この話は原作に欠けらも無いので捏造でしかありません
予めご了承の上お読みください
カラオケというと一昔前では歌を歌う場所というイメージが強かったが、最近ではそうでもないらしい。
カラオケに設けられているスクリーンは画面が大きくHDMIとやらによる出力が可能になり、ゲームをしたり映画を見たりといったこともできるようになっている。
他にも安価で使える個室ということもあり、オフ会や女子会などに使われることも多いそうだ。
そんなカラオケに高校生らしく、歌を歌いに来たのはBクラスのカーストを組めば上位に入るであろうメンバーだった。
男子は柴田に神崎、浜口が来ており、女子は一之瀬さん、白波さん、網倉さん、小橋さんと男女比率は半々だ。
そんなBクラス内でもとりわけ目立つグループに組み込まれてしまったのは中学時代は教室の端っこで大人しくしているだけの陰キャだったこの僕、斉木楠雄である。
「楠雄、何歌う? つか何歌える? 楠雄とカラオケ楽しみだったんだよなー」
「Bクラスで何回か来たことあるけど斉木くんがいるのは初めてだね」
部屋に入るなり、柴田が曲の予約やリモコンを兼ねたタブレットを持って僕の隣に陣取るとその様子を見た網倉さんが呟く。
そうなのかと興味なさげに返してから僕はカラオケのグランドメニューを開く。
やはり冬メニューに移行しており、期間限定メニューには冬らしいいちごやチョコレートのデザートがずらりと並んでいる。
明日にも櫛田さんとスイーツビュッフェに行く予定であるため今日は控えめにしておこうと考えていたが、あちらはいちごとみかんがメインらしいから、チョコレートは食べても問題ないだろう。
「楠雄いきなりスイーツかよー」
「まぁ、今日来たのもそれ目当てでしょうし仕方ありませんよ」
「俺はスイーツに負けたってのか!?」
「そうでしょ」
柴田のボヤキに浜口と小橋さんが返すと柴田はガックリと項垂れていた。
悪いがカラオケは苦手でな。
変に空気を壊しても悪いし、スイーツを食べながら大人しくしておこうと言うと柴田は不満げながらも納得してくれる。
「しゃーねぇ、んじゃ、俺の歌を聞けぇ!」
「お前がトップバッターなのはいいとして、あとはどうする?」
「時計回りでいいんじゃないかな? 歌いたいのがなかったら一旦飛ばしとかで」
神崎は意外にもこういう場に慣れているのかどういう順番で歌うのかを尋ねると一之瀬さんが答える。
柴田が曲を入れると隣にいる神崎にリモコンが渡る。
席順は僕、柴田、神崎、浜口、網倉さん、小橋さん、白波さん、一之瀬さんとなっている。
柴田がジャンプアニメの金字塔となっているオープニングテーマを歌い出す。
神崎はそれに続くべきか悩みつつも、同じシリーズの違うオープニングテーマを入れる。
そしてその後に続く浜口は別シリーズのオープニングテーマを入れた。
「浜口もアニメ見るの意外だね」
「意外って何ですか。まぁ、柴田ほど熱心ではないですけれどね」
「ふっふっふ、男ならぁぁぁぁ!!! 誰だってこのアニメ好きっしょ!」
そのフレーズはジャンプじゃなくてウルトラマンだな。
しかしヘッチャラでパワーと来て浜口はスーパーな方ではなくDANDAN惹かれてく方を歌うのか。
ドラゴンボールは偉大だなと思いつつ女子たちは知ってるのかと目線を送る。
「私見たことあるんだけど途中までなんだよね(たしか魔人ブウに今度はいいやつに生まれ変われよって言って、生まれ変わったのと戦うところまでは見たかな)」
原作の最後まで見てて途中とは一体。
まあ最近になって破壊神や帝王復活だったり続きも出てきたし、一応は途中になるのか?
