ようこそ超能力者のいる教室へ   作:オールF

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やめましょうよ!時間がもったいない!!


話し合え!高育体育Ψ!

 第一体育館は総勢400名以上の人間が入っていても、まだ余裕のある広さだった。

 

(あっちぃ〜冷房きいてんのかよ?)

(今年の1年はまだ退学者0って聞いたけどマジ?)

(顔合わせなんていいからさっさと帰りてぇ〜)

(んお、あの子可愛い〜1年かな?)

(兄さんは、どこかしら)

(お、あの子すげぇ胸でけぇ)

 

 1年生から3年生まで、この高校に在籍している生徒全てが一堂に会しているのだから、押し寄せてくるテレパシーの数も半端ではない。

 と言いたいところだが、普段から同じ学び舎を使って授業を受けているため既に慣れたものだ。

 学年全員を集めた赤組であるAとD、白組であるBとCで分かれての話し合いはすぐに終わった。

 何せ全学年が関わる種目は1200メートルリレーしかない。

 3学年4クラス、総勢12レーンも使ってのリレーは別のレースに見えそうな気もするが、見てみたい気はする。

 

「あとは各学年で集まって方針について好きに話し合ってくれて構わない。以上だ」

 

 3年Bクラスの代表生徒がそう言うと、各学年が散り散りになる。

 1年Bクラスの方はといえば、一之瀬さんの方から櫛田さん、平田のいる集団へと近づいていく。

 

「にゃっはろー! いやーなかなか奇妙なことになったけど、平田くんたちCクラスが味方で心強いよ!」

 

 一之瀬さんは夏休み終盤に櫛田さんたち現Cクラスとビーチバレーをしている。

 その時に須藤の見せた野性的なセンスと運動神経を目の当たりにしており、彼のいるCクラスが仲間になったのは嬉しいことだろう。

 何せ、夏休みの特別試験でのクラス変動がなければ龍園クラスと組むことになっていたからな。

 いくら優しい彼女でも、自分の友達、特に自身を想ってくれている相手を傷つけた相手と組むのは難しいのだろう。

 

「こっちこそ宜しくね。船上試験では助けてもらったし、体育祭では僕たちからも何か協力できたらいいなと思うよ。ね、櫛田さん」

「うん、私も帆波ちゃんのいるBクラスとなら上手くやっていけそう。みんなで頑張ろうね!」

「ありがと〜! そう言ってもらえると助かるよ〜!」

 

 リーダー格同士で盛り上がる中、平田たちのところへ来た須藤が口を開く。

 

「なあ、俺たちCと一之瀬のBクラスって対等な関係なんだよな? どっちが偉いとかは無いんだよな?」

「そりゃ勿論。棒倒しや騎馬戦では協力し合う場面もあるだろうし」

 

 須藤の不躾とも取れる物言いにも一之瀬さんは柔らかく笑って答える。

 それに須藤は「だとよ、鈴音」と堀北のほうを見る。

 

「呼び捨てはやめなさい(まったく、私が呟いただけで聞いてきてやるだなんて勝手を……)」

 

 無人島試験では綾小路の計略もあり活躍の場があったものの、船上試験では櫛田さんに僕が手柄を献上してしまったせいか、クラスでの立ち位置は芳しくないらしい。

 前のホームルームでの話し合いでヒートアップしたのも原因の一つだろうが、Cクラスは平田、櫛田さんをリーダーに据えて動いているようだ。

 それを少し遠巻きに見ていると、堀北さんのグループにはいなかったのでどこにいるのかと思っていた綾小路が近づいてくる。

 

「斉木、同じ組だな」

 

 そうだなと返すとそこから会話はない。

 どうやら綾小路も僕と同じくクラスの方針には口を出さずに傍観者を気取るスタイルにするようだ。

 一之瀬さん達のところに混ざった堀北さんを見つつ、綾小路は独り思考を巡らせる。

 

(一之瀬か。堀北とは真逆の立ち位置にいる人間だから学べることはあるだろうが、本人にその気がない以上難しいか。となると、予定通り龍園の仕掛けてくる罠をスルーしないとな)

 

 そう言って綾小路はAクラスとDクラス、葛城と龍園の集まる一集団を見る。

 

