ようこそ超能力者のいる教室へ -1年生編-   作:オールF

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君は二次創作を書かないのか?俺は書くが。
書く時間があるんだから、仕方ないだろう。
はい、これ(最新話)

終始一之瀬目線となります
なんか思ったより書けた


Ψ典本番!ハロークリスマス

 クリスマス当日になった。

 この日はテレビで街全体が巨大なイルミネーションアートみたいになっていたり、見上げると流れ星みたいに光るオブジェたちが埋め尽くしてる映像を流していたり、人気のプレゼントは何かとかクリスマスにやるにはやや遅すぎる特集をしていたりする。

 特にクリスマスツリー特集なんてのもあったり、広場が特にすごいだとか、そんなのばっかりだ。

 でも、そんなクリスマスがあるのは高育の外の話で、ここのクリスマスは学校側が何かやってくれたりだとか、別にパーティがあるだとかそういうのもない。

 だから私たちBクラスは多目的ホールを貸し切って、クリスマスパーティを開いた。

 私は何故かサンタのコスプレをさせられたりしたけど、みんなが楽しそうだったから、終わりよければすべてよしってことで。

 それに今回はこういう集まりが苦手な姫野さんも来てくれたし、斉木くんが夢ちゃんや柴田くんに乗せられる形だったけどモノマネを披露してくれたりした。

 そして今日はそんな斉木くんとデート……いやお出かけに行くことになっている。

 理由は南雲会長からの誘いを断るためというか……勢いで反射的に口から出まかせで言ってしまったがために斉木くんと遊ぶことになった。

 会長は私たちが遊んでいる様子を見させてもらうとか、今の生徒会のメンバーと出かけるからそれに混ざるか? とか言われたけど、全力で拒否しておいた。

 だって怖かったんだもん。

 それで、もうすでに集合時間ギリギリになっていたので急いで身支度をして寮を飛び出した。

 

「あっ! 斉木くん!!」

 

 待ち合わせ場所にはもうすでに斉木くんが来ていた。

 寮近くのコンビニの前だったのでそこで待ち合わせをしていたのだ。

 

「ごめんね! 待たせちゃったよね?」

『いや僕もトイレに行っていたから問題ない』

 

 本当なのか嘘なのかは分からないけど。

 とりあえず許してもらえたというか、そもそも全然怒って無さそう。

 普段通りの無表情だけど、最近になってその中に含まれてる喜怒哀楽が少し分かってきた気がする。

 

「じゃあ行こっか」

 

 私が言うと斉木くんは無言で頷いてついてきてくれる。

 にしても、今考えても1年前の自分からは信じられない環境だろうな。

 家のこともあって、友達とどこかに出かけたりすることなんて全然なかったし、せいぜいコンビニかスーパーか。

 不登校の間はお母さんの手伝いもろくにできないほどだったし、本当に迷惑をかけたと思う。

 それでも今はこうして仲間と楽しい日々を送れていることが幸せだ。

 もちろん、学校から出される試験や課題は難しく大変だけれど、それも乗り越えていけると思えるほどの居心地の良さがある。

 それに、頼れる仲間もいるしと隣を歩く斉木くんの顔を見る。

 会話がなくてもなんとなく居心地の良い空気が漂っている気がする。

 他の人とかだったら、無言の空気はもう気まずくて耐えられないと私が喋っていたと思うけど、斉木くんにはそれがない。

 もちろん、千尋ちゃんや夢ちゃん、麻子ちゃんにも同じだと思うけど、あの子たちといる時はあっちが喋ってくれるし。

 私は少しだけこの静かな空間を楽しみながらケヤキモールへと歩いていく。

 その途中で見知った顔を見つけた。

 

「ありゃ? あれは綾小路くん?」

 

 1人でケヤキモールの入口前で立っている知り合いの姿に首を傾げるとあちらも私たちに気づいたみたい。

 

「一之瀬と斉木か」

「おはよう、綾小路くん。誰かと待ち合わせ?」

「まぁそんなところだ」

 

 昼前だし誰かとご飯かな? 

 綾小路くんの知り合いだと堀北さんや須藤くん、最近だと長谷部さんや幸村くんたちといることも見るし、その辺かな? 

