まあその綾小路でも1人の生徒の奇怪な動きは把握できてないんですけどね……
今の斉木の技構成(比喩)
サイキクスオ (エスパー/かくとう)
じわれ なまける
ゆびをふる サイコブレイクorねんりき(タイミング次第でどっちかになる)
あとがき、補足情報とかお知らせ的なのもあってまあまあ長いです
棒倒し。
1世紀近い歴史を誇るアメリカンフットボールやラグビー、相撲といった主に相手の体や棒を押しのける力に特化した格闘技の要素を備えた競技らしい。
らしい、というのは棒倒しというものがどういうものか分からず、調べてみると出てきたのが上半身裸の男たちが1本の棒に群がる光景と起源の説明だったからだ。
相手陣地の棒を30度まで傾けたら勝ちというシンプルながらも荒々しく危険な競技である団体戦で、試合のルールは2本先取した方が勝ち。
事前の話し合いで、須藤と柴田を中心としたオフェンスと、平田と神崎を司令塔にしたディフェンスチームに分かれることになり、オレはディフェンスに入っていた。
先程体調不良なのか、疲れからか転倒した斉木もオレと同じくディフェンスに入っているが、その動きはどこかぎこちない。
いや普段通りといえば普段通りなのだが、まるで戦車がアリを潰さないように細心の注意をはらいながら歩いている、そんな足取りに見える。
(相変わらず鋭いな。おっしゃる通り、今の僕は一挙手一投足がこの場にいる全ての生徒や職員にとって一撃必殺だから。制御装置ドリルやクリオキネシスによる絶対零度、ハサミギロチンは流石に無意識でも出ないが地割れは少しでも踏み込めば起こる可能性大だ)
しかし、BとCの連合チームは知恵のリーダーが穏やかな者同士であるためか連携が取れている。
斉木はもちろん、オレが頑張るということはないだろう。
「俺たちBクラスで右側から来た生徒をなんとかする。平田たちは左を頼めるか」
「うん、任せて。正面はどうしようか?」
「正面から突っ込んでくるような相手は力自慢の可能性が高いな。須藤と柴田のどちらかとかち合わなければ声をかけあって止めに行こう」
「了解」
防御組はフォーメーションを完成させ、さらに要注意人物の山田や石崎、小宮などが出てきた時の対処法も話し合っている。
一方で攻撃陣は試合開始を告げるホイッスルを今か今かと前のめりに待っていた。
「うー、なんか怖ぇよなぁ。Aクラスはそんなことないだろうけど、Dは武闘派のクラスって聞くしやばいよなぁ」
殴る蹴るなどの露骨な暴力は禁止行為だが、ある程度組み合いになることは学校側も容認しており、掴み合いや押し合いになるのは確実。
その際、池や幸村といった腕っぷしに自信のない男子は萎縮してしまうのも当然と言えば当然だった。
「気にすんなよ。俺と柴田が攻撃に入ってるんだぜ? 1匹1匹血祭りにあげてやるぜ……!」
「ああ……地獄に行ってもこぉんな楽しいショーは見られないってレベルの蹂躙を見せてやるぜ」
須藤を中心に、攻撃陣の気合いは十分に高まっているようだ。
特に、須藤と柴田は悪魔のような形相でDクラス、特に龍園を睨みつけていた。
須藤は不発だったが石崎たちに絡まれ、柴田は同じクラスメイトを脅迫されたこともありリーダーの龍園へのヘイトが高いのだろう。
なお、攻撃陣と攻撃陣がぶつかり合うことは禁止されており、あくまでも攻撃陣は防御陣に攻めなければならないルールになっている。
A、D連合はAが防御、Dが攻撃のようで1本目が始まると山田や石崎といった力自慢の生徒が飛び出してくる。
そしてこちらも須藤と柴田が我先にとAクラスの守る棒へと突っ込んでいく。
「須藤と柴田を止める! いくぞお前ら!」
「はい!! 葛城さん!」
Aクラス葛城の叫びに合わせてディフェンスの大部分が須藤と柴田を抑えにかかる。
「邪魔だ! どけどけ!」
「こんなので俺が止められるかよ!」
どうやらAは須藤のパワーの方が脅威と判断したのか須藤の方に向けられたディフェンスの方が多いらしい。
中にはDの生徒も少し混じっており、反則スレスレの肘打ちなどを繰り返しているが、その際に空振ったり地面に激突していたりしていた。
荒事に慣れていると思ったがそうでもないのか?