ただ一之瀬さんがアニメを見ているのは女子たちも知らなかったらしく、白波さんが食いつく。
「え? 帆波ちゃんもアニメ見るの?」
「うん、私結構アニメ好きだよ。でも妹と一緒に見ることが多かったかな」
「妹いるんだー確かにいいお姉ちゃんだもんね、帆波ちゃん(桜Trick、ゆるゆりとか見てくれないかなー)」
白波さんのチョイスに恣意的なものを感じるが気にしないでおこう。
浜口が歌い終わり、網倉さんの番になると彼女は5人組男性アイドルの曲を歌う。
小橋さんと白波さんも好きな歌手の好きな曲を入れたようで網倉さんの歌に合いの手や口ずさんでいた。
「うーん、私はどうしようかな」
一之瀬さんは何を歌うのか悩んでいるのかタブレットをしばらくスクロールさせていたがやがて入れずに僕の方を見てくる。
「斉木くんは歌わないけど、好きな曲とかはあるの?」
歌番組などは見ないし、アニメもリアタイしていると近所の中高生たちや大きなお友達にネタバレされたりするからそこまで見ない。
僕が生まれる以前などにやっていたアニメの曲などは有名だったりしたら知ってるんだがな。
それに曲を聴いたりしてもドラマのBGMや歌詞のないものばかりだ。
『ドラマのBGMばかり聴いているから歌詞付きの曲は特にないな』
「そっか(一応考えてくれてたみたいだし、本当にないのかな)じゃあドラマの主題歌で好きなのとかないの?」
好きなドラマの主題歌はだいたい好きだが、日曜劇場は主題歌が無いこともあるからな。
だが、リブートや99.9はドラマの内容とも合ったいい主題歌だったのもあって記憶に新しい。
しかし、一之瀬さんがその辺を知っているかが分からないな。
彼女の家庭環境を考えるとドラマを見る暇があったのかがわからない。
アニメを妹と見ていたということからテレビがある環境なのは間違いないんだが。
まあ聞かれただけのことだし、彼女がそれを歌うということはないだろう。
先程あげた2つと緑のアカリや玉置のファンファーレを言っておく。
「おお、日曜劇場ってやつだね。私はあれ、キムタクのやつ観たよ!」
『グランメゾンか?』
「それそれ! あと日曜劇場かわからないけどHEROとか(観たのはこっち来てからだけど)」
月9とかじゃないのか?
僕もリアタイ視聴じゃないから分からないが。
家で見ていたら父親に(あー、真犯人はファミレスの店員だったよな確か)とネタバレしてきたのはよく覚えている。
「じゃあ宇多田ヒカルにしようかな、っと」
そうして一之瀬さんは1曲目を入れて僕に渡してくる。
僕はそれでチョコレートパフェを頼むと柴田へと回した。
「楠雄は歌わない感じね。ま、気が向いたら言ってくれよ?」
『ああ』
柴田は少し残念そうにしていたが、こればかりは仕方ない。
そもそもカラオケに行くことなんて今まで無かったのだからな。
一之瀬さんが2歌い終えると、柴田の順番となり今度はサッカーアニメのリーヨリーヨと何度も言うオープニングを歌い始める。
これも男女共にある程度知っていたので乗ることができていた。
「やっぱりこの人数で来るとテンション上がるな!」
「いつもはどのくらいで来るんだ?」
「3,4人だな、人数多い時は6人で来るけど今日は8人だし。な!」
神崎が尋ねると柴田が嬉しそうな声を出す。
「神崎は? カラオケってイメージあんまりないけど」
「中学の頃付き合いで何度かは行ったな。だが、ここまで叫んだのは初めてだ」
気恥ずかしかったのか照れ隠しのように言いつつ、今度は違うサッカーアニメのオープニングを歌い始める。
それを聞いてアニソンの流れかと思っていると浜口が悩ましげな顔をする。
「サッカーアニメはあまり詳しくないので……僕はこれを」
そう言って彼が入れたのは何も知らない人が見れば希望の花の名前の曲なのだが、インターネットに触れたことがある人間ならば高身長男性が歩いて倒れるというイメージが流れ込んでくる曲だった。
「僕好きなんですよねこれ」
まあ普通に良い曲ではあるからな。
他のオープニングやエンディングも名曲揃いではあるが、落ち着いたピアノから始まるイントロから始まるバラードが特徴的な曲は彼に似合っていると思う。
そんな感じで3時間ほど僕以外のメンバーが沸かし、騒がし、シンギングを繰り返してカラオケのフリータイムの終わりが近づいてくる。
その間に明日の櫛田さんとのスイーツビュッフェについて聞かれそうになったが、テレパシーで察する度にジュースをつぎに行ったり、トイレの行くと言ってその話題にならないように努めた。
「あと10分だってさ、最後どうする?」
店員からの電話を受けた小橋さんがみんなに問いかけると柴田は最後に全員が知ってる曲で〆たいと宣言する。
「よし、歌おうぜ、国歌斉唱」
「最後にそれはセンスないなぁ」
「無難に合唱曲とかでいいんじゃないか?」
「無難すぎません?」
柴田と浜口が漫才をやっていると最後はそれぞれが合唱できそうな曲を選択肢として挙げていくがなかなか決まらない。
そんな中、小橋さんがふと思いついたように言った。
「最後だし斉木くんが歌うのは?」
その言葉を聞いた瞬間に柴田と網倉さんはピンときたのかなるほどと頷く。
何がなるほどなんだ?
