『クリア・ノート』に転生しました。 作:ファウード編アニメ化まだですか?
修正させていただきました。
「おお、おかえり」
孤児院に帰った僕達を待っていたのは、骸骨だった。
「ただいまー!」
僕と手を繋いでいた子は笑顔を作った骸骨に向けて駆け出していった。
この骸骨は厳密には骸骨ではない。
名前をレフェ、
いや、厳密には
まあそもそも魔物の子供同士の王を決める戦いがメインな中で、孤児院の院長の話なんてやるはずがないか。
「さあ今日はシチューだよ。まずは手を洗っておいで」
院長はそう言って、節くれだった手で少女の頭を優しく撫でた。
瞼のない眼窩の奥で、どうやってか知らないがニコリと瞳を細めた。
その姿は慈愛に溢れている……んだろう。
温かな雰囲気なのだろう。
「はーい」
少女はそう言って小気味良い足音を立てながら、急ぎ足で裏の水場まで駆けていった。
ギシギシと木製の古臭い床が音をたてる。
「クリアもおかえり。いつも助かっているよ」
そう言って微笑む院長に、僕は首を横に振る。
「構いませんよ。此方は世話になっている身……僕に出来る事ならなんでもしましょう」
「いいや……本来なら君達のような子供は学校に通わせてあげるべきなのだが……私が不甲斐ないばかりに、すまないね」
院長の視線は窓の外に向いていた。
遠くを見つめるその視線の先には、豆粒のような……けれど周囲の建物からしたらあまりにも巨大すぎる建造物が聳え立っていた。
前世で見覚えのある、球体と組み合わされた特徴的な建造物……あれが学校……の筈だ。
「いえ、僕は今の暮らしに不満はありませんから」
あの学校に、今原作主人公である
魔界の王を決める戦いまであと数年……僕もそろそろ、身の振り方を考えなければならないだろう。
「そうかね……? そう言って貰えるとありがたいよ。心強いな……ありがとう、クリア」
微笑む院長先生はそう言って、僕のボサボサもふもふの頭を撫でた。
もふりと僕の髪に骨のような指がめり込み、もふもふと頭に圧迫感がかかる。
その行為に小さく顎を引いて会釈して……僕はそれをそっと振り払った。
「それでは僕も手を洗って、仕事に取り掛かります」
「ああ……頼んだよ」
手を振り払われた院長……『レフェ』は、寂しそうに笑ったような気がした。
さて、今日する事は……後なんだったかな。
残る仕事を脳内でリストアップして指折り数えながら、僕も少女の後を追い歩きだした。
――――壊せ――――
転生して……もう何年だったかな。
この声とも長い付き合いだ。
まったく慣れる事はないけど。
ハッキリと言えば僕は
前世では
既に原作キャラらしき魔物を何度か見た事はあったし、生きている事を確認した今となっては、その思いは強くなっていた。
別に情がある訳じゃない、好きだとまでは感じていない。
でも理由が無ければわざわざ滅ぼそうとは思わない。
前世の記憶が、培った倫理観が、今を生きる生命を消す事は良くないと強く訴えかけているような気がした。
そもそも何故僕は、
何故滅ぼさなければいけないのだろうか?
