【あんこ】TSオリ主ちゃんガンダムに乗る   作:むにゃ枕

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04.向こう側

 人を殺した。良心の呵責がアマテを苛んだ。眠る前に、名前も顔も知らないサイコ・ガンダムのパイロットが、アマテを責めるのだ。

 冷や汗塗れで、目を覚ますこともある。心的外傷(PTSD)と言っても良いような状態だった。

 

 そんなアマテにはお構い無しに、ソドンはイズマコロニーに降り立った。グラナダに向かうため、補給が必要なのだ。

 

「アマテ!!」

「……お母さん? なんで?」

「なんでってことないでしょう! あなたがジオンの新型MSに乗り込んだって聞いたから、ここに来たのよ。本当に無事でよかった」

 

 与えられた部屋の隅で塞ぎ込んでいたアマテを、母であるタマキが抱きしめる。

 

「アマテさん。貴方は、我が軍の新兵器であるジークアクスに乗りました。残念ですが元の生活に戻ることはできません」

「そんな……アマテ…! 嫌よ。アマテが居なくなるなんて」

 

 シャリア・ブルにタマキは食って掛かっていた。しかし、シャリアは折れそうになかった。

 

「私、ジークアクスに乗るよ。そうじゃなきゃ私が殺した人が浮かばれない。あの子がどんな顔で、どんな性格だったとか、何も知らないけど、この罪は私が背負わなきゃならないから」

「アマテ…! やめなさい! お父さんになんて言えば良いのよ!! お願いします。アマテを返してください……」

「お母さん。もう良いよ。私がやりたいことなんだから。辛くて重くて苦しいけど、私がジークアクスに乗らなきゃいけないんだ!」

 

 アマテの明らかな拒否に、タマキは顔を覆って泣き出した。

 

「さよなら。お母さん」

 

 取り乱すタマキを、アマテはもう見ていなかった。

 

「やーやー。酷いね。もっとお母さんを大事にしたら?」

「リアさんには、関係ないですよ」

「そうかもね。だけど、これは忠告だよ。私みたいに全部捨てるなら良いけど、マチュはそうじゃないんだろう?」

 

 リアの評判は良い。いつもヘラヘラしているけれど凄腕のMSパイロットだ。

 

「全部捨てたって、なんですか?」

「連邦を裏切って、ジオンに寝返ったんだ。そして、シャアと暴れた。たまたま沈めたフネに父親が乗ってたんだよ。知らぬ間に父を殺してた。マチュは、私みたいになっちゃダメだよ。戻れるところが有るんだから」

 

 重い言葉だった。アマテは、リアに少しだけ憧れを持っていた。それが、全部なくなったような気がした。

 

「でも、シュウジは違う」

「いや、違わないさ。男のために全部捨てるなんてダサいよ。私みたいになっちゃダメ。今ある物を大事にしなよ」

「うるさい! ジークアクスに乗ったから、私はもう戻れない。逃げれば1つ。進めば2つだって……シュウジが」

「ま、若さの特権だよね。やってみな」

 

 アマテの胸の中にはドロドロとしたものが溜まっていた。

 

「ちょっ、なにこれ!?」

 

 アマテの自室が荒らされていた。見たところ、服や生活用品が消えている。

 

「泥棒でも出たの?」

 

 アマテの言葉に反応するかのように、シャワールームがガタっと音がした。

 

「出てきて! 早くしないと撃つよ!」

 

 アマテは銃を持っていない。これは単なるハッタリだ。

 

 両手を上げて、シャワールームから出てきたのは、褐色の肌に黒髪の少女だった。アマテは彼女の容姿に心当たりが有った。

 

「確か、ニャアン…?」

「…マチュ?」

 

 そこに居たのは運び屋の少女だった。ニャアンの後ろには、そばかすが特徴的な白い髪の少女もいた。

 

「ジークアクスのパイロット……ボクを殺しに来たの? アンを殺したみたいに」

 

 ニャアンと白い髪の少女。2人がアマテの部屋を荒らし、シャワールームに潜んでいたようだった。

 