 

「そっちは……デートか?」

「にゅやっ!? 違っ、わ、ないんだけど……」

 

 もしかしたら南雲会長とかが聞いてるかもしれない……けど、会長と会うのは13時頃の予定だから大丈夫かな? 

 

「えっと、ちょっとごめんね」

 

 そう綾小路くんに断りを入れてから斉木くんの服の裾を引いて、彼の耳元に顔を近づける。

 

「今日のこと綾小路くんに言ってもいいかな?」

『まあその方が誤解はされないだろうし、いいんじゃないか?』

 

 斉木くんからの了承を聞いてから綾小路くんに今日斉木くんと一緒にいる理由を話す。

 

「そうなのか、大変だな」

「にゃはは、まぁね……」

 

 綾小路くんも斉木くんと同じで表情がほぼ固定で分かりにくいけど、同情してくれているのかな? 

 おっと、綾小路くんも待ち合わせなんだよね。

 これ以上の長居は邪魔かなと立ち去ろうとした時にこちらに走ってくる足音が聞こえた。

 

「おはよー綾小路くん!」

 

 振り返ると小走りで距離を詰めてきたのは、綾小路くんと同じクラスの佐藤さんで香水をつけているのか程よく鼻腔をくすぐってくる。

 

「早かったな」

「綾小路くんだって……って、そのどうして一之瀬さんと斉木くんが……?」

 

 ありゃりゃ、もしかして私たちの方がお邪魔だったかも。

 

「おはよう佐藤さん。ケヤキモールに入ろうとしたら綾小路くんがいたからちょっと挨拶してたらそのまま少し話しちゃったんだ」

「そ、そうなんだ……」

 

 チラリと私と斉木くんの間に視線がウロウロしているのを見ると、佐藤さんも同じような勘違いをしているのかな。

 

「佐藤にはオレから話しておくから2人はもう行ってもいいぞ」

「いいの?」

 

 尋ねると綾小路くんは頷いて、佐藤さんは困惑しながらもまたねと声をかけてくれる。

 そんなわけでケヤキモールの中に入る。

 2人から少し離れてから斉木くんに訊く。

 

「佐藤さんって綾小路くんと期末テストでペアだったよね?」

『ああ』

 

 じゃあそのよしみでデートすることになったのかなと勘ぐってみる。

 まあ綾小路くん整った顔立ちだし、話しやすいし、目立って悪い話とかもないから結構好きになりそうな女の子は多いかも。

 

「綾小路くんって堀北さんと一緒にいるってだけで付き合ってるの? とかたくさん聞かれてそうだったけど今日のこと知るとみんなイメージ変わるかもね」

『そうか? そうだな、そうかもなぁ』

 

 やや懐疑的な反応をする斉木くんに笑いかけて、ちょっと気になったことを聞こうとして、そのまま口を閉じた。

 斉木くんは恋愛事に関しては興味ないスタンスみたいだし、野暮なことは聞かないほうがいいと思った。

 

「斉木くんお昼はどうしよっか」

 

 だからここは無難なところでランチの話題にしよう。

 今日の流れは大まかにしか決めてなくて、昼ごはんを食べたらケヤキモールの中を歩いて、その途中で偶然を装って南雲会長たちと遭遇する。

 そしたら、南雲会長が斉木くん含めて私に一緒に遊ばないかと声をかけてくるらしい。

 本当に遊ぶかは斉木くん次第だけど、斉木くんなら私は断ると踏んでいる。

 私の作戦通りになるかはわからないけど、なるべく斉木くんの時間を奪わないように前もって今日の流れは説明してある。

 ただ何を食べるかは決めていないんだよね。

 

「昨日パスタ食べて、夜はチキンとかケーキだったし……どうしようか」

 

 そういえばこの1週間のうち3日間は斉木くんと一緒にご飯を食べている気がする。

 ていうか、食べてるね。

 そう思い返していると斉木くんが立ち止まって指を指した。

 

『和食なんてどうだ?』

「あ、いいね」

 

 クリスマスに和食かぁ。

 洋食が続いてたしいいかも。

 メニューを見てみると定食とかもあるし、学生向けだからか値段も優しい。

 

「うん、ここにしよっか」

 