あの反則スレスレの特攻攻撃も龍園の指示なんだろうなと見ていると、その龍園のクラスの奴らがこちらへとやってくる。
オレは役にも立たず邪魔もしない程度にDクラスの生徒に寄りかかりその場を凌ぐ。
そういえば、斉木の方は大丈夫かと見てみると、あいつの前にはわざわざ大回りして、死角となっていた右後方へと回り込んできたのであろう龍園がいた。
「どけやクソメガネ!!」
(なんで僕がこんな時に限って来るんだ君は……リーダーらしく静観していろよ……)
ぎゅっと拳を握りながら突っ込んでくる龍園に斉木は困ったような表情を浮かべる。
「どかねぇなら! 死ね!!」
とても体育祭の競技中とは思えない言葉に引きつつ、Dクラスの生徒を抑えながらその戦いを見守る。
すると、龍園は握っていた拳を振りかぶる。
だが、殴るという動作ではない。
「喰らえ!」
砂か。
龍園は両手の拳の中に砂を握りしめて、相手の視界を潰して突破しようという考えなのだろう。
なんて卑怯なんだ。
だが、斉木はメガネをしているからある程度は大丈夫だろうが、病み上がりのようだし少し危ないかもしれない。
応援に向かうかと、小外刈りをしてDクラスの生徒を倒してすぐにヘルプに入れるように姿勢を作る。
そして、龍園の砂が斉木へと向けられた時。
『あぶな』
斉木が宙に舞った砂を右手で凪いだ。
「あっ!? いってぇ!? あぁッ!? 目がァ!! 口にもっ! ペッ! くそがぁ!!」
なんでやつだ……。
一見何も握っていないように見せた斉木だが、あいつも手の中に砂を隠していたのか?
(しまった。払うつもりが全部返してしまった)
じゃないと、龍園にも砂がかかっていることに説明がつかない。
しかも、龍園が投げた威力とは比べ物にならない速度で砂が襲いかかり、龍園は目を擦り、口に入った砂を唾と共に吐いている。
(本気で返してたら一昔前のアニメの穴の空いたチーズみたいに身体中に穴が空いていたな)
そんな龍園を見て、山田と石崎は棒を懸命に守っていた平田達ではなく、斉木へとターゲットを変える。
「龍園さんに何しやがった!」
「Not allowed!」
(せ、正当防衛だ……)
正面からのタックルかと思いきや、2人はガシッと斉木の身体を捉える。
まさかあいつら斉木を潰す気かとまた向かってきたDクラスの生徒に軽く掌底を入れてダウンさせる。
そして、その間に斉木は『や、やられた……』と2人に押し倒されて地面に倒れた。
……少しわざとらしい気がするが、しかし斉木も何も考えていないわけではなかった。
倒れた時の勢いを利用して砂塵を撒くという器用なことをやっていた。
恐らくは山田と石崎の体重も利用したのだろう。
「うわっ!?」
「なんだ!?」
その砂塵は自陣の棒に群がるDの生徒に襲いかかり彼らの視界を奪う。
彼らの様子を見て、神崎はすぐさま指示を出した。
「身を屈めて目を閉じろ! 目の前の敵を押し出せ!」
神崎の指示に従い、BC連合軍は身を低くしながら棒を必死に守り続ける。
最初の勢いはなくなったもののまだDクラスが押しているが、それも数秒のこと。
体勢を立て直した平田たちの反撃が始まり、それが須藤や柴田といった攻め手側にも好機を与える。
「負けてられるかよ! 鈴音も見てるんだ! うおおおおおー!!!」
生憎と堀北は今一之瀬たちと打ち合わせ中なのか、見ていないようだが。
「一之瀬のためにも勝つんだ!! 絶対に! どけぇ!」
柴田も声をあげるが、多分一之瀬は倒れたまま立ち上がろうとしない斉木の方を心配していて見ていないんじゃないか?
そういえば斉木と一緒に倒れた2人も起き上がって来ないな。
「砂がぁ目にぃ!!」
「If it weren't for the sunglasses, I would have died instantly……」
どさくさに紛れて石崎は潰せたみたいだが肝心の山田はサングラスのおかげかあまりダメージを受けていないらしい。
しかし、気合いを入れ直した須藤と柴田の活躍で白組が1本目を先取したようだ。
回復した視力で初めに見たのが無残に倒れた棒だった龍園は、キッと斉木へと詰め寄った。
「クソが! おい、斉木! テメェなに卑怯な真似を!」
『どの口で言ってるんだお前は……』
オレからすればお互い様だろうし、先に仕掛けたのは龍園なのだから確かにどの口だ。
「チッ……戻るぞ石崎、アルベルト」
「う、うす……」
「何、斉木にしてやられてんだお前は。噛み付くなり膝入れるなり色々とあるだろ……!」
「全部反則ですよそれ……てか、あいつやばいんすよ! ぶつかった時、鉄? コンクリートみたいだったし!」
「YES……」
今の斉木は脱力して全てを受け流す凪のようなものだと思っていたんだが違うのか?
