ようこそ超能力者のいる教室へ   作:オールF

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そういや旧劇があったなって
思い出さなかったらGQになってました(もうめちゃくちゃ)


斉木楠雄の夏休み Air/夏休みを君に

 部活動に使うにしては大きく、広いプール施設が学生たちのひと夏の思い出のために劇的ビフォーアフターを遂げていた。

 大勢の生徒で賑わっているのはもちろんのこと、売店の数もかなり多い。

 運営しているのは上級生たちで、プライベートポイント稼ぎのためや、アルバイトが出来ない分ここで疑似体験しておこうといった心持ちの者もいるようだ。

 

(ピークは昼前だからそれまでは少し温存だな)

(今日は1年共が多いようだな。腹いっぱいにしてやるよ)

(クソォ……なんで私は夏休み最終日にこんなところに……)

 

 笑顔で懸命に接客をしている者もいれば、死んだ表情で機械的に動いている者もいる。

 

「どういう仕組みなんだろうな」

 

 僕と同じく働く上級生たちを見てそう呟いた綾小路のは独り言だったため、僕は聞き流した。

 女子たちが来るまでの間、広々とした廊下から見える出店などを見ていると、騒々しかった廊下の雰囲気が変わる。

 

(あの子可愛いな)

(1年生か?)

(胸でっっっっ)

(スタイルやばすぎぃ! 自分撮影いいっすか!?)

 

「やー、お待たせお待たせ。すごい人だかりだね」

 

 整った容姿、というよりは人の目を引く容姿をしているのであろう一之瀬さんがこちらにやってくると好奇の視線が一気に集まる。

 

「(すごい破壊力だな)よう……」

「(やっぱ一之瀬のスタイルやべーな)おお……」

「(これは直視するとまずい)ですね……」

 

 施設育ちで感情の起伏に乏しいながらも一応は一般的で健全な男子高校生である綾小路は困ったように壁の方へと目を向け、一之瀬さんにほんのちょっぴり好意を寄せている柴田は天を仰ぎ、中性的ながらも男子としての面を持ち合わせる浜口はメガネのピントを合わせるふりをして目線を逸らしていた。

 そんな思春期男子たちの気持ちなど露知らず、中学時代は胸の脂肪が控えめだったらしい一之瀬さんは池たちがいないことに首を傾げていた。

 

「あれ池くんたちは? 男子ってもっと早いと思ったんだけど」

「よく分からないがまだだな。他の女子はまだかかりそうか?」

「うん。でも日焼け止めとか塗ったらもう来るんじゃないかな」

 

 このメンツでは女子への関心の薄い、というか異性としての意識がないのか神崎は普通に一之瀬さんと会話できている。

 ああいう部分もモテる要素なのかもしれないなと見ていると、一之瀬さんからの視線がこちらに向く。

 

「斉木くんシャツ着るんだ。邪魔にならない?」

 

 僕の目的はあくまでアイスだからな。

 肌を晒すのが嫌というわけじゃないが、一応と答えると一之瀬さんは「うん、いいと思うよ。似合ってるし」と頷く。

 

「綾小路くんはラッシュガード買ったんだね」

「オレは人前で肌を晒すのは少しな。授業以外でなら使ってもいいと聞いたから思い切って買ったんだ」

「そっかそっか。そういう子増えたみたいだね(まあニュースとかで見た情報だったんだけど)」

 

 綾小路の言うように、視線内にはチラホラとラッシュガードや僕のようにシャツを着ている生徒が少なからずいる。

 

「というか、綾小路くんは思ったより筋肉ありそうだね」

「そうか? ラッシュガードかオレの肉が固いだけだと思うが……(あそこを出てからも鈍らないように、最低限のトレーニングはしてるが、それは言わない方がいいな)」

 

 ツンツンと遠慮なく綾小路の二の腕やら肩やらを一之瀬さんの人差し指が突く。

 綾小路は嫌がることはしないが、近くに迫る2つの脂肪が気になるらしい。

 

「柴田くんはやっぱり筋肉質だね。特に足周り」

「お、おう! サッカー部には必須だからな!」

「浜口くんと神崎くんは普通だね」

「はは、まあ運動は体育でするくらいですからね」

「俺は少し走ったりするくらいだな」

 

 平等に、と言わんばかりに他の男子にも一之瀬さんは触れたり観察したりしていく。

 そして最後の標的は僕となった。

 

「……斉木くん、結構スイーツとか食べてる割には細いね」

 

 そうか? 