 頷いて、ガラガラと木の戸を開けて中に入る。

 入店音に反応して、お盆を持った若い女の人が対応してくれた。

 

「いらっしゃいませ。二名様ですか?」

「はい」

 

 答えると4人掛けのテーブル席に通された。

 早速お品物と書かれたメニュー表を開くと天ぷら定食、親子丼、焼き魚定食、生姜焼き定食など定番どころが並んでいる。

 その中で目を引いたのは定食の中でもやや値段の張る牛焼肉定食だった。

 

「わっ、これ美味しそうだけど高いな……」

『ああ、焼肉定食か』

「うん」

 

 豚肉より牛肉の方が高いのと、お肉は国産を使用していますって書いてあるから余計に高くなるんだろうなとメニュー表から顔を上げる。

 

「私は天ぷら定食にするよ、斉木くんは?」

『僕は牛焼肉定食にする』

「おお、リッチだね」

 

 注文が決まって店員さんに声をかけて、牛焼肉定食と天ぷら定食を注文する。

 

「斉木くんってお肉と魚ならどっちが好きとかあるの?」

『別にどっちでもいいが、強いて言うなら肉か。いや、魚は寿司も好きだしな』

「そっか、じゃあほんとにどっちも好きなんだ」

 

 確かにどっちも美味しいもんね。

 お肉にはお肉の良さ、魚には魚の良さがある。

 お肉ひとつとっても、鶏肉、豚肉、牛肉以外にも羊や馬とか色々あってそれぞれ味付け次第でいくらでもおいしくなるし。

 お肉は種類によって脂身や身の硬さなどに個性がありすぎてそこもまた楽しい。

 そしてご飯が進む。

 牛焼肉定食が来た時の斉木くんのリアクションが楽しみだなと思いながら、話を続けていると店員さんがお盆を持ってやって来た。

 

「お待たせしましたー」

「わぁ、美味しそう!」

 

 私の頼んだ天ぷら定食は豪華に海老が3本も付いてるし、さつまいももあるし、他にかぼちゃにナス、大葉と結構盛りだくさんだった。

 これにご飯と味噌汁、小鉢に乗った漬物がついて1000ポイントぴったしなんてすごいなぁと見ていると、斉木くんの牛焼肉定食も机に置かれる。

 

「ではごゆっくり」

 

 配膳が終わると店員さんは厨房の方に引っ込んでいく。

 それを見送ってから、私たちは自分の手を合わせた。

 

「いただきます」

『いただきます』

 

 手を合わせてから、まず最初に味噌汁を飲む。

 うん、落ち着く味。

 具は豆腐とわかめと絹揚げのシンプルなやつ。

 

「これだけでもかなり満足感あるね〜」

『そうだな』

 

 斉木くんはご飯と焼肉を一緒に頬張っている。

 さてさて、私も天ぷらを食べましょう。

 まずはさつまいもの天ぷらを口に運んで、一口。

 

「んん〜」

 

 外はサクッと中はホクホクで甘くておいしい! 

 それに衣が薄くて重たくないので食べやすい! 

 

「はぁー、やっぱり天ぷらって最高だよ」

 

 そしてここでご飯を一口頬張る。

 カリッホクッもぐもぐと心地よい音が耳の中で鳴っている。

 

「斉木くんも良かったら食べてみて?」

 

 箸で海老天を挟んで差し出す。

 

『……いいのか?』

「うん、もちろん。美味しいものはシェアしたいから」

 

 私はニコッと笑うと斉木くんはお椀を持って、その上て天ぷらを受け取って口に運ぶ。

 

「美味しい?」

『ああ、身はプリプリとしていて美味いな』

「うん、私もそう思う!」

 

 斉木くんの顔がぱあっと明るくなった。

 気に入ってもらえて嬉しいな。

 そしたらお礼にと斉木くんも焼肉を分けてくれる。

 

「わっ、ありが……」

 

 あれ? これってよくよく考えたら間接キス……いやでも箸がついただけだしそんなに気にすることじゃない、かな。

 うん。

 

「ありがとう」

 

