陽葵のパーティは三層にいた。階段がある部屋で休んでいたみたい。階段がある部屋には魔物は寄りつかないから、休むには最適の場所だ。
フードをまたしっかりと被ってから、三人へと話しかけた。
「もどり、ました」
「ああ……。無事でよかった……」
「心配したんだから!」
魔法使いの二人がそう言ってくれる。この二人は優しそうな人だ。
もう一人……。リーダーさんは、目がうつろだった。茫然自失としてる。
リーダーさんがわたしにゆっくりと視線を向けて、言った。
「腕は……」
「…………。ごめんなさい……」
「そう、か……。そうかあ……」
がっくりと項垂れるリーダーさん。かわいそうだとは思うけど、命が助かっただけ良かったと思ってほしい。ダンジョンで亡くなる人というのは、とても多いのだから。
三人を連れて、地上へと戻る。道中の魔物はわたしが全部倒しておいた。
そうしてギルドに戻って、受付さんに報告。こういう時の受付さんはとても淡々と対応する。感情移入しないように気をつけている、らしい。
それでも。
「命だけでも無事で何よりでした」
この言葉に、全てが集約されていると思った。
陽葵のパーティは、予想通り解散、ということになった。
腕を失ったリーダーさんは、ギルドが提携している病院に入院することになるらしい。治療費に加え、最新の義手とリハビリまで無料で受けることができる、とのこと。陽葵はそれを聞いて、ちょっと安心していたみたい。やっぱり心配だったんだね。
魔法使いの二人は、探索者をやめるとのことだった。英断、だと思う。こんな危険なことより、普通にアルバイトとかした方がいいだろうから。
というわけで。陽葵は無事にフリーになった。無事に、と言ったら怒られるだろうけど。
「改めて、よろしく、陽葵」
「ああ。よろしく、菜月」
「わたしと一緒にいたらいろいろ勘ぐられるだろうから、次からこの仮面つけてね」
わたしは身元を隠してるけど、陽葵は隠していない。このままだと、わたしについて知りたい人が陽葵に殺到することになると思う。
だから、わたしと行動する時は、顔を隠す仮面をつけてもらおうと思ったんだけど……。
「うわだっさ」
――なんだとー!?
リーナ渾身の自信作、黒い仮面は陽葵には不評でした。わたしも正直、これはだめだと思う。
「えっと……。魔法で何か作ってみる」
「あ、ごめん。どうしようもなかったら、つけるから」
「うん……」
ぷりぷり怒るリーナには悪いけど、陽葵をパーティに加えようと言い出したのはリーナだからね。ちょっと頑張ってもらおう。
そうして、陽葵と別れてから次の学校。相変わらず汚されてる自分の机にため息をつきつつ、ささっと掃除。この掃除道具も、多分陽葵の私物なのかな。
そうして、椅子に座って一段落して。がらりと、教室のドアが開いた。
入ってきたのは、陽葵。周囲を軽く見回しただけで、教室が少し静かになる。これもあれかな、カリスマっていうのかな。
「改めて見ると、わたしの友だちかっこいい」
――それでいいの?
「いいの」
人には言えないけど、あの子、わたしの友だちなんだよ。そう思うと、ちょっとだけ嬉しくて……。
そして陽葵が、わたしの前の席の椅子に座った。
「おっす。おはよう、菜月」
「ふえ!?」
え、え、陽葵!? 陽葵なんで!?
これに驚いたのはわたしだけじゃなくて、クラスメイトほぼ全員だ。特に陽葵と仲が良かったグループは口をあんぐりと開けてる。わたしも同じ顔になってると思う。
「ちょ、どういうこと!?」
グループの一人が叫んで、陽葵はにやりと笑って言った。
「あたし、菜月と和解したから。今は友だちだ。な? 菜月」
「あ、えと……」
陽葵を見る。にやにや笑ってる。でもそれは、意地の悪い笑顔じゃなくて……。
「う、うん……。陽葵とは、友だち」
「はあああ!?」
なんだか周りは騒がしいけど……。こうして学校でも友だちだって言ってもらえて、わたしは嬉しかった。
「また週末、ダンジョンだろ? 楽しみだな」
「うん……!」
わたしが頷くと、陽葵はにっと笑ってくれた。
――うんうん。青春だねえ。
リーナはちょっとおばさん臭いと思う。
――なん、だと……!?
まあ、ともかく。友だちが一人、できました……!
壁|w・)陽葵(ひまり)が仲間になりました。というところで、第二話終了、なのです。