ようこそ超能力者のいる教室へ -1年生編-   作:オールF

95 / 129
そういやこんな回あったなと思いながら書きました
柴田にしておいたおかげで後半は書きやすかったのですが書いてる途中で眠気が来てしまって、少し寝るかと寝ていたらかなり遅れました
すまない


男の友情、敬意、頂点に立つ者は

 普段の学校なら土曜日は休みなんだが、この混合合宿の間は授業がある。

 面倒ではあるけど、授業は午前だけで午後からは自由時間になっている。

 木曜日から始まった特別試験も早くも3日目。

 グループを組んだ時は神崎が不安材料って言ってた高円寺は噂で聞いていたほど自由人というわけでもなかった。

 話せば割と答えてくれるし、難解な返しをされた時は楠雄に聞けばどういうことか教えてもらえるから、コミュニケーションには困っていない。

 龍園の方も今回は本人なりに真面目にやると言っていた通り、 昨日の朝ごはん作りにも参加していた。

 もっとも炊事は得意じゃないのか野菜を洗ったり、使った食器やボウルなどの洗い物を引き受けてくれたりと意外性が光る一幕があった。

 普段関わることの無いやつらの意外な一面が見れるというのは面白いもので、2学期の期末あたりからあまりいい噂を聞かなかった橋本も話しやすくて助かる。

 他クラスと交流する機会なんてほとんどないから、今回みたいなのは本当にありがたい。

 そんなことを考えていると、教壇に立っていた先生が口を開いた。

 

「これから、お前たちには自己紹介をしてもらう。だが、これは単なる自己紹介ではなく授業の一環であることを覚えておいて欲しい」

 

 どうやら俺たちは試験が終わるまで毎日スピーチをさせられるらしい。

 学年ごとにスピーチのテーマは違うらしいが判断基準は【声量】、【姿勢】、【内容】、【伝え方】の4つで、俺たち1年には【この1年を通じて何を学び、これから何を学んでいきたいか】というテーマと通達された。

 先輩たちは進路や就職といった将来の展望を含んだ内容になるみたいだ。

 

「どうしたもんかなぁ」

「まあやるのは明日からだし気楽に考えていいんじゃないか?」

 

 休み時間になって、スピーチの内容をどうするか悩んでいると後ろに座っていた橋本がそう言ってきた。

 

「橋本はもうどうするか決まってるのか?」

「いや全然。まぁ評価基準は分かってるから教師ウケのいい内容を考えれば問題ないだろ」

 

 な? と橋本の隣に座る楠雄に振るが、楠雄は持ち込んだ本を読むのに夢中みたいで適当に相槌を打つだけだった。

 

「そういや読む本変わってないか? 何冊持ってきてるんだ?」

「あぁ、これはDクラスの椎名って子から借りてるやつだな」

 

 楠雄とは行きのバスで隣の席だったから来る時に文庫本を読んでいるのを見た。

 しかし今は少しサイズが大きくなっていたため、そのことを指摘すると橋本が答えてくれる。

 

『これも僕が持ってきた本だ』

「あれ? そうなの?」

「知ったかぶりかよ」

 

 だがそれは違うぞと反応した楠雄に橋本は少し驚いた様子を見せた。

 それに俺が茶化してみせると橋本はファスナーを閉じる動作を口でして見せる。

 お口チャックというやつか。

 楠雄が話してくれたついでに何かアドバイスを貰おうとしたら龍園がこっちにやってきた。

 

「クク、ひよりと随分と仲が良さそうだな」

 

 龍園は椎名のことを下の名前で呼んでるらしく、堀北先輩の妹の方も下の名前で呼んでいた。

 2人ともロングヘアで物静かなところは共通してるが、椎名の方は雰囲気通り話し方が穏やかなのに対して、堀北妹の方はどちらかといえば凛とした感じだった。

 龍園の中で下の名前の呼ぶ基準みたいなのがあるんだろうなとは思ったが聞いたところで答えてくれないだろうし、実の兄貴がいる前で訊くのは野暮かと俺なりに気を回しているのだ。

 

