てことで8……?9か
9巻です
そんなに見てていい話ではないでしょうが、一之瀬帆波や新Aクラスにとっては必要な話になりますので見ていってくださいませ
新AクラスのΨ難
短くも長いと感じた林間学校が終わり、再び高度育成高等学校へと戻った2月に、僕の所属するBクラスはAクラスへと昇格した。
理由は林間学校でBクラス中心の小グループが1位になり、クラスポイントが336ポイント上乗せされたからだ
もちろんBクラス女子がメインで構成されていた小グループが入っていた大グループが2位であったのも大きい。
差は100ポイント未満と大きくはないが一応はAクラスに上がることができたため、Bクラス……じゃなかった……今までもそうだがこのクラス変動システムは呼称する時に厄介すぎる。
しかも今回は自分のいるクラスだから余計にだ。
龍園のように明確なリーダーのいるクラスなら呼びやすいが、一之瀬さんクラスというのはなんだか幼稚な呼び方のようがして気が引ける。
と、話が逸れたが南雲の学年と同じように1年生の間にAクラスになったことで、うちのクラスは浮き足立っていた。
過去形なのはある事情があり、そういった空気からはやや遠く離れたものになりつつあったからだ。
「楠雄、まただぜ」
いつものように本を読んでいると柴田が僕の席にやって来て、朝から暗い表情を浮かべていた。
また、というのは柴田が持ってきたビラである。
【一之瀬帆波は援助を受けて交際していた】
「こんなの誰が言ってんだよ……」
胸糞悪いぜと呟いて項垂れる柴田に、前の席に座って話を聞いてたのであろう神崎がこちらを向く。
「噂の出処は確認中だが、どうやらAク……じゃなくてBクラスが絡んでいる可能性が高いな」
「マジかよ、なんだ? 自分たちがクラス落ちしたからって僻んでるのかよ」
そのビラは林間学校が終わり、2月1日にクラスの入れ替わりが公表されてから1年生のポストにビラが投函されるようになった。
内容自体は一之瀬さんを誹謗中傷するものであり、暴力沙汰を起こした過去があるや窃盗、強盗を行った、薬物の使用歴があるなど、クラスメイトの多くがその陰湿さに苛立ちを感じており、なんとか止めさせようと犯人探しをしている。
しかし、一之瀬さんは根も葉もないことだから気にしないでとクラスメイトに呼びかけており平静を装っているが、内心ではそうでもない。
「これってよ、名誉毀損とかで訴えられないのかよ」
「これだけだと少し難しいな(それにこの閉鎖的な空間にあるこの学校では尚更)」
社会的な罰則は期待できないが、学校の裁量で罰を与えることは可能かもしれない。
だが、今のところ学校側には動く気配見られない。
というか一之瀬さんが箝口令を敷いているため、学校側には伝わっていないというのが正しいだろう。
いじめも犯罪も、事が起きてからではなく、事が起きていることが知られない限りは無かったことになるのだ。
それがどれだけ重大なものであろうとも、当事者が黙り続ければそれまでなのである。
バレなきゃ犯罪じゃないんですよ、というやつだ。
……まあそれも僕は誰がどのような目的を持って噂を流しているのかは分かっているんだが。
ただ、この件に僕が関与してしまうと相手の思うつぼだし、一之瀬さん自身が乗り越えるべき壁だと思うので今のところは静観の姿勢をとっている。
とはいえ、一之瀬さんに精神的疾患などの被害が出れば別だが。
「楠雄、俺は許せねえよ。一之瀬のことを悪く言うなんて……一之瀬を悪く言う奴らなんて俺が全員バラバラに……」
「バラバラにしたらお前が加害者として処罰を受けることになる。その事の方が一之瀬は悲しむんじゃないか?」
怒りを顔に出しながら拳を握りしめる柴田に神崎が注意すると、ぐっと唸る。
「それは……そうだけどさ……!」
「感情的になってはいけない。特に今はな」
一之瀬さんへの信頼は揺らいでこそいないが、クラスメイト以外の人達は真実か嘘かよりも、こんな噂が立っているということに憤りを感じているものがほとんどだ。