 そう言って箸を伸ばしてお肉を掴む。

 うん、美味しい。

 噛めば噛むほどお肉のうま味が出てきてご飯が進む。

 ご飯ってお米の味も重要だけど、結局はおかずとの組み合わせで味がガラリと変わるんだよね。

 それを改めて実感すると同時に、目の前にいる斉木くんもおいしそうにご飯を食べているのを見て微笑ましくなった。

 それからお互いにご飯を食べる。

 斉木くんは早いし私はゆっくり食べるので、斉木くんの方が先に食べ終わって、急がなきゃと思っていると斉木くんが『ゆっくりでいいぞ』とお冷のおかわりを貰ってきてくれながら言ってくれた。

 そうして最後の漬物をポリポリと食べ終わってお茶をひと飲みしてから手を合わせる。

 

「ごちそうさま」

 

 お腹いっぱいだなぁ、おいしかったなぁと満足感を感じながら斉木くんに声を掛ける。

 

「ごめんね斉木くん、お待たせ」

『大丈夫だ問題ない』

 

 それからお会計を済ませてから店を出る。

 

「美味しかったね〜。じゃあケヤキモールをぶらぶらして、3時くらいになったらどっかでデザート食べよっか」

 

 そう口にした時だった。

 

「ほんとに斉木と一緒だったんだな、一之瀬」

 

 背後から声をかけられて私は振り返った。

 鋭い眼光と、爽やかさを兼ね備えたその人は想定よりも早く私たちに接触してきた。

 

「南雲会長、こんにちは」

 

 聞いていた通り、会長は現生徒会の役員と彼と親しいのであろう女の人を連れていた。

 ほとんどの人は斉木くんに対して「たしかあいつって」「ああリレーで南雲と堀北先輩を追い越した」とヒソヒソと話しているのに対して1人だけ明るい挨拶が出る。

 

「およ? 斉木くんじゃん。おひさー」

 

 ひまわりの髪飾りをつけた綺麗な明るい茶髪の女性。

 見覚えはあるけど話したことは無い。

 声をかけられた斉木くんはというと軽く会釈をするだけ。

 いつも通りっちゃいつも通りなんだけど。

 

「えっと、斉木くんあの人は……?」

『朝比奈なずな先輩だ。体育祭の後、声をかけてきた』

「そうなんだ」

 

 まあ体育祭の後の斉木くん凄かったもんね。

 って、ダメダメ、あの時のこと思い出したら。

 なんかこう、顔に熱が集まっちゃうし。

 

「なんだなずな、斉木と顔見知りなのか」

「うん、そりゃ雅と堀北先輩を追い抜いた子だよ? 興味が出るのは当然じゃない?」

「……そうだな」

 

 揶揄うように訊いた会長だったけど、朝比奈先輩に言われた事実に顔を強ばらせた。

 

「斉木、体育祭以来だな。随分と人気者だったらしいがその後どうだ?」

『別に何も無いが』

 

 南雲会長に訊かれたことに敬語や丁寧語でもなくそのまま答えた斉木くんに、溝脇先輩と殿河先輩が眉を顰める。

 

「おいお前」

「なんだその態度は」

 

 1歩前に出ようとしてくる2人に南雲会長が止まれと牽制する。

 

「構わないさ、それにこういう生意気な後輩が1人くらいいても悪くはない」

 

 それから斉木くんに向き直って話し始める。

 

「悪い、お前ら先に行っててくれ」

「えー? 雅だけ斉木くんとお話?」

「そうかからないさ。斉木と一之瀬次第ではあるが」

「はぁ、早く来てよ?」

「わかってるよ」

 

 私たちを解放する気はやっぱりないのか、南雲会長は他の先輩方を先にどこかに向かわせる。

 その背中を見ていると、会長が口を開く。

 

「カラオケだよ。この後お前らも来るか?」

「え? えっと……」

 

 唐突な申し入れに、困惑していると南雲会長は冷笑を浴びせてくる。

 

「冗談だよ、一之瀬はともかく、友人でもない斉木が来たら場がシラケるだろ」

『じゃあ言うなよ』

「……ふっ、ホントに生意気だな」

 

 いいねぇと愉しげに笑う会長に対して、斉木くんは無表情のままだけど、どこか機嫌が悪そうだった。

 

「堀北先輩が気にかけ、そして認めた生徒……そんなの俺が放っておくわけがないだろ?」

『迷惑な話だな』

 