「ニャアン、その子は誰なの?」

「そ、その……」

「ボクはドゥー。サイコ・ガンダムの心臓だよ。よろしく。アンを殺したアマテ」

 

 ニャアンが頭を抑えている。言ってはいけないことを、ドゥは言っているらしい。

 

「私は、殺したくて殺したんじゃない。撃たれたから咄嗟に……」

「でも、アンは死んだ。アンが脳でボクが心臓。サイコ・ガンダムは2人で1つだったのに」

「ドゥー。やめて。私たちは追われてるの。事を荒立てないで」

 

 ニャアンは運び屋の仲間が逮捕されたため、路地裏に潜んでいたところ、ドゥーに出会った。

 2人は、なんとなく意気投合し行動を共にしている内に、軍警に見つけられた。追われるまま、咄嗟にソドンに乗り込んだという。

 

「マチュ。お願い。黙ってて。難民の私も、連邦軍のドゥも軍警に見つかったら殺されちゃう」

 

 アマテは、2人を隠すことにした。こっそり、食事を盗ったりして、アマテは2人を養っていた。

 

 宇宙に出てからしばらくして、アマテは情報を収集することにした。彼女はあまりに無知だった。ソドンの行方さえも知らない。

 

「リア。このフネってどこに行くの?」

「グラナダ。うちはギレン派だけど、エグザベくんはキシリア様の部下だからね。返却しなきゃいけないんだ」

「ふーん。グラナダって、平和な場所?」

「多分ね」

 

 アマテは、そのグラナダという場所で、ドゥーとニャアンを降ろそうと思った。

 

「マチュ、お腹すいた……」

「ちょっ、ドゥー。出てこないで」

 

 リアは、目をパチクリさせていた。

 

「密航者? しかも可愛い子が2人。やるねぇ。マチュ君ってそっちもいける感じ?」

 

 卑猥なジェスチャーをするリア。アマテは顔を真っ赤にして首を振った。

 

「違う、違うから。単に成り行きで」

「シュウジくんにも首ったけで、女の子2人と同棲かぁ。若いって良いねぇ」

「黙ってて。バレたら2人が殺されちゃうから秘密にしてて」

「ま、良いよ。黙っててあげる」

 

 アマテはリアの言葉を信じ、安心していた。

 しかし、彼女は裏切ったようでシャリアがコモリを連れて、アマテの私室にやってきた。

 

「名前は?」

「ニャアン…です」

「ドゥ」

 

 シャリアの取り調べは、つつがなく進んでいった。

 

「まぁ、良いでしょう。あなたたちはグラナダで降ろします。それまでは大人しくしていてください」

 

 ドゥは不満げに頷き、ニャアンはほっとしたようにコクコクと頷いていた。

 

「間もなく、グラナダです。何もなければ良いのですが」

「中佐、これ連邦軍の広域通信です」

「出してください」

 

 コモリがモニタに映像を繋げる。そこに映し出されたのは、2人の男だった。

 1人は金髪のオールバック。もう1人は茶髪の天然パーマだ。

 

――私はキャスバル・レム・ダイクン。かつてシャア・アズナブルと呼ばれたこともある男だ。

 私は、ジオン・ズム・ダイクンの息子として地球連邦の力を借り、ジオン公国に帰還することにした。

 ザビ家は偽物である。父ダイクンから権力を奪った簒奪者だ。

 

 私こそがジオンである。父ダイクンと志を共にする者よ、ザビ家を打倒しよう。私に協力し、世界を正そう。

 ジオンを正した時に、私は父ダイクンのもとに召されるであろう。今こそ、ジオンに勝利を。連邦に勝利を。ジーク・ジオン! 連邦万歳!

