍園くんたちは反対。

 神崎くんは無人島試験で勝っていることもあって、葛城くんの意見に流されかけていたけど、堀北さんに説得される。

 その中でBクラスが無人島試験で得た結果はAクラスに上がるためじゃないかという話になって、そこから龍園くんと葛城くんにどうやってリーダーを当てたかを訊かれて、そこでAクラスの裏切り者の話をしたらしい。

 

「そっか、そっちは結構白熱したんだね」

 

 何も無いこっちよりはマシ……なのかな? 

 

「斉木くんは大丈夫だった? 龍園くんに絡まれたりとかしなかった?」

『ああ、特に何も無かったな』

 

 モニュモニュとコーヒーゼリーを食べている感じからして本当に何も無かったみたいだ。

 あのグループなら龍園くんに意見できたり、咎めたりできそうな人も揃ってるし。

 そもそも斉木くん自体かなりマイペースなところがあるから、意外と龍園くんのことを躱せるのかもしれない。

 そのままディスカッションでの話をして、斉木くんがコーヒーゼリーを食べ終わる。

 

 そういえば、斉木くんさ、朝、優待者を把握しないのかって聞いてきたけど、なんで? 

 そう尋ねようとして、少し迷う。

 この試験にも勝ちに行くなら優待者の法則を見破ることは絶対に必要なことは私もわかっている。

 それを斉木くんから訊いてきたことが私には意外で、その理由を知りたいと思った。

 けれど、朝やんわりとその提案を否定しておいて今更訊くのもなぁって迷っていると『一之瀬さん』と斉木くんに呼ばれる。

 

「な、何?」

『僕からのお願いなんだが』

「お願い?」

『龍園を懲らしめるために、優待者の法則を知りたい。だから、Bクラスの優待者を把握できないか?』

 

 斉木くんのお願いに私は驚く。

 

「龍園くんを?」

『ああ』

「一応、理由を聞いてもいいかな」

 

 理由は何となく分かる。

 でも、ちゃんと聞いておきたいと思ったから私は尋ねた。

 

『龍園は白波さんの件に関して一切反省していなかった。それには神崎や安藤さんは怒っていた。だから、奴に灸を据える意味でCクラスを大敗させたい』

「斉木くんは怒ってないの?」

『……怒っていないといえば嘘になる』

「そっか、わかった。じゃあ聞いてみるけど……」

 

 言いかけて、私は念の為、斉木くんに再び尋ねた。

 

「うちのクラスの優待者3人だけで法則がわかるの?」

 

 グループは全部で12グループあって、1グループに1人だけ、優待者がいる。

 学校側が公平性を持っているなら各クラスに優待者は3人だけ。

 先生の口ぶりからして優待者は学校側から何かしらの意図を持って選ばれている。

 けど、自クラスの優待者だけで優待者の法則を見抜くのはいくら何でも早計な気がする。

 

『ああ。問題ない』

「もしかして、もう既にわかってたり?」

 

 からかうように尋ねた私に、斉木くんはメガネのブリッジを押し上げてそう言い放った。

 

『まだ仮説の段階だ。仮説は実証して初めて真実になる』

 

 私は斉木くんの実力を疑っていない。

 Bクラスの中では頭脳はずば抜けて高いと思っている。

 それは多分神崎くんや、斉木くんとは打ち解けている姫野さんも私と同じように思っているはず。

 私が生徒会に入れず落ち込んでいる間にどこからか過去問を持ってきたり、無人島試験でも食べ物の場所や無料で使える道具を見つけたりしてきた。

 さらにはAクラスとCクラスのリーダーも指名している。

 ただ彼は目立ちたくないからとその手柄を全て私や神崎くんのものにしてくれと言ってくる。

 多分今回もそうする気なんだろう。

 でも、それでBクラスのみんなが退学なんてせずにAクラスで卒業できるのなら、私は。

 

「わかった、斉木くんを信じるよ」

 

