後からペーパーシャッフル試験の説明ぶち込んだので若干変なとこあるかもですが、一応ペーパーシャッフル試験編開幕です
6/3に出そうと思ってましたがみんなが早く見たそうだったから少し早めたよ
Ψ難の連続!?斉木楠雄の女難!?
体育祭が終わって夏の暑さはなりを潜めて肌寒くなってきた10月の中頃。
僕の周りは一層寒々しい、なんてことはなく、体育祭が終わってからは近所に保育園や幼稚園ができたのではないと言うほどの喧騒を見せていた。
学校では生徒会総選挙や、新生徒会の発表と共に南雲新生徒会長になったりとイベントがあったが僕の中では些細なことだ。
2学期の半ばになり、体育祭も終わったため、僕の知る限りでは目立った行事は期末テストしかなく、いつも通り目立たずに過ごすだけだった。
しかし、体育祭で見せてしまった高い身体能力のせいで僕は恐ろしいいじめにあっていた。
「あれが南雲くんと堀北先輩を足蹴にした斉木くんだって」
「凄かったよねあれ、私ファンになっちゃった」
「よく見ると山崎賢人に似てない?」
「声も神谷さんに似てるって噂だよ」
体育祭が終わってから1週間ほど、僕目当てに上級生の女子生徒が教室にやってきては僕を見てヒソヒソと話してくる。
声の神谷さんは浩史なのか明なのかさておき、日本人ならどちらの声も一度は聞いたことがあるだろう。
ぶりぶりざえもんかケシンロウか、どちらかの声質に近く、見た目山崎賢人という業を背負わされそうになっていた。
(あれが斉木か……)
(ここ1週間ずっと本読んでるだけだぞ)
「何読んでるんだあれ」
「才虎財閥の会長か社長の自伝だってよ」
男子生徒は南雲の息のかかった2年生がほとんどで、ターゲットを一之瀬さんから僕に切り替えたらしく、毎日のように野次馬を装って観察されている。
今も見てわかるように物珍しい動物を見るかのような視線を向けられるが、そんな中でも僕は常に読書をして無関心を装っている。
「斉木くん、こんにちは」
上級生達の中で教室に入ってきた生徒は鬼龍院さんくらいで、他は星之宮先生などに注意を受けたため、直接教室に入ってくる生徒はいなかった。
ただ他クラスの同級生はその限りではなく、櫛田さんは体育祭の期間から話していたこともあり、以前よりも接触が増えた。
一之瀬さん曰く、僕が2日ほど様子を見るために学校休んだ時も教室に来ていたそうだ。
(あいつまた女子と話してるぞ)
(ツインテの子以外全員胸でかかった……南雲に報告だ!)
まあ神崎と柴田も胸筋があるから胸はデカい方だろうな。
それにしても僕から話しかけているわけじゃないのにこの言い草はどうなんだ。
以前と変わりクラス外から色々な人が接してくれるようになってからは以前のような平穏な高校生活を送ることができなくなってしまった。
「相変わらず変わった本読んでるね。面白いの?」
『1代であの中川グループのような巨大コンツェルンになった男の話だからな……興味深くはあった』
誰も読んでいなかったからネタバレの危険もなかったから図書室で借りたのだ。
「中川グループ? ああこち亀だっけ。面白いよね。私、香取くんの出てる実写も見てたよ」
櫛田さんは相変わらず承認欲求モンスターを続けており、誰からも好かれるような話し方、誰とでも合わせられるように流行やトレンドの把握に余念がない。
彼女がこち亀を見ていたのは承認欲求などは関係ないらしく、父親が漫画を持っていたり、実写ドラマの影響なのだが。
『そんなことよりこっちに来ていていいのか?』
「え? 何が? 私は全然平気だよ(教室にいても周りが鬱陶しいだけだし。体育祭で堀北より目立てたとはいえ持ち上げが過ぎてめんどくさいし)斉木くんは迷惑……?」
『はっきり言って迷惑だ』
「(……本当にはっきり言うなこいつ……人の心とかないのか……?)はは、そ、そうなんだ、ごめんね、読書の邪魔をして……」
