ホテルを出たのがお昼過ぎ。まだまだ時間はたっぷりある。明日までは……観光だ! 食べ歩きだ!
「陽葵、美味しいもの、食べよう!」
「お前ってそんな食いしん坊キャラだっけ?」
「え……」
あれ? そういえば、別にそこまでわたしは食にこだわってなかったはずなんだけど……。むしろ、パンの耳とかで過ごしていたことすらあるんだけど……。
これって、もしかしなくても、わたしの中にいるリーナの影響なんじゃないかな?
――ちょっと、変な疑いをかけるのはやめなさい。そんなわけがないでしょう。
そうなの? いや、でも……。
――美味しいものを体験して、もっと美味しいものを食べたいと思うのは当然のことよ。ええ、当然のことなのよ。私だけじゃないの。分かる? 私だけじゃ、ないの!
あ、はい。そういうことにしておきます。
「最近、その……。お金が手に入って、美味しいもの食べるようになって……。それで、かな?」
「ふうん……。そういうものか。気持ちは分からないでもないかな」
わたしですらあまり納得してなかったけど、陽葵はその答えで納得してくれた。優しい。好き。
「大阪と言えば、やっぱり粉もんだろ。たこ焼きとか、お好み焼きとか。串カツとかでもいいな」
「串カツって、お酒飲む人が好きなんじゃないの? 陽葵ってお酒飲むんだ……」
「その変な先入観はどっから来たんだよ……」
違うらしい。町中で見たテレビの番組で、串カツ食べながらお酒飲んでる人がいたから、そういうものだと思ってた。
「ところでさ。菜月」
「うん?」
「夜に、教えてくれるんだよな?」
「うん。特別、だからね」
「ああ」
陽葵には、わたしとリーナのことを教えようと思ってる。ちゃんと信頼関係を築いてから、なんてリーナには言われたけど、自分だけで抱え込むのがそろそろ辛くなってきた、とういのもあるから。
それに。陽葵になら、裏切られても諦めがつきそう。なんとなく、だけど。
ちなみにそれを言ったら、リーナにはとても謝られた。ごめんなさい、て。そういう意味で言ったわけじゃないんだけど。
「でも、夜まで待ってね。せめて人がいないところで」
「分かってるって。とりあえず食べ歩きを楽しもうぜ」
「うん」
リーナもわくわくしてるからね。たくさん食べ歩きしよう。地元で食べられそうにないもの、がっつり食べるよ!
最初に向かったのは、串カツ。夜はやっぱりお酒を飲む人が多そうだから、というイメージ。陽葵には呆れられたけど、どうしても先入観は拭えない。いやだって、串カツってそういうものじゃないの?
「菜月は店なんて知らないよな?」
「うん。陽葵は知ってるの?」
「ああ。ツレと何回か来てるからな」
こっちだ、という陽葵の先導に従って歩いて行く。周りから視線は感じるけど、とりあえず無視だ。陽葵もあまり気にしていないみたい。
「ダンジョンの外なら魔女なんて有名でもなんでもないからな。なんかのコスプレと思ってるんじゃないか?」
「ああ……。こすぷれ。こすぷれね。こすぷれ、楽しいよね」
「とりあえず伝わってないことは分かった」
いや、その……。だって、コスプレって知らないし……。
――コスプレっていうのはね。ゲームとかアニメのキャラクターの服装を着て楽しむことよ。
え。なんでリーナが知ってるの? というか、それの何が楽しいの?
――普通に商店街のテレビのニュースでやってたわよ? 何が楽しいのかは……私もよく分からないわね。何が楽しいのかしらね……。
不思議だねー……。とりあえず、陽葵にはリーナの説明そのまま伝えてみよう。
というわけで伝えてみたら、陽葵はあからさまに驚いたみたいだった。
「なんだよ、知ってたのか。悪いな、疑って」
「い、いやあ……。あはは……」
「なんでそんな罪悪感たっぷりな笑顔なんだ……?」
「そ、そんなことは、ないよ……?」
うん……。えと……。夜に、伝えます……。
陽葵に案内された先は、天神橋筋商店街という場所。アーケード商店街だ。わたしの家の側にある商店街よりもずっと規模が大きい。人通りもかなりのものだ。
「す、すごい……! すごいよ陽葵! 人がいっぱい……!」
「なんというか……。ガキっぽいな。菜月」
「ガキっぽい!?」
言うに事欠いて、ガキっぽい!? さすがにそれは怒るよわたしでも!
――いや、どう考えてもガキっぽいから。はしゃぎすぎでしょ。
ぬぐぐ……!
わたしがちょっと頬を膨らませると、陽葵は悪い悪いと笑って頭を撫でてきた。陽葵の方が背が高いけど、だからって子供扱いは納得できない。わたしが子供なら、同い年の陽葵だって子供なのに。
「それより、ここだよ。串カツ」
「え。うわ、なんか雰囲気がある……」
陽葵が案内してくれたのは、商店街にあるちょっと古めかしいお店。二階建てのお店で、二階でもご飯が食べられるらしい。
昼から夕方までは食事メインで、夜になるとお酒の提供も始まる、とのこと。
「やっぱり居酒屋っぽい……」
「そんなの言い始めたら、ほとんどの店でお酒出してるぞ」
それはそうかもしれないけど。
壁|w・)サブタイトルを串カツにしようと思ったら、まだ食べてなかった……。