コミュ障少女と月の魔女   作:龍翠

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12 ダンジョン探索

 ダンジョンは層ごとに出てくる魔物がだいたい決まってる。稀に一つ下の階層の魔物が迷い込んでくることがあるけど、本当に珍しいパターンだ。あとは、全ての階層で見ることができる変なウサギとかもいるらしい。

 一層に出てくるのは、攻撃能力がなくて安全に狩ることができるスライム。ただし手に入る魔石も砂みたいに小さいもので、とっても安い。

 二層からはゴブリンとかが出てくるようになって、ここからは実際に死んでしまう人もいるから注意しないといけない。そうして三層、四層と少しずつ強くなっていってる。

 

「月の人はどうしてこんな仕組みにしたの?」

――さあ? 地球の人に迷惑をかけるからゲームっぽくしたかったんじゃない?

「迷惑だと思うなら作らなければいいのに……」

――それだけ私を捕まえたいってことかもしれないわね。

 

 そうなのかな。わたしにはよく分からない。

 わたしがメインの狩り場にしてる五層には、オオカミのような魔物がたくさん出てくる。素早くて、とても倒しにくい魔物だ。しかも一部のオオカミは毒を持っていて、毒消しがなかったら噛みつかれただけで致命傷の可能性もある。

 そんなオオカミがいっぱい出るから、五層から死亡率が跳ね上がるって言われてる。五層を安定して狩れるようになったら、探索者としては一人前。

 わたしが一ヶ月ほどでDランクになってしまったのも、オオカミの魔石をたくさん持ち帰るから。それならもう十分だろう、みたいな感じだ。

 

「それじゃあ、いつも通りにオオカミを狩るよ」

――もうちょっと奥まで行っても菜月なら余裕よ?

「時間がね……」

 

 ゲームみたいにワープゲートなんてものもなければ、一瞬で脱出する便利なアイテムもない。奥まで行くのも、そしてそこから帰るのも、必ず徒歩だ。

 移動時間とか魔物を狩る時間とかを考えたら、五層ぐらいがわたしにとってはちょうどいいかなって。ここから下に行くなら、それこそ泊まりのつもりで行かないといけない。

 高ランクの探索者はパーティで潜って、お互いに順番で仮眠を取りつつ奥に行く、というのは聞いたことがあるけど……。わたしは一人だし、学校もあるからさすがに泊まりはしようと思わない。

 せめて……冬休みになってくれないとね。

 

――冬休みになったらドラゴンを狩りたいわね!

「嫌だけど!?」

 

 さすがにそれは怖いから! 絶対に強いやつだよ! ローブの結界を貫通してきたら絶対に逃げるからね!

 のんびりダンジョンを歩き、リーナ直伝の索敵魔法でオオカミを探して、狩る。それがわたしのダンジョン探索。お昼過ぎには休憩だ。

 

――メンチカツサンド! メンチカツサンドを食べなさい!

「好きだねえ……」

 

 リーナのメンチカツ好きって、わたしが最初に食べさせた……って言えばいいのかな。食べさせたからかな? もしこれがコロッケとかだったら、コロッケ好きになってたのかも。

 ちょうどいい大きさの岩に腰掛けて、メンチカツサンドを頬張る。濃厚なソースがメンチカツにしっとりと絡んでいて、とても美味しい。絶品だ。

 

――ああ……。いいわね。揚げたてサクサクのメンチカツももちろん美味しいけど、冷めたメンチカツも悪くない。ソースをたっぷりと吸って、しっとりとしたメンチカツ……。これが、通の味ね!

「メンチカツについて熱く語られても困るんだけど」

 

 わたしはそこまでメンチカツにこだわりはないから。お菓子とかの方が好きだし。

 

――もちろんお菓子もいいものよ? コーンチョコとか最高ね!

「わたしはラングドシャとか。あの甘いサクサクがいいんだよ」

――あれも美味しかったわね……。…………。菜月。

「うん。帰りに買おうね」

 

 こんな話をしていたら食べたくなるのが人情、なんてね。

 

 

 

 お金を稼ぐだけなら、効率を考えると四層も五層も大差なかったりする。むしろ日帰りしやすい五層までで考えると、四層で狩る方が良いまであるんだけど、わたしが五層を狩り場にしているのは理由がある。

 

「うわあああ!」

 

 そんな悲鳴が聞こえて、わたしは足を止めた。

 

「今日はこれで三回目、だね」

――日本は命知らずのバカが多すぎない?

「否定できない……」

 

 ダンジョンで命を落とす人は、実は少なくない。毎日、誰かしら死んでいるぐらいに。世界中から人が訪れるから探索者そのものも多くて被害が出るのも当然かもしれないけど、それでもやっぱり、こんなところで亡くなってしまうのは、悲しいことだと思う。

 だって、死体は基本的にそのまま放置になるから。ダンジョン探索は命がけ。死体を見かけても地上へ連れて帰る余裕がある人は少ない。

 ましてや、まともな状態の死体なんて少ないとなったら、余計に。基本的には、魔物にいろいろやられてしまうから。

 わたしは、リーナから魔法を教えてもらったから、比較的安全。でも、わたしだけそんな恩恵を得ているのは、ちょっと卑怯だと思う。

 だから。せめて、助けられる範囲で助けてあげたい。そして五層は、浅い階層で一番被害が多い階層だ。

 

「行ってくるね」

――はいはい。

 

 悲鳴が聞こえた方へと走る。リーナの魔法で身体を強化してるから、すごい勢いで壁が後ろに流れていく。視力とかの強化もできなかったら、壁にぶつかってただろうなと思う速度。

 そうして走ると、すぐに倒れている人が見えてきた。その倒れている人の前で、剣を持って立っている人がいる。

 

「く、来るな! ちくしょう! 来るなよ!」

 

 簡素な鎧を着た、中年ぐらいのおじさん。倒れているのは、折れた杖を抱えてる女の人だ。気を失っているみたいで、ぴくりとも動かない。死んでは……ない、よね?

 男の人が対峙してるのは、いつものオオカミ。きっと四層で安定して狩れているから、五層のオオカミもどうにかなると思ったんだと思う。

 ギルドは五層に入る時はDランク以上の探索者に付き添ってもらうようにってお知らせ出しているのにね。油断は、だめだ。

 

「土の壁」

 

 魔法を使って、おじさんとオオカミの間に壁を作り出す。オオカミは戸惑っていたけど、すぐに跳躍して壁を飛び越えようとしてきた。

 

「アイス」

 

 氷の塊を射出する、とても単純な魔法。でも飛び上がってる魔物には効果的で、避けられることなく直撃した。

 

「な、なんだ!?」

 

 おじさんが振り返って、わたしと目が合った。

 

「えっと……」

「君は……」

「あの……」

――信じられる? 同じことを何度もやってるのに、一向に初対面の人とまともに会話できないのよ。

「ほっといてよ……」

 

 だ、だって! 怖いよ! こう、何を言えばいいのか分からなくて……! その言葉で相手を怒らせたり傷つけたりしないかって……!

 

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