『クリア・ノート』に転生しました。   作:ファウード編アニメ化まだですか?

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『最終決戦2』

「やった!」

 

 女の歓喜の声が聞こえる。

 僕が『ジャウロ・ザケルガ』の直撃を受けたのが、相当に嬉しかったらしい。

 ……やられた振りとか出来るかな?

 ふとそう思ったけれど……僕からは見えないけど二つ……いや三つの視線を感じる。

 そのどれもが、僕の生存を疑っていない。

 

「いいや、まだだ、シェリー」

 

 清麿は冷や汗を流して此方を……僕を見透そうとしているようだった。

 何故今の電撃を食らって無事なのか……土煙で僕を視認出来てない筈なのにその答えを求めて此方をじっと見つめている。

 

「……ふん。この程度で倒せたなど、端から思っておらんわ!」

 

ドガンッ!

 

 その瞬間、ゼオンの姿は消え……僕の目の前で拳を叩き込んでいた。

 

「っ……容赦ないね。服に焦げ目くらいはついたんだけど」

 

「ちっ……減らず口が」

 

 その一撃を両手をクロスして受け止めれば、ゼオンは舌打ちを鳴らし、次の一撃を叩き込んできた。

 重く、早く、鋭い一撃。

 これで肉体強化術なしだというのだから、本当にとんでもない存在に育ったものだ。

 それを受け止める僕はどうなんだ、という話でもあるけれど。

 

「やはり、か。清麿、シェリー。今の攻防でクリアの張っていた微弱なバリアは剥がせた。今レベルの術を食らわせれば倒すことが出来る……」

 

 ……流石は答えを出す者(アンサー・トーカー)、気付かれていたか。

 とはいえ清麿は気付いていなかった事から、これは経験の差か知識の差か……まぁどうでも良いか。

 

「……かもしれない」

 

 そんなデュフォーの曖昧な言葉に、シェリーの顔があからさまに愉悦に歪んだ。

 ……二人の関係性は()()とあまり変わっていなさそうかな?

 きっとデュフォーの『頭が悪いな』煽りにぶちギレたシーンがあったんだろう。

 

「あら? 貴方がそんな不確定な言葉を使うなんて珍しいじゃない。ご自慢の答えを出す者(アンサー・トーカー)も大した事ないのね?」

 

答えを出す者(アンサー・トーカー)も万能じゃない。知り得ない事柄から答えを出す事は出来ない。俺の答えはあくまでも今の状態のまま変化がなければ倒せるという答えでしかない。クリアの『完全体』とやらを目にした事もなければ情報もないのでは、正しい答えの出しようがない。『完全体』は未知数で答えが出ないと事前に言ってあっただろう? お前、やはり頭が悪いな。言われないとそんな事もわからないのか?」

 

 おお、()()で見たデュフォーに煽られて顔面の血管が顔から突き出すシェリーだ。

 良いものを見たな。

 しかし……細かく説明するとは、デュフォーも()()に比べればかなり丸くなってるようだ。

 ……大なり小なり変化はあったんだ、変わりもするか。

 

「デュフォーが直接見ても答えは出せないのか?」

 

「ああ、駄目だ。情報が不足しているのか、俺の答えを出す者(アンサー・トーカー)でも正しい答えを出すことが出来ない」

 

 僕を見透かそうとしてか、二人の答えを出す者(アンサー・トーカー)は僕から視線を外さない。

 ……彼等にとっても答えが出ない状況は初めて……もしくは殆どないのだろう。

 そんな状況が、負けてはいけない状態で起きているんだ……必死にもなるか。

 でもきっと、彼等には僕を見透すことは出来ないだろうね。

 

「ふん……ならばさっさと倒してしまえば関係ない! シェリー!」

 

「っ……! ええ! ブラゴ、行くわよ!」

 

「……そうだな、今は攻めるぞガッシュ!」

 

「ウヌ!」

 

 ブラゴとシェリー、清麿とガッシュ……二組の魔物と本の持ち主(パートナー)は気を取り直すように互いに視線を交わしあい、僕に向き直った。

 その間も僕はゼオンと近接でやりあっている……『バルスルク』を肉体強化術なしで弾き返すようなゼオンと殴りあっているのだから、少しは手加減して貰いたいものだ。

 

「『マーズ・ジケルドン!』」

 

「『ディオガ・グラビドン!』」

 

 ……容赦ないな。

 

「また余所見か!? 余裕だな!」

 

 感情のままに、ほんの僅かに大振りになったゼオンの拳が、頬を掠めてすり抜けていく。

 それに目を見開いたのは、ゼオン。

 伸びきった肘を押さえ、手首をとり、ぐるりと捻った。

 

「いっ!?」

 

 痛みに滅法強いゼオンだが、唐突な予期しない部位の覚悟のない痛みは反射的に反応してしまったようだ。

 崩れた体勢を更に崩し、それでも耐えようと無理矢理姿勢を直そうとするゼオンへと……。

 

「まだ余裕はあるからね」

 

バキィッ!