『ああ。君といると視線を集めるからな。出来ればこの前みたいに人目のつかないところかメールで頼む』
別に話しかけるなとは言わないが今のような周りに人が大勢いる時は遠慮してもらいたいものだ。
僕には分からないが彼女の容姿は秀でているようだし、今僕の机の周りにいるだけで他クラスの生徒もいるから注目を集めやすい。
「(斉木くん休み明けから話し方変だったけど……なんか戻ってるな。まぁいいか。話しかけること自体は拒否してないのがわかったし)じゃあ戻るね」
聞き分けが良くて助かると肩を竦め読書に戻ろうとすると、櫛田さんは僕の横に立って耳元に顔を近づけてくる。
「次の試験も協力お願いね、斉木くん」
ハイハイと返事する間もなく、彼女は何故か上機嫌で教室を去っていく。
その理由は有名人になりつつある僕と話せる女子という立ち位置を手に入れたという優越感なのだろう。
やっと一難去ったなと読んでいた本に再び目を落とすとまた1人僕に近づいてくる影がある。
「斉木、だよね」
『麻生、ただの麻生』
今度は誰だと顔をあげるといたのは知らない顔……ではあるが、確か坂柳さんの世話係をしている1年Aクラスの女子生徒だ。
名前は確か神室真澄さんだったか。
「(は? なんで嘘ついてんのこいつ)あれだけリレーで名前呼ばれてたら嘘だってわかるよ」
それはそうか。
鬼龍院さんにもバレていたしな。
僕が休んでいる間に2回教室凸を仕掛けてきたのを千里眼で見て、三度目の正直とか言ってまた来そうだと思って追加で1日休んだ。
おかげでクラスメイトからは多大な心配をかけたが、たかが筋肉痛……まあ3日も休めば心配になるか。
なお、鬼龍院さんは来たので会いはしたが。
「放課後、時間ある? 少し付き合ってもらえる?」
『少しとは具体的にいつだ? 何時、何分、何秒だ?』
「(はぁ、こいつめんどくさ……)4時にケヤキモール2階の奥にあるヨネダコーヒーに来て。(坂柳が)待ってるから」
神室さんは用件を伝えると用は済んだとばかりに教室から出ていく。
やれやれ、これで何人目だろうな。
話を済ませたのは鬼龍院さん、彼女と同じくAクラスの橋本に、2年Aクラスの朝比奈さんと3人。
思っていたよりは少ないが、機会を窺っている生徒は多い。
「……相変わらずの人気ぶりだな」
「さっきのってAクラスの神室だろ? 美人だよな(ま、一之瀬には負けるけど)櫛田といい、やっぱり足速いとモテるんだな」
ようやく僕に話しかけてくる他クラスの生徒や上級生がいなくなり、教室まわりの生徒も自分たちの教室に戻り始めたのを見て神崎と柴田が声をかけてくる。
「俺も結構声かけられるんだぜ? ……ま、斉木絡みだけどな(連絡先教えてだとか)」
「俺もだな。ダブルデートしないかと、見知らぬ上級生に言われた」
知らない人に向けられる好意ほど面倒なものはなく、神崎もその辺は断ってくれている。
柴田も無闇に連絡先を教えたりはせずに、一応聞いてくるぜと律儀に僕に聞いてくる。
クラスメイトには恵まれたなと少し安堵していたが、それでもやはり変化というものは生じている。
(斉木くんやっぱりモテモテになってる……。そりゃそうだよねあんなに速いんだもん。足が速くてモテるのって小学生までだと思ってたら違ったんだ……)
(斉木のやつ大変そう……はぁ、私がリレーのアンカーに出るべきなんて言ったから、だよね)
一之瀬さんは僕のことを遠目に見てくるようになり、あまり声をかけてこなくなった。
姫野さんも僕をアンカーに推したことに罪悪感を覚えているらしく、距離ができてしまっている。
元々僕の方からコミュニケーションをとっていたわけではないし、会話がなくなるだけなら問題はない。
2人と親交が薄くなった代わりに他との親交が濃くなったかと言われればそうでもない。