 トランスフォーメーションの応用で体型が変わらないようにしているせいだと思うが、一応は男子高校生の平均的な体型にしているはずだ。

 

「なにか特別な運動とかしてる?」

 

 火山の噴火を止めたり、地球に飛来しそうになっている隕石を割ったり、あとは定期的に無人島で分身を作って石を投げさせてそれを躱したり殴って壊したりして身体を動かしている程度だな。

 特に何もと言うと、一之瀬さんは「ほんとに?」と疑心を持って僕の肌に触れようとする。

 

「お待たせ〜(帆波ちゃんと斉木くん近くない? 気の所為?)」

「うひょう……(桔梗ちゃんと一之瀬さんの水着姿やば!)」

 

 そこに着替えやらその他もろもろを終えた櫛田さんたち女子と池たち三馬鹿がやってくる。

 おかげで一之瀬さんも僕の身体から興味を失い、距離を取ってくれる。

 

「みんな揃ったし、休憩できそうなとこだけ確保しよっか」

 

 先導するように一之瀬さんが歩き出し、その隣に櫛田さんと白波さんが着く。

 須藤は堀北さんの隣に陣取り、池と山内は一之瀬さんと櫛田さんの後ろから彼女たちのお尻を見ているようだった。

 綾小路は佐倉さんと一緒におり、僕たちBクラスの男子が最後尾となる。

 場所取りに向かっている途中で前方で一際大きな黄色い声が上がる。

 

「なんだ?」

 

 須藤が立ち止まって様子を見ていると、騒ぎの中心が水飛沫をあげる。

 どうやらプールでバレーしているらしく、金髪の男が敵のコートにボールを叩きつけていた。

 

「うおお! すげえ! なんかレベルたっけー!」

 

 山内がその光景を目の当たりにして叫ぶが、レベルが高いのはあの集団ではたった1人だけだろう。

 男女が入り交じって水中バレーの試合をしていた。

 スポーツ用のプールで女性ギャラリーに囲まれるその生徒たちの中で異彩を放つ生徒を知っている柴田が口を開く。

 

「南雲先輩だな。ほら、今生徒会副会長の」

(し、知らねー)

(生徒会なんて生徒会長と書記のちっこいのしか見た事ねぇぞ)

 

 池と須藤は柴田に言われてもピンと来ていないのか困惑していた。

 生徒会は基本的に表に出てこないので知らないのも無理はない。

 僕も顔と筋肉と骨格を見たのは今が初めてだ。

 南雲とやらの活躍を見ながら櫛田さんが補足してくる。

 

「今は2年A組だけどスタートはB組だったらしいね」

「マジで!?」

「うん、マジ。来年生徒会長になるって言われて頭もいいみたい」

 

 性格と女癖は良くないみたいだがな。

 しかし、表向きには知られていないのか、彼が活躍する度に黄色い歓声が続く。

 それを聞いてか池がゲンナリとした顔で呟く。

 

「ケッ、俺はああいうのは嫌いだぜ。大した努力もしてないくせに顔が良いだけの勝ち組なんてよ(どうせ才能とかにも溢れてるんだろ? お約束だぜ)」

 

 それはこのバレーだけで判断するには時期尚早な気がするし、妬みが入っている分言葉の価値も高くない。

 

「あはは、でも南雲副会長は今の生徒会長と去年生徒会選挙で生徒会長の座を競い合ったらしいし、それは才能だけじゃどうしようもない実力なんじゃないかな」

「詳しいのね」

「一応、生徒会に入ろうとしてたから、その辺のことはね」

「……そうなの?」

 

 そう聞かされた堀北さんは驚きを隠せずに聞き返す。

 

「うん。けど、まだ私の実力じゃ足りてないと思って申請は取り消したけどね」

 

 にゃははと笑う一之瀬さんに綾小路が生徒会に入る条件などを話している横で、池たちが南雲へのフラストレーションを高めていた。

 

「あいつ耳にピアスとかつけてるじゃん! いいのかよ!」

「あれノンホールピアスだよ。穴開けないやつ」

「えっ!?」

「それに今は夏休みだし、その辺は校則厳しくなかったと思うよ」

「うぐぐ」

 

 網倉さんと白波さんが男の嫉妬って醜いなと池を一蹴する。

 そんな中で僕と神崎はこの人数が座れるであろう空きスペースを見つける。

 

「ここで良さそうだな」

 