首を傾げる僕のことなど構わず部屋の中では僕が大トリを飾る方向で話が進んでいく。
そんな周りに待ったをかけたのが我らが一之瀬さんだった。
「斉木くん、歌うの苦手だって言ってるしいいんじゃないかな? その、ね? (音痴とかだったら気にしてるかもしれないし)」
さすが一之瀬さんだ。
人の気持ちがわかっている。
まあ僕は音痴ではなく、ただ単に歌いたくないだけなんだが。
「でも俺らも特別上手いってわけじゃないしな……まあ無理強いはしないけどよ」
「俺も無理にとは言わんが1曲くらいとは思わなくもない」
「斉木くん声いいんだし、音程があってなくてもよく聞こえるんじゃない?」
「告白予行練習とかどう?」
柴田と神崎、網倉さんがまともなことを言ってる中で小橋さんだけ僕に歌ってほしい曲を勧めてくるのはなんなんだ。
「僕は裏切りの夕焼けとかいいと思いますけどね。カッコイイ曲ですし」
ダメだ。
間奏中に人ラブ! とか言えない。
首を振ると今度は小橋さんが訊いてくる。
「紅蓮の弓矢は?(この前兵長のモノマネしてたし……めちゃくちゃ似てたし……)」
モノマネは若気の至りみたいなものだから忘れて欲しい。
「ウィーアーは?」
歌えなくはないし、最後の曲としては妥当ではあるが、歌詞を書くと曲コードを入れないといけなくなるからな。
「えっと、じゃあ何かみんなで歌うのはどうかな? それなら斉木くんも少しで済むかもだし」
と、一之瀬さんがと妥当な落とし所を提案してくれたところで退室まで残り5分程となってしまう。
このまま何も歌えずに終えるというのも一つの手ではある。
そうすることで僕への期待感などが薄れ、好感度が下がる可能性があるからな。
ただ、まぁ、そんなことをしても何かしらで戻ったり、上振れたりするくらいならやむを得ない。
勝手に歌っててもらうとするか。
僕の超能力で理想を幻聴にする。
人は時に、聴きたいように聴くものだからな。
「うおおおぉ!? (なんだ楠雄の歌唱力は!? まるでプロじゃないか!)」
ん? 柴田が興奮したように手を叩き始めたかと思えば、フェス会場で手を挙げてノるように体を揺らし始める。
(斉木くん、歌も上手っ、てかなにこれ……なんかアリーナにいるみたい……)
(これが斉木くんの歌唱力!? あ、圧倒的じゃないか……! しかも空まで飛んで……)
んん? 網倉さんと浜口のイメージでは僕はヒラヒラのついた衣装で空を飛んでいるらしい。
どういうことだってばよ。
(さすがだ斉木……まさか歌まで上手いとは……)
(まるで有名声優さんのライブみたい……あ! こっちみた!)
そりゃ見るだろ。
8人いるとはいえそこそこ狭いんだぞ。
腕を組んで僕の歌に頷く神崎とライブ会場の幻覚を見ている小橋さんが手を振ってくる。
(まさか頑なに歌おうとしたなかったのは私たちが歌う気力を無くさせないため……? そんな気遣いもできるの……?)