クラス内で高まった好感度を下げるために、純度の高い厨二病キャラを演じるのは難しかったのでアニメキャラのエミュをしてなりきっている痛い厨二病を演じようと某兵長のような口調にしていたが、あまり効果はなく、「むしろかっこいいぜ!」と柴田らからは逆に高評価を得てしまった。
先程の櫛田さんや神室さんにした雑な受け答えだったり、お惚け顔や迷惑顔をしたりと、一応好感度を下げようと努力はしているが、それも上手くいかない。
人間好かれるよりも嫌われることの方が簡単だと思っていたんだが、難しいな。
いっそ漏らしたりしてみるかと小学生の頃にいた同級生を真似てみたが、好感度と共に人の尊厳を失いそうだ。
「てか次の期末テストが特別試験なんてこの学校も休ませてくれねぇよなぁ」
運動は得意ではあるが、勉強の方は平均並みの学力試験は憂鬱であり、しかもそれが他クラスとの対決ということであれば尚更だろう。
「小テストは明日。このクラスなら誰がペアになっても問題ないが、不安に思うやつはいるだろうな」
中間テスト、小テスト、期末テストと息をつく暇もないテストのバーゲンセール、その期末テストの中に特別試験をひとつまみされている。
この試験は、一見するとただの筆記試験に見える。
しかし、その実態はクラス同士が知略を競い合う駆け引きだ。
ルールは単純だ。
試験前、各クラスは指定された教科ごとに問題を作成し、学校へ提出する。
それは攻撃するクラスが攻撃される側のクラスに対しての試験問題として使用する。
つまり、BクラスがCクラスを攻撃すると決めれば、Bクラスの作った試験問題をCクラスは解かなければならないのである。
あるクラスが作った問題が、別のクラスの試験に使われる。
もし相手クラスの苦手分野を把握していれば、その弱点を突く問題を提出することも可能だ。
その逆も有りうるため、神崎や一之瀬さんらはどのクラスを狙うかを慎重に吟味していた。
ペーパーシャッフル試験の概要が説明された日の放課後、クラスで方針を話している時に、安藤さんが僕に意見を求めて尋ねてきた。
「斉木くんはどう思う? どのクラスを狙うのが正解だと思う?」
相手に難しい問題を出せば勝てるのかというと、話はそれほど単純ではない。
問題は学校側の審査を受けるため、授業範囲から大きく逸脱したり、あまりにも突飛だったり、悪意のある内容だったりすれば採用されない。
さらに、この試験には退学リスクが存在する。
いつも通りなら平均点の半分を下回った生徒は退学になるが、いつもと違う点がいくつかある。
まずは、この試験ではペアを組まされる。
明日行われる予定の小テストの結果を元に、学力の高い者と学力の低い者が組むことになっており、ペアのどちらか片方でもある2つの退学条件を満たしてしまうと2人とも退学という一蓮托生の運命となる。
1つは1科目につきペアの合計点が60点未満の時。
例えば、僕と柴田がペアだとするならば、国語で柴田が0点を取っても僕が60点を取ればセーフになる。
もう一つはペアの総合点が学校側で用意されるボーダーを下回った時。
今年のボーダー点数は決まっていないが、大抵の場合は700点前後となるらしい。
ただの期末試験ではなくなった今回のテストでは、どこのクラスと戦うかは非常に重要な選択になるだろう。
学力の高いAクラスを狙い、僕たちBクラスがAクラスに上がることもできるが、その分試験の難易度と求められる点数は高くなる。
逆に学力の高くないであろう龍園クラスを狙えば、11月以降のクラスポイントで彼らを引き離すことが出来、Aクラスの結果次第では彼らへの下克上も狙うことができるかもしれない。
ただ全ては机上の空論、試験が始まってみなければ結果は分からない。
そのため、僕は普段よりも低めの声とトーンで話した。
