ようこそ超能力者のいる教室へ   作:オールF

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WiFiの調子が悪かったり飲み会やらで遅れましたがなんとか書けました


シン・斉木楠雄の夏休み 

 夏休み最終日になった。

 特別試験を終え、7月下旬の数日を含めて3週間という僅かな夏休みだった。

 僕はほとんどの時間を実家で過ごしつつも、母さんが心配しないように少しはこちらにいる時間を作るようにした。

 その結果が一之瀬さんからの相談や、堀北会長や葛城との会話、堀北さんの災難といった出来事をもたらしたのであればいた甲斐はあったのかもしれない。

 特に堀北さんの災難を通して僕への好感度を下げられたことは大きい。

 他クラスの生徒の好感度を下げる手として時間経過もあるが、一番手っ取り早いのはその人の前で好感度を下げる行動や言動をすることだ。

 困っている堀北さんの前で傍若無人にピザを食べ、彼女を揶揄ったりしたら好感度は49程にまで下がっていた。

 堀北さんの性格を考慮すればこの数値なら学校で会っても不用意に声をかけられることはないと断言出来る。

 やってることはカスのそれなのだが、僕の平穏な学校生活のためには必要な犠牲でした。

 

 葛城の妹さんの件は、手を貸してやっても良かったが、好感度が上がりすぎてしまうのとどうやって渡したのかという疑念が生まれるため、見て見ぬふりをすることになってしまった。

 だが、たまたまクラスメイトの誕生日プレゼントを買いに訪れていた綾小路が手を貸して、部活で学外に出る須藤と協力して解決していた。

 これは学校からの同行者たちに須藤への監視を進言しなかった堀北会長の手助けもあったのかもしれない。

 

 佐倉さんと山内の件も僕が帰省している間に綾小路がなんとかしてくれていた。

 山内は佐倉さんに告白して無事振られたようだ。

 恋に恋しているというのを自覚したおかげか、逆上したり、粘着行為に走ったりということも無く終わってなによりである。

 綾小路にはトラブルシューティングの才能があるのかもしれないな。

 

 さて、これでクラス外の好感度は綾小路と教師陣を除けば60未満になったため、2学期が始まっても支障はなくなった。

 ただ、夏休み最終日といえば、翌日から始まる2学期に備えて身体を休めるべきなのだが、僕はこれからプールへと向かわないといけない。

 普段は水泳部員のみが使える施設らしいが、それが29日、30日、31日の3日間だけ開放されているのだ。

 授業で使えるプールよりもさらに広く充実した設備が備えられているらしいが、そんなことはどうでもいい。

 僕としてはプールはどうでもいいのだが、肝心なのは大型プールが夏休みに開放されている点なのだ。

 そのプールには普段ならば泳ぐ以外の要素などないのだが、一般開放に併せて出店のようなものをやっており、その中に実に興味深いアイス屋があるという情報が入ったのだ。

 一之瀬さんから29日に来たメッセージを見る。

 

【一之瀬帆波:おはよう! 久しぶり、元気? 私は超元気だよ!】

【斉木楠雄:それはなによりだ。僕はほどほどに元気だ】

【一之瀬帆波:いつも通りってことかな? 斉木くんらしいね!】

【斉木楠雄:それでどうかしたのか?】

【一之瀬帆波:うん、31日なんだけど、クラスの何人かでプールに行こーってなったんだけど斉木くんもどうかな?】

 

 はじめに来た時は僕は断るつもりでいた。

 というか、同様のメッセージが神崎からも来ており【大勢でというのは苦手だが今のところそこまで大所帯じゃない。斉木もよければどうだ?】と誘いを受けていた。

 大所帯が嫌なのに僕を誘うのは、他の男子が柴田、浜口といったクールで物静かな神崎とは違うタイプが多いため、クラスメイトの中では話しやすい僕にも来て欲しいという意図だとは容易くテレパシーで読み取れた。

 しかしこの時の僕にわざわざ大勢の人間がいる場所に行く気はなく、少し考えた風を装い、断りをいれるつもりだった。

 考えが変わったのは翌日になってからだ。

 

(へへっ、これで櫛田ちゃんや他の女子のおっぱいが見れるぜ)

(鈴音には申し訳ねぇけどよ、男のロマンには勝てなかったぜ……!)

(うおおおお! 同級生の裸とか燃えるだろぉぉぉ!)