「協力する気は無い、それでいいんだな?」

「ああ。お前もその気はないだろ。契約も破棄してやったんだ。文句は無いはずだが?」

「文句はない。お互いに揉め事なく、力を合わせられるならそれに越したことはなかったがな」

「一之瀬の手に乗って、俺のクラスをDに落とす片棒を担いだやつのセリフとは思えないな」

「……元々はお前がBクラスにした仕打ちが招いたことだ。一之瀬もお前に灸を据えるためと言っていた」

「クク、自業自得ってか。まあいい。俺には俺で考えがある。お前らも好きにやればいい」

 

 そう小さく笑った龍園はクラスメイトを率いて、体育館から去っていく。

 その際、Aクラスの中にいる、1人パイプ椅子に腰掛けた少女へと目を向けていた。

 

(葛城とは組まないが、Aクラスのやつと組まないとは言ってねぇからな。ククク、楽しみにしてろよ、鈴音、一之瀬)

 

 無人島試験、船上試験での連続大敗を機に、求心力を失うかと思ったがまだ彼の独裁体制は継続されているようだ。

 

「龍園か、まだ懲りていないようだな」

 

 最期の最後まで勝利を目指して突き進む男らしいからな。

 まだ1年の2学期ともなれば、まだ余裕はあるのだろう。

 しかし、どうやって堀北さんと一之瀬さんを楽しませるのかは今のでは分からなかったな。

 体育祭は運動能力がものをいう行事であり、力こそパワーなイベントだ。

 堀北さんも一之瀬さんも運動神経は良い部類で、どの競技に出ても1位、2位を取れるステータスはある。

 龍園クラスにも運動神経に優れている女子はいるだろうが、それでもあの2人のスペックの方が上に思う。

 接触事故を起こしての共倒れを狙ってくるくらいしか思いつかないが、彼の策は後で調べておくことにしよう。

 一之瀬さんが狙われているのは僕のせいのようだからな。

 やれやれ。

 

「(龍園が一瞬見たのは、誰だ。アイツは)斉木、あの椅子に座っている女子、知ってるか?」

 

 知らないな。

 ただ予想はつく。

 Aクラスにいて、無人島試験、船上試験、クルージングに見かけなかった生徒は1人だけ。

 その生徒は無人島試験開始前に真嶋先生が言及していた。

 

「坂柳……あれが(Aクラスで葛城と勢力を2分しているという噂のもう1人のリーダーか)」

 

 綾小路と同じく彼女に奇異な視線を向ける者は多い。

 手には杖を持ち、椅子に座っていることから足に疾患を抱えていることは誰の目にも明らかだが、向けられる視線の正体はそれだけではない。

 僕には分からないが可愛らしい見た目をしているらしく、櫛田さんや佐倉さんとは異なる可愛さ、美しさ、儚さを纏っているらしい。

 そのせいか、いつもおちゃらけた空気を出して、声をかけるといった男子はいない。

 

「俺達も戻るとするか。坂柳」

「私のことはご心配なく。真澄さんたちに手伝ってもらいますから」

「そうか、では先に行くぞ」

 

 龍園が去ったことでAクラスも引き上げるらしい。

 坂柳さんの周りには長い髪の女子が1人、強面と少しチャラそうな男子生徒が2人いた。

 彼らが彼女の派閥の人間で、足の不自由な坂柳さんの側近なのだろう。

 

「船上試験での結果のおかげで葛城派の方が優勢らしいな」

 

 そうなのか? 

 

「ああ。オレも櫛田から聞いた話だから詳しくは知らないんだがな。うちも一之瀬のおかげでCクラスに上がることが出来た。すごいんだなあいつは」

 

 綾小路は船上試験で一之瀬さんと同じグループだったから、彼女の性格や実力はある程度把握し始めている。

 ただまだ完全に把握できているわけではないからか、彼の中の彼女は未だに評価中の状態だ。

 

「綾小路くん、そこで何してるの。あなたも来なさい」

(む、気配を消していたのに気づかれたか)

 

 呼ばれた綾小路は肩を竦めて「悪い」と僕に告げ、堀北さんたちのところへ歩いていった。

 再び1人になった僕は一応クラスの話し合いが聞こえる場所に立っていたのだが、そんな僕に櫛田さんが視線を向けてくる。

 

(今回の試験……っていうか、体育祭じゃ堀北の方が目立ちそうだけど、そうはさせない。その為にも後で斉木くんにはなにかいい案出してもらわないとね)

 