いや、ちが、白波さんが壮大な勘違いをしているがこれは君らの僕のイメージを現実にしただけで、君らが僕の歌が上手いと思っていればそう聴こえるし、下手くそだと思ってたらジャイアンのような音痴に聴こえるはずなのだ。
しかし、どいつもこいつも僕の歌が上手いと思っている……!?
「斉木くん、すごいね! 私、友達の歌で聴き入っちゃったの、その、初めて、かも……」
別にそれは恥ずかしがることじゃないと思うが……。
しかし少々やりすぎたらしく、僕が歌い終わると7人は椅子から立ち上がって拍手を送ってきた。
「楠雄、スゲェじゃん! ほんとに歌ったことはないのか?」
「また機会があれば僕の前で歌ってください! あ、僕の前でなくても是非」
「今日楽しかったー! 斉木くん歌上手すぎてそりゃ別の意味で歌いづらいよねー!」
「今度は紗代ちゃんとかも誘ってあげようよ! 斉木くんが歌上手いって知ったらびっくりするよ!」
それから解散後は次は皆でどこに行こうか、いつ遊ぼうかという話が飛び交っていた。
この様子だと間違いなく男子だけでもまたカラオケに行こうと言い出されることになりそうだな。
やれやれ、こんなことになるのならみんなのイメージに任せずにコナンくんばりの音痴を披露しておくべきだったか。
前を歩く柴田たちから1歩離れた距離を歩いていると、一之瀬さんが隣に並ぶ。
「斉木くん、今日は楽しかった?」
チョコレートパフェは美味しかったし、途中で柴田が頼んだポテトも悪くなかった。
ほとんど食べて飲んでばかりだったが、たまにはこういうのも悪くないと思える程度には良かったかもしれないな。
それをかなりあっさりとさせて伝えると一之瀬さんは笑う。
「そっか、なら良かった」
相変わらず周りがちゃんと楽しめているか、自分たちだけが楽しんでしまっていないかが気になったのだろう。
「またみんなでどこか行けたらいいね。来年も、再来年も」
そこに嘘などなく、本当にそう思っているのだと分かる。
だが、同時に彼女が本当に望んでいることが何か分かる。
来年、再来年どころか卒業してもずっと友達でいたいのだろう。
『行けるんじゃないか? クラス替えはないし、退学になったりしない限りは』
「そうだね、そうならないようにこれからも頑張ろうね」
そう言われて、ふと違和感を覚える。
違和感と言っても悪いものではない。
彼女なら一人で抱え込んで「頑張るね」と言うものかと思ったが、そこにあったのは他人を信じるという感情だ。
僕らに背負わせるわけではないが、弱い自分を見せられるくらいには信頼してくれているのかもしれない。
そう思って黙って見ていると今度は前方から視線を感じる。
「また2人だけで話してる……」
「帆波ちゃんも斉木くんの前では気張らずにいられるんだしいいんじゃない?」
「ま、あんなに頼りになる男もいねぇもんな」
白波さんの呟きに小橋さんと柴田が慰めるように言うと、神崎と網倉さんも続いた。
「あの2人がいればBクラスは何があっても問題ないだろうな」
「2人に何かあった時は私たちが支えればいいしね」
「そうですね。僕たちは僕たちにできることをしましょう……2人とも! 晩御飯も一緒に食べませんか? 網倉さんが美味しいお店知ってるみたいなので!」
2人の意見に同調しつつ、浜口がこちらに声をかけてくる。
母さんには悪いが今日の晩御飯は明日の朝にでもいただくとしよう。
テレパシーで母さんに晩御飯がいらないことを詫びつつ、再び歩き出した。
歌った曲の意味
1曲目▶︎全員特になし
2曲目▶︎男子4人だけだが、基本中の人関連
柴田はイナイレ、神崎はブルーロック、浜口は鉄血のオルフェンズ
人気アイドルグループは英語にしたらSTORM
斉木のラスト曲の提案はCV神谷浩史出演作から適当に
てことで1年Bクラスメインメンバーで遊びに行く回でした。
いずれはここに姫野さんとか入れたらいいけど、まあ無理そうかな……
作者が好きなカラオケ回は、カラオケ関係ないけど照橋さんと夢原とかが合コンした時に相手の男性陣を斉木がお持ち帰りした回です
次回も原作には無い回ですが見守っていただけると幸いです
ほな!