『そうか? 普通だと思うが』

「本の貸し借りなんて仲のいいやつがやることだろ」

『偏見だな』

 

 楠雄と椎名が仲が良いという話はBクラス内ではあまり聞いたことがなく、浜口と神崎も首を傾げていたが、本の貸し借りをしている間柄なら龍園の言う通り仲が良いのかもしれない。

 そう思っていると口をチャックで閉じていたはずの橋本が口を開いた。

 

「龍園に物貸したら一生返って来なさそうだな」

「たしかにな。お前の物は俺の物って言って二度と返してくれなさそうだ」

「俺がわざわざ誰かに物なんて借りるかよ。欲しけりゃ奪う。そんだけだ」

 

 不敵に笑った龍園に今までならあまりいい感情を抱かなかったが、今はそこまで悪い感情を持っていないため笑顔で返せる。

 

 その日の夕食は初日から引き続きサッカー部のみんなと摂った。

 洋介中心のCクラスのグループもどうやら上手くいっているらしく、どこか誇らしげに話していた。

 

「そういえば、高円寺くんはどうしてるかな? 彼のことだからわがままとか言ったりしてなきゃいいんだけど……」

「ん? いやまぁ割と変わったとこはあるけど別にちゃんとやってくれてるぜ?」

 

 今日のメニューの乗ったトレーをいつも食べている席に運びながら洋介にそう返すと、何故かやや驚いていた。

 

「……え?」

「え?」

 

 何を驚くところがあったかわからないが、飯当番にも来たし、清掃も座禅も真面目かはわからないがやりはしているし、持久走の時は楽しそうに走っているが。

 そんなことを考えていると食堂内で小さなざわめきが起きる。

 

「ん? なんだ?」

 

 チラリと話題の中心になっているのであろう場所を見て俺は「あぁね」と声を漏らす。

 それにつられて洋介も同じようにその方向を向いて「あっ」と声を上げた。

 合宿が始まってから楠雄は本来はあまり目立たないのであろう端っこの席に座っている。

 向かいに橋本がいるが、2学期末から流れ始めた噂もあって彼に近づこうとする生徒はあまりおらずあの空間のみ生徒が寄らないという現象が起きていた。

 しかし今日はその橋本の隣に龍園が座っており、斉木の隣には洋介が話題にあげた高円寺が座っていたのだ。

 

「斉木くん、大丈夫かな……?」

「楠雄なら大丈夫だろ」

 

 俺も3日前くらいなら心配してたかもしれないが、同じグループ内で共に過ごしているため、楠雄があの2人に動じないことを知っている。

 むしろ楠雄の方も割とマイペースだからなぁ。

 俺たちの方が驚かされたり、龍園と高円寺を呆れさせたりすることもあった。

 それを知らない洋介は楠雄が心配なのかちらちらと見ながら箸を進める。

 

「ま、楠雄なら大丈夫だからさ。気にすんなよ。さっさと食べようぜ」

「う、うん……」

 

 俺がそう言うと洋介は他の部員たちと会話を交えながら食事をするが、やはり気になるようで途中で何度も振り返っていた。

 お人好しな部分も洋介の魅力だが、人のことを気にしすぎだな。

 

 そんなこんなで食事が終わり、3日目の大浴場で事件は起きた。

 事件といっても悪い話じゃない。

 男の勲章をかけた戦いが起こっただけの事だ。

 

「おっ神崎! こっちこっち!」

 

 俺は入口に立ったまま話していた神崎を見つけると手を振った。

 隣には綾小路もいて、綾小路の方には山内が声をかけた。

 

「綾小路〜お前も来いよ〜」

 

 2人は怪訝な顔をしつつも、こちらにやってくると神崎の方から「どうした?」と聞いてくる。

 

「いやさぁ、実はちょっと変なことで山内たちと盛り上がっちゃってさ」

「変なこと?」

 

 なんだそれはとさらに問いかけてくる神崎に俺は笑いながら返す。

 

「学年で1番アレが大きいのは誰かって話になったんだよ」

「アレ、とは?」

「決まってるじゃんココだよココ!」

 

 察しの悪い神崎に俺は白いタオルを巻いた腰元の中心を指す。

 

