てことで体育祭ラストではなく、斉木の走りを見たクラスメイトとCクラスの反応です
龍園と坂柳は置いてきた。
あとがきでやります。
体育祭はその日一番の静けさと同時に一番の驚きに満ちていた。
その理由は涼しげな顔で200メートル走という競技で1位を取った斉木楠雄へと向けられた興味や感心、驚きなどがほとんどだった。
実際、クラスメイトである一之瀬も楠雄が龍園や他の走者を文字通り置き去りにする走りを見せたことに驚きを隠せないでいた。
頭が良く、聡明さを持ち合わせていることは知っていたが、体育祭に向けた練習や体力テストで見せた動きは男子高校生1年生としては平均的。
足の速さはクラス1の柴田よりも少し遅いくらいであったが、それでも学年内では上位に入るであろう速さだ。
しかし、斉木が先程見せた走りはそれを遥かに凌ぐ、おそらく3年生の堀北学や2年生の南雲といった学年トップのスピードを持つ人間にも劣らないものだと確信があった。
何より一之瀬が驚いたのはトップスピードに乗るまでとそれを全く落とさないスタミナだった。
最初から最後まで、コーナリングすらも減速することなく駆け抜けて行った楠雄に誰もが魅せられていた。
「お、おかえり斉木くん。その、凄いスピードだったね」
『そうみたいだな。龍園に負けるのは癪だからと頑張った甲斐があった』
途中気絶したと聞いた時は大丈夫かなと心配した一之瀬だったが、少し汗をかいて戻ってきた斉木の言葉を聞いてなんとか安心することができた。
だが、やはり驚かずにはいられない。
「あのスピードはみんなビックリしていたよ」
『火事場のバカ力というやつかもな。僕が1度倒れたからとみんな心配していたし、それを払拭したいというのもあった』
「……そっか。でも斉木くんのおかげで他の男子たちもまた火がついたみたい」
グラウンドを見れば楠雄に負けじと闘志を燃やす柴田や神崎が1着を取っていた。
他のBクラスの生徒も須藤や山田アルベルト、平田などに1着は取られるも2位、3位と入賞を果たしていた。
『そうか……僕はかなり疲れた。悪いが二人三脚は君のペースに任せるぞ』
「にゃはは、合わせてくれるの? 私、まだ体力有り余ってるから全力でいけるよ」
『前言撤回するか……』
確かにどこか疲れた雰囲気を漂わせる楠雄に一之瀬は苦笑する。
「斉木くんは推薦競技は借り物競争と四方綱引きに二人三脚か……最後のリレーも出てみない? 今の走りなら絶対勝てると思うんだけど」
『流石にさっきのをもう一度と言われても無理だろうな』
椅子に座って脱力して蕩けた卵のようになっている楠雄に一之瀬はこれ以上は強く言えない。
しかし他のクラスメイトはそうではない。
会話を聞いていた姫野や戻ってきた神崎、柴田たちも一之瀬に同調する。
「いや斉木くんがアンカーやった方がいいんじゃない?」
「俺もそう思う。だが、斉木が不調だと言うのなら俺は強くは希望しないが」
「俺は出て欲しいけどな。さっきの楠雄は南雲先輩より速かったぜ。断言する」
ぐでたまのようになった楠雄に最後のリレーのアンカーになるように勧める3人。
楠雄は柴田が突然下の名前呼びになっていたことに驚きつつも、彼の中で楠雄がクラスメイトの1人ではなく、部活が同じ平田のように真の仲間や友達として認定されたことを読み取る。
「私もできることなら出て欲しい。でも無理はして欲しくないとも思ってるから決めるのは斉木くんだよ」
『アンカーは柴田だろう。柴田と代わるのは損失じゃないのか?』
「いや俺は1番手に入る。少しでもリードしてみんなに繋いで、アンカーのお前が決める、完璧じゃないか?」
楠雄の目線に合わせて説得してくる柴田に、小さくため息を吐いてから答える。
『やれやれ……分かった。ただこの通り疲れているんだ。返事は二人三脚のあとでもいいか?』
「あぁ。でも、楠雄なら疲れていても勝てる。俺はそう思ってるぜ」
楠雄が条件付きで同意すると、4人は安堵したような笑顔を見せる。
そしてすぐさま自分たちが頼まれたことに対しても力強く首肯した。
『ただ、疲れているというのは事実だから少し休む』
そう言って目を閉じた楠雄を見て、一之瀬たちは邪魔をしないように小声で話したり、応援することにした。
一方でBクラスと共に団体戦に勝利し勢いづいていたCクラスもまた楠雄のスピードに度肝を抜かれていた。
「な、なぁ健、斉木ってあんな足速かったか」