ここで下手を打てば余計な火種を作ることにもなりかねない。
ましてや柴田のように他クラスに喧嘩を売るような真似をすれば、それを咎める教師陣が出るのは確実だ。
「とにかくだ、まずは冷静になれ」
神崎は柴田を落ち着かせるために背中を撫でると、彼は悔しそうに唇を噛み締めていた。
「楠雄、お前なら……(なんとかできるんじゃないか)」
「柴田」
「……っ、悪い……(神崎の言う通り、頭冷やしてくるか……)ちょっとトイレ行ってくるわ」
「あぁ、だが授業には遅れるなよ」
柴田が言おうとした言葉を咎めるように神崎が止めると、彼は自分の失言に気づき謝罪して教室を出ていく。
僕がなんとかしようと思えば確かに簡単だ。
しかし、先程も述べたように相手の思惑に乗るのは癪でしかないし、何より一之瀬さん自身が乗り越えるべき試練でもある。
彼女は優しく、仲間想いで面倒見もいい女性だ。
「すまん。柴田も一之瀬のことを思ってのことだ」
神崎は申し訳なさそうに頭を下げてくるが、僕は別に何も言っていない。
必要以上に頼られるのは良い気がしないというのは事実ではあるが、それは僕がこのクラスで、いやこの学校で力を示し過ぎた結果だ。
柴田の気持ちはクラスメイトを思う純粋なものだし咎めることはない。
けれども、神崎の言うように他人に頼りすぎるのも良くない。
この学校を出れば、僕たちはきっと離れ離れになる。
その時、果たして今隣にいる人間が一緒にいるかと言われればその可能性は限りなく低い。
結局は自分の問題は自分でなんとかするしかない。
時間が解決してくれることもあるだろうが、この学校では簡単にはいかないだろう。
神崎が再び前を向いたのを見て、僕は本に再び視線を落とすが、先程の柴田の声はそこそこ大きかったため教室にいる連中の耳には届いていた。
(柴田くんの気持ちもわかるけど、帆波ちゃんが何もしなくていいって言うしなぁ)
(噂は間違いだって言うことくらいしか出来ないよな)
(一体誰がこんなことを……)
噂は自クラスだけではなく、他クラスにも広まっており、噂を広めたのがBクラスと分かれば、一之瀬さんの人望もあればどこかのクラスや柴田のような人間が抗議に行くかもしれない。
最悪の場合は抗争も覚悟しなければならないだろう。
今のところはBクラス以外からは同情的な視線を集めており、彼らも何かを察し始めたり、独自に動き出したりする頃合だろう。
僕はそれをただ眺めていることしかしないが、面倒事にならないことだけを祈るとしよう。
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教室が沈鬱な空気に包まれた放課後になり、僕は帰り支度を始める。
生徒の自主性とやらを重んじる高育の方針では宿題や課題などは滅多に出ないため、学校が終われば基本的には自由時間になる。
そのため部活動に所属している者は少し級友らと話をしてから部活に向かい、帰宅部の生徒も少し話してから帰ったり、僕のように手早く帰り支度を済ませて帰る者もいる。
姫野さんもまたその1人なのだが、今日はいつもより少し早いように思えた。
また神崎も同じように教室から出て行く。
神崎の方はどこかへ向かったようだが、姫野さんは下駄箱に向かう途中の廊下の壁にもたれていた。
「斉木、少し時間ある?」
教室を出る前からテレパシーで僕に用があることや、昼休み後から視線を向けていたため、彼女から声をかけられることはわかっていた。
姫野さんの話は簡潔で直ぐに終わるし、大した手間ではないから帰りながらでもいいならと応対する。
「一之瀬さんの噂のことなんだけど、斉木はどう思う?」
『どうとは?』
「噂の信憑性とかは置いておいてさ、この時期にやることじゃないじゃん。やるなら定期考査の前とか特別試験の前とか、もっと揺さぶりをかけるべき時にやるもんじゃない? だから意図がわからないっていうか」