「……そうか、面白いことをしているな」

 

 そうは言いつつも神崎の顔は全然面白そうじゃない。

 これは呆れている時の顔だ。

 

「いや俺だってガキっぽいなって思ってるんだぜ? けどさ、意外と盛り上がるんだよコレが」

 

 盛り上がるつっても、ココが今盛り上がっちゃったら終わりなわけだが。

 けれど神崎と綾小路にはこの戦いの良さが分かっていないらしく「さっぱりわからない」と首を傾げていた。

 

「ちっ、臆病者は付いてこなくていい!」

「そうさせてもらうよ」

「俺もだ……」

 

 あれぇ? 

 綾小路と神崎はこの場を離れて戦いの場から消えようとする。

 せっかく究極の聖戦が始まるかもしれないのに勿体ねぇなと思っていると、綾小路の方はすぐに戻ってきた。

 

「今のところ誰が暫定王者なんだよ」

 

 話を聞きつけてやってきた須藤に両肩をがっちりと掴まれて。

 そんな須藤は腰にタオルを巻かずに堂々とした佇まいで、腰に下げた武器もそれはもう立派なものだった。

 

「おぉ……さすが須藤」

 

 肉体に違わぬ筋肉質な剛直を持った須藤に俺は思わず賞賛の言葉を吐く。

 そして、そんな強者の疑問に答えた。

 

「暫定王者はDクラスの金田だ」

「金田ァ? あんなひょろメガネが?」

 

 退け、と俺を押し退けると同じクラスで気心の知れている山内たちに合流していく。

 

「来てくれたか健! お前だけが頼りだ!」

「任せとけ」

 

 Cクラスの代表として須藤が参戦すると、戦いに巻き込まれた金田は当惑しつつも須藤と向かい合う。

 

「風呂の中までメガネかよ」

「そうしないと視界が悪すぎて歩けませんからね……」

「そうかよ」

 

 短い問答の後、2人は並ぶ。

 その大きさを見比べやすいように。

 

「っしゃあ!!」

 

 勝敗はほんの一瞬だった。

 須藤が高らかにガッツポーズをする声が響き渡り、金田は敗者としてその場から逃げ出した。

 

「俺が王者で決まりだな」

 

 須藤の強さはそれは圧倒的だった。

 やつのあの大きさを見て挑むやつはそうはいない。

 そう思っていたが、Aクラスの戸塚が不敵に微笑んだ。

 

「王者? 笑わせんなよ須藤」

 

 高らかに笑い続ける須藤に戸塚は食って掛かる。

 しかし、戸塚の戦闘力は見る限り戦うまでもなく須藤に軍杯が上がる。

 

「俺とお前じゃ勝負にならねぇよ」

「たしかにな……だが相手をするのは俺じゃない」

「誰が相手でも同じだ」

「ふんっ! 俺たちの葛城さんに勝てると思うなよ!!」

 

 どうやら戦うのは戸塚ではなく、葛城のようで突然名前を呼ばれた葛城はというと、これから頭を洗おうとシャンプーに手を伸ばしたところだった。

 

「やめろ弥彦。俺はこんなくだらない争いに興味がない」

「そうはいきませんよ、男の意地、夢、青春、希望……Aクラスの威信にかけて勝たなければ!」

「く、くだらなすぎる……」

 

 やや大袈裟に言う戸塚に葛城は引きつつ、勝負に参加する気は無さそうだったが、そんな葛城の所に橋本が近づく。

 

「そうでもないんじゃないか葛城。弥彦の言うようにAクラスにもプライドがある。……須藤に立ち向かえるのはお前の持っているソレくらいなものじゃないか?」

 

 橋本は葛城のソレを確認して須藤と戦えるモノだと確信したのだろう。

 不敵に微笑んでは余裕ぶった須藤に目をやる。

 

「来いよ、葛城」

 

 その須藤はゴゴゴゴ……というオーラが見えるかの如く強者の出で立ちで葛城を待つ。

 

「……全く、このままでは落ち着いて頭を洗うこともできん」

 