『僕にはわからない……ずっとそうだ……自分の力を信じても……信頼に足る仲間の選択を信じても……結果は誰にもわからなかった……だから……まぁせいぜい……悔いが残らない方を自分で選べ』
高校生にもなってアニメや漫画のキャラのセリフを日常的に引用し、あまつさえそれをクラスの行く末を決める大事な場で言うことで僕の好感度を下げる。
そういう作戦だった。
しかし、僕の目論見とは異なる方向へ話はシフトした。
「確かにそうだね……ごめん、変に頼っちゃって。1回自分で考えてみるよ」
はい? と僕は頭を下げてくる安藤さんに当惑していると、柴田も彼女に同調するように口を開く。
「いくらCやDが俺らより学力が低いかもしれないとはいえ、個人の力は分からねぇもんな。斉木みたいに走るだけならめちゃくちゃ強えって奴がいたみたいに、めちゃくちゃ難しい問題を作れるくらい頭の良い奴はいるかもしれないしな」
「それだとDなら堀北さんや幸村くん、Cなら金田くんって生徒が学力テストでは好成績だね」
補足するように網倉さんが付け加えると、全員がどのクラスに向けた問題を作成し、勝ちを掴み取るかを考え始める。
しかし、すぐに答えの出るものではない。
自クラス以外の3クラスのどこかに問題を解かせる"攻撃"。
自クラス以外の3クラスのどこかの問題を解いた時の"防衛"。
解かせた問題の総合得点と、解いた問題の総合得点を比べて、総合得点が高かったクラスにポイントが与えられる。
総合点が勝ったクラスに50cp、負けたクラスに-50cpで、もし"攻撃"と"防衛"が同じクラス同士になった時は100cpのポイント変動が起きる。
滅多にないらしいが、総合得点が同じになった場合は引き分けとなり、ポイント変動はないそうだ。
試験科目は8教科各100点満点で、各教科50問の合計400問と学生に問題を作らせる割には多いが、期末テストまでの期間は残り1ヶ月ほどと自分達の勉強と並行して問題を作るのは困難を極める。
更に、もし問題が作成できず、テストまでに間に合わなかった場合は学校側が用意した簡単な問題を使うことになっており、そうなれば相手側が全員腹でも壊さない限りは敗北となるだろう。
「どのクラスに攻撃を仕掛けるかは小テストの前の日まで期間があるし、その時までにみんなの意見をまとめて私が星之宮先生に言いに行くよ」
そうして一之瀬さんが話を締めくくりその日のクラス会議は終わりを告げた。
それから数日が経ち、今日がその小テスト1日前ではあるが、僕はどのクラスへ攻撃しようが、攻撃されようが、興味がない。
せいぜい出された問題に適当に答えて相手と僕が退学しないようにするだけだ。
ペアの選定をするため、学力に自信の無い者は小テストを無記入で提出し、高得点を取った学力の高い生徒と組むらしい。
僕には特に何のお呼びもかからなかったので、ペアの方も適当に決めさせてもらうつもりだ。
姫野さんや神崎は学力が高いし、組むとなると柴田のように学力に僅かながら不安のある生徒になるだろうが、誰が来ても支障はない。
目下の問題は坂柳さんのことだ。
とりあえず、他の連中と同じように会うだけ会って話だけ聞いたらさっさと帰るとしよう。
クラス会議以降某兵長ムーブは柴田には無駄だったので柴田の前では普通に話している
逆櫛田状態
やや過激だが池袋在住の人Loveマンに切り替えるか検討中
鬼龍院、橋本、朝比奈との会話イベはナレ死
そんなに重要でもないからね
3人のファンにはすまないと思っている
佐藤さんは他クラスだし、興味はあれど来ないんじゃないかなと思って外してます
あれは同クラの綾小路が実力発揮したのが気になっての接触って感じだったし
ではまた次回
なおストックが2話あるので明日明後日は更新されます
それ以降は書けたらって感じ