 今視線を向けてくるな。

 僕と君が協力関係だとバレると面倒でしかないだろ。

 陰キャ男子と学年でも人気の美少女(推定)が仲がいいのはラノベや漫画だけの話だ。

 現実では不釣り合いだのなんだのとただただ変な注目を集めるだけだからな。

 それにこの正攻法の方が勝ちに繋がりやすい体育祭において、僕が提供できる策略などない。

 まあ彼女を目立たせるというだけならやりようはなくもないが、それは当人のやる気次第といったところだろう。

 視線を逸らして、他学年の話し合いでも見てこようかと考えているとまた1人、一之瀬さんの集団へと近づいていく人物がいた。

 

「よぉ、一之瀬、夏休み以来だな」

「南雲先輩……どうしたんですか?」

 

 現2年Aクラスにして、生徒会副会長を務めている南雲雅は一之瀬さんへと声をかける。

 

(南雲副会長?)

(こいつ、たしか31日にプールにいたやつか)

 

 怪訝な目を向ける堀北さんと須藤のことなど意に介していないようで、南雲副会長は一之瀬さんだけに目を向けている。

 

「ただの挨拶だよ。お前がリーダーとしてしっかりやっているかのな」

「それは、ありがとうございます……?」

 

 後方支援彼氏面、というやつか? 

 南雲副会長は不敵な笑みを浮かべたまま、一之瀬さんに話し続ける。

 

「なあ一之瀬、この体育祭の後は何があるか知っているか?」

「えっと、生徒会選挙ですよね」

「ああ、そうだ」

(そうなのか)

(はー、そうなのか)

(それがどうかしたのかしら)

 

 綾小路、須藤、堀北さんに限らず、神崎や浜口、白波さんも南雲副会長の質問の意味を測りかねている。

 唐突な乱入に加えて、意図の分からない質問に神崎は口を開いた。

 

「すみません、南雲副会長、今はCクラスと話し合いをしていて」

「それなら一之瀬抜きでやっていればいいじゃないか、見たところお前もリーダーの1人なんだろ?」

 

 上級生であるため強くは言えなかった神崎だったが、返ってきた南雲副会長の言葉に堪らず絶句してしまう。

 

「一之瀬とは大事な話がある。この場を借りるだけの話がな」

「それは……本当にこの場で必要なことでしょうか?」

「ああ。他学年が一堂に介することなんて滅多にない。それに一之瀬に伝えたいことを伝えるのは今じゃないと意味がない」

 

 そう言われて神崎は一之瀬さんの方を振り返る。

 話を聞くかどうかの決定権は彼女にある。

 そう言外に告げるような行動を受けて、一之瀬さんは頷いた。

 

「(ここで言わないってことは、私の過去云々の話、ってことかな) 分かりました。みんなゴメンね、ちょっとだけ先に進めててもらえるかな?」

 

 一之瀬さんが了承すると南雲副会長は満足そうに口角を上げ、一之瀬さんに背中を向ける。

 付いて来いということなのだろう。

 

「どうする? 誰かついていったほうがいいんじゃない?」

「けどあの感じだとバレると面倒だぜ。南雲先輩、機嫌悪くなると怖えし」

 

 その後ろ姿を眺める一同の中で網倉さんが心配そうな声をあげるが、サッカー部で交流があるのか柴田が首を振る。

 どうする、どうするとしり込みをしている間にも一之瀬さんと南雲副会長の背中は小さくなっていく。

 

「南雲副会長の意図は分からないけれど、ここで考えるべきは今後の方針なんじゃないかな? 帆波ちゃんが帰ってくるまでにある程度は固めといてあげようよ」

 

 櫛田さんがそう言って全員の意識を体育祭の話し合いへと引き戻す。

 僕がなにかしなくても彼女は上手くやっているように思えるがあれではまだ足りないというのだろうか。

 まあとりあえずここは神崎たちに任せて、僕はやぶ蛇にならない程度の野次馬にでもなるとするか。

 




この学校あくタイプ多い割ですね。
エスパータイプの斉木くんにはかなり有利ですよ。

斉木が話し合いにいなくても許されてる(呼ばれない)のは頭を使う試験(行事)ではないからとのことです。

ただくーちゃんは頭以外も使えるんすよ。

親にアイスピックで刺されても流血しない頑丈さもあるので、仮にリレー中に龍園や石崎から悪質タックルなどを受けるとタックルした側が病院送りになります
頑丈さは体育祭にいらんだろ……(呆れ)

木金は少し忙しいのでそれまでに書ける範囲で書いてうおおお!って投稿していきます
てかオマケ含めて50話超えてて横転
最近のペースが異常すぎる
怖いか?投稿ペースが!!

てことでまた次回
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