(ふふ、彼らの撮った映像を量産、加工すればもしかしたら……ぐへへ……)

 

 やれやれ、どうしてせっかくCクラスにあがったというのに盗撮などというくだらないことを考えるのか。

 9月からCクラスになる池、須藤、山内、あとのもう1人は博士と呼ばれている男が盗撮を企んでいるとテレパシーで知ってしまった僕はため息を吐いた。

 くだらないことを考えているのは数日前から察していたがまさか実行に移すに至っているとは予想外だった。

 

(せっかくCクラスに上がれたのにクラスから犯罪者を4人も出す訳にはいかないな)

 

 それはクラスメイトの綾小路も同じ考えのようで、彼は三馬鹿たちに協力者として呼び出されたみたいだが、それに協力するフリをして阻止するようだ。

 彼は彼で、軽井沢さんを協力者にして作戦の妨害をする気らしい。

 ならば、僕の出る幕はないなと思っていたところ、プールから戻ってきた他のクラスの生徒からのテレパシーが聞こえる。

 

(あー出店美味しかったー。あのつぶつぶアイス美味しかった)

 

 つぶつぶアイス? 

 なんだそれはと僕は携帯の検索機能で調べてみると、主に関西で売られているようで、液体窒素で急速冷凍された粒状のアイスクリームの味と食感、口溶けを楽しむものらしい。

 出店というと焼きそばやたこ焼き、フランクフルトといった海の家や祭りの屋台のようなものを想像していたが、これは、この機を逃す訳にはいかないらしい。

 

【斉木楠雄:プールの件、遅れて申し訳ないが参加させてもらう。よろしく頼む】

【一之瀬帆波:OK! ありがとう!】

 

 ということで急遽予定を変更し、プールに向かうことになった。

 三馬鹿の方は綾小路がどうにかするだろうが、僕も少しは協力するとしよう。

 

 ###

 

 当日の8時40分、プールは朝9時から開放されるため、それに合わせて一之瀬さん達はロビーに集まっていた。

 メンバーは女子が一之瀬さん、網倉さん、白波さんの3人、男子は神崎、柴田、浜口、そして僕である。

 そこに同じく集合場所の被った綾小路、三馬鹿、櫛田さん、堀北さん、佐倉さんもおり、一之瀬さんの提案で一緒に遊ぶことになった。

 

「どうして斉木くんがいるのかしら」

「斉木は神崎と仲が良いみたいだし、あのメンツならいるんじゃないか?」

「そう……というか、池くんや山内くんの様子がおかしいと思うのだけど気のせいかしら」

 

 プールに向かう途中、堀北さんと綾小路がそんな会話をしており、全てを知る綾小路は鋭い指摘に言葉に詰まる。

 それは部活の疲れが溜まっていたと寝坊して少し遅れてきた須藤も同じだった。

 

「い、いつも通りじゃねぇか?」

「(いつも通りなら櫛田さんがいる時点でかなりはしゃいでいるはず……)わたしには何か怪しい狙いがあるようにしか見えないけれど」

 

 堀北さんの視線は池が持つカバンに注がれており、彼の持つカバンはかなり重そうだった。

 それもそのはず水着やタオルの下に隠してあるが、僕には見えている。

 カメラを取り付けたラジコンとそれを動かすためのコントローラーに、カメラの映像を確認するための端末が入っている。

 ここで荷物検査をすれば、池は連行待ったなしだろうが、まだ未遂だ。

 場違いではあるものの、プールで遊ぶために持ってきたとしらばっくれる可能性の方が高い。

 彼らの日々の生活をよくは知らないが、僕が佐倉さんを訪ねて行った時も山内と池は大声で猥談を繰り広げていた。

 それは休み時間をほぼ教室で過ごしている堀北さんにも露呈しているのだろう。

 

「(このままじゃバレるな。ここで堀北たちにバレるのはまずい)そういえば須藤、部活の方はどうなんだ?」

「あ? あぁ、大会での貢献度っつーことで3000ポイントくらいだな」

「個人的な活躍でプライベートポイントを得たのね」

 

 綾小路が上手く話題を逸らして須藤がそれに応じると、堀北さんも合わせてくれた。

 これで池達の不審行動から意識を逸らせたため、彼らの目的が盗撮だとばれることはない。

 もっとも、盗撮されようとしている本人たちは全く気づいていないのだが。

 念の為、昨日のうちに通気孔のある方は後から人が溜まりやすいらしいと一之瀬さんに話しておいたから、全員が映ることはないだろう。

 

 学校の傍に併設された普段は水泳部専用施設である『特別水泳施設』とやらに入り、学年の男女ごとに用意された更衣室へと続く廊下で一之瀬さんが言う。

 

「それじゃあみんな20分後にこの場所に集合ってことで」

 

 最終日ということもあってか、入場開始前にもかかわらずかなり人が多い。

 まとめ役の一之瀬さんが女子を引き連れて離れていくと、池たちは行動を開始した。

 

「はあ、はぁっ!」

 