 肩を竦めてやれやれと首を振る斉木くんに、南雲会長は続ける。

 

「お前は一見、地味で平凡な生徒に見える。足の速さ以外は俺の目に留まることは無い。だが、俺は生憎と堀北先輩のことは買ってる。あの人がお前に何かを見ているのは間違いない」

 

 堀北元会長は最後のリレーのあと、斉木くんに握手を求めていた。

 その姿は全校生徒が見ていて、だからこそみんなの斉木くんに対する興味関心が増幅したんだろう。

 ただそれは斉木くんにとって、迷惑というか、悪い方面での影響が多いと思う。

 現にこうして南雲会長に絡まれているわけだし。

 

「あの南雲会長、私と斉木くんにどうして欲しいんですか?」

「そうだな、一之瀬にはこの前も打診した通り生徒会に入って欲しい。もちろん、この前に俺が提示した条件はナシでだ」

 

 意外なことに、南雲会長は以前の交換条件を無かったことにしてくれるみたい。

 普通に考えてその方が嬉しいけど、そんなにあっさりと折れるものなのかな。

 

「斉木には堀北先輩が卒業したあと、俺の欲求を満たす遊び相手になって欲しいのさ。これからが楽しみだな、斉木?」

 

 獰猛な獣のような目で斉木くんを見据える南雲会長に対して、斉木くんは何も感じていないのか淡々と答える。

 

『僕にその気はないぞ』

「そうはいかないさ。今までは同学年内だけの試験ばかりだったがこれからは違う。学校全体を巻き込んだもっとどデカい特別試験をするつもりだ」

『勝手にしてくれ。僕は付き合う気はない』

「そうはいかないだろ。どう取り組むかはお前の好きにすればいいが下手すれば退学だぜ? お前かお前のクラスメイトの誰かが」

 

 脅すような言い方に斉木くんが。

 

『試験の度に僕に絡んでくるつもりなのか?』

「さぁ、それはどうだろうな。お前が俺の退屈を紛らわしてくれるかどうかにかかってる」

 

 ニィと口角を上げて、笑う南雲会長。

 その顔を見た瞬間、私の背筋に悪寒が走った。

 あの笑顔は何か企んでいる人の顔だ。

 

「ま、今日は一之瀬とデートかなんか知らないが遊ぶ約束をしてるみたいだしな。それに俺も地蔵みたいなお前の顔を眺めるよりはカラオケを楽しみたい」

 

 そう言い残して踵を返す南雲会長の背中に斉木くんが声をかける。

 

『じゃあ今からお前の退屈とやらを埋めてやろうか?』

「はぁ?」

「えっ?」

 

 今度は斉木くんの方から南雲会長に挑発した。

 まさかの展開に2人の会話を黙って聞いていたけど、つい声が出てしまった。

 

「斉木くん!」

「へぇ、意外とノリがいいな。いいだろう、せっかくの申し出だ。受けてやるよ」

 

 なんでこんなノリノリで話が進んでるの!? 

 というか、私はこの状況についていけないんだけど!? 

 

『言っておくがそっちが挑戦者(チャレンジャー)だからな?』

「ガキが、リレーで勝ったくらいで調子に乗るなよ」

 

 南雲会長と斉木くんはバチバチに火花を散らして睨み合っているけど、とりあえず今のうちに聞いておかないと。

 

「ちょ、ちょっと斉木くん! ここでそんなこと……」

『僕が勝ったら僕と一之瀬さんには手出ししない。負けたら、そっちの条件を僕が呑もう』

「いいぜ。ただし、こっちの条件には一之瀬の生徒会入り、それも一之瀬がBクラスになったと考えられる理由も話してもらう条件は変えずにな。お前は勝負の内容次第だが……まあ俺の奴隷としてこき使ってやるよ」

『一之瀬さんは関係ないだろう。僕とお前の勝負だぞ』

「そっちの条件に一之瀬が入ってるんだ。入れるのは当然だろ?」

 

 そう返す南雲会長に斉木くんは私の方を見た。

 ここでその眼差しはズルいよ。

 仮に私は南雲会長からは逃げられたとしても、斉木くんが生徒会に入れられてこき使われるかもと思うと心が痛む。

 でも、これは断るべきだよね……。

 そう思っていると南雲会長が追い打ちをかけるように言った。

 