姫野さんは一之瀬さんと仲が良くないわけではないが、相性が良くないという自覚が姫野さんにあるためあまり近付こうとはしていない。
話しかけられたら話すレベルの好感度はあるが、それ以上になることはない。
けれど、一之瀬さんがこれまでクラスのリーダーとして貢献してきたことは認めているらしく、それもあってか今回の件は姫野さんなりに心配している様子だった。
『それは噂を流している本人にしか分からないことだからな。噂を流す意味も理由もメリットも分からない僕たちには推測の域を出ない話になる』
一之瀬さんを精神的に揺さぶり新Aクラスの行動を阻害する目的なら姫野さんの言うように精神的動揺が効果的に発揮される定期考査や特別試験を狙うだろう。
しかし、2月が始まりクラスが動いたこの時期に噂を流した理由は姫野さんには見当がついていないらしく、僕に意見を求めてきたようだった。
「斉木の推理は?」
『特にないな。根も葉もないと一之瀬さん本人が言うのなら、ほとぼりが冷めるのを待つのが1番だ』
人の噂も七十五日という。
2ヶ月半は少し長いが、坂柳さんも僕が出てこないと分かれば潔く手を引……いてくれるといいが。
今は坂柳さんも一之瀬さんのウィークポイントがどこかを探している状態だ。
軽犯罪を犯したということはわかっているようだが、どれかまでは分かっていないため片っ端から疑いをかけて情報を引き出そうとしている段階だろう。
悪趣味だとは思うが、この学校にいる限りは遅かれ早かれ一之瀬さんが通ることになる道のように思える僕としては深く首を突っ込む気はない。
それに僕は他の連中よりも先に、強く、一之瀬さんからこの件に関わって欲しくないと釘を刺されている身だ。
白波さんや小橋さんといった一之瀬さんに近しいメンバーはそのことを本人から聞かされているが、姫野さんのように
聞いていない生徒も多い。
「(なんか斉木にしては冷たい……ううん、これが普通の反応、なんだよね)……そっか」
姫野さんは僕の言葉に納得はしていないようだったが、このまま話していても意味がないと悟ったのだろう。
「やっぱりそうだよね。ありがとう」
姫野さんはお礼を言い、そしてそれ以上は何も言わずに先に下駄箱へと歩き出していく。
今から僕も歩けばまた下駄箱で鉢合わせてしまうのは気まずいだろう。
そういえば、気まずいと言えばもう1人いたなと僕は遠目からこちらを見ている男へと目を向けた。
(うげっ、こっち見たってことは……気付いてるよな〜……神崎の方は上手く捲けたんだが)
撒いたのならさっさと帰れよと僕はため息をついて、踵を返した。
「ちょ、ちょっと、待ってくれよ! 気付いてるんなら声くらいかけてくれてもいいじゃねぇか、斉木」
僕が帰ろうとしたのを見て急いで駆け寄って来たのは橋本だった。
僕の元に着くなり大袈裟に肩で息をする橋本は呼吸を整えてから喋り出す。
「姫野と立て続けに悪いが、少し付き合ってくれないか?」
少し神妙な表情を浮かべた橋本は、僕を連れて学校から出ずに人通り少ない特別棟にやって来るとようやく口を開き始めた。
「こんなとこまで悪いな」
そう思うのなら電話とかで済ませてくれればいいんだがなと思いつつ、用件を話すように促す。
内容自体はわかっているが、言わないとこいつの気が済まないだろう。
「噂の件はとっくに耳に届いてるよな、一之瀬の件だ」
他クラスにまで届いているのに僕が知らなかったら耳ないのかというレベルの話になるだろう。
頷いてやると、橋本はいきなり頭を下げてきた。
「すまん! 姫さんには止めるように言ったんだが……俺には止められなかった」
飄々とした余裕のある態度を見せている橋本がこうして頭を下げている。
僕にとっては意外でもなんでもないのだが、驚いたふりはしておくべきと思って目を2ミリほど見開く。
「混合合宿の後だった、坂柳がBクラス、いや今のAクラス、一之瀬に対して噂を流そうと言ったのは」
あ、回想か?