 

「あれって、赤い彗星のシャア?」

「ええ。大佐です。ですが、大佐はダイクンの息子ではなかったはず……」

「シャアだけど、シャアはキャスバルじゃない。あのバカ、記憶喪失にでもなったの?」

 

 アマテは混乱した。赤い彗星のシャアであることは確からしい。けれど、彼はジオン・ズム・ダイクンの息子ではないという。キャスバルという経歴が嘘なのだ。連邦の捏造らしい。

 シャアとキャスバルはそっくりだったという。

 

「た、大変です。すぐにブリッジへ」

「なんですか? 慌てて」

「連邦軍艦隊です!」

 

 一行がブリッジに戻ると、連邦艦隊がグラナダへ迫っていた。

 

「連邦軍艦隊がグラナダへ直進しています! 本国からは、コロニー・レーザーを使用すると。当該宙域の退避勧告が出てます」

「ええ。退避しましょう」

 

 ソドンは急速に機首を巡らし、警告のあった宙域から退避した。

 

「シャリア、アレは囮だよ。グラナダの奴らまんまと引っ掛かったみたいだけど」

「リア中尉にも分かりましたか。ですが、もう間に合わないでしょう」

 

 グラナダから、艦隊が次々と上がっていく。ソドンは少し外れたところで、様子を窺っていた。

 

「囮って何?」

「連邦は何か考えてる。そうでなきゃあんな少ない数でグラナダを攻めない」

「本命……あの光……止めなきゃ! グラナダが消えちゃう!」

 

 アマテは、そのまま格納庫へ走り去っていった。

 リアは、アマテの言葉が飲み込めていなかった。グラナダが消える。ようやく脳裏に過ったのは、ソーラー・システムの存在だ。

 

「コモリ少尉、連邦のパネルは?」

「パネル…? リア中尉何のことです?」

「中尉、発見しました……こ、これです。月軌道、ソロモンの影に構造物があります」

「やはり、ソーラー・システムを撃つつもりなのか」

 

 グラナダ艦隊は連邦軍の囮艦隊を追っている。ソーラー・システムに気が付いてはいないようだった。

 

「アマテ、ジークアクス行きます!」

 

 アマテのジークアクスが、宇宙へと飛び出した。それを追うように赤いガンダムが出る。

 

「シュウジ。止めよう! これが撃たれたら、みんな不幸になる!」

 

 連邦艦隊が護衛についているため、ソーラー・システムのコントロール艦を撃破することは至難の業だ。

 それでも、アマテは進んでいった。

 

「リア中尉、オリベ中尉、マチュくんを追いましょう」

「はい、中佐。ほら、エグザベくんも!」

「分かりました」

 

 アマテを追って、ソドンからMSが発艦する。2機のガンダムと、白いゲルググとギャン。そしてキケロガだ。ニュータイプと言えどもたった5機で戦況を覆すことは出来ない。

 

「アマテくん。前に出過ぎています」

「私が、私がやらないと! だってジークアクスにはそのチカラが有るんだから!」

 

 ジークアクスは確かに飛び抜けた性能を持つ機体だった。けれども、戦力としてはたった1機でしかない。

 

「マズイ…! 光が! 撤退します」

「リア中尉、アマテがまだ…!」

 

 ソーラー・システムから放たれた光が、宇宙を焼いた。ジークアクスと赤いガンダムは、回避が間に合わず光の中に消えていく。

 

「シュウジ! 何してるの!」

「この世界は剪定される。ララァが目覚めてしまえば、世界は消える。だから、最期に君を助けたかった」

「やめて! ジークアクスなら大丈夫だもん!」

「いや、ダメだよ」

 

 シュウジの赤いガンダムが、極小規模なゼクノヴァを発生させ、ジークアクスへと襲いかかる光を飲み込んでいく。

 

「シュウジ! 嫌だよ! こんな別れ方は嫌だ!」

「さよなら。マチュ」

 

 光が消えたあとには、赤いガンダムは一欠片すら残さず消滅していた。

 

「向こう側で待ってて。そのララァって奴をぶっ飛ばして、必ずシュウジのところに辿り着いてみせるから」

 

 アマテにはもう迷いはなかった。向こう側に渡るための鍵であるジークアクスはここにある。

 シャロンの薔薇とララァをぶっ飛ばして、向こう側に辿り着く。単純なことだ。

 

――行こう。向こう側へ。

 

 誰かの声が聞こえたような気がした。

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