僕が読んだ事のない
その答えは、出ない。
僕は何故ここにいるんだろうか。
いくら自問しても、その答えは――――
――――滅ぼせ――――
いつも出てくれない。
とある日、孤児院に程近い森の中。
子供達とレフェ、皆で散歩していた時の事。
とある大木の前で、皆立ち止まっていた。
「『グラード・オル・ウイガル』」
ジャキン
レフェの静かな声が響き、その手に筒が装着される。
それは丁度、前世の記憶が刺激される形状をしていた。
具体的に言えば、猫型ロボットのポケットから出てくる、アレに似ていた。
空気砲だ。
「せんせー! せんせー! あれ! あれ!」
「とってとってー!」
「はいはい、大人しく見ていなさい……さあ皆、落ちてきたら慌てず騒がず、真下にいる子がちゃんと受け止めるんですよ?」
レフェの足元で、子供達が上を指し示してピョンピョンと跳び上がる。
それを宥めながら、院長はその筒を上空へと向けた。
そこには大木に実った赤々とした木の実がぶら下がっていた。
「……よし、行くよ皆。ファイア!」
「「「ファイア!」」」
院長の声と、子供達の声が森の中で響く。
その筒からはそこそこのスピードの空気弾が発射され、頭上の木の実目掛けて真っ直ぐ飛んでいった。
……いや、真っ直ぐではない。
枝葉に一切当たらないように、その位置をその都度微調整し続けているようだ。
葉っぱの間をすいすいと避けながら、その空気弾は木の実と高さを同じくすると、ぐにゃりと軌道を変えて木に繋がっている部分のみをあっという間に見事に撃ち抜いた。
それによって大木と繋がっていた筈の木の実は宙へと投げ出され……子供達のいる所へと落ち始めていった。
「わっ、わたたた」
「こっち! いや、こっち!」
「おっ、おっ……」
「……ん……おや……?」
そんな中でふと気付く。子供達が思い思いに対応している中で、あの少女だけはぼぅと空を見上げて立ち竦んでいた。
何かあったのかと問い掛けるより前に、上ばかり見上げていた少年と少女はぶつかってしまう。
「きゃっ」
それによって少女はバランスを崩し、その場に尻餅をついてしまう。
「うぉっ! ごめん!」
ぶっかった少年は謝りながらも視線は空を見上げたままで……。
少女はそんな少年を見上げて――
「……………………」
なんだか、酷く冷たい瞳をしているように、見えた。
「わー!」
「おー、良いぞ、ナイスキャッチ。さて次は……」
わいわい、がやがや、穏やかな空気が流れ、子供達が盛んに動きだす事で、少女の姿は紛れ、見えなくなってしまった。
……見間違いだろうか、雛鳥をわざわざ自分の食糧を分け与えて育てるような少女が、あんな表情を、浮かべる筈がない。
まるで、全てが無価値だと思っているような――――。
……そういえば今日は、まだ声がしないな。
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「『グラード・オル・レフェル!』」
ジャキキキンッ!
ヴィノーの唱えた術によって、僕の体のあちこちから砲が飛び出す。
うげ、という顔をするのはここに来るまでの間にザレフェドーラの砲撃に晒され続けた清麿とガッシュの二人だ。
これが、ザレフェドーラの砲撃と同質のものであると察したのだろう。
彼等はそれぞれが視線を交わしあい、互いに頷きあう。
「ゼオン」
「ああ、落ちるなよ!」
「ガッシュ!」
「ウヌ!」
「ブラゴ、お願い!」
「しっかり掴まっていろ!」
三者三様、それぞれ魔物が
……まぁ、そうでなければ、僕はこれで
「ふ……さぁ、容赦なく行くよ。ファイアッ!」
ズドドドドドドド!
「「『ラウザルク!』」」
「『アム・グラナグル!』」
僕の身体中の砲身が一気に弾を放つ。
消滅の力を持った、強力無比な砲弾。
それら全てが自由自在に操れる。
殺到したそれらを、ゼオン達は術で肉体強化を施しながら、バラバラに散っていった。
「消滅の力を纏った、何処までも追いかける無数の砲弾だ! 避けきれるかぁ!?」
地面を抉り、空気を裂き、止めどなく放たれるこの術に、いつまで耐えられるかな?
それぞれが
「さぁ……まだまだ行くよ。ファイア! ファイア! ファイア! ファイアーッ!!!」
ズドドドドドドド!
僕は休むことなく次々と砲弾を放った。
さぁ……これはどう対処する……?
そう挑戦的に笑い、避け続けるゼオンへと視線を向けた。
「……フッ」
視線のあったゼオンは、高く舞い上がるとマントを広げたままニヤリと笑う。
最大術を打ち砕いたというのに……まったく。
まだまだ余裕綽々といった様子のゼオンに、僕も不敵な笑みを返した。