長そうだな。
ざっくりでいいぞ。
回想用のカギ括弧は『』が定番だがもう僕が使ってしまっているからな。
それに理由も知っているし、回想はなしでいいだろう。
「(南雲会長も1枚噛んでそうなんだが)俺が確証もなく噂を流すのは危険だって言ったら、今回の件には関わらなくていいって外されてな。なのに、坂柳たちは俺が噂を流してるかのように吹聴しててな。おかげで神崎に目をつけられてさっきまでコソコソ逃げ回ってたんだ(神崎以外にも柴田とか混合合宿で同じグループになったヤツらには話しかけられて、どういうことだって詰められたしな)」
蝙蝠外交のはずが、トカゲの尻尾切りのように捨てられそうになり、さらには坂柳さんや鬼頭、神室さんらが流している噂の出処の犯人にされているのも当然僕は知っているし、それが坂柳さんの計略の一つだということも知っている。
橋本を坂柳派から孤立させることで、僕に対して助けを請わせて、事態の収拾に動かさせる。
マッチポンプじみたことをして、僕のトラブルシューティング能力を測ろうとしているのだろう。
それは災難だったなと同情するように声をかけてやれば、橋本は僕が事態の収束に向かうように動くと判断するだろう。
だがそれでは坂柳さんの思うツボすぎる。
『神崎に両津勘吉みたいに違う俺は犯人じゃないって言えばいいじゃないか』
「不良警官みたい言っても部長は信じてくれねぇし、仮にそうは言っても、じゃあ噂を止めてくれって頼まれるんだよ。今まで坂柳の右腕をやってきた手前、クラスのリーダーを止めるように頼まれるのは当然承知してるが、今の俺の立場は結構危ういんだ(姫さんが俺に対してドライなのは、斉木との連絡先を持ってることを神室から聞いたからなのか、林間学校で同じグループを組んだからなのかは分からねぇが……いやもしかしたらBがAになって鞍替えすると思われたのかもしれないが)」
全部ありうるそんだけだって気もするが。
前者2つは僕に生物的興味しかない坂柳さんにとっては別にどうでもいいと思えるはずだから、鞍替えしようという思考がスケスケだったのかもしれない。
橋本も橋本なりに苦労していることはわかったが、それは僕にとって知ったことでは無い。
『そういえば葛城は何も言ってこないのか?』
「え? あ、あぁ……くだらないことやってんなみたい目はしてくるな。多分一之瀬に限ってそんなことはないだろうと思ってるってのもあるが、坂柳に止めるように言っても、坂柳は私がやっているという証拠は? ありませんよね? ってはぐらかしてる感じだな」
気色の悪い裏声は坂柳さんの真似だと思いたいが、葛城としても確証がない以上は下手に動けないか。
「とにかく、斉木、お前なら坂柳を止められるんだろ? なんとかしてくれよ」
そう言われてもな、僕は駆け引きの世界に飛び込む気はないし、橋本が理不尽な退学の危機に晒されているというのなら手を貸してやるが、今はそうでもない。
『僕は橋本や坂柳さんが思っているような人間じゃない。過大評価はやめてくれ。はっきり言って迷惑だ』
突き放すように僕は橋本にそう言うと、橋本は呆気に取られた表情をしていた。
(なんだよそれ……)
僕は橋本に背を向けて歩き出す。
悪いがこれ以上目立つのは控えたい。
とはいえ……。
『仮に退学にさせられそうになったり、クラスでいじめのような目に遭うことがあれば手を貸してやる。それで勘弁してくれ』
「な……っ」
僕に関わってきたのは橋本の方ではあるが、僕も彼を周りからの好感度下げに利用しようとした節もある。
罪滅ぼしにはならないかもしれないが、僕にはそれくらいしかしてやれないからな。
橋本からの返答を待つことなく僕は来た道を引き返していく。
体育館の方で鬼頭や坂柳さんに賛同している生徒が噂を広めているテレパシーが聞こえたが、それも無視して帰路へと進む。
聞くに絶えない話はテレポートで実家に戻ってしまうに限る。
僕はそうやって見たくないものに蓋をした。
楠雄の怒りメーター 15%
これ以上キレたくないから逃げ帰るように実家に戻ってる
ママには「学校で嫌なことでもあったの?」って聞かれるしパパには気を遣われて「よし、久しぶりに風呂に一緒に入るか!父さんの背中を流してくれてもいいんだぞ!」とか言われたりしてる
バレンタインのことは完全に失念している
(クラスがそんな空気じゃないのもあって)
冷静になれと諭していた神崎もそこそこキレてる
楠雄が見て見ぬフリした体育館近くの出来事は原作通り
橋本が他の生徒に変わってるだけ
ただ綾小路が「斉木ならこれくらいさっさとケリをつけそうなもんだが」って思ってたりする
櫛田も思ってるし、椎名も思ってる
超能力者はそこまで万能じゃないのだ
南雲会長は1枚噛んでるかと言われると、多少の暴力沙汰は見逃すのと一之瀬過去にゼッテェなんかあったって!的な話は坂柳にしてる
原作と違って過去のこと一切知らないからね
橋本くんはBクラスグループに入ってたこともありBクラス側に肩入れしちゃってる
というか楠雄が圧倒的すぎるのと、思ってた以上に話しやすかったりしたのもでかい
高円寺と堀北兄に隠れているがこいつも楠雄にそこそこ脳を焼かれてる
しばらく暗い話が続くかもですが、今しばらくお付き合いください
チェケラ