あんな棒立ちで山田と石崎のタックルを正面から受け止められたようには見えなかったから、上手くいなしたのだろうと思ったんだがな。
「よくやったな綾小路! 流石クラス内2位のカイリキーだぜ!」
「怪力? そんなことは無いと思うが……」
怪力のイントネーションがおかしい気がするが……一応須藤に次ぐ筋力もちということでディフェンス側に回されたが、オレは特に何もしていない。
むしろ、未だに寝転がっている斉木の功績の方が大きいように思うが。
「さ、斉木、大丈夫か? まだ目眩とかすんのか?」
『いや……石崎たちに吹き飛ばされたショックでな』
斉木に危害を加えてしまったとなれば同じ組でも体育祭どころではなくなる須藤はオドオドとしながら斉木に声をかける。
もし斉木やBクラスからなんらかの訴えを起こされら堀北に迷惑がかかると思っている須藤はかなり怯え腰だ。
そんな須藤に斉木はまたも気にするなと言って立ち上がると服に着いた砂を払う。
その時やけにでかい音でパンパンッと鳴ったのでオレと須藤は力が有り余っている斉木を見る。
「お、おう、そんだけ力がありゃ大丈夫そうだな」
(自分の身体だからな、多少叩いても問題ないと思ったが音は考慮していなかったな。気をつけよう)
「2本目も取りに行くからよ、防衛は任せたぜ」
どうやら1本目を先取出来たことで、高円寺の仮病によるフラストレーションは抜けたらしいな。
Cは他クラスと比較して連携とやる気が劣っているが、須藤のマンパワーと連携もやる気も高いBクラスと組んだことで有耶無耶になっている。
これが組対抗ではなく、クラス対抗だったら俺たちのクラスは良くて3位、普通にやれば最下位だ。
「またDクラスが攻めてくるのかな」
「どうだろうな。さっきは龍園と一緒に山田や石崎といった主力が何故か目を抑えて悶えていたが……」
平田と神崎は先程の一部始終を見ていなかったのか、龍園たちに起こった悲劇を知らないらしい。
おそらくは攻守を入れ替えてDが守りでAが攻めてくるんじゃないかと考えていると2戦目のホイッスルが鳴る。
「今度は俺らが取る!」
「くっ! またDクラスか!」
「んなもんまた蹴散らしてやるぜ! いくぞ、柴田!」
「ああ!」
威勢のいいDクラスの生徒たちがホイッスルと共に攻め込んでくる。
その中には先程斉木に返り討ちにあった龍園や山田、石崎たちの姿もある。
「正面突破だ! 突っ込めお前ら!」
須藤に近い体格で運動神経に優れているのであろう生徒たちで固められた大男達を先頭にB、Cクラスのディフェンス陣と衝突する。
「ぐあぁ!?」
「いってぇ!?」
またも反則スレスレの肘打ちや肩パンなどで本丸に斬りこんできて、俺たちディフェンス陣は一気に棒付近にまで押し込まれる。
「くっ!? 誰だ、さっきから腹をっ! 殴っているのは!?」
混戦に紛れて誰かが神崎を直接攻撃しているらしく、悲痛な声をあげる。
攻撃されているのは平田も同じらしく、1度や2度じゃない苦しむ声が聞こえてくる。
(やれやれ、懲りない連中だな)
「やべぇよ健! 平田たちが!」
「あぁ!? クソ! 何してんだあいつら!」
押され気味のオレたちを見て須藤が戻って来ようとする。
しかし、須藤は訝しげな目で棒を見る。
そう、須藤や柴田といった力自慢が欠けており、数でも劣るディフェンス側はまさに劣勢の劣勢。
にも関わらず棒が傾く気配が一切ないのだ。
「なんだこの棒は……!」
「これ、さっきの……! 斉木みたいっす!」
「なわけねぇだろ! クソ! 棒の根元にいるやつらをひっぺがせ!」
一応オレも棒を両手で押さえてはいるが、力はかなり抑えている。
神崎や平田も運動神経はいいが、力では山田たちには劣るはず。
なのに、どうして棒はまだ倒れないのか。
オレは押され気味の身体をなんとか広げて周りを見ようとするが、空いたスペースにDクラスの生徒が入り込んでくるためそうもいかない。
「っしゃぁぁぁ!!」
状況の把握に手こずっている間にAクラスを打破した柴田率いるBクラスの腕自慢たちが棒を倒し、2本目もオレたちB、C連合軍が倒したことで棒倒しの勝敗は決した。
