陽葵と一緒にお店に入る。店内はまっすぐな通路に、右側にカウンター席が続いてる。店の奥に階段があって、二階はテーブル席なんだとか。
今はお昼過ぎ。お昼だと昼食でこの店も混雑するらしいけど、今はがらがらだ。すぐに食べられそう。
「いらっしゃい。何人ですか?」
「二人。カウンター席でもいいけど、一番奥でお願いしたい」
「構いませんよ。どうぞ奥へ」
一番奥の席、階段の手前ぐらいの席になった。どうしてかなと思ったら、顔を見られないように、だって。今思ったら、わたしはフードを被ってるけど、陽葵は隠蔽の効果のあるマフラーを外さないといけないんだった。
「ごめん……」
「なんで謝るんだ……?」
考えが足りなくて。いろいろ秘密にしてほしいとお願いしてるわたしがこれなのは、ちょっと問題だ。気をつけないと。
席についたら、注文。とりあえず串カツのセットと、ご飯。
――ああ……! ついに、憧れの串カツ! 楽しみ! ええ、とても楽しみ! しかも、きっと揚げたて! 早く、早く食べたい……!
リーナが興奮しすぎていてちょっとうるさいかな……。
少し待つと、料理が運ばれてきた。ちょっと大きめのお皿に並べられた串カツ。いろんな形、いろんな種類がある。どれがどれなのかは分からないけど。あとは、白ご飯。それだけ。
なんというか……。とてもシンプルだね。セットって聞いたから、お味噌汁とかも出てくるのかなと思ったけど、そうでもないみたい。
――ねえ、菜月。なんか、イメージと違う。ソースが普通に置かれてる。
え? あ、ほんとだ。ソースの入れ物が普通にカウンターに置かれてる。
「ねえ、陽葵」
「うん?」
「ソースって、こう……。みんなでつけるとか、そういうのじゃないの? それで、二度づけ禁止とかそういうので……」
「ああ……。店によりけりだよ。あたしたちが生まれる前にあったなんかの伝染病で、そういうのが厳しくなったんだってさ」
「そうなんだ……」
それはちょっと残念かも。いや、別にこだわってるわけじゃないんだけどね。
それじゃあ、ソースを串カツにかけて……。まずは、一つ。
「おお……」
――おーいしー! 揚げたてというのが分かるわね! さくさくじゅーしぃ! これは、お肉ね! 定番! でもそれがいい! ソースの味もしっかりとあって、最高!
「…………」
感想は全部言われました。言いたいわけじゃないけども。
次は……これ。
――おもしろいわねこれ! ウインナー! これが、たこさんウインナー! たこさんウインナーの串カツ! どうせならたこさんウインナーをまず食べたかった!
それはわたしに作れと言っているのかな。無茶言わないでよ。そもそも家に包丁がない。買えないことはないけど、指を切る未来しか見えない。
――これは、魚の切り身ね? 魚ですら串カツにするなんて……。あ、でもそうね、魚のフライってコンビニであったわね。お肉とは違った食感! ほろほろとほぐれる淡泊な味だけど、それがソースと絶妙に合う!
「…………」
――えび! 王道! フライと言ったらえび! ぷりぷりのえびをさくさくの衣で包んでいて、これもまた良し! 食感が楽しい!
「…………」
「な、菜月? なんか変な顔してるけど、大丈夫か? 口に合わなかったか?」
「あ、違うよ。ちょっと、こう……。考え事というか、感想がうるさいというか……」
「はあ……?」
ごめんね、意味が分からないよね。あまり気にしないでほしい。
ソースが濃いめの味だから、ソースをかけたカツでご飯を食べるのもとても美味しかった。ただ量はあまりなくて、あっという間に完食。お代わりもしたくなってくるけど……。やめておこう。
――えー! お代わりしましょう! 美味しいから!
だめ。この後のたこ焼きとかお好み焼きとかを我慢するなら、お代わりしてもいいけど。
――ぐ……。仕方ないわね……。
分かってくれて一安心。リーナの望むままに食べ過ぎると、すぐに太ってしまいそうだから……。最初は痩せていたからもっと食べないとと思っていたけど、今はもう体重も平均ぐらいだろうし、控えないとね。
お会計をして、店を出る。お店の人にちらちらとずっと見られていたけど、やっぱりこの服装のせい、かな?
「美味しかった……。串カツ、いいね」
「だろ? あたしのお気に入りなんだ。それで、次はたこ焼きか?」
「うん。食べたい」
「でもなあ……」
陽葵はなんだか悩んでいる様子。大阪に詳しそうだから、美味しいたこ焼きも知ってるのかなと思ったけど……。
「地元の商店街にあるたこ焼き……。系列店だからなあ……」
「え」
「たまに来る屋台あるだろ? 行こうと思ってる店の人がやってんだよ」
「あー……。そうなんだ……」
それは、うん。普通にあり得る話だった。そもそもそこまで距離も離れていないんだから、大阪で成功したお店が奈良に来ていても不思議じゃない。
じゃあ、たこ焼きはいっか。それなら他のものをいっぱい食べた方がきっとリーナも満足するだろうから。
「どうせなら、お好み焼きだな。オススメがある」
「いいね。お願い」
「任せろ」
というわけで、今度はお好み焼きを食べに行くことになった。