 静の態度を崩そうとしなかった葛城が大浴場のボルテージに当てられてか、ゆっくりと立ち上がる。

 

「ようやくその気になったか。勝負は一瞬だぜ、葛城」

「……好きにしてくれ」

 

 立ち上がり、ぺたぺたと大浴場のタイルを踏みながら葛城は須藤と並ぶ。

 大きな身体に、周囲が感嘆の息を漏らす。

 

「こ、これは……!?」

 

 判定に回った山内がしゃがみこみ、入念な審査の結果引き分けが決まる。

 アソコのデカさに引き分けもないだろと俺も確認しにいくが、その判断は間違ってはいなかった。

 

「お前らの死闘見せてもらったがよ、甘いな」

 

 そう言って1位が決まったというのに乱入してきた石崎によって戦いはさらに上のステージに進む。

 

「アルベルト、お前の出番だ!」

 

 その名前を聞いて周囲がざわつくのを感じた。

 誰もが一度は頭に過ぎらせながらも、あえてアルベルトのことは外していた。

 暗黙の了解が破られてしまい、須藤ですら「卑怯だろ!」と叫んでいる。

 

「抜かせ! 学年1位を決める試合ならアルベルトだって俺たちの味方だ!」

 

 石崎の話はもっともではあるが、身体の骨格、遺伝子からして違う外国人の肉体に既に恐怖を感じざるを得ない。

 須藤や葛城も恵まれた体格をしているが、その比じゃない。

 

「くっ、でけぇ……」

 

 中学生と大学生くらいの差がある体格差に須藤は恐れ戦くが、体格の差が絶対的な差ではない。

 

「かかってこいやぁ!」

 

 恐れずに須藤は前に出る。

 王者として負ける訳にはいかなかったのだろう。

 しかし、石崎によって取り払われたバスタオルから現れたソレは、須藤だけではなく見ていた俺たちに負けを確信させるには十分であった。

 

「か、勝てるわけが無い……!」

 

 床に手と膝をつき声を震わせて跪いた須藤と、それを見て共に戦意を喪失した池と山内も崩れ落ちる。

 もはやかなう相手などいない。

 そう思っていた時だった。

 

「はっはっはっ! 君たちはチルドレンのような愉快なことをしているようだねぇ」

 

 この重い空気を一瞬で両断する爽やかな声の主はザパァっと湯船から出てくると、金色の整った髪をかきあげた。

 

「レッドヘアーくんにしては健闘していたようだがねぇ」

「んだ、てめぇ、や、やめろ! やつは伝説の日系アメリカ人なんだぞ! か、勝てるわけがない!」

「私は常に完璧な存在だ。男としても、究極体なのだよ」

 

 飄々とした態度を崩さず、高円寺は湯けむりに隠れたまま須藤を見下す。

 争うまでもないと語る高円寺に、山内は鼻で笑った。

 

「そんなこと言って、アレはそうでもなかったりするんじゃないのか?」

「実に愚かだねぇ。しかしたまには君たちの遊びに付き合ってあげるのもいいかもしれないねぇ。ここしばらくはコンディションも気分もいいからねぇ」

 

 あえて武器を隠すようにしてタオルを巻いた高円寺は、湯船に入れていた足を外へと出し、1歩、また1歩とアルベルトへと向かっていく。

 

「へっ、近づいてくるのかよ、アルベルトに」

「ふふ、光栄に思うがいいよ。本来、男に見せる主義ではないのだがね。一度きりのサービスさ」

 

 勝負は最初から決まっているが、俺達には生き証人になってもらおうと高円寺はポーシングを決めてヴェールに包まれたタオルを取り払う。

 

「君たちが私の武器を見るのはこれが最初で最後だ」

「OH MY GOD……」

 

 本当に人間かと思うほど、もはや国籍を超えた圧倒的なパワーの前にアルベルトは狼狽し、須藤は再び崩れ去った。

 

「ば、馬鹿な……ほんとに人間か!?」

 

 戦車がライフルやバズーカに負けるか? と言わんばかりの圧倒的な差がそこにはあった。

 もはや、高円寺の道を塞ぐものなど現れないであろうと誰もが絶望した時だった。

 