「はぁ、はぁっ、どうなってやがる……ちっ……」
生徒が入り乱れる中での不正行為に長けている龍園だが、純粋な力押しには対応できなかった、ということなのだろうか。
後ろを振り返ると勝利の喜びを分かち合って平田や神崎、外村や浜口、幸村たちがハイタッチや手を握り合うなどしていた。
こいつらにDの力自慢達を押しのけるパワーがあるようには思えないが、結果は結果だ。
そういえば、斉木は……と棒に目を向けると、コアラのようにしがみついていた。
「お前だったのか斉木、棒を守ってくれていたのは」
『僕は狐か?』
ふと、思い浮かんだセリフを言ってみると斉木には伝わったらしく、突っ込みが帰ってくる。
根元でこいつが全体重をかけてくれていたからなのかはわからないが、これのおかげで棒は守られていたのかもしれない。
『あまり力が出なくてな。ここでこうしてしがみついていればいいかと思ったんだ(悪目立ちしてしまっているが変に被害を出すよりはマシだろう。むしろこうして必死に競技に取り組む姿勢が普通に見えるかもしれない)』
「そ、そうか……」
いつの間に潜り込んだのかは分からなかったが、勝ったのなら誰も文句は言わないしむしろ賞賛される行為……なんだろう。
実際女子の席からも歓声が飛んでおり、白組にいる上級生たちも感嘆や賞賛の声を上げている。
B、Cクラスの空気もよく、ガッツポーズやハイタッチなどを交わしながら陣営に戻っていく。
休む間もなく次の競技である綱引きの準備が待っているが、今は勝利の喜びに浸っており、このままの勢いで何とかなりそうだ。
龍園が卑怯な手をクラスメイトに指示してなければ2回目は傍観する気でいたが、普通にしてた
けど、今の自分じゃサイキネでの妨害は逆に怪我させてしまうので棒に無気力でしがみついて棒を倒させないようにするプラン
なお、1回目ではサイキネが上手くいかずにDクラスの生徒を特攻させてしまっている
斉木の不動っぷりは堀北会長と鬼龍院にガッツリ見られている
ギャグ時空堀北兄なら「棒立ちなのに真正面からガタイのいい男子二人のタックルを受け止められている……生徒会に欲しい」と生徒会に不要な体幹の強さを評価するような意味のわからないことを言っている
綱引きとか騎馬戦もこのペースでやってると体育祭を終わらないので残りの通常種目はざっくりいきます
龍園さん聞こえますか?斉木くんから貴方へ捧げる鎮魂歌です。
不躾というか、僕が悪いんでこう言うのは大変失礼極まりないと思うんですが、一応……。
前書きと後書きの誤字脱字は感想欄とかで言ってくれたらいいんですけど、本編の誤字脱字や表現ミスはおそらくは読者側もできる機能で誤字修正があると思われるのでそちらでしてくれると凄く助かります。
今日はほぼネットガン見してたのですぐに気づけて直せましたが、そうはいかない日もあるので、大変申し訳ありませんが把握のほどよろしくお願いします。
きっと……ハーメルンに長く居すぎてしまったんだな。
感想や評価をくれるようないい奴らに囲まれて……1年も書いたせいだ
俺はにわかで……何一つ知らなかったんだよ
こんな奴らがいるなんて知らずにいれば……俺は……こんな半端なにわかクソ野郎にならずにすんだのに……
もう俺には……何が正しいことなのかわからん……ただ……俺がすべきことは自分のした行いや選択した結果に対し二次創作者として最後まで責任を果たすことだ……!
読者の方から2年生編までの原作を買うギフトをいただきましたので、書き続けられる限りは書きます
病気や怪我、会社の人事異動などで時間が取れなかったりしない限りはおそらく書きます
ただ、2年生編というか七瀬と厄介なおじさん(理事長代理)の真意周りが分からないと心を読めるはずの斉木くんが変なことになりそうなのでその辺も加味しながら書けたらと思います
変なとことか違和感などあればそこは感想でどしどし言うてください!
てことでこれからもよろしくってことでまたあしたな!(多分)