 怪しいと思われてはならないという緊張から解放されて、興奮した様子で息を荒らげて早歩きで駆け出す。

 それを追うように山内も続いていき、あまり期待していないからか三馬鹿の中では冷静な須藤が続き、綾小路も着いていく。

 池や山内の様子に神崎と柴田は首を傾げていた。

 

「どうしたんだあいつらは……(さっきまで大人しかったのに)」

「分かんねー。一番風呂的な? 一番プール狙いとか?」

「はは、どんなに急いでも9時までは入れませんけどね」

 

 柴田の邪な気持ち一切なしの推測に浜口は苦笑するとCクラスの男子たちと少し離れた位置で着替え始める。

 しかし遠目に見ていてもタオルを広げて着替える姿はやや異質だ。

 

「池は身体に傷やアザでもあるのか? 山内たちが隠しているようだが」

「さぁ? 聞いたことないけど、まあ見られて恥ずかしいって男子もいるしね」

「んな事より着替えに20分もかかるのか? なあ斉木」

 

 まあ日焼け止めとか塗る時間を考慮すればそれくらいかかるんじゃないかと柴田に返しておく。

 

「なるほどなー! さすが斉木だぜ、気配りのできる男」

 

 グッと親指を立てて何故か敬意を払われた僕に浜口も何故か同意してくる。

 

「斉木くんは中学生の頃、恋人とかいたんですか?」

 

 なんでそんなことを訊くのかと目を向ければ、浜口は視線を斜めに向けながら答えた。

 

「ああ、悪い気がするならすみません。でも、無人島の時といい、船内でも斉木くんは女子といることが多かったように見えたので(椎名さんに、姫野さん。一之瀬さんとも話しているのを見ましたし。特に姫野さんはクラス内でも話す人が限られている中で男子は斉木くんだけですし)」

 

 たった3人じゃないかと僕は肩をすくめると神崎が口を開く。

 

「斉木が優しいのは女子に限ったことじゃないだろう(現にこうして俺の誘いに乗って来てくれている)」

「確かに。それに思ってたよりノリいいしな」

 

 着替えながら僕の話をしている神崎たちを尻目に僕は着替えを済ませる。

 

(おおっ! 見え、見え……見えねぇ! 櫛田ちゃんが見えねぇよ!)

(てか、これみんな遠くねぇか? ここからじゃ全員見えねぇぞ!)

(鈴音は……映って、ないな……ふぅ、良かったような……残念なような……)

(……? 思ったより反応が薄いな。何かあったのか?)

 

 さて、三馬鹿の方はどうかと目を向けると、ラジコンを通気孔に侵入させて女子更衣室側に送り出したところらしい。

 あちら側には既に軽井沢さんが到着しており、綾小路からの合図を待ってラジコンに入っているメモリーカードを入れ替えるようだ。

 

「斉木、待たせたな」

「Cクラスの方はまだ着替えてるのか?」

「はい、着替え終わっているのは綾小路くんだけみたいですね」

 

 神崎たちも着替え終わり、Cクラスの男子たちを待とうとするが、誰一人として水着姿でないことに柴田が不満そうな顔をする。

 

「斉木たちが待ってる。怪しまれるから先に行くぞ」

「お、おう! 上手くやれよ!」

「俺達もすぐ行くから!」

 

 ラジコンカーを回収するタイミングを見計らっているため遅くなっている3人を置いて綾小路が「待たせた。あとの3人は替えの下着がどうだので遅れるらしい」とそれっぽい言い訳も口にする。

 

「なんだ直接履いてきたのか? 中学の頃したけど帰りノーパンで帰ったぜ俺は」

「誇ることじゃないだろ……」

 

 能天気な柴田に神崎が呆れつつ、彼らと共に更衣室を出て一之瀬さんの待つ共用エリアへと向かっていく。

 

(クソォ〜! 全然撮れてないだろうなぁ……ワンチャン! ワンチャンあれば!)

(うう……博士にも高い金払ったのに……こんな結末って……)

(まぁこんなことしてちゃダメだよな、うっし、切り替えていくか!)

 

 目先の性欲に囚われてリスクを見誤った上に、綾小路の謀略にハマった彼らはもう盗撮など考えてもできはしないだろう。

 これで心おきなくつぶつぶアイスが楽しめるなと僕は女子グループたちと合流した。

 




自分でも大した中身がなくて申し訳ないと思うほどには中身がない話な気がする
まあ三馬鹿の企みを片付けられただけ良かったかもしれない

次で夏休み編ラストとなります
シンを使ってしまったので次のタイトルはどうしようかと検討中

斉木と相性が良さそうなの(再)

  • 坂柳
  • 神室
  • 山村
  • 森下
  • 一之瀬
  • 網倉
  • 白波
  • 姫野
  • 椎名
  • 伊吹
  • 堀北
  • 櫛田
  • 軽井沢
  • 佐倉
  • 佐藤
  • 松下
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