「ククク、まてよ高円寺」

 

 声がかかった。

 高円寺が先程までいた湯船にいた龍園が、この土壇場で戦いに参加してきた。

 

「まさか君が私の相手を? やめておきたまえ」

「いいや。さすがの俺でもソレには勝てねぇよ。だが、良い勝負をするやつが1人だけいるかもしれないぜ?」

 

 匂わせる表現をする龍園に、俺たちは周囲を見渡す。

 そんな存在はいるはずがない。

 

「ほう? ソレは誰かね?」

 

 高円寺も興味があるのか、龍園に問いかける。

 

「さあな? だが、俺の勘違いじゃなければ、この場で存在感を消してこの時間が過ぎ去るのを待って風呂に入っているのは、1人しかいねぇみたいだが?」

 

 龍園の言葉に、俺は「まさか……」と龍園と同じく湯船に浸かったまま微動だにしない楠雄を見た。

 

「いや、流石にないだろ……」

「足は速くてもアレの大きさは関係ないしなぁ……」

「でもずっとあそこにいるよな」

 

 口々に楠雄へと疑惑の目を向け始める中、須藤が拳を握って声を張り上げる。

 

「斉木! 出て来い!」

「斉木! 諦めて降参しろ!」

「須藤の仇を討ってくれ!」

 

 山内に続いて俺もそれぞれの思いをのせて楠雄に呼びかける。

 しかし、楠雄はメガネのレンズを曇らせたまま湯船から立ち上がろうとはしない。

 

『僕以外にもアソコを見せていないやつはいるだろう』

「誰だその臆病者は!」

 

 楠雄の言葉に須藤が吠えると『お前の隣にいるだろう』と、俺たちは須藤の隣に立ち、たしかにまだタオルを巻いたままアレを見せていない綾小路を見た。

 

「えぇ? 冗談だろ?」

「ああ、斉木のタチの悪い冗談だ」

 

 そう言って戸塚が綾小路に睨みを利かせるが、綾小路は一歩下がって見せることを拒否する。

 

「そうかもしれないが一応チェックさせてくれよ」

 

 山内と戸塚が綾小路を挟むように近づく。

 ならば俺はと湯船にいる楠雄へと近づいた。

 

「はっはっはっ、恥ずかしがることはないさ斉木ボーイも綾小路ボーイも。プロテクターがついていたとしても、それは日本男児の多くが持っているもの。保護してくれる大切なものさ」

 

 だから怖がることはない。

 友達になろうと言うかのような怪しい色気を出す高円寺の言葉に、龍園は歯を見せて笑う。

 

「お前ら、コールしてやれ、コールを」

 

 戦いには参加しないのに龍園が湯船から生徒たちを焚き付ける。

 

「外せ! 外せ! 外せ!」

「出ろ! 出ろ! 出ろ!」

 

 突如として沸き起こる、男子一同からのコールに綾小路と斉木は嫌そうな顔を浮かべる。

 

「……分かった」

 

 先に折れたのは綾小路の方で、それは覚悟を決めた男の顔だった。

 鳴り止まないコールを受けた綾小路は腰に巻いたタオルを外すと、続いていたコールがボリュームを一気に落としていく。

 

「ま、マジかよ……」

「あ、ありえん……!」

 

 先程までのうるささが嘘のように静寂な時間が訪れると共に、ヒソヒソと話し始める。

 綾小路の見た目はそれこそ俺たちの理想のような形をしていた。

 バランスの取れた美しいフォルムと色艶、まさにギリシャの彫刻像と表されるような造形美。

 

「ふむ、美しいバランスだ。だが、それ以上でも以下でもない。経験では私には到底敵わないよ」

 

 綾小路は自らを鼓舞するように高円寺と向き合う。

 そして、戦いが始まった。

 

「どうだ、勝負は!?」

「わ、わからない……だが綾小路もかなり強い」

 

 勝敗を託された山内は腰を低くして唸る。

 勝敗の判定の難しい戦いが繰り広げられる中、龍園が「やるじゃねぇか、綾小路」と煽るように褒め称える。

 

「次はお前だぜ斉木ぃ」

 

 綾小路との勝負で盛り上がりを見せている中、龍園は湯船に浸かり続けている楠雄を煽る。

 

「やっちまえ、楠雄!」

「俺は斉木を信じるぞ!」

「高円寺を倒すのは斉木しかいない!」

「クク、お前がやらなきゃ誰がやる。お前が行かなきゃ高円寺の天下が続くだけだ。このままでいいのかよ」

 

 このとき、楠雄が出ずに終われば龍園の言ったように高円寺の天下が続いてしまう。

 それが許されていいものなのか? 