「あの野郎、俺の時は手を抜いてたってのか……! クソ! 舐めやがって!」
震えた声で問いかける山内に須藤は自分が下に見られたのではないかという怒りに溢れていた。
だが平田は違うんじゃないかと反論した。
「多分、龍園くんに負けたくなかったとか、斉木くんにとっては今が一番調子がいいタイミングなんじゃないかな」
「あ、あと、その……須藤くんが何かしたのを気に病まないように……みたいな話を障害物競走の前にしてるのを聞いたんだけど……」
付け足すように添えられた桔梗の言葉に須藤は「うっ」と痛いところを突かれたような声を出す。
そんな須藤たちのやり取りを見ながら鈴音が綾小路へと問いかける。
「綾小路くん、クラス外の友人としてはどう思う?」
「わからん……が、今まで本気じゃなかったのは確かだな」
そう言って綾小路は自陣のテント下で潰れたスライムのように脱力している友人を見る。
遠目から見ていただけなので実際のスピードは分からないが、おそらくは自分より速いという見解を示していた綾小路は斉木と友人になった時以上の興味を示していた。
棒倒しでアルベルトや石崎のタックルを受け止めた時からどことなく違和感はあった。
その後は団体戦が続き、障害物競走ではややゆっくり、二人三脚では常識的なスピードだったがあれがペアの神崎に合わせた結果ならそうとは言えない。
「彼が最後のリレーに出てくるのなら厄介ね。そこのところどうなの?」
「いや聞いていないが……」
そもそも友人とはいえ、他クラスの敵ではあるのだしどの推薦参加競技に出るかは話さないんじゃないかと考えていた綾小路の考えを打ち消すように桔梗が口を開く。
「斉木くん、借り物競争と四方綱引き、二人三脚には出るんじゃないかな」
「……詳しいわね」
なんで知ってるんだという視線が堀北だけではなく、平田や須藤たちから集まる。
しかし、桔梗なら独自の情報網で仕入れていてもおかしくはないかと誰も深くは聞かない。
「ならば、私は四方綱引きとやらに出ようじゃないか」
「!?」
突然聞こえてきたその声は、第1種目から体調が悪いとテントで休んでいたはずの高円寺六助のもので、堀北は思わず目を見開いた。
「あなた……体調が悪かったんじゃないの?」
「あぁ、だがたった今良くなったというわけさ」
「なに都合のいいこと言ってんだてめぇ!」
「落ち着いてよ須藤くん」
自分の腕で胸を叩く高円寺に須藤が食ってかかるが、それを平田が宥める。
「それで四方綱引きに出るというのはどういうことかしら?」
「言葉通りさ。借り物競争とやらは幼稚で、二人三脚とやらは私に合わせられるレディがいないだろう? ならば私が出るべきは四方綱引きと思ったまでだよクールガール」
嘘である。
この男、200メートル走で異次元のスピードスターの如き走りを見せた楠雄と手合わせをしたくて医療テントから出てきたのである。
出来ればリレーでその実力を確かめたいが、楠雄は最後の3学年合同1200メートルリレーには出ないため、妥協して四方綱引きに出ようとしているのだ。
「代役費用の10万ポイントは私が出そうじゃないか。それなら文句はないだろう?」
「あるに決まってんだろバカタレが! はっ倒すぞ!」
「須藤くんには概ね同意するけど、少し黙っていなさい」
はぁとこめかみを押さえる堀北は、高円寺を見上げる。
「貴方がこれまでの競技でクラスに一切の貢献がなかったのに急にやる気になったから出たいというのは虫が良すぎるんじゃないかしら」
「やる気になったのではないよクールガール。調子が良くなったのさ」
「……斉木の走りを見てか?」
堀北と高円寺の言葉の応酬を静観しようとしていた綾小路だったが、つい疑問が口に出てしまった。
これに高円寺は僅かな笑みを浮かべ、肯定した。
「あぁ。彼のような大人しい生徒が頑張っているからねぇ」
彼と言いながら高円寺が見たのは斉木と綾小路で、斉木は見られていることも自身が話題の中心なことも把握しているが、今は少しでも本調子を取り戻すべく身体を休めている。
「……そう、貴方にどんな意図があるかは分からないけれど、ポイントで補填してくれるならいいわ。ただし、絶対に負けることは許さないわ」
「……どうだろうねぇ。四方綱引きは団体競技だからね。私がどれだけ優れていても周りが足を引っ張る可能性もあるのだから」
「言わせておけば……! うぐっ」
「わかったよ高円寺くん。君がいれば他のクラスにも勝てる可能性が上がる。頼んだよ」