 私はスマホを取り出してBクラスのチャットルームを開いた。

 チャットルームではグループでの話し合いはどうだったかという書き込みで溢れていた。

 そこに割って入るように優待者の人に名乗り出て欲しいと書く。

 理由は斉木くんの言った通り、龍園くんやCクラスを懲らしめるために法則を知るためだと書く。

 誰かしら反発してきちゃうかなと思いながら見守っていると柴田くんが【賛成だ!】と同意してくれる。

【Cクラスには嫌がらせとかもされたし、私はいいと思う!】

【龍園くん全然反省してなかった! 私からもお願い! 優待者の人出てきて!】

【小橋です。私、優待者です!】

 

 柴田くん、紗代ちゃんのメッセージを皮切りに夢ちゃんが名乗り出てくれる。

 斉木くんもチャットルームは覗いてくれているみたいで、何やら手元が動いていた。

 

【僕も賛成だ】

 

 私は目の前にいるから斉木くんが送ったメッセージに白々しいなぁって思ってしまうが、みんなはそうじゃなかったらしい。

【え!?】【斉木がチャットしてる!?】と斉木くんのチャットに驚いている。

 これには斉木くんも不服そうな顔をしていた。

 けれど、そのおかげか神崎くんからも依頼のメッセージが来る。

 

【俺からも頼む。龍園の蛮行を見過ごすわけにはいかない。あいつはおそらく自クラスの優待者を把握している。ここで差をつけられると無人島試験での勝ちもなくなってしまう。報酬のプライベートポイントのこともあって名乗り出たくないかもしれないが、よろしく頼む】

 

 この神崎くんのメッセージ後、残りの優待者の子も名前を出してくれた。

 

「ホントにこれだけでわかるの?」

『グループのメンバーを見てみれば分かるはずだ』

 

 出た3人には特に何の関連性も見られない。

 けど、斉木くんは彼らが所属しているグループメンバーを見ればわかると言うので、みんなから教えて貰っていたメンバー表を出す。

 

『やはりそういうことか』

 

 また斉木くんはメガネのブリッジを上げてそう呟いた。

 これに答えが……? 

 じっくり見てみるけど、何も分からない。

 むむむ、と唸っている私を見兼ねて斉木くんは仮説を喋り始めた。

 

『分かりやすいように小橋さんの所属する牛グループで説明しよう。牛グループ、つまり干支になっている動物の順番でいうと2番目のグループだ』

「うん」

『その2番目のグループのメンバーをクラス問わずに全員苗字順にする』

 

 言われた通り、牛グループの人たちを苗字で名前順にしてみる。

 そこで、Dクラスの池くんの後が小橋さんになって、私は斉木くんが言いたかったことに気づく。

 

「え、うそ?」

 

 まさかと思ってあとの2人のグループも確認してみると、グループメンバーを五十音順に並べた時に、振り分けられたグループ名の干支の順番に当たっている子が優待者になっていた。

 ということは、うちのグループの優待者は……。

 

『僕の仮説が正しければ、竜グループの優待者は櫛田さん、一之瀬さんのいる兎グループは軽井沢さんになるな』

 

 私が言う前に先に確認していた斉木くんが正解を告げてくれる。

 私は思わず深く椅子に座り込んでしまった。

 

「こんな単純な法則だったなんて……」

 

 でも、斉木くんはこれを仮説だと言っていた。

 確かに自クラスが斉木くんの言う通りなだけで他のクラスがそうとは限らない可能性もある。

 せめて、1人か2人、他クラスから優待者を聞いて、この法則に当てはまるか試さないと……。

 

『一応、Dクラスの櫛田さんからは彼女が優待者だと確認済だ』

「えっ!?」

 

 いつの間に!? 