 

「ぐおっ!」

 

 そのまま蹴りを叩き込んだ。

 勢い良く吹き飛んでいくゼオン……。

 ガッシュとブラゴの術にぶつけられたら一番良かったけれど、流石にそこまでは調整出来なかった。

 まぁ……これなら……。

 

「『ギール・ランズ・ラディス!』」

 

 これでいけるだろう。

 先端が錨のようになった槍を振り上げ、まずガッシュの術を弾いた。

 

ギィンッ!

 

 以前は()()()弾いた『マーズ・ジケルドン』も術の力自体が強くなっているな……。

 『ギール・ランズ・ラディス』が軋み、腕が少し痺れる。

 

ザンッ!

 

 切り返し、そのまま『ディオガ・グラビドン』を真っ二つに切り裂いた。

 背後で岩山が吹き飛ぶ……いや、半分になった重力球によって抉れていった。

 

 この目で見るのは初めてだけど……これがブラゴのディオガか。

 ()()ではゾフィス戦で何発うってるんだってくらい連発していた術だけど……『ディボルド・ジー・グラビドン』や『ニューボルツ・マ・グラビレイ』のほうが僕には効果的なんじゃないかな?

 そんな事もわからない……なんて事はないだろうから……これは囮か。

 

「ヌゥ!」

 

「『ザケルガ!』」

 

 そこにガッシュが清麿をその身に乗せながら僕に近接し、速い電撃が迸った。

 明らかに振り切った瞬間を狙った攻撃。

 

「『ザング・マレイス!』」

 

「ザァイッ!」

 

 更にはブラゴが手刀を横に振り、そこから素早い飛ぶ斬撃が放たれた。

 狙いは……『ギール・ランズ・ラディス』の柄の部分……か。

 『ザケルガ』の対処に振ればタイミング的にこっちが折れるな……これは避けるしかなさそうだ。

 

 仕方なく地面を蹴って『ザケルガ』をかわし、飛んでくる斬撃を『ギール・ランズ・ラディス』を振るい……既に軋んでいた槍は切り裂かれ――――

 

「『ラージア・ザケル!』」

 

 その瞬間、僕の視界を電撃の閃光が埋め尽くした。

 何も見えなくなる……僕の視界から全ての情報がかき消えた。

 同時に感じる、僕の本の持ち主(パートナー)ヴィノーの焦り。

 飲み込まれた、このままじゃ危ない、そう考えてヴィノーは術を唱えた。

 

キィイン

 

 唱えてしまった。

 

「クリア!『バ・スプリフォ!』」

 

 僕の全方位に放たれる打ち消しの波動……かき消えていく閃光に……マズイ、と感じた。

 今は術を使うタイミングじゃない……!

 

「『ディボルド・ジー・グラビドン!』」

 

グニャァア

 

 『ラージア・ザケル』なんて僕には殆ど効かないのに、僕が見えない不安からか『バ・スプリフォ』が引き出されてしまった……そしてその隙をブラゴが突いてくる。

 ヴィノーと僕の意識のズレ……これは困ったな。

 僕のいる場所に発生した重力球は、内部で滅茶苦茶な重力が発生し、僕の体を引き裂こうと負荷をかけてくる。

 これが一対一ならどうにでもなったが……。

 

「『ガンレイズ・ザケル!』」

 

バラララララ!

 

 清麿に抱えられたガッシュから、無数の雷球が放たれる。

 身動きがとり辛く、内部の滅茶苦茶な重力のせいで軌道の読めない雷球が、面白いくらいに僕の体に命中していく。

 

「ッ……!」

 

 くっ、いちいち動きを阻害するように……!

 これは……。

 

「しまっ……『バ・――――

 

キィイイン

 

 ……マズイ。

 このタイミングは……。

 

「『ジガディラス・ウル・―――

 

 予感を裏付けるように、デュフォーの声が響く。

 

――――スプリフォ!』」

 

――――ザケルガ!』」

 

 かき消えた重力球と雷撃の向こうで、ゼオンの力の化身、ゼオンの最強の術の雷神の砲口が、僕を捉えている。

 その砲口からは既に稲妻が迸り……雷が放たれようとしていた。

 

ZIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!

 

 ……本当に、容赦がないな。

 まぁ、ある訳ないか……。

 

「やれやれ……困ったな……」

 

 ゼオンのジガディラスを真正面から打ち倒すには『ディオガ・ランズ・ラディス』じゃ足りない。

 『シン・クリア・セウノウス』が必要だが……今『シン・クリア』を出す訳にはいかない。

 さあどうしたものか……『リア・ウルク』で逃げるという()()もあるけど……。

 

キィイン

 

 ……違う()()が出た。

 やれやれ、やっとか……まったく。

 

「……せめて散り際くらいは『シン・クリア』の名に恥じない散り方をして欲しいな」

 

ゴオッ!

 

ピギョォオオオオオオオオオオオオオオ!

 

「頼んだよ、バードレルゴ」

 

 僕の大いなる翼よ。

 

 放たれる強大な雷へと、僕の背後から飛来したバードレルゴが、翼と両腕を広げたまま飛び込んでいった。

 その後ろ姿を眺めて……僕はそっと目を細めた。

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