「ああ、無論だとも」
話はまとまり高円寺が綱引きに出ることとなった。
ここからは終盤戦、Bクラスとの差はほんの僅かで、まだまだ順位がどうなるかはわからない。
三宅と入れ替わりになることを伝えるため平田がその場を離れ、次に堀北が兄の活躍を見るために離れる。
須藤も高円寺とはいたくないため池たちのところへ行き、櫛田も仲のいい女子グループの所へともどる。
必然的に残ってしまった綾小路と高円寺は特に会話を交わすでもなく、自分たちの興味を引いている相手へと目をやる。
「……お前にしては珍しいな。てっきり、私がいれば勝つに決まっているさと言うと思ったが」
「先程も言ったが個人競技ならそう言えたかもしれないねぇ」
「1対1なら勝てるのか?」
綾小路がそう問いかけたことに高円寺は薄らと微笑を浮かべる。
「個人競技ならば負けるつもりはないよ。ただ君も気付いているだろうが、彼はまだ底を見せていないからねぇ」
予想外に真面目な答えが返ってきて綾小路は少しばかり目を見開く。
「彼もまた私と君と同じ力を振るえば簡単に勝ててしまう人種なのは間違いないが、それがどこまでの力なのか……この私にも見当がつかないのさ」
「……それを知るための四方綱引きか?」
「私はこの学校に来て後悔というものをするはずがないと思っていたんだが……後悔したよ。私も200メートル走に出ておけばよかったとね」
綾小路の質問には答えずに、高円寺は独りごちるように呟くと「万全な状態で臨むために医療テントに戻らせてもらうよ」と踵を返す。
あの自由人すら動かしてしまう自身の友に綾小路は様々な思考を巡らせる。
自分を連れ戻しに来た父からの刺客という線はまずないが、自分と同じように何らかの施設で訓練を受けたという可能性は視野に入れている。
「斉木の出る種目にはオレも出るな……」
借り物競争に男女混合二人三脚と四方綱引き。
これらの競技では斉木個人の能力を推し量ることは出来ないが、それでも彼を計れる機会がまだあることに綾小路は不思議な昂揚感を感じるのだった。
龍園「速すぎるだろ死ね」←一応2着なのですごいすごい!
坂柳「まぁ……あの方は誰ですか?斉木……?どこかで聞いたような……まあありふれた苗字でしょうしね。この後もなにか出るのでしょうか……。ふふ、龍園くんの痴態を見るだけでは飽きていたところなのでちょうど良いですね」
南雲「あいつか?一之瀬に自信を与えてそうな生意気な1年は……あの足なら最後のリレーも出て……な、名前がない……!?有り得ねぇだろ……!?」
堀北会長「斉木は3学年合同リレーには出ないのか……残念だ。本当に残念だ(´・ω・`)」
橘「ほ、堀北会長!?大丈夫ですか!?」
全学年の実力者に目をつけられているぞ〜?一体どうなっちまうんだ〜!?
鬼龍院は一旦省きました。
俺がまだ彼女のエミュを上手くできないからです。
櫛田が斉木の出場種目を知っているのは櫛田が持ってきたスイーツを受け取った斉木がスイーツ食いながら愚痴ったからです。
僕は運動が得意じゃないのにうんぬんかんぬん文句言いながらもちゃんと出るんだなと櫛田は意外に思っていて、ただ200メートル走を見て嘘つきと思っています
ただし才能もちや自分より優れてる人間を嫌う傾向にある櫛田にしては好感度は下がっていません
これも1ヶ月の練習の成果なのかもしれない
なんか本編に欠けてる地の文があった気がするけどどこか忘れてしまったので思い出すかなんかしたらまた付け足します
思い出せないなもういいかってなったら何もしません……ごめんね弱くって……
斉木が推薦競技全部出るならあと1話で終わらない気がしてきた
8000字くらいで終われば1話で出しますが超えそうなら分割します
てことでまた次回
そんなに投稿スピード早いですか?
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速いッ!
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ちょうどいい
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遅ぇ!(クイックブレーダー並感想)
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俺には分からないいつだってそうだ