 

「斉木、悪いことは言わん……そろそろ諦めたらどうだ?」

 

 葛城が追い打ちをかけると斉木はタオルを手に取って湯船から上がる。

 そして、まるでTレックスのようにそびえ立つ高円寺と綾小路のもとへと歩いていく。

 

「ようやくその気になったかね、斉木ボーイ」

「オレも巻き込んだんだ。逃げるなんてするなよ」

 

 Cクラスの強者2人を前にして楠雄はメガネのブリッジを上げ直すと、『1回だけだぞ』とタオルを取り去り、まずは目の前の2人にしか見えないようにその武器を晒す。

 

「なん、だと……」

「……ふふふっ、ふははははは! まさか、この私が敗北を認めざるを得ないとは!! さすがだよ斉木ボーイ、いや、楠雄ボーイ! いやボーイと付けるのも失礼だねぇ。ンンン、これからは敬意と親愛を込めて楠雄と呼ばせてもらうよ!」

 

 戦慄する綾小路と、まさかまさかの負けを認めて笑う高円寺に、俺たちは我慢できずに楠雄のソレを見るべく、前に回り込んだ。

 

「お、おい、ま、マジかよ」

「や、やべぇだろ……」

 

 現れた楠雄のモノはそれは薄い本やメロンの本屋さんに置いてあるような単行本に載った女の子が悦ぶ、これがいいと叫ぶのであろうというような、男として負けを認めざるを得ない大きさ太さ、長さを誇っていた。

 逞しい楠雄のソレは、一瞬で戦いを終わらせる。

 

「おいおい嘘だろ……」

「あの2人がTレックスなら、あんなのゴジラじゃねぇか……」

 

 山内は言葉を失い、須藤は開いた口が塞がらないというように口を半開きにして震える。

 戦いに参加すらできなかった俺達すらそうだった。

 

「楠雄、流石は私が認めた男なだけある、いや期待以上だ……ふふふ、ははは!」

 

 高円寺は負けたというのに清々しい表情を浮かべて大浴場から去っていく。

 綾小路の方は負けたショックが大きいのか、いや戦いに引きずり出された挙句にこの仕打ちが気に入らないのか無言で湯船に入ってしまう。

 そして、楠雄……いや楠雄さんはタオルを巻き直すと入っていた湯船に戻る前に自分を戦いの場に引きずり出した龍園の所へ行く。

 

「な、なんだよ」

 

 無言の圧が龍園を襲う。

 周りの奴らはそんな龍園を可哀想なものを見る目で見ていた。

 楠雄さんを怒らせちゃったかと俺も心配になるが、楠雄さんは『お前明日の味噌汁具なしな』とだけ言って別の湯船へと浸かり始めた。

 こうして俺と山内の会話から始まった男の戦いは、斉木楠雄さんの勝利で幕を閉じるのだった。

 





楠雄は大トリ飾らされて負けるのは癪だからとテレパシーでみんなが思う理想のアレを拾って、催眠でそう見えるように操作した
まあそのせいで高円寺にはライバル認定確定にされ、綾小路にはそれでこそ俺の観察対象だと心の中で褒められた。

燃堂のは圧倒的らしいけど、斉木楠雄原作で楠雄のアレの大きさに関する言及はない
そのためまあ平均か、少し大きいくらいにしてるのかなとは思うが可変可能なのでそこんとこだが俺にもよくわからん

てことで今回はこのくらいで。
ではまた次回

斉木のアソコ

  • デカイ
  • 普通
  • 小さい
  • 分からないいつだってそうだ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。