 

「櫛田さん、自分が優待者だって斉木くんに教えてくれたの!?」

『ああ』

 

 私の大きな声にそんなに驚くことか? とばかりに斉木くんは応える。

 

『彼女から厄介な頼み事を受けてな。その見返りとして教えてもらった』

「そ、そうなんだ」

 

 なんだろう厄介な頼み事って。

 でも、櫛田さんのプライベートなことだったりすると訊いてはいけないかもしれないと思ってそこは深堀はしない。

 

「でも凄いね斉木くん。こんなのよくわかったね」

『昔読んだことのある小説に似たようなトリックがあったんだ』

「トリック?」

『ABC殺人事件、クドリャフカの順番あたりを読んでみれば何となく分かるかもしれないな』

 

 斉木くんはそう言うとグラスに水を注いでそれを一飲みする。

 証明を終えた学者のように顔はどこか晴れやかそうだった。

 

「ありがとね斉木くん」

『何がだ?』

 

 唐突にお礼を言われて斉木くんはこちらをうかがう。

 

「斉木くんのおかげでこの試験、なんとかなりそうだからさ」

 

 やることは多いけど、Cクラスに負けさせるのは、龍園くんが法則を見抜けてない今ならできる可能性が高い。

 出来れば今日の夜には決着をつけたいな。

 

「よし、神崎くんも呼んで作戦会議しようか!」

『ああ、その辺は君たちに任せる』

 

 あくまで自分は表には出ないとアピールしてくる斉木くんに私は思わず苦笑する。

 

「じゃあ、その見返りに斉木くんには何してもらおうかな〜」

(確かに一之瀬さんには今回の件といい、中間テストの過去問の件でも頼んでばかりだな。それに僕が表に出ないということは表に出ている一之瀬さんが狙われるということでもある)

 

 冗談混じりにそんなことを呟くと、意外な言葉が返ってくる。

 

『そうだな、僕にできる範囲でなら一つ頼み事をしても構わないぞ』

「えっ?」

 

 この提案は予測していなかった私は随分と間抜けな声を出したと思う。

 斉木くんは手を合わせてごちそうさまでしたというと席から立ち上がる。

 

『神崎からどこにいるかという呼び出しが来ている。おそらく優待者の法則がわかったか聞きたいんだろう』

「……そっか、それなら早く教えて、どうするか決めないとね」

 

 私と斉木くんは純喫茶魔美から出ようとして、その前に斉木くんがマスターさんに口止めをしていた。

 

『僕と彼女がここに来たことと話していたことは他の人には言わないでくれるとありがたい』

「うん、いいよ。そもそも何の話かよく分からなかったしね」

 

 ハハハと朗らかな笑いを見せるマスターさんに頭を下げて私たちは純喫茶魔美を出た。

 




入れようとして入れれなかったセリフ
『やらなくていいことはやらないが、やるべきことは手短にやる』

マスター(これだけしかお客さんが来ないならアルバイトは置いてきて正解だったね。もし来てきたら食料を食い荒らさられていたかもしれないけど、弟や妹さんたちの面倒もみなきゃいけないといっていたからそもそも来れなかったかな)

例えとしてABC殺人事件とクドリャフカが適切かは分からないけど、なんとーなく出てきたので使いました
まあ事件と試験は違うんだけどね

あと今回も斉木くんはかなり機嫌いいです
理由はプレミアムコーヒーゼリーが食べれたのと言てみたかったセリフがちゃんと言えたからです。
良かったねくーちゃん。

一之瀬視点にしたのは無人島試験のおねちょのことを少し触れさせるためだったけど結構長くなっちゃった
今のところ一之瀬から見た斉木はスイーツ好きな賢い男の子くらいです

櫛田さんのお願いの件は書くと思いますが書かない可能性もあります
どちらもありうる……そんだけだ……

次回でいつものダイジェストエピローグ方式で船内試験終わりです
早いな。まるでRTAみたいだ。
ではまた次回

斉木の頭脳

  • 綾小路レベル
  • 坂柳レベル
  • 一之瀬レベル
  • 堀北レベル
  • 龍園レベル
  • 山内レベル
  • 楠雄が上の人達より下な訳ないでしょ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。