コミュ障少女と月の魔女   作:龍翠

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25 串カツ

 陽葵と一緒にお店に入る。店内はまっすぐな通路に、右側にカウンター席が続いてる。店の奥に階段があって、二階はテーブル席なんだとか。

 今はお昼過ぎ。お昼だと昼食でこの店も混雑するらしいけど、今はがらがらだ。すぐに食べられそう。

 

「いらっしゃい。何人ですか?」

「二人。カウンター席でもいいけど、一番奥でお願いしたい」

「構いませんよ。どうぞ奥へ」

 

 一番奥の席、階段の手前ぐらいの席になった。どうしてかなと思ったら、顔を見られないように、だって。今思ったら、わたしはフードを被ってるけど、陽葵は隠蔽の効果のあるマフラーを外さないといけないんだった。

 

「ごめん……」

「なんで謝るんだ……?」

 

 考えが足りなくて。いろいろ秘密にしてほしいとお願いしてるわたしがこれなのは、ちょっと問題だ。気をつけないと。

 席についたら、注文。とりあえず串カツのセットと、ご飯。

 

――ああ……! ついに、憧れの串カツ! 楽しみ! ええ、とても楽しみ! しかも、きっと揚げたて! 早く、早く食べたい……!

 

 リーナが興奮しすぎていてちょっとうるさいかな……。

 少し待つと、料理が運ばれてきた。ちょっと大きめのお皿に並べられた串カツ。いろんな形、いろんな種類がある。どれがどれなのかは分からないけど。あとは、白ご飯。それだけ。

 なんというか……。とてもシンプルだね。セットって聞いたから、お味噌汁とかも出てくるのかなと思ったけど、そうでもないみたい。

 

――ねえ、菜月。なんか、イメージと違う。ソースが普通に置かれてる。

 

 え? あ、ほんとだ。ソースの入れ物が普通にカウンターに置かれてる。

 

「ねえ、陽葵」

「うん?」

「ソースって、こう……。みんなでつけるとか、そういうのじゃないの? それで、二度づけ禁止とかそういうので……」

「ああ……。店によりけりだよ。あたしたちが生まれる前にあったなんかの伝染病で、そういうのが厳しくなったんだってさ」

「そうなんだ……」

 

 それはちょっと残念かも。いや、別にこだわってるわけじゃないんだけどね。

 それじゃあ、ソースを串カツにかけて……。まずは、一つ。

 

「おお……」

――おーいしー! 揚げたてというのが分かるわね! さくさくじゅーしぃ! これは、お肉ね! 定番! でもそれがいい! ソースの味もしっかりとあって、最高!

「…………」

 

 感想は全部言われました。言いたいわけじゃないけども。

 次は……これ。

 

――おもしろいわねこれ! ウインナー! これが、たこさんウインナー! たこさんウインナーの串カツ! どうせならたこさんウインナーをまず食べたかった!

 

 それはわたしに作れと言っているのかな。無茶言わないでよ。そもそも家に包丁がない。買えないことはないけど、指を切る未来しか見えない。

 

――これは、魚の切り身ね? 魚ですら串カツにするなんて……。あ、でもそうね、魚のフライってコンビニであったわね。お肉とは違った食感! ほろほろとほぐれる淡泊な味だけど、それがソースと絶妙に合う!

「…………」

――えび! 王道! フライと言ったらえび! ぷりぷりのえびをさくさくの衣で包んでいて、これもまた良し! 食感が楽しい!

「…………」

 

「な、菜月? なんか変な顔してるけど、大丈夫か? 口に合わなかったか?」

「あ、違うよ。ちょっと、こう……。考え事というか、感想がうるさいというか……」

「はあ……?」

 

 ごめんね、意味が分からないよね。あまり気にしないでほしい。

 ソースが濃いめの味だから、ソースをかけたカツでご飯を食べるのもとても美味しかった。ただ量はあまりなくて、あっという間に完食。お代わりもしたくなってくるけど……。やめておこう。

 

――えー! お代わりしましょう! 美味しいから!

 

 だめ。この後のたこ焼きとかお好み焼きとかを我慢するなら、お代わりしてもいいけど。

 

――ぐ……。仕方ないわね……。

 

 分かってくれて一安心。リーナの望むままに食べ過ぎると、すぐに太ってしまいそうだから……。最初は痩せていたからもっと食べないとと思っていたけど、今はもう体重も平均ぐらいだろうし、控えないとね。

 お会計をして、店を出る。お店の人にちらちらとずっと見られていたけど、やっぱりこの服装のせい、かな?

 

「美味しかった……。串カツ、いいね」

「だろ? あたしのお気に入りなんだ。それで、次はたこ焼きか?」

「うん。食べたい」

「でもなあ……」

 

 陽葵はなんだか悩んでいる様子。大阪に詳しそうだから、美味しいたこ焼きも知ってるのかなと思ったけど……。

 

「地元の商店街にあるたこ焼き……。系列店だからなあ……」

「え」

「たまに来る屋台あるだろ? 行こうと思ってる店の人がやってんだよ」

「あー……。そうなんだ……」

 

 それは、うん。普通にあり得る話だった。そもそもそこまで距離も離れていないんだから、大阪で成功したお店が奈良に来ていても不思議じゃない。

 じゃあ、たこ焼きはいっか。それなら他のものをいっぱい食べた方がきっとリーナも満足するだろうから。

 

「どうせなら、お好み焼きだな。オススメがある」

「いいね。お願い」

「任せろ」

 

 というわけで、今度はお好み焼きを食べに行くことになった。

 

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