「お前が決めろよ、一之瀬」

「っ……」

 

 正直なところ、勝負の内容によると言いたい。

 足の速さなら斉木くんに軍配が上がるけど、他はどうだろう。

 学力は同じくらいかもしれないけど、ここでやる勝負とすれば遊技場でやることになると思う。

 だとしたら、ビリヤードやダーツ、ボウリングとかその辺だけど、遊び慣れてそうな南雲会長に対して斉木くんはそれらをやったことがある感じがしない。

 でも、私には何故か確信があった。

 斉木くんなら、勝ってくれるって。

 体育祭の時がそうだったように、私が知らないところで進んでいた坂柳さんとの勝負の時のように。

 

「分かりました。私も条件に入れてもらって構いません」

「よし決まりだな」

 

 南雲会長は不敵に笑うと続けて言った。

 

「じゃあアイツらを呼び戻してから上の遊技場にいくぞ。そこで3本、いや少しでもお前に勝ちを拾える可能性をやるために5本勝負にしてやるよ」

『任せる』

「一之瀬とデート中で、せっかくのクリスマスが台無しになりそうなのに随分と余裕そうじゃないか?」

 

 煽りを重ねてくる南雲会長に斉木くんは動じずに、南雲会長の前に進むと彼を見上げる。

 

『いや、良いクリスマスになる。来年からお前に絡まれなくて済むからな』

 

 まるで勝てんぜお前はとでも言いたげな斉木くんの姿に、南雲会長は目を見開いて驚いている。

 

「へぇ……随分と舐められたもんだな?」

『そう思ってもらって結構だ。普通の理解力があれば確認は不要だと思うが』

 

 南雲会長の声音に憤怒の感情が乗る。

 いくら尊敬する堀北先輩が目をつけた後輩だからといって、斉木くんの明らかな宣戦布告は聞き逃せなかったらしい。

 南雲会長が何か言おうとするよりも先に斉木くんは私の方に戻ってくる。

 

『さっさとさっきの知り合いたちを呼ぶなりしてくれ』

 

 南雲会長は深呼吸をすると気持ちを切り替えたのか、いつものような冷静な表情に戻ってから言った。

 

「いや、先に俺たちが行くぞ。アイツらには来させる」

 

 南雲会長は私たちに背を向けて、遊技場へと向かっていく。

 道中南雲会長は一度もこちらを見ることはなかった。

 斉木くんはというと、何事もなかったかのように普段通りだった。

 私は何も出来ないけど、せめて斉木くんの勝利を願うだけだった。

 





言っとくけど、そっちがチャレンジャーだから。
勝てんぜお前は。
これを言った人たちは負けてます。
負けフラグってやつです。
つまりは斉木も……。

いい飯を食ってこっからデザートとシャレこもうとしたら変なのに絡まれるし、これからも遊ぼうぜとか気安く誘われた楠雄のストレス値が高まりました。
なお楠雄単体への脅しなら大丈夫だったけど、お前のクラスメイトも退学になるかもという言葉がトリガーになりました

毎回絡まれるなら体育祭の時とは違って周囲の目線がそう多くない今日に全て根こそぎ叩き潰しておいた方がいいかとなった楠雄くん
ついでに一之瀬が憧れていた先輩を彼女の前で力の差を見せつけて叩きのめすことでドン引きさせて好感度を下げるっつー完璧な作戦ッスよ〜!

朝比奈さん何気に初登場。
なお楠雄に声かけた理由は、リレーだけではありますが天狗になっていた雅を真正面から小細工無しの実力で倒したからです。
好感度65なのでそこそこやばめ。

てか一之瀬さんさ、こんな無表情で受け答えも適当な男の子のこと何がいいの?え?リレーで勝ってくれた?それはまぁ……え?テストでも100点?いや1科目くらいなら……って掘れば掘るほど話が出てくるなぁ!なんやこの自称普通の生徒。

てことで次回堀北会長が知れば見たいと望むであろう5本勝負です
今日2本投稿やったから明日は休みます
ではでは皆様はお身体に気をつけて
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