 ああ、そうだな。

 じゃあそろそろ各自好きに動こうと提案しようとしたところで一之瀬さんが手を叩いた。

 

「ね、私達もプールでバレーやってみようよ。ちょうど7人と7人だしさ」

 

 Bクラスは①一之瀬さん、②網倉さん、③白波さん、④神崎、⑤柴田、⑥浜口、⑦僕。

 Cクラスは①堀北さん、②櫛田さん、③佐倉さん、④綾小路、⑤池、⑥山内、⑦須藤。

 なるほど確かに7人だな。

 しかしバレーは6人のはずだが。

 

「交代しながら6人ずつでやろうよ、そしたら程よく休憩もできるだろうし」

「やるやる! 俺も南雲先輩みたいに女子たちからの熱視線を集めてやるぜ!」

 

 池が同意したことでやる方向にシフトしてしまった。

 せっかく来たのだから派手に遊びたいのだろう。

 しかしそうではない生徒もいる。

 佐倉さんと堀北さんだ。

 

「あ、あの、私は運動苦手、なので……」

「私も乗り気じゃないわね」

 

 じゃあ僕もと手を挙げる前に一之瀬さんが「堀北さん逃げちゃうんだ」と挑発する。

 

「たかが遊びに逃げるも何もないわ」

「たかが遊びだけど、遊びだからこそ本気になれることもあるよ? それにこれはクラスの縮図、いるのはほぼ中心メンバーだし、ある意味クラス対抗の模擬戦って感じ? 堀北さんは勝つ自信はない?」

 

 やめろ堀北乗るな! と幻聴が聞こえた気がするが、挑発を続ける一之瀬さんに、堀北さんの組んでいた腕が解かれる。

 

「(夏休みが開ければ私たちはCクラス。必然的に次はBクラスを目指すことになる。これはいわば前哨戦)……いいわ、その安い挑発に乗ってあげる」

 

 これで堀北さんは変化技をしばらく使えなくなってしまったな。

 

「試合を盛り上げるためにさ、買った方が相手のランチを全額負担する。こんなおまけもありかな?」

「その条件も受けるわ」

 

 リーダー同士が乗り気になったため、断ることができず、池たちがコートの申請をしに行ってしまう。

 試合は1セット15点の3セットマッチ。

 先に2セット取った方が勝ちで、サーブ権は得点を取った方が得るようだ。

 コートが空くまで各クラスで作戦会議となる。

 

「やる以上は勝ちたいよね。遊びとはいえ。私と柴田くんは確定でいいかな?」

「任せてくれ! (バレーはあんましやったことないけど、一之瀬にアピールするチャンスだぜ)」

「運動能力を鑑みるとそれがいいだろうな」

 

 一之瀬さんの提案に柴田は頷き、参謀の神崎も同意する。

 恐らく、運動神経の悪くない神崎と網倉さん、そして天才ムードメーカーとして浜口も参加になるだろう。

 では、残るは僕と白波さんのどちらが参加しないかだが、そんなの僕に決まっている。

 自慢じゃないが僕は球技が苦手なんだ。

 走ったり跳んだり、握ったりといった力の調整は上手くなったが、投げる、蹴る、打つといった球技に必要な要素に関してはボールの破壊で済めばいいが、最悪の場合、誰かの死を招きかねない。

 ただ、白波さんも運動は苦手なはずなので、見学側に回りたいと思うだろう。

 

「え? 1セットごとに交代? 私はいいけど……」

 

 あの4人は確定として、僕と白波さんは平等に1セットごとに交代しようと話を持ちかけると、彼女は承諾しながらも一之瀬さんの方を見た。

 

「(千尋ちゃんが運動苦手なのは知ってるけど斉木くんって程々に動けてなかったっけ……)うん、いいよ。先にどっちが出るの?」

 

 レディーファーストという言葉もあるしどうだろうかと先攻を譲ると、彼女は「う、うん……」と頷いた。

 参加メンバーは決まった。

 勝つか負けるかはさておき、3セット先取なら僕がボールに触れる機会は少ないし、先に白波さんを出したことでBクラスが1セット取ったとしても僕がコートに立つのは2セット目だけで済む。

 計画通りと僕はほくそ笑んだ。

 始まったBクラス対Cクラスのプールバレーはジャンケンで勝った柴田のサーブからだった。

 

「うりゃ!」

 

 勢いよく手を叩きつけて飛んでいくボールは驚異の身体能力を持つ須藤により返される。

 

「しゃあっ!」

 

 須藤はバスケ部で鍛えた筋肉と膝をバネのように使って高く跳び、鋭い返球でBクラスを圧倒していた。

 陸地と違い、水中では動きが鈍くなるため運動神経に秀でていても追いつくことが出来ず得点を許してしまう。

 

「凄い球ばっかり、千尋ちゃん大丈夫?」

「う、うん、大丈夫……」

 

 易々と点が重なっていき、Bクラスは劣勢に追い込まれていた。

 これは思ったより早く終わりそうだなと(あ、えっと、何から言おうかな、久しぶり……、元気……? えっと、えっと……)どうやって話しかけようか悩んでいる佐倉さんの隣に腰掛けながら試合の行方を見守る。

 

「女子に俺のアタックは返せないからな、落ち込むことはねぇよ」

「むっ、女の子だって男の子に負けないんだから」

 

 想い人である堀北さんが挑発されたお返しなのか、一之瀬さんに須藤は挑発するが一之瀬さんは怒ることなく笑って返し、元の位置へと戻っていく。

 Bクラスも3点を返して健闘しており、その中で相手チームに狙い目を見つける。

 

「一之瀬、俺にボールをくれ! 水の中に見えたぜ、撃つべき場所が!」

「OK!」

 

 自陣へと落下してくるボールを一之瀬さんは柴田へと綺麗にトスをする。

 そのボールを柴田は綾小路目掛けてアタックした。

 

(一番の穴は俺だと認識されているのか)

 

 悲しきかなと心の中で呟く綾小路に柴田のボールがやってくる。

 取れよ綾小路という須藤の激に負けずに綾小路が手を伸ばし、ボールを弾き返すが結果はBクラスのポイントになった。

 

「んだよ今のヘナチョコっぷりは!」

「悪い……」

「ふざけんなよ、あれくらい角度悪くてもいいから上にくらいあげろよ」

 

 人生で初めてのバレーらしい綾小路は困ったようにしつつも須藤の叱咤を受けていた。

 順調にいくと思われたが須藤と堀北さん、櫛田さん以外のメンバーの動きが悪く、Bクラスが徐々に追いついていく。

 

「えっ、えっと、さ、いき、くん……げ、元気?」

 

 アイムファインサンキュー。

 逆に佐倉さんの方は大丈夫なのだろうか。

 ラッシュガードを着ているとはいえ、この日差しの下で、プールに来ているのに水を浴びていないというのは拷問なのではないだろうか。

 

「だ、大丈夫です。こういうの、慣れてるので……」

 

 ああ、グラビアの撮影でこういうこともある……のか? 

 だいたいマネージャーやスタッフが日陰やら水やら用意してくれているイメージだが。

 無理はしないようにと声をかけると佐倉さんは顔を逸らす。

 

(斉木くん、やっぱり優しい……!)

 

 ちょろくないか? 

 これくらいなら池や山内でも言えると思うが。

 少し佐倉さんの今後が心配になってきたところで1セット目が終わり、既にヘトヘトな白波さんがプールから上がってやってくる。

 

「斉木くーん、こーうたーい……」

 

 これからまだ遊ぶであろうに大丈夫かこの子は。

 それだけ須藤のパワーに押されてしまったということだろうか。

 

「おーい、斉木、さっさとしろよー!」

 

 1セット終わってもピンピンしている須藤を見ている限り、先程のように僕が出ても簡単に点を取ってくれるだろう。

 それに僕という穴も出来るわけだしな。

 一之瀬さんたちには悪いが、負けて奢って、あとは各々好きな時間を過ごす時間に充てさせてもらうとするか。

 




サラリと流されてるが一之瀬さんは生徒会入りしません
これにより一之瀬の過去を知るものは斉木楠雄だけになります
なんで話してないのに知ってるのか……(すっとぼけ)

最後の終わり方からお察しの通り夏休み編はまだあります
1巻あたり5~7話で書いてたのでちょうどええなって
次回で本当に終わるはずです!
多分!きっと!maybe!好きかもしれない!

次回は金曜日……かな?早くて明日かも。
遅かったら月曜日ですが、夏休み編は必ずや完結させると誓いましょう
ではまた次回

特別編

  • 斉木Aクラスルート
  • 斉木Dクラスルート
  • 窪谷須亜蓮高育入学ルート
  • 照橋心美高育入学ルート
  • 書かずに体育祭へ
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